狩猟免許の所持者数は約21万件(2024年度環境省統計)——しかし実際に猟場に出る「実猟者」はその半数以下と言われています。「狩猟に興味はあるけど、何から手をつければいいのかわからない」「免許を取ったのに、結局出猟できていない」そんな声は少なくありません。
この記事では、狩猟を始めたい初心者が免許取得から初出猟までたどり着く全手順を、費用・期間・必要装備とともに徹底解説します。まず狩猟の全体像を整理し、次に免許取得の具体的なステップ、そして猟場確保から初出猟日までのリアルな流れをお伝えします。
狩猟の始め方:全体像を把握しよう
狩猟を始めるには、大きく分けて3つの資格・手続きが必要です。全体の流れを最初に理解しておくと、準備期間を短縮できます。
| 項目 | 目安期間 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 狩猟免許の取得 | 1〜3か月 | 約2〜3万円 |
| 猟銃所持許可(銃猟の場合) | 3〜6か月 | 約10〜15万円 |
| 狩猟者登録 | 1〜2週間 | 約2〜3万円/年 |
| 装備一式の準備 | 1〜2か月 | 約5〜30万円 |
| **合計(わな猟)** | **2〜4か月** | **約10〜15万円** |
| **合計(銃猟)** | **6〜10か月** | **約30〜60万円** |
重要なポイント: 銃猟を目指す場合、猟銃所持許可の取得に最低3か月かかります。狩猟免許の取得と並行して準備を進めることで、最短ルートで出猟が可能になります。
狩猟の始め方【ステップ解説】
Step 1: 猟法を決める——銃猟 vs わな猟
最初に決めるのは「どの猟法で始めるか」です。初心者が選ぶ猟法は大きく2つに分かれます。
| 比較項目 | わな猟 | 第一種銃猟(散弾銃) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 約10〜15万円 | 約30〜60万円 |
| 免許取得の難易度 | ★★☆(比較的容易) | ★★★(学科+実技) |
| 所持許可 | 不要 | 必要(3〜6か月) |
| 出猟の自由度 | 罠の設置場所に依存 | 広範囲で出猟可能 |
| 向いている人 | 地元に山林がある方、低予算で始めたい方 | 巻き狩りに参加したい方、鳥猟をしたい方 |
初心者へのアドバイス: 費用と手間の少なさでは「わな猟」が入口として人気です。一方、猟仲間との交流が生まれやすいのは「銃猟(巻き狩り)」です。目的や地域の状況に応じて選びましょう。
Step 2: 狩猟免許を取得する
狩猟免許は都道府県が実施する試験に合格することで取得できます。
狩猟免許の4種類(2026年3月時点)
| 免許の種類 | 使える猟具 | 受験手数料 | 主な対象獣 |
|---|---|---|---|
| 第一種銃猟免許 | 散弾銃・ライフル銃 | 5,200円 | シカ、イノシシ、カモ類 |
| 第二種銃猟免許 | 空気銃 | 5,200円 | カモ、キジバト等の小型鳥獣 |
| わな猟免許 | くくり罠・箱罠等 | 5,200円 | シカ、イノシシ、アナグマ等 |
| 網猟免許 | 網(むそう網、はり網等) | 5,200円 | カモ、スズメ等の鳥類 |
試験の流れ:
1. 都道府県の試験日程を確認(年2〜4回実施が一般的)
2. 猟友会が開催する「狩猟免許初心者講習会」を受講(受講料:約1万円)
3. 医師の診断書を取得(約3,000円)
4. 試験を受験(知識試験・適性試験・技能試験)
5. 合格通知を受領 → 免許交付
合格率の目安: 猟友会の講習会を受講した場合、合格率は約80〜90%と高めです。講習会では試験に出る例題をほぼ網羅するため、独学より圧倒的に効率的です。
費用について詳しく知りたい方は「狩猟免許の費用合計|初年度にかかるお金を徹底計算」で内訳を解説しています。
Step 3: 猟銃所持許可を取得する(銃猟の場合)
銃猟を選んだ方は、狩猟免許とは別に猟銃所持許可が必要です。これは公安委員会(警察)の管轄で、取得まで最短でも3か月程度かかります。
猟銃所持許可の取得ステップ:
1. 所轄警察署に申し込み
2. 猟銃等講習会(初心者講習)を受講・考査に合格
3. 教習資格認定申請 → 身辺調査(約1か月)
4. 射撃教習を受講・修了
5. 銃の購入・所持許可申請
6. 所持許可証の交付 → ガンロッカー等の設備検査
手続きの詳細は「猟銃所持許可の流れ|申請から交付までを完全解説」をご覧ください。
Step 4: 狩猟者登録をする
免許を取得しただけでは猟はできません。出猟したい都道府県ごとに狩猟者登録が必要です。
| 項目 | 金額(2026年3月時点) |
|---|---|
| 登録手数料 | 1,800円 |
| 狩猟税(第一種銃猟) | 16,500円 |
| 狩猟税(わな猟) | 8,200円 |
| 損害賠償保険(猟友会ハンター保険等) | 約4,000〜8,000円 |
| **合計(銃猟の場合)** | **約23,000〜27,000円/年** |
注意点: 登録は毎年必要です。また、2つ以上の都道府県で出猟する場合は、それぞれの都道府県で登録が必要になります。
Step 5: 装備を揃える
猟法によって必要な装備は異なりますが、最低限揃えるべきものを整理します。
わな猟の基本装備
| 装備 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| くくり罠(3〜5基) | 1万5,000〜3万円 | 12cmの規制に注意 |
| 止め刺し用ナイフ | 5,000〜1万5,000円 | 銃刀法の範囲内で |
| 長靴・安全靴 | 5,000〜1万円 | 防水・滑り止め付き |
| 作業手袋 | 1,000〜3,000円 | 耐切創タイプ推奨 |
| GPSまたは地図アプリ | 0〜5,000円 | 罠の設置位置記録用 |
銃猟の基本装備
| 装備 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 散弾銃(新品) | 15〜50万円 | 中古なら5〜15万円 |
| ガンロッカー | 2〜5万円 | 法定の保管設備 |
| 装弾ロッカー | 1〜3万円 | 銃と別の場所に設置 |
| 弾(装弾) | 1箱3,000〜5,000円 | 猟期に5〜10箱程度 |
| 狩猟ベスト | 5,000〜2万円 | オレンジ色の着用推奨 |
| 猟靴 | 1〜3万円 | 山歩きに適したもの |
Step 6: 猟場を確保し、初出猟する
装備が揃っても、猟場の確保が最大のハードルです。日本の山林にはすべて所有者がおり、無断での入猟は違法です。
猟場確保の方法:
1. 猟友会に入会する(年会費:約1〜2万円) → ベテラン猟師と一緒に出猟できる
2. 地元の有害鳥獣駆除班に参加する → 自治体経由で猟場と仲間が確保できる
3. 知人・SNSで猟師仲間を探す → 最近はSNSでの交流も活発
初出猟の心得:
- 最初は必ず**経験者と同行**する
- 猟期は原則11月15日〜2月15日(北海道は10月1日〜1月31日)
- ハンターマップ(鳥獣保護区等位置図)で猟区を確認する
- 単独行動は避け、必ず行動計画を誰かに共有する
失敗しないためのコツ・注意点
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 免許は取ったが出猟できない | 猟場や仲間が見つからない | 免許取得前から猟友会に相談 |
| 銃猟の許可取得に1年かかった | 並行手続きをしなかった | 狩猟免許と所持許可を同時進行 |
| 初年度にお金がかかりすぎた | 装備を一気に新品で揃えた | 中古・レンタルを活用する |
| わな猟で獲物がかからない | 罠の設置場所が悪い | 獣道の見極めを先輩猟師に学ぶ |
| ケガやヒヤリハットが起きた | 安全確認の不足 | 初年度は必ず経験者と同行する |
費用・コストの目安
初年度にかかる費用を猟法別にまとめます。
| 費用項目 | わな猟 | 銃猟(散弾銃) |
|---|---|---|
| 狩猟免許取得 | 約2万円 | 約2万円 |
| 猟銃所持許可 | — | 約5〜8万円 |
| 銃の購入 | — | 約15〜50万円 |
| 狩猟者登録 | 約1.5万円 | 約2.5万円 |
| 装備一式 | 約3〜5万円 | 約5〜10万円 |
| 猟友会年会費 | 約1〜2万円 | 約1〜2万円 |
| **初年度合計** | **約8〜12万円** | **約30〜75万円** |
節約のポイント: わな猟の罠は自作可能(材料費で1基2,000〜3,000円程度)。銃は中古であれば新品の3分の1程度で購入できます。また、自治体によっては狩猟免許取得に対する補助金制度を設けている場合もあります。
都道府県別の支援制度比較——初心者が使える補助金・講習
競合記事ではあまり触れられていませんが、実は多くの自治体が狩猟の担い手確保のための支援制度を用意しています。
| 支援内容 | 実施自治体の例 | 金額目安 |
|---|---|---|
| 狩猟免許取得費用の補助 | 長野県、兵庫県、岡山県、高知県など | 5,000〜2万円 |
| 初心者狩猟研修会の無料開催 | 環境省主催、各都道府県 | 無料〜5,000円 |
| わな・銃の購入補助 | 一部市町村 | 上限1〜5万円 |
| 有害鳥獣捕獲の報奨金 | ほぼ全国 | シカ1頭7,000〜1万5,000円 |
| 地域おこし協力隊(狩猟型) | 全国約30自治体(2025年時点) | 月額16〜22万円の活動報酬 |
特に注目なのが「地域おこし協力隊」の狩猟型です。住居の提供や活動報酬を受けながら、ベテラン猟師の指導のもとで実践的に狩猟技術を学べる制度で、「脱サラして猟師になりたい」という方には最も現実的な選択肢のひとつです。
有害鳥獣駆除の報奨金について詳しくは「有害鳥獣駆除の報奨金ガイド」をご覧ください。
実際にやってみると…(現場のリアルな声)
「免許を取るまでは順調だったけど、猟場探しと仲間探しが一番大変だった」——これは初心者猟師から最もよく聞く声です。
実際のところ、狩猟免許の試験自体は講習会を受ければほとんどの方が合格できます。しかし、免許取得後のステップでつまずく方が非常に多いのが現実です。
具体的には:
- **猟友会との関係構築**: 地域によっては高齢化が進み、「若手歓迎」と言いつつも受け入れ体制が整っていないケースがある
- **猟場の獣道を見つけるスキル**: これは座学では身につかない。最低でも1シーズンは経験者の横で学ぶ必要がある
- **獲物の解体**: 初めての解体は想像以上に体力と時間がかかる。事前に解体講習会に参加しておくと安心
現場で聞くアドバイスとして多いのは「免許を取る前に、まず猟友会の集まりに顔を出せ」ということ。狩猟は情報と人脈がものを言う世界です。先に人間関係を作っておくことで、免許取得後すぐに出猟の環境が整います。
よくある質問
Q1: 狩猟免許は何歳から取得できますか?
網猟免許・わな猟免許は**18歳以上**、第一種・第二種銃猟免許は**20歳以上**から取得可能です(2026年3月時点)。
Q2: 狩猟はどの季節にできますか?
猟期は原則として**11月15日〜翌年2月15日**です。北海道は**10月1日〜1月31日**と異なります。なお、有害鳥獣駆除は猟期外でも自治体の許可のもと実施されます。
Q3: 女性でも狩猟を始められますか?
もちろん始められます。近年は女性猟師(いわゆる「狩りガール」)が増加傾向にあり、環境省も女性ハンターの増加を推進しています。わな猟であれば体力的な負担も比較的少なく、入口として選ぶ女性が多いです。
Q4: 仕事をしながら狩猟はできますか?
多くの猟師が**兼業**で活動しています。猟期の週末だけ出猟するスタイルが一般的です。わな猟であれば、出勤前や退勤後に罠の見回りをする方もいます。猟師の収入事情については「[猟師の年収リアル|副業猟師から専業までの収入実態](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e5%b8%ab%e3%81%ae%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97/hunter-real-income/)」で詳しく解説しています。
Q5: 狩猟を始めるのに最もお金がかからない方法は?
**わな猟**から始めるのが最も低コストです。免許取得から狩猟者登録までの費用は約8〜12万円。くくり罠は自作すれば1基2,000〜3,000円で済みます。猟銃の購入が不要なため、初期投資を大幅に抑えられます。
Q6: 狩猟で捕った獲物は販売できますか?
販売するには**食品衛生法に基づく許可**が必要です。個人での食肉販売には食肉処理業の許可と適切な処理施設が求められます。詳しくは「[ジビエ販売許可ガイド|個人で始めるための手続きと費用](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e5%b8%ab%e3%81%ae%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97/gibier-sales-permit-individual/)」をご確認ください。
まとめ:狩猟の始め方のポイント
- **猟法選び**が最初の分岐点。低コストで始めるならわな猟、仲間との狩猟を楽しむなら銃猟
- 狩猟免許は**講習会を受ければ合格率80〜90%**。難易度は高くない
- 銃猟の場合、**猟銃所持許可と並行して**準備を進めることで期間を短縮
- 免許取得よりも**猟場確保と人脈作り**が実は最大のハードル
- 自治体の**補助金・支援制度**を積極的に活用する
- 初年度は必ず**経験者と同行**して安全な狩猟を心がける
まずは最寄りの猟友会か都道府県の環境課に問い合わせて、次の狩猟免許試験の日程を確認するところから始めてみましょう。狩猟免許の取得方法について詳しく知りたい方は「狩猟免許の取り方|申請から合格までの完全ガイド」もあわせてご覧ください。
参考情報
- 環境省「ハンターになるには」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/)
- 環境省「狩猟免許を取得する」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/license.html)
- 大日本猟友会「狩猟免許の取得」(http://j-hunters.com/tobecome/license.php)
- 大日本猟友会「狩猟者数の推移」(http://j-hunters.com/info/suii.php)
- 環境省「鳥獣関係統計」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs2.html)


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