「猟師で食べていけるのか?」——狩猟に興味を持った人が最も気になるのが、この”お金”の問題ではないでしょうか。
結論から言えば、猟師の年収は働き方によって0円〜400万円以上と極めて幅が広いのが実態です。趣味で年に数回猟に出る人から、認定鳥獣捕獲等事業者として自治体と契約するプロまで、「猟師」の中身は一様ではありません。
農林水産省の調査では、2023年度のジビエ販売金額は54億500万円と過去最高を記録。鳥獣被害防止のための国家予算も年間約99億円規模で投下され続けており、猟師という仕事の「稼ぎ方」は確実に多様化しています。
この記事では、猟師の年収の実態を働き方別・収入源別に分解し、都道府県別の報奨金比較や、副業から専業へのキャリアロードマップまで、具体的な数字で徹底解説します。
猟師の年収とは?基本をわかりやすく解説
まず「猟師の年収」と一口に言っても、その中身は一般的な会社員の給与とはまったく構造が異なります。
| 項目 | 内容 |
| 定義 | 狩猟免許を持ち、野生鳥獣の捕獲を行う者 |
| 雇用形態 | 大半が個人事業主(一部、自治体嘱託・法人所属) |
| 収入の特徴 | 複数の収入源を組み合わせる「パッチワーク型」 |
| 平均年収 | 専業で220万〜260万円(2025年時点の各種調査の中央値) |
猟師の収入構造を理解する上で最も重要なのは、「狩猟だけで稼いでいる人はごく少数」という事実です。多くの猟師は農業・林業・自営業など他の仕事と組み合わせて生計を立てています。
猟師の年収:働き方別リアルデータ
猟師の年収は、働き方によって大きく3つのパターンに分かれます。
専業猟師(年収220万〜350万円)
狩猟と関連業務(ジビエ加工・販売、害獣駆除など)を主な生業とする猟師です。日本全体で見ても数千人程度と推定されており、非常に少数派です。
| 収入内訳 | 年間目安 |
| 有害鳥獣駆除の報奨金 | 80万〜150万円 |
| ジビエの販売・加工 | 50万〜120万円 |
| 自治体との委託契約 | 50万〜100万円 |
| その他(皮革販売、講師業等) | 10万〜30万円 |
| **合計** | **190万〜400万円** |
専業猟師の中でも、解体処理施設を持ち、ジビエの加工・販売まで手がける「6次産業化型」の猟師は年収400万円以上を達成するケースもあります。
兼業猟師(年収20万〜100万円 ※狩猟収入のみ)
農業・林業・自営業などと組み合わせて活動する猟師で、最も多い働き方です。
| 収入内訳 | 年間目安 |
| 有害鳥獣駆除の報奨金 | 20万〜60万円 |
| ジビエの自家消費・おすそ分け | 金銭換算5万〜15万円 |
| 猟期中の販売 | 10万〜30万円 |
| **合計(狩猟収入)** | **30万〜100万円** |
兼業猟師の場合、狩猟収入だけでなく本業の収入と合わせて300万〜500万円程度の年収になるケースが一般的です。
副業猟師(年収0円〜30万円 ※狩猟収入のみ)
会社員をしながら週末や休日に狩猟を行うスタイルです。近年、20〜30代を中心に増加傾向にあります。
| 収入内訳 | 年間目安 |
| 有害鳥獣駆除の報奨金 | 0〜15万円 |
| ジビエの個人販売 | 0〜10万円 |
| SNS・YouTube等の情報発信 | 0〜5万円 |
| **合計(狩猟収入)** | **0〜30万円** |
副業猟師の多くは、収入よりも「趣味」「自然との触れ合い」「地域貢献」を主な動機としています。ただし、初年度は装備投資で赤字になるケースが大半です。
認定鳥獣捕獲等事業者(年収300万〜450万円)
2015年に創設された制度で、法人として都道府県知事の認定を受け、組織的に鳥獣捕獲を行うプロ集団です。一般的な猟師とは異なり、安定した雇用形態で活動できます。
| 項目 | 内容 |
| 雇用形態 | 法人所属(正社員・契約社員) |
| 年収目安 | 300万〜450万円(2025年時点の求人情報より) |
| 福利厚生 | 社会保険・有給休暇あり(法人による) |
| 必要資格 | 狩猟免許+安全管理講習の修了 |
認定事業者は全国で約200法人(2025年時点)が認定を受けており、自治体からの委託事業として安定した収入を得ています。「猟師として安定的に稼ぎたい」という方には最も現実的な選択肢の一つです。
猟師の6つの収入源を徹底解説
猟師の収入を構成する6つの柱を、それぞれ詳しく解説します。
収入源1: 有害鳥獣駆除の報奨金
最も安定した収入源であり、多くの猟師にとって収入の柱となっています。
国の「鳥獣被害防止総合対策交付金」として、イノシシ・シカ・サルは1頭あたり8,000円が交付されます(2025年度時点)。これに加えて、各自治体が独自に上乗せ報奨金を設定しています。
主な自治体の報奨金一覧(2025年度時点):
| 自治体 | イノシシ | シカ | 備考 |
| 国(交付金) | 8,000円 | 8,000円 | 全国共通 |
| 北海道(エゾシカ) | — | 5,000〜15,000円 | 自治体により異なる |
| 岡山県 | 7,000〜15,000円 | 23,000円 | 西粟倉村は高額 |
| 高知県仁淀川町 | 15,000円 | 27,000円 | 全国トップクラス |
| 広島県東広島市 | 7,000円 | 8,000円 | 国の交付金と同額程度 |
| 長崎県 | 10,000〜20,000円 | 10,000〜15,000円 | 離島は割増あり |
年収シミュレーション:
- 月10頭のイノシシを捕獲(国8,000円+自治体15,000円 = 23,000円/頭)
- 年間120頭 × 23,000円 = **年間276万円**
ただし、月10頭を安定的に捕獲するには相応の経験・設備・猟場が必要です。初心者が1年目から達成するのは現実的ではありません。
収入源2: ジビエの販売
2023年度のジビエ販売金額は全国で54億500万円に達し、7年間で1.8倍に成長しています(農林水産省「令和5年度野生鳥獣資源利用実態調査」)。
| 販売形態 | 単価目安 | 年間収入目安 |
| イノシシ1頭(丸ごと卸) | 10万〜50万円 | 個体の大きさによる |
| シカ肉(kg単価) | 2,171円/kg | — |
| イノシシ肉(kg単価) | 3,214円/kg | — |
| ジビエ加工品(ソーセージ等) | 付加価値で1.5〜3倍 | — |
注意: 個人がジビエを販売するには、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可が必要です。自分で解体した肉を無許可で販売することは違法です。詳細は各都道府県の食品衛生課に確認してください。
収入源3: 自治体との委託契約
市町村が実施する有害鳥獣捕獲事業に「捕獲従事者」として参加する形態です。報奨金とは別に、日当や出動手当が支給されるケースがあります。
- 出動手当: 1回3,000〜8,000円
- 見回り日当: 1日5,000〜10,000円
- 年間契約: 50万〜150万円(地域・業務量による)
収入源4: 皮革・角・牙の販売
鹿の角、イノシシの牙、毛皮などは装飾品やクラフト素材として需要があります。
- 鹿の角: 1本500〜5,000円(状態・サイズによる)
- イノシシの牙: 1対1,000〜3,000円
- 毛皮: 1枚3,000〜10,000円(なめし加工済み)
単体では大きな収入にはなりませんが、捕獲のたびに少額が積み重なるため、年間で数万円の副収入になります。
収入源5: 情報発信・講師業
近年、YouTube・SNS・ブログで狩猟の情報を発信して収入を得る猟師が増えています。
- YouTubeの狩猟チャンネル: 登録者1万人で月3万〜10万円
- 狩猟体験ツアーの講師: 1回1万〜5万円
- 執筆・メディア出演: 1件5,000〜50,000円
収入源6: 農業・林業との複合経営
猟師の多くが農業・林業と組み合わせて生計を立てています。特に中山間地域では、「自分の畑を守るために猟をする」というのが原点であり、農業収入+報奨金+ジビエ販売で年収300万〜500万円を実現する「半農半猟」スタイルが広がっています。
猟師にかかる経費:年収から差し引かれるコスト
猟師の年収を語る上で、無視できないのが経費です。特に初年度は多額の初期投資が必要になります。
| 費目 | 初年度 | 2年目以降(年間) |
| 狩猟免許取得費 | 5,200〜20,000円 | 0円(3年ごとに更新) |
| 猟銃所持許可 | 30,000〜50,000円 | 0円(3年ごとに更新) |
| 銃の購入(中古散弾銃) | 50,000〜200,000円 | 0円 |
| わな・装備品 | 30,000〜100,000円 | 10,000〜30,000円 |
| 狩猟者登録 | 16,500〜18,900円 | 16,500〜18,900円 |
| 猟友会費 | 10,000〜20,000円 | 10,000〜20,000円 |
| ハンター保険 | 5,000〜15,000円 | 5,000〜15,000円 |
| 弾薬・消耗品 | 10,000〜50,000円 | 10,000〜50,000円 |
| 車両維持費(山間部移動) | — | 100,000〜300,000円 |
| **合計** | **約16万〜47万円** | **約15万〜43万円** |
つまり、副業猟師の場合、1〜2年目は収支がマイナスになることも珍しくないのが現実です。費用の詳細については狩猟免許の費用を合計で徹底解説した記事で詳しくまとめています。
キャリアステージ別:猟師の収入ロードマップ
猟師として収入を伸ばしていくための現実的なロードマップを、キャリアステージ別に示します。これは競合サイトではあまり触れられていない、猟人編集部独自の整理です。
| ステージ | 期間 | 主な活動 | 年間収支(狩猟関連) |
| **準備期** | 0〜1年目 | 免許取得・装備購入・先輩猟師に同行 | -15万〜-30万円 |
| **見習い期** | 1〜3年目 | 有害鳥獣駆除に参加、わな猟を中心に経験を積む | 0〜+20万円 |
| **独立期** | 3〜5年目 | 自分の猟場確保、報奨金+ジビエ販売を本格化 | +30万〜100万円 |
| **確立期** | 5年目〜 | 認定事業者加入 or 解体施設運営、複数収入源を確立 | +150万〜400万円 |
ポイント: 収入が本格化するのは3年目以降です。それまでは「投資期間」と割り切り、技術と人脈を蓄えることが重要です。地域の猟友会や先輩猟師とのつながりが、猟場の確保や自治体の委託事業への参加に直結します。
猟師の年収に関するよくある質問
Q1: 猟師だけで生活できますか?
専業猟師として年収220万〜350万円程度を得ている人はいますが、生計を安定させるには複数の収入源を組み合わせる必要があります。有害鳥獣駆除の報奨金、ジビエ販売、自治体との委託契約が三本柱です。住居費の安い地方で半農半猟のライフスタイルを選ぶ猟師が多いのが実情です。
Q2: 猟師の年収は地域によってどれくらい違いますか?
大きく異なります。シカやイノシシの被害が深刻な地域ほど報奨金が高く設定される傾向があり、高知県仁淀川町のシカ27,000円/頭に対し、一部の都市部では8,000円/頭(国の交付金のみ)というケースもあります。また、ジビエの需要が高い観光地に近い地域は販売収入を得やすくなります(2025年度時点)。
Q3: 女性でも猟師として収入を得られますか?
もちろん可能です。近年、わな猟を中心に女性猟師は増加傾向にあります。環境省の統計では、狩猟免許の新規取得者に占める女性の割合は増加しており、わな猟は銃猟と比べて身体的負担が少ないため、女性にも取り組みやすい狩猟形態です。ジビエの加工・販売やSNSでの情報発信と組み合わせて活動する女性猟師も注目を集めています。
Q4: 副業で猟師を始めた場合、初年度の収支はどうなりますか?
多くの場合、初年度は赤字です。狩猟免許の取得費用(5,200円)に加え、猟銃の購入・わなの設置・装備品などで15万〜47万円の初期投資が必要です。報奨金やジビエの売上を考慮しても、1年目の収支はマイナス10万〜20万円程度になるのが一般的です。2年目以降は経費が減るため、黒字化しやすくなります。
Q5: 報奨金をもらうために必要な手続きは?
有害鳥獣駆除の報奨金を受け取るには、各市町村に「有害鳥獣捕獲許可」を申請し、許可を得た上で捕獲を行う必要があります。捕獲後は証拠写真の撮影、個体の計測、尻尾や耳の切断(確認用)などの手続きを経て、自治体に報告・申請します。猟友会経由で手続きが簡略化されることも多いため、地域の猟友会への加入をおすすめします。
Q6: 猟師として稼ぐために最も重要なスキルは何ですか?
狩猟の技術はもちろんですが、「地域との関係構築」が最も重要です。猟場の情報、自治体の委託事業の紹介、ジビエの販路開拓——すべてが人脈を通じてつながっています。まずは地域の猟友会に入り、先輩猟師との関係を築くことが、収入アップへの最短ルートです。
まとめ:猟師の年収のリアルと収入を伸ばすポイント
- **猟師の年収は働き方次第**: 副業で0〜30万円、兼業で20〜100万円、専業で220〜350万円、認定事業者で300〜450万円
- **収入の柱は報奨金・ジビエ販売・自治体委託の3つ**: 組み合わせ方で大きく変わる
- **初期投資は15万〜47万円**: 1〜2年目は赤字覚悟。3年目以降の黒字化を目指す
- **地域選びが年収を左右する**: 報奨金の高い自治体・ジビエ需要の多い地域が有利
- **6次産業化(解体・加工・販売の一貫体制)が高収入の鍵**: 肉を売るだけでなく、付加価値をつける
- **ジビエ市場は拡大中**: 2023年度の販売金額は54億円超で7年間で1.8倍に成長
猟師に興味が湧いた方は、まず狩猟免許の取り方ガイドで免許取得の全体像を把握してみてください。「思い切って始めてみたい」という方は、狩猟免許の費用を合計でまとめた記事で、具体的にどれくらいの予算が必要かを確認しましょう。
参考情報
- 農林水産省「令和5年度野生鳥獣資源利用実態調査」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/jibie/gaiyou/index.html)
- 環境省「認定鳥獣捕獲等事業者制度」(https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/capture5.html)
- 大日本猟友会「狩猟者数の推移」(http://j-hunters.com/info/suii.php)
- 環境省「捕獲数及び被害等の状況」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/)

コメント