猟師になるために移住したい!自治体の支援制度と手順を完全ガイド

猟師になるために移住したい!自治体の支援制度と手順を完全ガイド 猟師の暮らし

最終更新: 2026-04-13

環境省の統計によると、国内の狩猟免許所持者のうち60歳以上が約63%を占めており(2016年度時点)、高齢化と担い手不足は年々深刻化しています。一方で、20〜40代の新規取得者はここ数年増加傾向にあり、「脱サラして猟師になりたい」「地方移住と狩猟を両立したい」という声が広がっています。

「猟師に興味はあるけど、どこに住めばいいのかわからない」「移住の費用が不安」「支援制度があるらしいけど、何が使えるのか整理できない」――そんな悩みを抱えている方は少なくありません。

この記事では、猟師を目指して地方移住する際に活用できる自治体の支援制度を網羅的に紹介し、地域おこし協力隊を中心とした具体的な移住ステップ、自治体別の支援内容比較、そして実際に移住した猟師のリアルな声までを徹底解説します。まず支援制度の全体像を整理し、次に手順を説明、最後に成功するためのコツをお伝えします。

猟師移住の全体像:始める前に知っておくこと

猟師として移住するには、「住む場所を決める」「狩猟免許を取る」「猟場を確保する」という3つの課題を同時にクリアする必要があります。都市部で会社員として働いてきた方にとっては、ハードルが高く感じるかもしれません。

しかし現在、国や自治体は狩猟者の担い手確保を重要課題と位置づけており、移住と狩猟をセットで支援する制度が充実してきています。

項目 目安
移住準備〜狩猟開始まで 6ヶ月〜1年
初期費用(自己負担) 10〜50万円(支援制度活用時)
難易度 中程度(制度活用で大幅に軽減)
必要なもの 狩猟免許、住居、猟場の師匠
主な支援制度 地域おこし協力隊、移住支援金、免許取得補助、住居支援

ここで注目すべきは、農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理で得た金額は全国合計で約54億500万円に達し、うち食肉の販売金額だけで約44億400万円を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。猟師の仕事は「趣味」から「生業」へと確実に変化しており、自治体にとっても猟師の誘致は地域課題の解決に直結する施策となっています。

猟師としての収入の実態については、猟師の年収リアル事情で詳しく解説しています。

猟師の移住を支える4つの支援制度【タイプ別解説】

移住して猟師を目指す際に活用できる支援制度は、大きく4つのタイプに分けられます。それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った制度を選ぶことが重要です。

支援制度 支給内容 対象者 メリット デメリット
地域おこし協力隊 月額16〜35万円の報償費+活動経費 都市部から移住する方 給与をもらいながら狩猟を学べる 任期が1〜3年に限定
移住支援金 最大100万円(世帯)、60万円(単身) 東京圏から地方へ移住する方 まとまった初期資金が得られる 東京23区在住・通勤者が主な対象
狩猟免許取得補助 免許取得費用の1/2〜全額 各自治体の住民 免許取得のコストが大幅に下がる 自治体により金額差が大きい
住居支援(空き家バンク等) 家賃補助・無償提供 移住者全般 固定費を大幅に抑えられる 物件の状態にばらつきがある

地域おこし協力隊(最も活用されている制度)

地域おこし協力隊は、総務省が推進する制度で、都市部から過疎地域などへ移住し、地域活動に従事する人材を自治体が委嘱する仕組みです。総務省の特別交付税措置により、隊員1人あたり年間最大520万円(報償費最大320万円+活動経費)が上限として設定されています。

狩猟・有害鳥獣対策を活動テーマとする協力隊の募集は全国で増加しており、三重県尾鷲市では月額233,000円の報償費に加えて狩猟免許取得費用を活動費から捻出できる条件で猟師を募集しています。岡山県矢掛町でも「即戦力のハンター」として協力隊を募集するなど、自治体側の受け入れ態勢が整いつつあります。

特筆すべきは任期後の定住率で、全国平均で約70%の隊員が任期終了後もその地域に定住しています。定住した隊員の約4割が起業、約4割が就業、約1割が就農・就林という進路を選んでおり、猟師として独立するケースも増えています。

移住支援金(国の制度)

内閣府と総務省が連携して実施する移住支援金制度は、東京23区に在住または通勤していた方が地方へ移住した場合、世帯で最大100万円、単身で最大60万円が支給されます。18歳未満の子ども1人あたり30〜100万円の加算もあります(金額は自治体により異なる、2025年度時点)。

この制度は地域おこし協力隊との併用も可能な場合があるため、事前に移住先の自治体に確認することをおすすめします。

狩猟免許取得補助金

多くの自治体が独自に狩猟免許の取得費用を補助する制度を設けています。金額は自治体によって大きく異なります。

自治体の例 補助率・金額 対象
兵庫県神戸市 取得経費の1/2 狩猟免許・銃砲所持許可
北海道倶知安町 対象経費の8/10 狩猟免許取得費
神奈川県箱根町 銃猟4万円、わな猟8千円 新規取得者
山形県(県全体) 市町村+猟友会による助成 新規免許取得者
埼玉県寄居町 取得費用の一部 町内在住で駆除事業従事意思あり

狩猟免許の取得費用の全体像については、狩猟免許にかかる費用の合計で詳しく解説しています。

地域おこし協力隊で猟師になる手順【ステップ解説】

猟師として移住する最も確実なルートは、地域おこし協力隊制度の活用です。以下のステップで進めましょう。

Step 1: 情報収集と移住先候補のリストアップ(1〜3ヶ月)

まずは狩猟・有害鳥獣対策をテーマとする地域おこし協力隊の募集情報を集めます。主な情報源は以下の通りです。

  • SMOUT(スマウト): 地域とつながるプラットフォーム。狩猟関連の移住プロジェクトが多数掲載
  • LOCAL MATCH: LIFULLが運営する移住マッチングサイト。「農林漁業・狩猟」カテゴリあり
  • 移住・交流推進機構(JOIN): 地域おこし協力隊の公式情報
  • 各自治体の公式サイト: 個別の募集要項を確認

候補を絞る際は、「猟場の豊富さ」「師匠となるベテラン猟師の有無」「獣害の深刻度(=需要の高さ)」「生活インフラの整備状況」の4点を重視してください。

Step 2: 現地訪問とお試し移住(1〜2ヶ月)

書類だけで判断せず、必ず現地を訪問しましょう。多くの自治体がお試し移住や体験ツアーを実施しています。

確認すべきポイントは次の通りです。

  • 猟場までのアクセス(自宅から車で何分か)
  • 地元の猟友会の雰囲気と受け入れ態勢
  • 買い物・医療・学校などの生活インフラ
  • 先輩移住者や先輩隊員の声

「外に出たらすぐ猟場」という環境が理想ですが、家族がいる場合は生活利便性とのバランスも大切です。

Step 3: 応募・選考(1〜2ヶ月)

地域おこし協力隊の応募には、書類選考と面接が一般的です。面接では「なぜ狩猟なのか」「地域にどう貢献するのか」「任期後のビジョン」が問われます。

ここで注意すべきは、協力隊は「移住支援」が目的ではなく「地域課題の解決」が本来の目的である点です。「獣害に苦しむ農家を助けたい」「狩猟文化を次世代に伝えたい」といった地域貢献の視点を持っていることが選考では重視されます。

Step 4: 移住・着任と狩猟免許の取得(着任後3〜6ヶ月)

着任後、まだ狩猟免許を持っていない場合は速やかに取得します。協力隊の活動費から免許取得費用を捻出できるケースが多いため、自己負担はほぼゼロになることもあります。

免許取得と並行して、地元のベテラン猟師に師事し、実地で技術を学びます。週2回程度の同行猟を半年ほど続けると、基本的な技術が身につくのが一般的です。

Step 5: 実猟の開始と収入基盤の構築(着任後6ヶ月〜)

免許取得後、狩猟者登録を行い実猟を開始します。協力隊の報償費で生活を安定させながら、有害鳥獣駆除の報奨金やジビエの販売収入を徐々に積み上げていきます。

任期中に「捕獲→解体→販売」の一連のスキルを習得し、任期終了後に独立できる基盤を作ることが目標です。ジビエの個人販売に必要な許可については、ジビエを個人で販売するための許可と手続きをご覧ください。

自治体別・猟師移住の支援制度比較【独自調査】

全国の自治体の中から、狩猟・有害鳥獣対策に力を入れている地域の支援内容を比較しました。移住先選びの参考にしてください。

地域 協力隊(狩猟枠) 免許取得補助 住居支援 獣害の深刻度 特徴
三重県尾鷲市 月額23.3万円+活動費 活動費から捻出可 空き家バンクあり 高(イノシシ・シカ) 海と山の両方で狩猟可能
岡山県矢掛町 即戦力ハンター募集 あり 空き家バンクあり 高(イノシシ中心) 農業被害対策が主目的
山口県萩市 猟師育成枠あり あり 移住体験住宅あり 中〜高 移住者のコミュニティが充実
北海道厚真町 エゾシカ対策枠 8/10補助(倶知安町近隣) 移住支援金あり 高(エゾシカ) 広大な猟場、流し猟が主流
長野県飯綱町 鳥獣対策枠 県の助成制度あり 空き家バンク充実 中(シカ・イノシシ) 移住支援が手厚い

この比較は2026年4月時点の情報です。最新の募集状況は各自治体の公式サイトやSMOUT等で必ず確認してください。

農林水産省の令和5年度調査によると、ジビエ食肉処理施設での解体実績はシカが全体の79.3%、イノシシが20.7%を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119971)。移住先を選ぶ際は、その地域でどの鳥獣が多いかも重要な判断材料です。シカの多い地域は解体量が多く、ジビエビジネスとしてのポテンシャルも高い傾向にあります。

狩猟・ジビエ業界の最新データについては、狩猟・ジビエ業界の統計まとめで定期更新しています。

失敗しないためのコツ・注意点

猟師としての移住を成功させるためには、事前に押さえておくべきポイントがあります。移住経験者の声をもとに、よくある失敗パターンと対策をまとめました。

よくある失敗 原因 対策
猟場が遠すぎて通えない 住居選びで猟場の距離を考慮しなかった 必ず現地で猟場までの移動ルートを確認
地元の猟友会に馴染めない 挨拶や礼儀を軽視した 着任直後に猟友会へ挨拶、地域行事にも積極参加
任期後の収入が安定しない 協力隊の報償費に依存しすぎた 任期中にジビエ販売や解体技術など複数の収入源を確保
家族の理解が得られない 生活環境の変化を十分に話し合わなかった 移住前にお試し移住を家族全員で体験する
冬季の厳しさを想定外 山間部の気候を甘く見た 移住先の冬の生活を経験者にヒアリング

特に重要なのは「師匠を見つけること」です。狩猟は座学だけでは身につかない技術の世界です。地域おこし協力隊として着任する場合、自治体が師匠となるベテラン猟師を紹介してくれるケースが多いですが、着任前の段階でその体制が整っているかを確認しておくことを強くおすすめします。

移住して猟師になった人のリアルな声

実際に都市部から移住して猟師になった方々の事例からは、想像だけではわからないリアルな情報が見えてきます。

山口県萩市に移住したある方は、地域おこし協力隊として着任し、「週に2回ベテラン猟師と一緒に猟に出る」という実践的な研修を受けながら技術を身につけました。現場で学ぶことで、罠の設置場所の選び方や動物の行動パターンなど、教科書には載っていない知識が得られるといいます。

東京から群馬県に移住した女性ハンターは、「最初は周囲に狩猟をやっている知り合いが一人もいなかった」と振り返ります。しかし猟友会に入り、地域の行事にも参加するうちに「猟場の情報は地元の人間関係の中にある」と実感し、少しずつネットワークを広げていったそうです。

北海道厚真町に移住した猟歴33年のベテランは、「外に出たらすぐ猟場」という環境に惹かれて移住を決めたと語っています。広大な北海道の自然の中で、マイペースに流し猟を楽しむ暮らしは、都市部では絶対に手に入らない贅沢だといいます。

こうした先輩移住者に共通するのは、「猟場の近さ」「地域コミュニティとのつながり」「複数の収入源の確保」の3つを重視している点です。狩猟の始め方の全体像を把握した上で、移住を検討することがスムーズな第一歩となります。

猟師移住に関するよくある質問

Q1: 狩猟免許を持っていなくても移住できますか?

はい、移住後に取得すれば問題ありません。むしろ地域おこし協力隊で着任した場合、活動費から免許取得費用を支出できるケースが多く、自己負担を抑えられます。免許取得の手順は[狩猟免許の取り方ガイド](https://kariudo.jp/hunting/hunting-license-how-to-get/)で詳しく解説しています。

Q2: 地域おこし協力隊の報償費だけで生活できますか?

報償費は月額16〜35万円(年間最大320万円)で、地方の生活費を考えれば最低限の生活は可能です。ただし家族がいる場合は、配偶者の就労も含めた資金計画を立てることをおすすめします。住居費が安い地方では、手取り20万円前後でも都市部の30万円相当の暮らしが可能な地域もあります。

Q3: 任期終了後はどうなりますか?

全国平均で約70%の隊員が任期終了後もその地域に定住しています。猟師として独立する場合は、有害鳥獣駆除の報奨金、ジビエ販売、解体処理の受託、狩猟ガイドなど複数の収入源を任期中に構築しておくことが成功のカギです。

Q4: 家族(配偶者・子ども)がいても移住できますか?

もちろん可能です。多くの自治体が家族向けの移住支援も用意しており、子育て支援や学校情報の提供も行っています。家族がいる場合は、医療機関や学校へのアクセス、配偶者の仕事の確保を事前に調査することが重要です。お試し移住を家族全員で体験し、生活のイメージを共有しましょう。

Q5: どの地域が猟師移住に向いていますか?

「獣害が深刻な地域」は需要が高いため、支援も手厚い傾向があります。具体的には、シカ・イノシシの被害が深刻な中山間地域(紀伊半島、中国山地、四国山地、北海道など)が狙い目です。ただし、猟場の近さだけでなく、生活利便性や地域コミュニティの雰囲気も重要な判断基準です。

Q6: 銃猟とわな猟、移住初心者にはどちらがおすすめですか?

有害鳥獣対策を主な活動とする場合、わな猟免許から取得するのが一般的です。わな猟は初期費用が比較的低く、毎日の見回りを日課にすることで効率的に捕獲できます。銃猟は所持許可の取得にさらに時間がかかるため、着任後にまずわな猟を始め、並行して銃猟の準備を進めるのが現実的です。

Q7: 移住支援金と地域おこし協力隊は併用できますか?

自治体によって異なります。内閣府の移住支援金と地域おこし協力隊の報償費は原則として別の制度ですが、併用条件は自治体ごとに定められています。必ず移住先の担当窓口に直接確認してください。

まとめ:猟師移住を成功させるポイント

猟師を目指して地方移住する際に押さえておくべきポイントを整理します。

  • 地域おこし協力隊は「給与をもらいながら猟師になれる」最も現実的なルートであり、任期後の定住率は約70%
  • 移住支援金、狩猟免許取得補助、住居支援など複数の制度を組み合わせることで初期費用を大幅に抑えられる
  • 移住先選びでは「猟場の近さ」「師匠の有無」「獣害の深刻度(=需要)」「生活インフラ」の4点を重視する
  • 任期中に「捕獲→解体→販売」の一連のスキルと複数の収入源を確保し、任期後の独立に備える
  • 必ず現地を訪問し、地元の猟友会やコミュニティの雰囲気を確認してから決断する

まずは情報収集から始めてみましょう。SMOUTやLOCAL MATCHで「狩猟」「有害鳥獣」をキーワードに検索すれば、全国の協力隊募集情報を一覧できます。狩猟を一から始めたい方は、狩猟の始め方ガイドもあわせてご覧ください。

参考情報

  • 総務省「地域おこし協力隊」制度概要
  • 環境省「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」
  • 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)(e-Stat 統計表ID: 0002119971, 0002119974)
  • 内閣府・総務省「地方創生移住支援事業」制度概要
  • 環境省「鳥獣関係統計」狩猟免許所持者数の推移
  • 日本経済新聞「狩猟免許、6割が60歳以上 獣害対策の担い手減」(2024年2月)



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