サルの追い払い方法6選|農作物被害を防ぐ実践テクニック

サルの追い払い方法6選|農作物被害を防ぐ実践テクニック 獣害対策

最終更新: 2026-05-04

農林水産省の調査によると、令和5年度のサルによる農作物被害額は約7.1億円にのぼります。シカやイノシシと並び、サルは全国の農家にとって深刻な脅威です。「畑の野菜を根こそぎ持っていかれた」「追い払ってもすぐ戻ってくる」と頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、サルの追い払い方法を6つ厳選し、それぞれの費用・効果・注意点を徹底解説します。まずサルの行動特性を理解したうえで、具体的な追い払い手順、防護柵との併用策、そして季節ごとの対策カレンダーまでお伝えします。

サルの追い払い方法を知る前に:行動特性を理解する

サルを効果的に追い払うためには、まず相手の行動パターンを知ることが欠かせません。ニホンザルは20~100頭の群れで行動し、日中にエサ場を移動する昼行性の動物です。非常に学習能力が高く、「この人間は追いかけてこない」と判断した相手には警戒心を持ちません。

項目 内容
群れの規模 20~100頭程度
活動時間 日中(昼行性)
行動圏 群れごとに1~80km²(環境による)
学習能力 非常に高い(個人を識別可能)
好む食物 果実、野菜、穀物、昆虫
分布 本州・四国・九州(北海道・沖縄を除く)

ここで注目すべきは「個人を識別できる」という点です。サルは追い払ってくる人間とそうでない人間を記憶しています。一部の人だけが追い払いをしても、サルは「あの人がいないときに来ればいい」と学習してしまいます。そのため、地域全体で追い払い体制を構築することが対策の基本となります。

また、サルの「人馴れ」には段階があります。最初は集落の外から農地を眺めるだけですが、対策をしないまま放置すると、庭先まで侵入し、人がいても逃げなくなります。被害が軽い段階から追い払いを始めることが、被害拡大を防ぐ最も効率的な方法です。

サルの追い払い方法6選【手順つきで解説】

方法1:ロケット花火による追い払い

最も広く使われている追い払い方法がロケット花火です。大きな破裂音と光でサルを驚かせ、集落から離れさせます。

手順としては、まずサルの群れの位置を確認します。次に、風向きを考慮してサルの逃げ道(山側)に向かって発射します。1発で逃げない場合は、間隔をあけて複数発打ち込んでください。その際、サルが逃げた方向を確認し、山の奥まで追い払うことが重要です。

注意点として、ロケット花火は「火薬類取締法」の規制対象となる場合があります。市区町村によっては使用に届出が必要なケースがありますので、事前に自治体の鳥獣対策担当課に確認してください。火災リスクもあるため、乾燥した草地や林の近くでの使用は避け、消火用の水を準備しておきましょう。

方法2:エアガン・パチンコによる追い払い

電動エアガンやパチンコ(スリングショット)は、サルに直接痛みを与えて「この場所は危険だ」と学習させる方法です。ロケット花火と比べて、特定の個体を狙いやすいというメリットがあります。

エアガンの場合は6mmBB弾を使用し、パチンコの場合は小石やパチンコ玉を使います。狙う箇所はサルの臀部(おしり)です。顔や頭部を狙うと怪我をさせてしまうため避けてください。エアガンの有効射程は15~30m程度で、それ以上の距離では威力が不足します。

鳥獣保護管理法上、サルを「傷つける」行為は捕獲許可が必要ですが、追い払い目的での威嚇射撃は許可不要です。ただし、自治体によって運用が異なるため、こちらも事前確認をおすすめします。

方法3:爆音機・音声装置の活用

タイマー式の爆音機やセンサー付きの音声装置は、人が常駐できない場所で効果を発揮します。人感センサーが反応すると大音量のサイレンや犬の吠え声を発する装置が市販されています。

ただし、サルは学習能力が高いため、同じ音を繰り返すと短期間で慣れてしまいます。効果を持続させるコツは、設置場所を定期的に変えること、そして複数種類の音源を切り替えて使用することです。爆音機だけに頼らず、他の追い払い方法と組み合わせることが大切です。

方法4:モンキードッグ(追い払い犬)の導入

訓練を受けた中型~大型犬を使ってサルを追い払う「モンキードッグ」制度は、2005年に長野県大町市で全国初の育成が始まり、その後29県約370頭以上に広がっています(2012年時点)。犬はサルにとって天敵であり、モンキードッグが常駐する集落にはサルが近づかなくなるという高い効果が報告されています。

モンキードッグの導入には、犬の選定と専門的な訓練が必要です。訓練期間は概ね3~6か月で、費用は自治体の補助制度を利用すれば個人負担を大幅に軽減できます。長野県大町市では、常時40~50頭の群れで出没していたサルが導入2か月後には激減し、農作物被害がほとんどなくなったと報告されています(日本経済新聞、2020年)。

導入を検討する場合は、まず市区町村の鳥獣対策担当課に問い合わせてください。モンキードッグ育成事業を実施している自治体であれば、訓練費用の補助を受けられる可能性があります。

方法5:追い払い用ピストル(煙火銃)

追い払い専用の煙火銃(信号弾を使用するタイプ)は、ロケット花火より飛距離が長く、狙った方向にコントロールしやすいのが特徴です。猟友会のメンバーが中心となって使用するケースが多く見られます。

使用には火薬類取締法に基づく許可が必要な場合があります。地域の猟友会に相談すれば、講習を受けて正しい使用方法を学ぶことができます。

方法6:地域ぐるみの組織的追い払い

最も効果的なのは、集落全体で追い払い体制を組織する方法です。サルの目撃情報を共有する連絡網を整備し、発見した人が無線やLINEグループで通報、周辺住民が一斉に追い払いに出るという仕組みです。

具体的には「サル追い払い隊」を結成し、当番制でパトロールを行っている地域もあります。大勢で追い払うことでサルに「この集落は危険だ」と強く記憶させることができます。集落単位での取り組みを始める際は、まず自治体の鳥獣対策担当課に相談すると、専門家の派遣や機材の貸与を受けられる場合があります。

追い払い方法の費用対効果を比較

どの方法を選ぶかは、予算や被害規模によって異なります。以下の比較表を参考に、自分の状況に合った方法を検討してください。

方法 導入費用の目安 効果の持続性 即効性 1人でも可能か
ロケット花火 1,000~3,000円/箱 短期(慣れやすい) 高い 可能
エアガン・パチンコ 3,000~15,000円 中期 高い 可能
爆音機・音声装置 10,000~50,000円 短期(慣れやすい) 中程度 可能
モンキードッグ 訓練費10~30万円(補助あり) 長期 中程度 犬の管理者が必要
煙火銃 5,000~20,000円 中期 高い 可能(要許可)
地域組織的追い払い 実費程度 長期 高い 複数人が必要

費用対効果で最も優れているのは「地域組織的追い払い」です。特別な機材がなくても、大きな声を出しながら大勢で追い払うだけで効果があります。一方、即座に個人で対処したい場合は、ロケット花火やエアガンが実用的です。

季節ごとのサル行動パターンと対策カレンダー

サルの行動は季節によって大きく変わります。効率的な対策のために、季節ごとの特徴を押さえましょう。

季節 サルの行動特徴 重点対策
春(3~5月) 新芽や果実を求めて行動範囲が拡大 防護柵の点検・修繕、追い払い体制の再構築
夏(6~8月) 果実の成熟期で農地への侵入が最も増加 追い払いの頻度を上げる、電気柵の通電確認
秋(9~11月) 冬に備えて食料を大量に確保する時期 収穫残渣の除去、柿や栗など放置果樹の管理
冬(12~2月) 食料が減り山中での行動が中心 追い払い活動の見直し、来春に向けた計画策定

特に重要なのは、5月から10月にかけての期間です。農作物が育つ時期とサルの活動期が重なるため、この期間は追い払いの頻度と強度を高める必要があります。

追い払いだけでは不十分?防護柵との併用が効果的

追い払いはサルに「この場所は危険」と学習させるための行動ですが、追い払いだけに頼ると限界があります。特に効果的なのが、防護柵と追い払いの併用です。

防護柵には大きく分けて、電気柵と金属フェンス(ワイヤーメッシュ柵)の2タイプがあります。サルの場合、通常の電気柵ではよじ登って侵入するケースがあるため、天井部分まで覆う構造や、ワイヤーメッシュと電気柵を組み合わせた複合柵が推奨されます。

電気柵の設置費用については「電気柵の設置費用を徹底解説」で詳しく解説しています。また、獣害対策に使える補助金については「獣害対策の補助金申請ガイド」をご覧ください。

さらに、追い払いと防護柵に加えて「エサ場をなくす」環境整備も欠かせません。収穫しない果樹の伐採、農作物の残渣処理、生ごみの適切な管理など、サルを集落に引き寄せる要因を徹底的に排除することが長期的な被害防止につながります。

実際の現場では:追い払い活動の「リアル」

獣害対策の現場で活動する方の声として多いのが、「最初はロケット花火で効果があったが、半年もするとサルが慣れてしまった」という経験です。1種類の対策だけでは必ず「馴れ」が生じるため、複数の方法をローテーションで使い分けるのが実践的なコツです。

農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設での搬入重量はシカが5,605トン(構成比79.3%)、イノシシが1,467トン(同20.7%)を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119971)。サルは捕獲しても食肉利用が一般的ではないため、イノシシやシカのように「捕獲→利活用」の循環が作りにくいのが現状です。だからこそ「追い払い」と「侵入防止」を軸にした対策が重要になります。

また、有害鳥獣駆除の報奨金制度を活用すれば、捕獲に対して1頭あたり数千円~数万円の報奨金が支給される自治体もあります。報奨金の詳細については「有害鳥獣駆除の報奨金制度まとめ」で地域別の金額を紹介しています。

サルの追い払い方法に関するよくある質問

Q1:サルを追い払うのに許可は必要ですか?

追い払い行為そのものには基本的に許可は不要です。ただし、サルを傷つけたり捕獲したりする場合は、鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可が必要です。ロケット花火の使用については、自治体によって届出が求められるケースがあるため、事前に確認してください。

Q2:サルを追い払うときにやってはいけないことは?

エサを与える行為は厳禁です。追い払うつもりで食べ物を投げると、サルは「人間のところに行けばエサがもらえる」と学習してしまいます。また、目を合わせて歯をむき出しにする行為はサルへの威嚇と受け取られ、攻撃される危険があります。

Q3:1人でサルを追い払うことはできますか?

一時的な追い払いは1人でも可能です。しかし、サルは追い払う人と追い払わない人を識別するため、1人だけの対策では効果が限定的です。集落全体で取り組むことで、サルに「この地域は危険」と学習させる効果が格段に高まります。

Q4:モンキードッグの導入費用はどのくらいかかりますか?

犬の選定・訓練費用は10~30万円程度ですが、自治体の補助制度を利用すれば個人負担を軽減できます。犬の飼育費(食費・医療費)は年間10~20万円程度が目安です。導入を検討する際は、まず市区町村の鳥獣対策担当課に問い合わせてください。

Q5:追い払いをしてもサルが戻ってくる場合はどうすればよいですか?

同じ方法を繰り返しているとサルが慣れてしまうため、複数の方法を組み合わせてローテーションで使い分けることが効果的です。それでも改善しない場合は、自治体に相談して捕獲許可を取得し、箱罠やくくり罠による個体数管理を検討してください。罠の設置方法については「[くくり罠の設置方法](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e3%81%ae%e5%ae%9f%e8%b7%b5/kukuri-trap-setup-method/)」や「[箱罠の作り方(DIY)](https://kariudo.jp/hunting-practice/box-trap-diy-guide/)」も参考になります。

Q6:サルの被害が多い時期はいつですか?

農作物の生育期である5月~10月が被害のピークです。特に果実が成熟する夏場(6~8月)と、冬に備えて食料を蓄える秋(9~11月)は警戒が必要です。この期間は追い払いの頻度を上げ、防護柵の点検も定期的に行いましょう。

まとめ:サルの追い払いは「複合対策」と「地域連携」がカギ

サルの追い払い方法について、ポイントを整理します。

  • サルは学習能力が非常に高く、1種類の対策では慣れてしまう
  • ロケット花火・エアガン・モンキードッグなど複数の方法をローテーションで使い分ける
  • 費用対効果が最も高いのは、集落全体での組織的な追い払い活動
  • 追い払いと防護柵を併用し、エサ場をなくす環境整備も同時に行う
  • 5~10月の農作物生育期は特に重点的な対策が必要
  • 改善しない場合は自治体に相談し、捕獲も含めた総合的な対策を検討する

まずは地域の鳥獣対策担当課に相談し、利用できる補助金や専門家派遣制度を確認することから始めてみてください。

イノシシの被害対策については「イノシシ被害の対策方法まとめ」、シカによる食害対策は「シカの食害防止柵ガイド」でそれぞれ解説しています。狩猟・獣害対策の最新データは狩猟・ジビエ業界データまとめで定期更新しています。

参考情報

  • 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について」(令和5年度)
  • 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査」(令和5年度、e-Stat 統計表ID: 0002119971)
  • 農林水産省「鳥獣被害防止対策について」(令和6年6月)
  • 鳥獣害対策の知恵袋「サルを効果的に追い払う!対策方法を紹介」
  • マイナビ農業「農家のサル対策は個人でもできる!」



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