最終更新: 2026-05-06
狩猟者登録の際に必要となる「損害賠償能力の証明」。環境省の統計によると、狩猟中の事故は毎年数十件報告されており、万が一の際には数千万円の損害賠償が生じるケースも存在します。「猟友会に入らないと保険に入れないの?」「わな猟だけなら安く済む保険はある?」といった疑問を抱えている方は少なくありません。この記事では、現在加入できる主要な狩猟保険4種類を費用・補償内容・加入条件で徹底比較し、猟歴やスタイル別の最適な選び方をお伝えします。まず保険の基本的な仕組みを確認したうえで、各保険の比較表を示し、最後にタイプ別のおすすめを紹介します。
狩猟保険の選び方:失敗しない3つの基準
狩猟保険を選ぶ際に押さえるべきポイントは、「補償範囲」「費用」「加入のしやすさ」の3つです。特に初めて狩猟免許を取得した方は、保険の種類が複数あることを知らないまま猟友会経由で加入するケースが多く、自分に合った保険を比較検討する機会を逃しがちです。
| 選ぶ基準 | チェックポイント |
|---|---|
| 補償範囲 | 他損事故(対人・対物)の補償限度額はいくらか。自損事故(自身のケガ)もカバーされるか。わな猟での事故も対象か |
| 費用(年間保険料) | 保険料だけでなく、団体の年会費も含めた「実質コスト」で比較する。猟友会は会費+共済掛金で年間2万〜3万円になる場合が多い |
| 加入のしやすさ | 猟友会員限定なのか、個人でも加入できるのか。オンライン手続きに対応しているか。新規加入を受け付けているか |
ここで注目すべきは、狩猟者登録に必要な「損害賠償能力の証明」は、猟友会の共済だけでなく、民間のハンター保険や一定額以上の資産証明でも認められるという点です。選択肢を知ったうえで比較することが、適切な保険選びの第一歩になります。
狩猟保険おすすめ4選 徹底比較表
日本国内で狩猟者が加入できる主要な保険・共済は、大きく分けて4種類あります。以下の比較表で全体像を把握しましょう。
| 項目 | 猟友会 狩猟事故共済 | 鳥獣被害対策総合補償制度(ハンター保険) | 猟協 ハンター保険 | カリラボ ハンターズクラブ |
|---|---|---|---|---|
| 運営元 | 一般社団法人 大日本猟友会 | 損保ジャパン(東京海上日動等) | 一般社団法人 猟協 | 株式会社カリラボ |
| 加入条件 | 猟友会員のみ | 猟友会・狩猟者団体経由 | 猟協会員(2026年時点:既存会員のみ) | ハンターズクラブ入会 |
| 他損事故補償 | 4,000万円(限度額) | 1億円(プランにより異なる) | 要確認(プランにより異なる) | 入会で自動付帯 |
| 自損事故補償 | 死亡300万円、入通院3,000円/日 | 死亡・後遺障害500万〜1,000万円、手術保険金あり | プランにより異なる | 基本プランに含む |
| わな猟の補償 | 対象外(別途わな保険が必要) | わな保険として別プランあり | わな保険あり | 要確認 |
| 年間保険料目安 | 1,500円(第一種銃猟)/ 750円(その他) | 3,000〜8,000円(プランにより変動) | 団体により異なる | 年会費に含む |
| 年会費等の実質負担 | 地区猟友会費+県猟友会費+大日本猟友会費で合計2万〜3万円程度(地域差あり) | 団体経由のため団体会費が別途必要 | 猟協年会費が別途必要 | ハンターズクラブ年会費 |
| 手術保険金 | なし | あり(一般的なハンター保険では対象外だが本制度は対応) | プランにより異なる | 要確認 |
| オンライン手続き | 地区猟友会経由で対面が基本 | 団体経由 | オンライン対応 | オンライン対応 |
2026年5月時点の情報です。各団体の最新の保険料・補償内容は公式サイトで確認してください。
【1位】猟友会 狩猟事故共済保険:実績と安心の定番
狩猟保険の中でもっとも多くのハンターが加入しているのが、大日本猟友会の「狩猟事故共済保険」です。1975年(昭和50年)に制度が創設され、現在は環境大臣の認可を受けた「認可保険業」として運営されています。
保険料は第一種銃猟の構成員で年間1,500円、わな猟・網猟の構成員で750円と非常に低額です。ただし、猟友会に加入するためには地区猟友会費・県猟友会費・大日本猟友会費を合わせて年間2万〜3万円程度が必要になります(地域によって差があります)。
補償内容としては、他損事故保険金の限度額が4,000万円、自損事故保険金が死亡時300万円、入通院7日以上の傷害で1日3,000円が支給されます。さらに狩猟行為に起因する疾病死亡で100万円、持病等に起因する場合は20万円が補償されます。
注意点として、猟友会の狩猟事故共済ではわなに起因する事故は補償対象外です。わな猟免許の取得を検討している方は、別途「わな保険」への加入が必要になります。
また、猟友会に入会するメリットは保険だけにとどまりません。狩猟者登録の代行手続き、オレンジベスト・オレンジキャップの配布、射撃大会や講習会への参加資格、地域の猟仲間とのネットワーク構築など、特に初心者にとって心強いサポートが受けられます。
こんな人におすすめ:銃猟をメインに行う方、地域の猟仲間とのつながりを重視する方、狩猟者登録の手続きを委任したい初心者の方。
【2位】鳥獣被害対策総合補償制度(ハンター保険):高額補償で安心
損保ジャパンや東京海上日動などの大手損害保険会社が引き受ける「鳥獣被害対策総合補償制度」は、猟友会や各種狩猟者団体を通じて加入できる保険です。一般的に「ハンター保険」と呼ばれるのはこの保険を指すことが多いです。
最大の特徴は、対人賠償の補償限度額が1億円と、猟友会共済の4,000万円を大きく上回る点です。狩猟事故は万が一人身事故を起こした場合に高額な損害賠償が生じるリスクがあるため、この補償額の差は見逃せません。
もうひとつの大きなメリットは、手術保険金が支給される点です。一般的なハンター保険では対象外となることが多い手術費用がカバーされるため、山中での負傷など想定外の事態にも手厚く備えられます。
保険料はプランによって年間3,000〜8,000円程度と幅がありますが、補償の手厚さを考慮すると費用対効果は高いと言えます。
こんな人におすすめ:補償額を重視する方、銃猟で山間部に入ることが多い方、万全のリスク対策を求める経験者の方。
【3位】猟協 ハンター保険/わな保険:猟友会に入らない選択肢
「一般社団法人 猟協」が提供するハンター保険は、猟友会に加入しなくても保険に入れる選択肢として注目されています。銃猟向けのハンター保険とわな猟向けのわな保険をそれぞれ用意しており、自分の猟スタイルに合わせて選べます。
オンラインでの申し込みに対応しており、手続きの簡便さも魅力のひとつです。ただし、2026年5月時点では新規加入が既存会員に限定されているという情報もあるため、加入を検討する場合は事前に公式サイトで最新の受付状況を確認することをおすすめします。
こんな人におすすめ:猟友会に入会せずに保険に加入したい方、わな猟専門で必要最低限の保険に絞りたい方。
【4位】カリラボ ハンターズクラブ:個人ハンター向けの新しい選択肢
株式会社カリラボが運営する「ハンターズクラブ」は、個人で狩猟を行うハンター向けのサポートサービスです。入会するとハンター保険が自動的に付帯されるため、保険単体で探すのではなく、サポートサービスの一環として保険が得られる仕組みです。
狩猟に関する情報提供や相談サポートなど、保険以外の付加価値が含まれている点が特徴です。猟友会のような地域密着型の組織とは異なり、全国どこからでも加入できる利便性があります。
こんな人におすすめ:個人で狩猟を始める方、地域の猟友会に馴染みがない新規参入者の方、オンライン完結で手続きを済ませたい方。
タイプ別おすすめ早見表
どの保険が自分に合っているかは、猟のスタイルや経験年数によって変わります。以下の早見表を参考にしてください。
| あなたのタイプ | おすすめ保険 | 理由 |
|---|---|---|
| 銃猟初心者・これから始める方 | 猟友会 狩猟事故共済 | 狩猟者登録の代行、先輩猟師からの指導、地域のネットワーク構築が可能。保険料も最安 |
| 銃猟経験者・高額補償を重視 | 鳥獣被害対策総合補償制度 | 対人1億円の補償で安心。手術保険金もカバーされる |
| わな猟専門の方 | 猟協 わな保険 または 施設賠償責任保険 | 銃猟向けの保険ではわな事故が対象外のケースがある。わな専用保険で漏れなくカバー |
| 猟友会に入りたくない方 | カリラボ ハンターズクラブ | 猟友会を経由せずに保険加入が可能。オンライン手続き対応 |
| コスパ重視の方 | 猟友会 狩猟事故共済 | 保険料は年間1,500円(第一種銃猟)。ただし猟友会費が別途必要な点に注意 |
保険未加入のリスク:事故が起きたらどうなる?
「保険料を節約したい」と考える方もいるかもしれませんが、狩猟保険に未加入のまま事故を起こした場合のリスクは計り知れません。
狩猟者登録の際には、3,000万円以上の損害賠償能力を証明する必要があります。保険や共済の証明書がない場合は、固定資産税の納税証明書や銀行の残高証明書(3,000万円以上)で代替することも制度上は可能ですが、これはあくまで「登録できる」だけの話です。
実際に事故が発生した場合、3,000万円では到底足りないケースが想定されます。過去の狩猟事故では、誤射による人身事故が発生しており、死亡事故の場合は損害賠償額が数千万円から1億円を超える可能性もあります。
環境省の資料によると、狩猟中の事故は銃器の暴発・誤射だけでなく、転倒・滑落、野生動物との接触など多岐にわたります。山間部での事故は救助にも時間がかかるため、入院や手術が長期化するリスクもあります。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設への搬入重量は年間7,072トンに達しています(e-Stat 統計表ID: 0002119971)。これは狩猟活動がそれだけ活発に行われていることを示しており、活動量が増えるほど事故リスクも高まります。年間わずか数千円の保険料で数千万円のリスクに備えられることを考えれば、保険への加入は「必須の投資」と言えるでしょう。
狩猟保険加入の手続き:ステップ解説
保険を選んだら、次は加入手続きです。ここでは最も一般的な猟友会経由の手続きを中心に解説します。
Step 1:猟友会経由の場合
1. 居住地の地区猟友会に連絡し、入会を申し込む
2. 入会金・年会費を支払う
3. 狩猟事故共済保険の掛金(第一種銃猟1,500円、その他750円)を支払う
4. 猟友会が狩猟者登録の手続きを代行してくれる
Step 2:個人で保険加入する場合
1. 加入したい団体(猟協、カリラボ等)の公式サイトにアクセス
2. 会員登録と保険の申し込みを行う
3. 保険証券(被保険者証明書)を受け取る
4. 狩猟者登録は自分で各都道府県の担当窓口に申請する
個人で狩猟者登録を行う場合は、手数料1,800円に加えて狩猟税が必要です。狩猟税は第一種銃猟で16,500円(非課税者は11,000円)、第二種銃猟で5,500円、わな猟・網猟で8,200円(非課税者は5,500円)です。登録する都道府県ごとに必要なため、複数県で登録する場合はその分費用がかかります。
| 項目 | 猟友会経由 | 個人手続き |
|---|---|---|
| 手続きの手間 | 猟友会が代行 | すべて自分で行う |
| 費用 | 猟友会費+共済掛金+狩猟税 | 団体会費+保険料+狩猟税+登録手数料 |
| トータルコスト目安 | 年間3万〜4万円 | 年間2万〜3万円 |
| メリット | 手間が少ない、猟仲間ができる | コストを抑えられる |
| デメリット | コストが高い | すべて自己責任、情報収集が必要 |
実際の加入者の声から見えること
現場の猟師に話を聞くと、保険選びについてはさまざまな意見があります。
「最初は猟友会に入って、先輩に教わりながら狩猟を始めた。保険のことは猟友会が全部やってくれたので正直よくわかっていなかった」という声は、初心者の方から多く聞かれます。猟友会経由の加入は手続き面での安心感がある一方で、自分がどのような補償を受けられるのかを把握していないハンターも少なくありません。
一方、「2年目からは猟友会の会費が高いと感じて、個人でハンター保険に切り替えた」という経験者もいます。年間2万〜3万円の猟友会費は、特に副業として狩猟を行う方にとっては負担に感じる金額です。
また、わな猟専門の方からは「銃猟向けの保険ではわなの事故がカバーされないと知らなかった。危うく無保険状態で猟をするところだった」という声も。保険の種類によって補償範囲が異なるため、自分の猟スタイルに合った保険を選ぶことの重要性がわかります。
よくある質問
Q1:猟友会に入らなくても狩猟保険に加入できますか?
はい、加入できます。猟協やカリラボのハンターズクラブなど、猟友会以外の団体でもハンター保険を提供しています。また、わな猟の場合は施設賠償責任保険として個人で加入できる保険もあります。ただし、団体によっては新規加入の受付を制限している場合があるため、事前に確認してください。
Q2:わな猟だけの場合、どの保険に入ればいいですか?
わな猟専門の方は「わな保険」を選んでください。猟友会の狩猟事故共済保険や一般的なハンター保険では、わなに起因する事故が補償対象外となるケースがあります。猟協のわな保険や、施設賠償責任保険がわな猟に対応しています。
Q3:狩猟保険の補償額はいくらあれば安心ですか?
最低でも3,000万円以上の対人賠償が必要です(狩猟者登録の要件)。ただし、死亡事故の場合は損害賠償額が1億円を超えることもあるため、可能であれば1億円の補償がある保険を選ぶと安心です。鳥獣被害対策総合補償制度であれば対人1億円の補償が受けられます。
Q4:狩猟保険の保険期間はいつからいつまでですか?
多くの狩猟保険は猟期(11月15日〜翌年2月15日、北海道は10月1日〜翌年1月31日)に合わせた保険期間となっています。ただし、有害鳥獣駆除に従事する場合は猟期外の活動もカバーする保険を選ぶ必要があります。年間を通じて補償が適用されるプランもあるため、自分の活動スケジュールに合わせて選びましょう。
Q5:複数の都道府県で狩猟する場合、保険はどうなりますか?
保険自体は全国で有効ですが、狩猟者登録は都道府県ごとに必要です。登録するたびに狩猟税と手数料がかかるため、複数県で活動する場合は費用が増える点に注意してください。保険証券のコピーを各都道府県の登録時に提出する形になります。
Q6:有害鳥獣駆除に従事する場合、別途保険は必要ですか?
有害鳥獣駆除は猟期外に行われることが多く、通常の猟期限定の保険ではカバーされない可能性があります。自治体から委託を受けて駆除に従事する場合は、自治体が用意する保険に加入するか、年間を通じて補償される保険プランを選ぶことが重要です。関西広域連合の資料でも、有害捕獲従事者の適切な保険加入が課題として指摘されています。
Q7:保険に加入せず、資産証明で狩猟者登録はできますか?
制度上は3,000万円以上の資産(固定資産税の納税証明書や銀行残高証明書)を提示すれば登録は可能です。しかし、実際に事故が起きた場合のリスクを考えると、保険への加入が強くおすすめされます。年間数千円の保険料で数千万円の補償が得られるため、費用対効果の面でも保険加入が合理的な選択です。
まとめ:狩猟保険で迷ったらこう選ぶ
狩猟保険選びのポイントをまとめます。
- 銃猟の初心者で、地域のつながりも大切にしたいなら「猟友会の狩猟事故共済保険」が定番。保険料は年間1,500円と最安だが、猟友会費を含めると年間3万円前後になる
- 補償額を重視するなら「鳥獣被害対策総合補償制度」。対人1億円の補償と手術保険金で手厚くカバーされる
- 猟友会に入らずに保険だけ加入したいなら「猟協」や「カリラボ ハンターズクラブ」を検討
- わな猟専門の方は、銃猟向け保険ではわな事故が対象外になる場合があるため、わな専用保険を必ず確認
- 保険未加入での狩猟は絶対に避ける。年間数千円の投資で数千万円のリスクに備えられる
狩猟を安全に楽しむためには、適切な保険への加入が不可欠です。まずは自分の猟スタイル(銃猟かわな猟か)と、猟友会への加入意向を明確にしたうえで、上記の比較表を参考に最適な保険を選んでみてください。
狩猟免許の取得方法については「狩猟免許の取り方を完全解説」で詳しく紹介しています。また、狩猟を始めるために必要な装備や費用の全体像は「狩猟の始め方 初心者向け完全ガイド」をご覧ください。狩猟免許にかかる費用の合計も合わせて確認すると、狩猟開始までの資金計画が立てやすくなります。
参考情報
- 大日本猟友会「狩猟事故共済保険」(http://j-hunters.com/about/insurance.php)
- 関西広域連合「有害捕獲における適切な補償の整備とは」(https://www.kouiki-kansai.jp/)
- 環境省「捕獲数及び被害等の状況|野生鳥獣の保護及び管理」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/index.html)
- 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)(e-Stat 統計表ID: 0002119971)
- 週末狩りガール「猟友会のメリットと個人でハンター保険に加入して狩猟者登録する方法について」(https://hunter-girl.com/hunter-insurance/)

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