「有害鳥獣駆除をすると報奨金がもらえるらしいけど、実際いくらもらえるの?」——こんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。報奨金の金額は動物の種類や自治体によって大きく異なり、1頭あたり数千円から2万円以上になるケースもあります。しかし、金額だけでなく「どうやって申請するのか」「税金はかかるのか」まで正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。
この記事では、有害鳥獣駆除の報奨金について、国の交付金制度から都道府県・市町村ごとの上乗せ金額、申請手続き、さらに確定申告での扱いまでを網羅的に解説します。まず報奨金制度の基本を押さえ、次に動物別・地域別の金額を比較し、最後に見落としがちな税金の注意点をお伝えします。
有害鳥獣駆除の報奨金とは?制度の基本をわかりやすく解説
有害鳥獣駆除の報奨金とは、農作物や生活環境に被害を与える野生鳥獣を捕獲した際に、自治体から支払われる金銭的な報酬のことです。正式には「捕獲報償金」や「有害鳥獣捕獲報償費」と呼ばれることが多く、自治体ごとに名称が異なる場合があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 有害鳥獣捕獲報償金(自治体により名称が異なる) |
| 支給元 | 国(交付金)+都道府県+市町村の三層構造 |
| 対象者 | 市町村から有害鳥獣捕獲の許可を受けた者(猟友会員が多い) |
| 対象動物 | イノシシ、ニホンジカ、ニホンザル、カラス、ハクビシンなど |
| 金額の目安 | 1頭あたり数千円〜2万円超(動物・自治体により異なる) |
報奨金制度の背景には、深刻化する鳥獣被害があります。農林水産省の調査によると、野生鳥獣による農作物被害額は年間約156億円(2022年度、農林水産省調査)にのぼり、令和5年度(2023年度)にはさらに増加しています。国は「鳥獣被害防止総合対策交付金」として令和6年度(2024年度)当初予算でソフト対策に約75.8億円、ハード対策に約23.2億円を計上し、捕獲活動の推進を支援しています。
報奨金の三層構造
報奨金は以下の三層から成り立っています。
1. 国の交付金:鳥獣被害防止総合対策交付金から、イノシシ・ニホンジカ・ニホンザル1頭につき8,000円が支給されます(2025年度時点)
2. 都道府県の上乗せ:県独自の補助制度で上乗せする自治体があります
3. 市町村の報奨金:市町村が独自に設定する報奨金です。地域の被害状況により大きく異なります
この三層が合算されることで、実際に猟師が受け取る金額が決まります。
有害鳥獣駆除の報奨金はいくら?動物別の金額相場
有害鳥獣駆除の報奨金は、捕獲する動物の種類によって大きく異なります。以下は全国の自治体を調査した金額相場です(2025年度時点)。
| 対象動物 | 国の交付金 | 市町村報奨金の相場 | 合計の目安 |
|---|---|---|---|
| イノシシ(成獣) | 8,000円 | 5,000〜12,000円 | 13,000〜20,000円 |
| イノシシ(幼獣) | 8,000円 | 1,000〜5,000円 | 9,000〜13,000円 |
| ニホンジカ(成獣) | 8,000円 | 5,000〜10,000円 | 13,000〜18,000円 |
| ニホンジカ(幼獣) | 8,000円 | 1,000〜5,000円 | 9,000〜13,000円 |
| ニホンザル | 8,000円 | 5,000〜15,000円 | 13,000〜23,000円 |
| ハクビシン | — | 1,000〜3,000円 | 1,000〜3,000円 |
| アライグマ | — | 1,000〜5,000円 | 1,000〜5,000円 |
| カラス | — | 200〜2,000円 | 200〜2,000円 |
ニホンザルの報奨金が比較的高めに設定されている自治体が多いのは、サルは群れで行動するため追い払いが難しく、農作物被害が甚大になりやすいためです。
成獣と幼獣で金額が異なる理由
多くの自治体では成獣と幼獣で報奨金の金額を分けています。これは個体管理の観点から、繁殖個体である成獣の捕獲をより推奨する意図があるためです。ただし、一部の自治体では成獣・幼獣の区分を設けていないケースもあります。
都道府県別・有害鳥獣駆除の報奨金比較
報奨金の金額は自治体によって大きな差があります。以下は代表的な自治体の金額例です(2025年度時点、イノシシ成獣の場合)。
| 自治体 | イノシシ(成獣) | ニホンジカ(成獣) | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 栃木県鹿沼市 | 16,000円 | 15,000円 | 幼獣は約半額 |
| 長野県(県全体の上乗せ) | 国+県+市町村で最大20,000円超 | 同左 | シカ被害が深刻な地域は手厚い |
| 兵庫県(県独自上乗せあり) | 国+県+市で最大18,000円 | 同左 | 県の上乗せ制度あり |
| 北海道(エゾシカ) | — | 国+道+市町村で最大15,000円 | エゾシカ対策を重点推進 |
| 千葉県(キョン対策) | 13,000〜15,000円 | — | キョン:最大6,000円 |
金額が高い自治体の共通点は、鳥獣被害が深刻で捕獲担い手が不足している地域です。過疎化が進む中山間地域ほど報奨金を高く設定する傾向があります。
報奨金の高い自治体を狙うべきか?
「報奨金が高い地域で活動すれば稼げるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、報奨金はあくまで有害鳥獣捕獲許可を受けた活動に対して支払われるものであり、自由に活動地域を選べるわけではありません。基本的には居住地域または猟友会に所属する地域での活動が前提となります。
有害鳥獣駆除の報奨金を受け取るための条件と申請手順
報奨金を受け取るには、一定の条件を満たし、正しい手順で申請する必要があります。
報奨金を受け取るための条件
| 条件 | 詳細 |
|---|---|
| 狩猟免許の保有 | わな猟免許または第一種銃猟免許が必要 |
| 有害鳥獣捕獲の許可 | 市町村長または都道府県知事からの許可が必要 |
| 猟友会への所属 | 必須ではないが、実際にはほぼ必要(自治体が猟友会に依頼するため) |
| 捕獲の証拠提出 | 尾・耳などの部位提出、または写真撮影が必要 |
申請手順(一般的な流れ)
1. 有害鳥獣捕獲許可の取得:市町村の農林課や環境課に申請します。猟友会経由で申請するのが一般的です
2. 捕獲活動の実施:許可された期間・区域内で、指定された方法で捕獲を行います
3. 捕獲報告書の提出:捕獲した日時・場所・頭数・方法を記録し、証拠(写真や尾の切除物)とともに提出します
4. 報奨金の受領:自治体が確認後、指定口座に振り込まれます。支払い時期は月末締め翌月払い、四半期ごとなど自治体により異なります
実際の現場では、捕獲報告のフォーマットや証拠の提出方法は自治体によって細かく異なります。活動を始める前に、所属する猟友会や市町村の担当窓口に具体的な手続きを確認しておくことが重要です。
報奨金だけで生活できる?猟師の収入におけるリアルな位置づけ
「有害鳥獣駆除の報奨金だけで生活できるのか?」——これは猟師を目指す方がよく抱く疑問です。結論から言えば、報奨金だけで生計を立てるのは非常に難しいのが現実です。
報奨金収入のシミュレーション
仮にイノシシを年間100頭捕獲した場合を試算してみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 国の交付金(8,000円×100頭) | 800,000円 |
| 市町村報奨金(平均8,000円×100頭) | 800,000円 |
| **年間合計** | **約160万円** |
年間100頭の捕獲はかなりの活動量ですが、それでも報奨金だけでは年収160万円程度です。ここから経費(罠の購入・修理費、車両費、燃料費、狩猟保険料、弾代など)を差し引くと、手取りはさらに少なくなります。
実際に有害鳥獣駆除に従事している猟師の多くは、以下のように複数の収入源を組み合わせて生活しています。
- **報奨金**:有害鳥獣駆除による収入
- **ジビエ販売**:捕獲した個体を食肉処理施設で処理し販売
- **農林業などの本業**:兼業猟師として他の仕事と両立
- **自治体の委託事業**:鳥獣被害対策実施隊の隊員として日当を受け取る
猟師のリアルな年収について詳しくは「猟師の年収をリアルに公開!収入源と稼ぎ方を徹底解説」の記事で詳しく解説しています。
★ 見落とし注意!報奨金の確定申告と税金の扱い
有害鳥獣駆除の報奨金は課税対象です。にもかかわらず、確定申告をしていない猟師が少なくないのが実態です。過去には、約30人のハンター団体が大阪国税局の税務調査を受け、合計約1億7,000万円の申告漏れを指摘された事例もあります(2019年時点)。
報奨金の所得区分
| 猟師の立場 | 所得区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 専業猟師(本業) | 事業所得 | 青色申告が可能。65万円の特別控除あり |
| 副業・兼業猟師 | 雑所得 | 給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要 |
| 猟友会経由の配分 | 雑所得 | 猟友会から個人に配分された金額が対象 |
経費として計上できるもの
報奨金に対しては、活動に必要な経費を差し引くことができます。
| 経費項目 | 具体例 |
|---|---|
| 狩猟用品費 | 罠(くくり罠・箱罠)、弾代、ナイフ、ベスト、長靴 |
| 車両関連費 | ガソリン代、車両の減価償却費(業務使用分) |
| 保険料 | 狩猟者登録に伴う保険料、ハンター保険 |
| 通信費 | 無線機の使用料、GPSトラッカーの通信費 |
| 猟友会費 | 年会費、登録手数料 |
注意:プライベートと兼用している支出(車両費など)は、業務使用割合を合理的に按分する必要があります。
申告漏れを防ぐポイント
- 捕獲台帳をつけて、報奨金の受取額を正確に記録する
- 経費の領収書は必ず保管する(最低5年間)
- 給与所得者は、給与以外の所得が年間20万円を超えたら確定申告を忘れない
- 不安があれば税理士に相談する(初回相談無料の事務所も多い)
このセクションの内容は競合記事ではほとんど取り上げられていませんが、報奨金を受け取る以上は避けて通れない重要なテーマです。
鳥獣被害対策実施隊とは?報奨金以外の収入も
市町村によっては「鳥獣被害対策実施隊」を設置しており、隊員として活動することで報奨金とは別に日当(活動手当)を受け取れるケースがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 鳥獣被害防止特別措置法(2007年制定) |
| 設置主体 | 市町村 |
| 隊員の身分 | 非常勤の公務員扱い(公務災害補償の対象) |
| 日当の目安 | 1日あたり3,000〜8,000円程度(自治体により異なる) |
| メリット | 公務災害補償、狩猟税の軽減(2分の1)、活動中の事故に対する補償 |
実施隊員になると、狩猟税が2分の1に軽減される優遇措置があるため、有害鳥獣駆除を積極的に行う猟師にとっては大きなメリットです。対象地域で活動する場合は、市町村に実施隊の有無を確認してみるとよいでしょう。
有害鳥獣駆除の報奨金に関するよくある質問
Q1: 猟友会に入らないと報奨金はもらえませんか?
制度上は猟友会への加入は必須ではありません。しかし実際には、多くの自治体が有害鳥獣捕獲を猟友会に委託しているため、猟友会に所属していないと活動機会自体が得られにくいのが現状です。個人で直接自治体に申請できるケースもありますが、地域によって対応が異なるため、まずは市町村の農林課に確認してみてください。
Q2: 報奨金の金額は毎年変わりますか?
はい、国の交付金額や自治体の予算状況により変動する可能性があります。特に市町村の報奨金は、被害状況や予算枠に応じて年度ごとに見直されることがあります。活動前に最新の金額を自治体に確認することをおすすめします。
Q3: 猟期中の捕獲でも報奨金はもらえますか?
猟期中(11月15日〜2月15日、北海道は10月1日〜1月31日)に行う「狩猟」と、年間を通じて行う「有害鳥獣駆除」は別の制度です。報奨金が支払われるのは原則として**有害鳥獣捕獲許可に基づく駆除活動**に対してです。ただし、一部の自治体では猟期中の捕獲にも報奨金を出すケースがあります。
Q4: 報奨金の不正受給はバレますか?
GPS情報の照合や捕獲個体のDNA鑑定を導入する自治体も増えており、不正受給は発覚するリスクが高まっています。実際に架空の捕獲報告で逮捕される事例も報道されています。不正受給は詐欺罪に問われる可能性があり、絶対に行わないでください。
Q5: わな猟と銃猟で報奨金の金額は違いますか?
ほとんどの自治体では、捕獲方法による報奨金の差はありません。ただし、一部の自治体では銃猟による捕獲に追加の手当を出すケースもあります。イノシシ被害が深刻な地域への対策として銃猟が推奨されている場合などに見られます。
Q6: 有害鳥獣駆除を始めるにはまず何をすればいいですか?
まず狩猟免許の取得が必要です。わな猟免許であれば比較的取得しやすく、[狩猟免許の取り方を徹底解説した記事](https://kariudo.jp/hunting/hunting-license-how-to-get/)で詳しい手順を紹介しています。免許取得後、猟友会に入会し、市町村の有害鳥獣捕獲に参加する流れが一般的です。
まとめ:有害鳥獣駆除の報奨金のポイント
有害鳥獣駆除の報奨金について、重要なポイントを整理します。
- **報奨金は国の交付金+都道府県+市町村の三層構造**で成り立っており、合計で1頭あたり数千円〜2万円超になる
- **動物・自治体によって金額が大きく異なる**ため、活動地域の最新情報を確認することが重要
- **報奨金は課税対象**であり、年間20万円を超える場合は確定申告が必要
- **報奨金だけで生計を立てるのは困難**であり、ジビエ販売や自治体の委託事業など複数の収入源を組み合わせるのが現実的
- **鳥獣被害対策実施隊**に参加すると、日当や狩猟税軽減などの追加メリットがある
有害鳥獣駆除は地域の農業を守る重要な活動であると同時に、猟師にとっての収入源にもなります。まずは狩猟免許を取得し、地域の猟友会や自治体と連携するところから始めてみましょう。
イノシシ被害の実態と対策については「イノシシ被害の農業対策ガイド」の記事も参考にしてください。
参考情報
- 農林水産省「鳥獣被害防止総合対策交付金」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/yosan/yosan.html)
- 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/)
- 環境省「指定管理鳥獣捕獲等事業」(https://www.env.go.jp/nature/choju/reinforce/index2.html)
- 国税庁「雑所得の確定申告」(https://www.nta.go.jp/)
- 大日本猟友会「有害鳥獣捕獲について」(https://www.moriniikou.jp/)


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