最終更新: 2026-10-18
結論から言うと、ジビエ(シカ肉・イノシシ肉)を学校給食に使う自治体は実在し、2026年2月にも新たに2つの自治体で導入事例が報じられた。ただし、全国的に見ればまだ一部の取り組みにとどまっている。本記事では、直近の導入事例と農林水産省の統計データから、学校給食でのジビエ利用の実態と、広がりにくい理由を整理する。
2026年2月に相次いだ新規導入:埼玉県皆野町と神奈川県小田原市

直近では、2026年2月に埼玉県と神奈川県でそれぞれ新しい導入事例が報じられている。
秩父経済新聞の報道によると、埼玉県秩父郡皆野町は2026年2月5日、町立の幼稚園・小学校・中学校で「皆野町産鹿肉のキーマカレー」を提供した。シカ肉と豚肉を1対1の合いびき肉として使用したもので、県内では初めてのジビエ給食の取り組みだという。黒澤町長は「シカ肉は栄養価が高い。自然の恵みとして循環しながら、子どもたちの健康な体作りに生かしていきたい」とコメントしており、町は年内にカレー以外のジビエ給食も1〜2回提供する予定としている。
小田原市公式発表によると、神奈川県小田原市は2026年2月4日、久野小学校(児童数251人)で小田原産の鹿肉を使ったジビエカレーライスを初めて提供した。カレーの具材には鹿肉団子が使われ、肉はNPO法人おだわらイノシカネットとジャパンマルチハンターズ株式会社との連携で調達された。
いずれも「初めての提供」という位置づけであり、頻度としては年1〜数回程度にとどまっている点は共通している。
全国的にはどこまで広がっているのか:農水省統計で見る実態

では、全国規模で見た場合、ジビエはどの程度学校給食に使われているのか。農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、全国の食肉処理施設が販売した鳥獣肉(イノシシ・シカ等)のうち、学校給食向けの販売数量は約14,294キログラムで、全体の販売数量(約1,466,215キログラム)に対する割合は1.0%にとどまる。
日本経済新聞の報道では、2022年度に学校給食でジビエを年1回以上利用した学校は全国933校で、5年前と比べて2倍以上に増加したと伝えている。増加傾向にあるとはいえ、同記事の見出しが示すとおり、それでも捕獲された害獣全体から見れば利用はごく一部にとどまる。
なぜ広がりにくいのか:家畜との決定的な違い

学校給食への普及が限定的にとどまる背景には、ジビエ特有の供給構造がある。yuime.jpの記事によると、ジビエは家畜と異なり「計画的な供給」ができず、その日に捕獲され加工場に持ち込まれた分しか処理できない。さらに食品衛生法上、とどめを刺してから概ね1時間程度で食肉への加工を始める必要があるとされ、処理できる量や日程をあらかじめ固定することが難しい。
同記事では、捕獲されたイノシシ・シカのうち実際にジビエとして利用されるのは全体のおよそ1割にとどまるとも指摘されている。残りの大半は未利用のまま廃棄されているのが実態で、学校給食という「決まった日に決まった量を安定供給する」用途には、そもそも相性が悪い面があるといえる。加えて、捕獲や解体を担う猟師自体が高齢化により減少傾向にあることも、供給量を増やしにくい要因になっている。
ジビエの供給構造や収入面の課題については、「ジビエの6次産業化とは?猟師が「収入源」にする仕組み」でも扱っているので、関心がある人は参考にしてほしい。
まとめ:学校給食は「広がりつつある」が「主流」ではない
- 2026年2月、埼玉県皆野町・神奈川県小田原市でそれぞれ初めてのジビエ給食が実施され、どちらもシカ肉を使ったカレーだった
- 全国では2022年度に933校が年1回以上ジビエ給食を実施し、5年で2倍以上に増加した一方、農水省統計では学校給食向けの販売数量は全体の1.0%にとどまる
- 広がりにくい理由は、ジビエが家畜のように計画生産できず、捕獲量や処理タイミングが安定しないこと
- 捕獲された害獣のうち実際にジビエとして利用されるのは約1割で、学校給食はその一部をさらに活用する取り組みという位置づけになる
ジビエという食材そのものの基礎知識を確認したい人は、「ジビエとは何か?【完全解説】」もあわせて読んでほしい。統計で見る狩猟・ジビエ業界の全体像は「狩猟・ジビエ業界の統計まとめ」でも定期更新中。
参考情報
- 秩父経済新聞「皆野町で県内初の「ジビエ給食」提供 食育と地域課題解決につなげる」(確認日: 2026年10月18日) https://chichibu.keizai.biz/headline/816/
- 小田原市「ジビエ給食を実施しました」(確認日: 2026年10月18日) https://www.city.odawara.kanagawa.jp/press/detail.php?prs_id=13612
- 日本経済新聞「ジビエ給食、5年で2倍に それでも捕獲害獣の1割」(確認日: 2026年10月18日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD266BE0W4A820C2000000/
- yuime.jp「ジビエは安定供給するのが難しい。他の地域はどうしているの?」(確認日: 2026年10月18日) https://yuime.jp/post/jibie-stable-supply-case-study
- 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度) — e-Stat 統計表ID: 0002119996(確認日: 2026年10月18日) https://www.e-stat.go.jp/stat-search?kikan=00500&toukei=00500248&page=1


コメント