ジビエを個人で販売するには?必要な許可と手続きを完全ガイド

ジビエを個人で販売するには?必要な許可と手続きを完全ガイド 猟師の暮らし

農林水産省の調査によると、国内のジビエ利用量は2023年度で約2,729トンと過去最大を記録し、販売金額は54億円に達しています(農林水産省調査)。「自分で獲った鹿やイノシシを売って収入にしたい」と考える猟師が増えている一方で、「どんな許可が必要なのかわからない」「個人でも本当に販売できるの?」という声は少なくありません。

実は、ジビエの販売は個人でも可能ですが、食品衛生法に基づく営業許可の取得が必須条件です。無許可での販売は「違法ジビエ」として罰則の対象にもなります。この記事では、個人でジビエを合法的に販売するために必要な許可の種類、取得の手順、設備基準、そして販路の開拓方法までをステップごとに解説します。

ジビエ販売の全体像:始める前に知っておくこと

個人でジビエを販売するには、捕獲から販売までの各段階で異なるルールがあります。まずは全体像を把握しましょう。

項目 目安
必要な許可 食肉処理業の営業許可(+販売形態に応じた追加許可)
許可取得の費用 15,000〜21,000円(自治体により異なる)
設備投資の目安 簡易処理施設で300〜500万円、本格施設で1,000万円以上
取得までの期間 申請から許可まで約2〜4週間(事前相談含めると1〜3ヶ月)
難易度 ★★☆(設備基準のクリアがハードル)
必要な資格 食品衛生責任者(講習で取得可能)

自家消費と販売の違い

ここで重要な区別があります。

  • **自家消費目的**:自分や家族で食べる分には、営業許可施設での処理は法的に求められていません
  • **販売・譲渡目的**:市場に流通させる場合は、食品衛生法の規制が適用され、食肉処理業の営業許可を得た施設での処理が必要です

「知り合いにあげるだけだから」と思っても、対価を受け取った時点で「販売」にあたります。SNSやフリマアプリでの販売は、許可なしでは違法となる可能性があるため注意が必要です。

ジビエ販売に必要な許可の種類【ステップ解説】

ジビエの販売形態によって、必要な許可が異なります。以下のステップで確認していきましょう。

Step 1: 食肉処理業の営業許可を取得する

ジビエ販売の最も基本となる許可です。捕獲した野生鳥獣をと殺・解体・処理するために必要です。

申請先:施設所在地を管轄する保健所

必要書類

  • 営業許可申請書
  • 施設の構造および設備を示す図面(配置図)
  • 食品衛生責任者の資格証明書(調理師免許、栄養士免許、または食品衛生責任者養成講習修了証)
  • 水質検査成績書(井戸水を使用する場合)
  • 登記事項証明書(法人の場合)

申請手数料:15,000〜21,000円(2025年度時点、自治体により異なる)

Step 2: 販売形態に応じた追加許可を取得する

処理した肉をどのような形で販売するかによって、追加の許可が必要です。

販売形態 必要な許可 申請手数料の目安
枝肉・部分肉として卸売り 食肉処理業のみでOK
小売り(精肉店・直売所) 食肉販売業 9,000〜15,000円
加工品(ソーセージ・ジャーキー等) 食肉製品製造業 16,000〜21,000円
ネット通販 食肉販売業+通信販売の届出 同上
飲食店で提供 飲食店営業許可 16,000〜19,000円

Step 3: 食品衛生責任者の資格を取得する

すべての食品営業施設には「食品衛生責任者」の設置が義務づけられています。

  • **取得方法**:各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習を受講(1日、約6時間)
  • **受講費用**:約10,000〜12,000円(2025年度時点)
  • **受講資格**:特になし(誰でも受講可能)
  • **免除者**:調理師、栄養士、薬剤師などの有資格者

Step 4: 施設の設備基準を確認する

食肉処理業の許可を得るには、施設が一定の設備基準を満たす必要があります。これが個人にとって最大のハードルです。

設備 基準
と殺放血室 専用の部屋として区画されていること
剥皮(はくひ)作業場 他の作業場所と区画されていること
内臓摘出場所 専用の場所を確保すること
枝肉懸吊(けんちょう)室 隔壁で区画され、出入口の扉が密閉できる構造
洗浄消毒設備 60℃以上の温湯、83℃以上の熱湯を供給できること
冷蔵・冷凍設備 温度計付きの冷蔵庫(10℃以下)・冷凍庫(-15℃以下)
手洗い設備 流水式で、手指の消毒ができること

Step 5: 保健所への事前相談と施設検査

事前相談が非常に重要です。いきなり施設を建設するのではなく、以下の流れで進めましょう。

1. 管轄保健所に事前相談(図面を持参)

2. 保健所からの指導・助言を受ける

3. 指導内容を反映して施設を整備

4. 営業許可申請書を提出

5. 保健所の施設検査を受ける

6. 基準適合確認後、営業許可証の交付

現場では、事前相談なしに施設を建設してしまい、検査で不適合となって改修費用がかさむ失敗例が少なくありません。必ず建設前に保健所と相談することをおすすめします。

失敗しないためのコツ・注意点

個人でジビエ販売を始める際によくある失敗パターンとその対策をまとめました。

よくある失敗 原因 対策
施設検査で不合格 保健所への事前相談を省略 図面段階で保健所に相談する
設備投資が予算オーバー 最初から大規模施設を計画 小規模から始めて段階的に拡大
販路が見つからない 処理施設を作ってから販路を探す 施設整備と並行して販路開拓
衛生管理で行政指導 HACCPの理解不足 講習会に参加し、衛生管理計画を作成
在庫ロス 捕獲量と販売量のバランスが合わない 受注生産に近い形から始める

費用・コストの目安

ジビエ販売を始めるための初期費用と運営費の目安です。

項目 費用相場 備考
食肉処理施設(簡易型) 300〜500万円 コンテナ改造型が比較的安価
食肉処理施設(本格型) 1,000〜3,000万円 処理能力が高い
営業許可申請手数料 15,000〜21,000円 食肉処理業の場合
食品衛生責任者講習 約10,000円 1日で取得可能
冷蔵・冷凍設備 50〜200万円 業務用を推奨
HACCP関連費用 0〜30万円 コンサル利用時は費用発生
年間の衛生検査費用 5〜10万円 水質検査、食肉検査など

補助金・助成金の活用

設備投資の負担を軽減するために、以下の補助金を活用できる可能性があります。

補助金名 対象 補助率
鳥獣被害防止総合対策交付金 ジビエ利活用施設の整備 最大1/2
地方創生関連交付金 過疎地域の産業振興 自治体により異なる
小規模事業者持続化補助金 販路開拓費用 最大2/3(上限50万円)
六次産業化支援 農林漁業者の加工・販売 最大1/2

特に鳥獣被害防止総合対策交付金は、ジビエ処理施設の整備費用に充てることができるため、市町村や地域の協議会に相談してみましょう。

個人猟師の販路開拓ロードマップ

許可を取得した後、最も重要なのが「どこに売るか」です。個人猟師がジビエを販路に乗せるための現実的なロードマップを紹介します。

フェーズ1:地域内での販売(開業〜半年)

販路 特徴 メリット
地元の飲食店 直接営業しやすい 安定した取引先になりやすい
道の駅・直売所 地域の特産品として販売 初期費用が低い
ふるさと納税の返礼品 自治体と連携 まとまった注文が入る

フェーズ2:販路拡大(半年〜1年)

販路 特徴 メリット
ネット通販(自社サイト・ECモール) 全国に販売可能 商圏の制限がない
ジビエ専門の卸業者 安定した出荷先 営業の手間が少ない
加工品の開発 ジャーキー・ソーセージなど 付加価値向上、保存性UP

フェーズ3:ブランド化(1年〜)

取り組み 具体例
国産ジビエ認証の取得 消費者の安心感向上、販路拡大
自社ブランドの確立 パッケージデザイン、ストーリー発信
体験型イベント 解体体験、ジビエBBQイベント

国産ジビエ認証制度は、農林水産省が2018年に制定した認証制度で、衛生管理基準やトレーサビリティの確保に取り組む食肉処理施設を認証するものです。認証を取得すると「国産ジビエ認証マーク」を使用でき、飲食店や消費者からの信頼度が大幅に向上します。

実際にやってみると…(現場のリアルな声)

実際にジビエ販売を始めた個人猟師からは、こんな声が聞かれます。

最大のハードルは設備投資だった。コンテナを改造して簡易処理施設を作ったが、それでも400万円かかった。ただ、鳥獣被害防止の交付金で半額補助が出たので、自己負担は200万円程度に抑えられた」

思ったより販路開拓が大変。施設を作れば売れると思っていたが、飲食店を1軒1軒回って営業する必要があった。最初の半年は月に10頭分しか売れなかったが、口コミで広がって今は月30頭ペースで安定している」

HACCPの導入は意外とシンプル。最初は難しそうに感じたが、保健所の講習会に参加したら、やるべきことは温度管理の記録と手洗いの徹底など基本的なことだった」

こうした現場の声からわかるのは、許可取得と設備投資は通過点であり、本当の勝負は販路開拓とリピーター獲得だということです。

HACCPに沿った衛生管理の義務化について

2021年6月1日から、野生鳥獣肉を処理する食肉処理施設にもHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務づけられました。

項目 内容
対象 すべての食品営業施設(小規模事業者を含む)
取り組み内容 衛生管理計画の作成、実施記録の保管
小規模事業者の扱い 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でOK(簡略版)
参考資料 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」

個人の小規模施設であれば、完全なHACCPプランではなく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で対応可能です。厚生労働省が業種別の手引書を公開しているので、それに沿って進めれば問題ありません。

よくある質問

Q1: 猟師が山で解体した肉をそのまま販売できますか?

できません。食用として販売する場合は、食肉処理業の営業許可を受けた施設で解体・処理する必要があります。山での解体は自家消費目的に限られ、販売目的で無許可施設で処理した肉を流通させることは食品衛生法違反です。

Q2: フリマアプリやSNSでジビエを販売できますか?

食肉処理業と食肉販売業の許可を取得し、適切な衛生管理のもとで処理された肉であれば、ネット販売は可能です。ただし、プラットフォームによっては生肉の出品を禁止している場合があるため、各サービスの利用規約を確認してください。

Q3: 食肉処理施設を自分で建設する必要がありますか?

必ずしも自前の施設を持つ必要はありません。近隣に許可を受けた食肉処理施設があれば、そこに持ち込んで処理を委託することも可能です。まずは地域のジビエ処理施設の有無を確認し、委託処理から始めるのも現実的な選択肢です。

Q4: ジビエ販売で年間どれくらいの収入が見込めますか?

販売する肉の種類、部位、販路によって大きく異なります。鹿肉のロースやモモ肉は1kgあたり3,000〜6,000円、イノシシ肉は1kgあたり2,500〜5,000円が相場です(2025年時点)。シカ1頭から取れる精肉は約15〜25kgのため、1頭あたり45,000〜150,000円の売上が目安となります。ただし、ここから処理費用や経費を差し引く必要があります。猟師の収入全体については「[猟師の年収をリアルに公開](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e5%b8%ab%e3%81%ae%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97/hunter-real-income/)」をご覧ください。

Q5: 国産ジビエ認証を個人で取得できますか?

取得可能です。国産ジビエ認証は、食肉処理業の営業許可を持つ施設が対象です。個人経営の施設でも、衛生管理基準やカットチャートによる流通規格、適切なラベル表示によるトレーサビリティの確保などの要件を満たせば認証を受けられます。認証取得により販路拡大が見込めるため、中長期的には検討する価値があります。

まとめ:ジビエ販売許可取得のポイント

個人でジビエを販売するための重要ポイントをまとめます。

  • **食肉処理業の営業許可が必須**。無許可販売は食品衛生法違反
  • **食品衛生責任者の資格**は講習1日で取得可能(約10,000円)
  • **設備基準のクリアが最大のハードル**。事前に保健所へ相談を
  • **初期投資は300〜500万円が目安**だが、補助金で半額程度に抑えられる可能性あり
  • **販路開拓は施設整備と並行して進める**のが成功のカギ
  • **HACCPに沿った衛生管理**は小規模事業者でも義務。ただし簡略版でOK

まずは管轄の保健所に事前相談し、必要な設備と費用を具体的に把握するところから始めましょう。ジビエの下処理や臭みの取り方については「ジビエの臭み取り方法を徹底解説」の記事も参考にしてください。

参考情報

  • 農林水産省「産地でシカ・イノシシなどを捕獲し、ジビエとして流通させたり、加工品としての販売をお考えの方へ」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/hanbai.html)
  • 農林水産省「国産ジビエ認証制度」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/ninsyou.html)
  • 厚生労働省「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032628.html)
  • 厚生労働省「営業許可業種の解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000706467.pdf)
  • 農林水産省「ジビエ利用量に関する調査結果」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/)

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