最終更新: 2026-04-23
狩猟免許を取得しても、それだけでは山に入って猟をすることはできません。実際に狩猟を行うためには、出猟する都道府県ごとに「狩猟者登録」という手続きが必要です。環境省によると、全国の狩猟免許所持者は約21万件にのぼりますが、実際に狩猟者登録を済ませて猟に出ている人はそのうち約15万人とされています(2024年時点)。「免許は取ったのに、登録の手続きがわからなくて初猟期を逃してしまった」という声は少なくありません。
この記事では、狩猟者登録の手続きに必要な書類、費用(狩猟税・手数料・保険料)の内訳、申請の流れをステップごとに解説します。まず狩猟者登録の全体像を押さえたうえで、猟法別の費用比較、初心者が陥りやすいミスと対策、そして登録後に知っておくべきことまでお伝えします。
狩猟者登録とは?始める前に知っておくこと
狩猟者登録とは、狩猟免許を持つ人が実際に狩猟を行うために、都道府県知事に対して行う届出制度です。鳥獣保護管理法に基づき、毎年度(猟期ごとに)登録が必要となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)第55条 |
| 登録先 | 狩猟を行う都道府県(住所地の都道府県ではなく、出猟する都道府県) |
| 登録単位 | 猟法ごと・都道府県ごとに個別に登録が必要 |
| 有効期間 | 当該猟期のみ(毎年度更新が必要) |
| 猟期 | 本州:11月15日〜翌2月15日 / 北海道:10月1日〜翌1月31日 |
| 前提条件 | 狩猟免許を所持していること |
ここで注意すべきポイントは、登録先が「住所地」ではなく「出猟する都道府県」である点です。たとえば東京都在住で千葉県の山で猟をしたい場合、千葉県に狩猟者登録を行います。複数の都道府県で猟をする場合は、それぞれの県に登録が必要です。
狩猟免許の取得方法については「狩猟免許の取り方を徹底解説」で詳しくまとめていますので、まだ免許を取得していない方はそちらからご覧ください。
狩猟者登録の手続き【ステップ解説】
Step 1: 狩猟免許の有効期限を確認する
狩猟者登録の前提として、有効な狩猟免許を所持している必要があります。狩猟免許の有効期間は取得日(または更新日)から3年間です。期限が切れている場合は更新手続きを先に行いましょう。
確認すべき項目は以下のとおりです。
| チェック項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 狩猟免状の有効期限 | 免状に記載された年月日を確認 |
| 所持している猟法の種類 | 第一種銃猟・第二種銃猟・わな猟・網猟のどれか |
| 銃砲所持許可(銃猟の場合) | 所持許可証の有効期限を確認 |
銃猟(第一種・第二種)で登録する場合は、銃砲所持許可も有効である必要があります。猟銃の所持許可の流れについては「猟銃所持許可の取得フロー」を参考にしてください。
Step 2: 損害賠償保険に加入する
狩猟者登録には、3,000万円以上の損害賠償能力を証明する書類が必要です。これは法律で義務付けられており、保険に加入せずに登録することはできません。
主な加入方法は2つあります。
| 加入方法 | 年間保険料の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 猟友会の共済(ハンター保険) | 4,000〜5,500円程度 | 猟友会に入会が必要。団体割引で割安 |
| 民間の損害賠償保険 | 5,000〜10,000円程度 | 猟友会未加入でも加入可能 |
多くの初心者は猟友会に入会し、共済保険に加入するケースが一般的です。猟友会に入ると、地元猟師とのネットワークづくりや猟場の情報共有など、保険以外のメリットも得られます。猟友会への入会方法や具体的なメリットは「猟友会の入り方とメリット」で解説しています。
Step 3: 必要書類を準備する
狩猟者登録に必要な書類は、都道府県によって細部が異なりますが、基本的な提出物は以下のとおりです。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 狩猟者登録申請書 | 各都道府県のWebサイトからダウンロード可能 |
| 狩猟免状の写し | 原本提示を求められる場合もあり |
| 損害賠償能力を証明する書類 | 保険証書の写し、または共済加入証明書 |
| 写真(縦3cm×横2.4cm) | 申請前6か月以内撮影、無帽・正面・上三分身・無背景 |
| 銃砲所持許可証の写し(銃猟の場合) | 第一種・第二種銃猟で登録する場合のみ |
| 狩猟税の納付済証明 | 収入証紙の貼付、または現金納付 |
| 登録手数料 | 1,800円(都道府県により異なる場合あり) |
写真の規格は各都道府県が厳密に定めています。サイズの間違いや撮影から6か月以上経過した写真は受理されないため、事前に撮り直しておくと安心です。
Step 4: 費用を納付する
狩猟者登録にかかる費用は「登録手数料」と「狩猟税」の2つに分かれます。猟法によって狩猟税の金額が異なるため、以下のテーブルで確認してください。
| 猟法 | 狩猟税(一般) | 狩猟税(所得割非課税者) | 登録手数料 | 合計目安 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種銃猟 | 16,500円 | 11,000円 | 1,800円 | 18,300円 |
| 第二種銃猟(空気銃) | 5,500円 | — | 1,800円 | 7,300円 |
| わな猟 | 8,200円 | 5,500円 | 1,800円 | 10,000円 |
| 網猟 | 8,200円 | 5,500円 | 1,800円 | 10,000円 |
なお、2015年度から「鳥獣被害対策実施隊員」に任命されている方や、一定の条件を満たす対象者には狩猟税の減免措置が設けられています。自治体によっては全額免除となるケースもあるため、住所地の市区町村に確認しておくとよいでしょう。
狩猟にかかる費用全体を把握したい方は「狩猟免許の費用を合計するといくら?」もあわせてご覧ください。
Step 5: 申請窓口に提出する
書類と費用の準備ができたら、出猟する都道府県の狩猟担当窓口に提出します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 申請先 | 都道府県の環境部局(自然環境課、鳥獣保護管理課など名称は県ごとに異なる) |
| 受付時期 | 8月下旬〜10月上旬が一般的(都道府県により異なる) |
| 申請方法 | 窓口持参が基本。一部の県では郵送対応あり |
| 処理期間 | 即日交付はされない。1〜2週間程度が目安 |
受付期間は自治体ごとに異なるため、遅くとも8月上旬には対象県のWebサイトで確認しておきましょう。期限を過ぎると、その猟期は登録できない可能性があります。
Step 6: 狩猟者登録証と狩猟者記章を受け取る
申請が受理されると、「狩猟者登録証」と「狩猟者記章(バッジ)」が交付されます。猟期中はこの2つを必ず携帯しなければなりません。
| 交付物 | 用途 |
|---|---|
| 狩猟者登録証 | 身分証明。猟期中は常に携帯 |
| 狩猟者記章(バッジ) | 帽子や衣服に装着。猟期中の着用義務あり |
猟期が終了したら、30日以内に狩猟者登録証を返納する義務があります。あわせて「捕獲した鳥獣の種類と数」を報告する必要がありますので、猟期中は捕獲記録を必ず付けておきましょう。
失敗しないためのコツ・注意点
狩猟者登録の手続きは毎年行うものですが、特に初めての方がつまずきやすいポイントがあります。
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 受付期間に間に合わなかった | 自治体の受付開始時期を知らなかった | 7月中に都道府県のWebサイトで受付予定を確認 |
| 書類不備で受理されなかった | 写真サイズの間違い、記入漏れ | 提出前にチェックリストで確認。不明点は窓口に電話で事前相談 |
| 保険加入が間に合わなかった | 猟友会への入会手続きに時間がかかった | 6月頃から猟友会に連絡し、入会と保険加入を同時に進める |
| 複数県の登録を忘れた | 出猟県ごとに登録が必要だと知らなかった | 出猟予定の県をリストアップし、それぞれ申請 |
| 狩猟税の減免を知らなかった | 制度の周知が不十分 | 有害鳥獣駆除への参加や実施隊員の任命状況を確認 |
特に「受付期間に間に合わない」ケースは毎年発生しています。猟期は11月15日から始まりますが、登録の受付は8月下旬〜10月上旬に締め切る都道府県がほとんどです。ゆとりを持ったスケジュールで準備することが大切です。
猟法別の費用比較:初年度にかかる総コスト
狩猟者登録だけでなく、初年度に狩猟を始めるためにかかる費用の全体像を把握しておくと、猟法選びの参考になります。
| 費目 | 第一種銃猟(散弾銃) | わな猟 | 第二種銃猟(空気銃) |
|---|---|---|---|
| 狩猟免許試験手数料 | 5,200円 | 5,200円 | 5,200円 |
| 狩猟者登録(税+手数料) | 18,300円 | 10,000円 | 7,300円 |
| 損害賠償保険 | 約5,000円 | 約5,000円 | 約5,000円 |
| 猟友会会費 | 約8,000〜15,000円 | 約8,000〜15,000円 | 約8,000〜15,000円 |
| 猟具代 | 15〜30万円(中古含む) | 1〜5万円 | 10〜25万円 |
| 装備(衣類・ナイフ等) | 5〜10万円 | 3〜5万円 | 3〜5万円 |
| 初年度合計の目安 | 約25〜50万円 | 約5〜12万円 | 約15〜35万円 |
費用面だけで見ると、わな猟が最もハードルが低いことがわかります。一方、第一種銃猟は猟銃本体や火薬類の購入費がかかるものの、猟の幅が広がるメリットがあります。これから狩猟を始める方で装備選びに迷っている方は「狩猟装備の初心者向け完全リスト」も参考にしてください。
狩猟者登録から猟師キャリアへつなげる視点
狩猟者登録は「趣味のハンティング」だけでなく、有害鳥獣駆除や地域おこしのキャリアにもつながる第一歩です。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設での販売金額は合計約54億円に達しており、そのうち食肉としての販売が81.5%を占めます(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。狩猟者登録を済ませることで、以下のようなキャリアの選択肢が広がります。
有害鳥獣捕獲活動への参加:
多くの自治体では、狩猟者登録を行っている猟師に対して有害鳥獣の捕獲依頼を出しています。報奨金はシカ1頭あたり7,000〜15,000円、イノシシ1頭あたり8,000〜20,000円が相場です(2025年時点、自治体により異なる)。詳しくは「有害鳥獣駆除の報奨金制度」をご覧ください。
ジビエ販売・加工の道:
捕獲した鳥獣をジビエとして販売するには食肉処理業の許可が別途必要ですが、狩猟者登録は獣肉を安定的に確保するための基本要件です。近年はインターネット販売も伸びており、全国のジビエ販売数量のうち消費者への直接販売(ネット含む)が約13%を占めます(農林水産省 令和5年度調査、e-Stat 統計表ID: 0002119996)。
地域おこし協力隊や鳥獣被害対策実施隊:
狩猟者登録をしていれば、自治体の実施隊員に任命される可能性があります。実施隊員になると狩猟税が免除されるだけでなく、活動日当や捕獲報奨金が支給されるため、猟師として生計を立てる土台になります。
実際の手続きを経験して感じたこと
現場で猟師の方々に聞くと、「狩猟者登録そのものは難しくないが、タイミングと情報収集がすべて」という声が多いです。
特に初年度は、狩猟免許試験の合格発表が9月頃になることが多く、そこから保険加入・書類準備・登録申請を進めると、かなりタイトなスケジュールになります。ベテラン猟師の方は「免許試験を受ける前から猟友会に連絡しておくのがコツ」とアドバイスしています。猟友会の支部長に事前に挨拶しておけば、合格後すぐに入会手続きと保険加入を進められるため、登録がスムーズです。
また、複数の猟法を持っている方は、猟法ごとに登録が必要な点を見落としがちです。たとえば「わな猟」と「第一種銃猟」の両方の免許を持っている場合、それぞれの猟法について登録手続きと費用納付が必要になります。
よくある質問
Q1: 狩猟者登録は毎年必要ですか?
はい、狩猟者登録は毎猟期ごとに行う必要があります。有効期間は当該猟期のみ(本州は11月15日〜翌年2月15日)で、翌年も狩猟を行う場合は再度登録手続きが必要です。
Q2: 住んでいる都道府県以外で狩猟するにはどうすればいいですか?
狩猟を行う都道府県に直接、狩猟者登録を申請します。住所地とは異なる県への登録は「他県登録」と呼ばれ、書類は基本的に郵送で受け付ける都道府県が多いです。手数料と狩猟税は出猟先の都道府県に納めます。
Q3: 狩猟者登録にかかる費用はいくらですか?
猟法によって異なります。第一種銃猟で約18,300円(狩猟税16,500円+登録手数料1,800円)、わな猟・網猟で約10,000円(狩猟税8,200円+登録手数料1,800円)、第二種銃猟で約7,300円(狩猟税5,500円+登録手数料1,800円)が目安です。これに保険料が別途かかります(2026年度時点)。
Q4: 猟友会に入らなくても狩猟者登録できますか?
可能です。猟友会への入会は法律上の義務ではありません。ただし、損害賠償保険は必須のため、猟友会の共済に加入しない場合は民間の損害賠償保険に個別に加入する必要があります。保険料はやや割高になる場合が多いです。
Q5: 狩猟者登録の申請はオンラインでできますか?
2026年4月時点では、ほとんどの都道府県で窓口への持参または郵送での申請が基本です。一部の自治体で電子申請の導入が検討されていますが、全国的にはまだ普及していません。申請書のダウンロードはWebサイトから可能な都道府県が多いです。
Q6: 狩猟者登録をしないで猟をするとどうなりますか?
無登録での狩猟は鳥獣保護管理法違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。さらに、狩猟免許の取消処分を受ける可能性もあります。登録は必ず行ってから出猟してください。
Q7: 猟期終了後に必要な手続きはありますか?
猟期終了後30日以内に、狩猟者登録証を登録先の都道府県に返納する義務があります。その際、猟期中に捕獲した鳥獣の種類と数を報告する「捕獲報告」もあわせて提出します。
まとめ:狩猟者登録の手続きのポイント
- 狩猟者登録は出猟する都道府県ごとに毎年行う手続き
- 必要書類は狩猟免状の写し、保険証明書、写真、申請書の4点が基本
- 費用は猟法により7,300〜18,300円(登録手数料+狩猟税)に加え、保険料が別途必要
- 受付期間は8月下旬〜10月上旬が一般的。7月中には準備を始めておくと安心
- 猟友会への事前連絡が、スムーズな登録のカギ
- 猟期終了後は30日以内に登録証の返納と捕獲報告を忘れずに
これから狩猟を始める方は、まず「狩猟の始め方ガイド」で全体の流れを確認したうえで、狩猟者登録の準備を進めてみてください。
参考情報
- 環境省「狩猟者登録をする(狩猟の魅力まるわかりフォーラム)」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/register.html)
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974、0002119996)
- 大日本猟友会「狩猟者数の推移」(http://j-hunters.com/info/suii.php)
- e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000088/)
- 千葉県「令和7年度狩猟者登録手続のご案内」(https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/tetsuzuki/syuryo/touroku.html)

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