最終更新: 2026-05-18
環境省の統計によると、日本の狩猟免許所持者は1975年度の約51.8万人から、近年は約20万人へと60%以上減少しています。さらに所持者の約65%が60歳以上という深刻な高齢化が進行中です。「猟師の世界は高齢化しているらしいけど、実際どのくらい深刻なの?」「これから猟師を目指しても大丈夫なのだろうか」と不安に感じていませんか。
この記事では、猟師の高齢化問題の現状を政府統計データに基づいて解説し、担い手不足が生じている原因、社会への影響、そして若手にとっての参入チャンスまでを徹底的にお伝えします。まず高齢化の現状データを確認し、次に原因と影響を分析、最後に若手が今こそ狩猟業界に飛び込むべき理由を具体的にご紹介します。
猟師の高齢化問題とは?基本をわかりやすく解説
猟師の高齢化問題とは、日本国内の狩猟免許所持者の平均年齢が上昇し続け、現役で実猟を行うハンターの数が減少し続けている社会課題のことです。この問題は単に「猟師が減っている」というだけでなく、農作物への鳥獣被害の拡大、生態系のバランス崩壊、さらには地方集落の安全にまで影響を及ぼしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 狩猟免許所持者の高齢化と減少による担い手不足 |
| 背景 | 1970年代のピークから一貫して減少。都市化・ライフスタイル変化が主因 |
| 影響範囲 | 鳥獣被害対策、ジビエ産業、地域の安全、生態系管理 |
| 主な指標 | 狩猟免許所持者数、年齢構成比、農作物被害額 |
特に注目すべきは、狩猟免許所持者のうち実際に毎年猟に出る「実猟者」はさらに少なく、実質的に10万人以下とも推計されている点です。免許を持っていても体力的な問題や猟場へのアクセス困難などの理由で猟に出られない高齢者が相当数いるのが現実です。
猟師の高齢化を数字で見る|統計データの推移
猟師の高齢化がどれほど進んでいるのか、公的統計データで確認しましょう。
狩猟免許所持者数の推移
大日本猟友会および環境省の統計によると、狩猟免許所持者数は以下のように推移しています。
| 年度 | 所持者数(概数) | 前期比 |
|---|---|---|
| 1975年度 | 約51.8万人 | ― |
| 1990年度 | 約29万人 | 約44%減 |
| 2000年度 | 約22万人 | 約24%減 |
| 2012年度 | 約18.1万人 | 約18%減 |
| 2016年度 | 約20万人 | 微増 |
| 2023年度 | 約20万人 | 横ばい |
1975年度のピーク時と比較すると、約60%以上の減少です(環境省「鳥獣関係統計」、大日本猟友会資料より)。2010年代以降は横ばいに転じていますが、これはわな猟免許の新規取得者が増えたことが主な要因で、銃猟の担い手は引き続き減少しています。
年齢構成の変化
| 年齢層 | 2012年度の割合 | 傾向 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 約3% | 微増傾向 |
| 30〜49歳 | 約15% | 横ばい |
| 50〜59歳 | 約17% | 減少 |
| 60歳以上 | 約65% | 高止まり |
出典: 環境省「鳥獣関係統計」(2014年度時点)
60歳以上が全体の約65%を占めるという数字は、今後10〜15年で大量の引退が見込まれることを意味しています。現場では50代でも「若手」と呼ばれることがあるほど、年齢構成の偏りは顕著です。
猟師の高齢化が進む5つの原因
猟師の高齢化は、単一の要因ではなく複数の社会的変化が重なって生じています。
原因1: 都市化と生活様式の変化
戦後の高度経済成長期を通じて、日本は急速に都市化が進みました。かつて農村部で自然に行われていた「生活の一部としての狩猟」は、都市に移住した世代には縁遠いものとなりました。山や森に日常的に接する機会がなければ、狩猟に興味を持つきっかけ自体が失われます。
原因2: 銃規制の厳格化
日本の銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)は世界でも有数の厳しさで知られています。猟銃の所持許可を得るには、講習会の受講、考査の合格、射撃教習の修了、身辺調査など、半年以上のプロセスが必要です。銃の保管にも厳格な基準が求められ、この手続きの煩雑さが新規参入の障壁となっています。
原因3: 経済的な負担
狩猟を始めるには相当な初期投資が必要です。
| 費用項目 | 概算金額 |
|---|---|
| 狩猟免許取得(試験・講習) | 約2〜5万円 |
| 猟銃所持許可(講習・射撃教習) | 約5〜8万円 |
| 猟銃購入 | 約15〜50万円 |
| 狩猟者登録(年間) | 約2〜3万円 |
| 猟友会費(年間) | 約1〜2万円 |
| 保険料(年間) | 約5,000〜1万円 |
| 装備一式 | 約10〜30万円 |
初年度だけで最低でも30万円以上、銃猟の場合は50万円を超えることも珍しくありません。猟師としての収入が不安定なまま、この初期投資を回収する見通しを立てることは容易ではないのが現状です。
原因4: 獲物の処理・流通の課題
鳥獣を捕獲した後の処理も大きな負担です。個人猟師が食肉として販売するには、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可を取得した施設で解体する必要があります。処理施設が近くにない地域では、捕獲した獲物を自家消費するか廃棄するしかなく、せっかくの資源が活用されないケースも少なくありません。
原因5: 猟友会の組織的課題
猟友会は全国の猟師をつなぐ基盤組織ですが、会員の高齢化はそのまま組織の高齢化を意味します。若手が入会しても、既存の慣習や意思決定プロセスに馴染めず、定着しないという声も聞かれます。組織の世代交代が進まないことが、若手の参入意欲をさらに下げる悪循環を生んでいます。
高齢化がもたらす社会的影響|鳥獣被害と生態系の危機
猟師の高齢化と担い手不足は、社会全体に深刻な影響を及ぼしています。
農作物の鳥獣被害の拡大
農林水産省の統計によると、野生鳥獣による農作物被害額は年間約164億円(令和5年度時点)にのぼります。シカやイノシシによる食害が全体の約7割を占めており、被害を防ぐために捕獲を行う担い手が不足していることが被害拡大の一因です。
ジビエ産業への影響
一方で、ジビエ(野生鳥獣肉)産業は成長を続けています。農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設が処理して得た金額は合計約54億円に達しています。内訳を見ると、食肉の販売金額が全体の81.5%を占め、シカ肉が47.6%、イノシシ肉が30.4%という構成です(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。
| 販売区分 | 金額(百万円) | 構成割合 |
|---|---|---|
| 食肉(計) | 4,404 | 81.5% |
| 食肉(シカ) | 2,571 | 47.6% |
| 食肉(イノシシ) | 1,644 | 30.4% |
| ペットフード | 888 | 16.4% |
| 皮革・鹿角など | 107 | 2.0% |
| 合計 | 5,405 | 100% |
出典: 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)、e-Stat 統計表ID: 0002119974
ジビエの市場は拡大しているにもかかわらず、原材料となる野生鳥獣の捕獲を担うハンターが不足しているという矛盾が生じています。この需給ギャップは、若手猟師にとって大きなビジネスチャンスでもあります。
生態系管理の停滞
シカの個体数管理については、環境省が「ニホンジカの個体数半減目標」を掲げていますが、当初の2023年度達成目標は未達のまま2028年度に延長されました。捕獲圧を維持するための人手が足りていないことが、目標未達の大きな要因です。
森林の下層植生がシカに食べ尽くされることで、土壌浸食や土砂崩れのリスクが高まるなど、生態系への影響は猟師の担い手不足と直結しています。
猟師の高齢化への対策|行政・業界の取り組み
高齢化問題に対して、行政や業界団体はさまざまな対策を講じています。
ガバメントハンター制度
2025年に成立し同年9月1日に施行された改正鳥獣保護管理法では、クマなどの危険鳥獣が生活圏に侵入した際に銃猟を行える「緊急銃猟制度」が新設されました。この法改正と並行して注目されているのが「ガバメントハンター」構想です。これは狩猟免許を持つ人を地方自治体が職員として雇用し、安定した身分と報酬のもとで鳥獣管理を行う仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 背景 | 改正鳥獣保護管理法(2025年9月施行)による体制強化 |
| 概要 | 鳥獣捕獲の専門職員を地方自治体が雇用 |
| 雇用形態 | 地方公務員(常勤または会計年度任用職員) |
| 対象者 | 狩猟免許保持者、または取得予定の公務員 |
| 現状 | 北海道・東北の知事会など複数の自治体から制度整備の要望 |
これまでボランティアに近い形で鳥獣駆除を担ってきた猟友会の入り方とメリットを見直し、「職業としてのハンター」という新しいキャリアパスを制度として整備する動きは、業界にとって大きな転換点です。
狩猟免許取得の支援拡充
各自治体は狩猟免許の取得費用を補助する制度を拡充しています。補助金の額は自治体によって異なりますが、免許取得にかかる費用の全額または一部を負担してくれるケースが増えています。猟師の移住支援を行う自治体では、移住費用と合わせて狩猟免許の取得支援を受けられることもあります。
ICT技術の導入
高齢のハンターが山に入らなくても鳥獣管理ができるよう、ICTを活用したわなの遠隔監視システムが普及し始めています。センサー付きの罠が捕獲を検知するとスマートフォンに通知が届く仕組みで、見回りの負担を大幅に削減できます。
若手が今こそ参入すべき理由|高齢化はチャンスでもある
猟師の高齢化は深刻な社会課題である一方、裏を返せば若手にとって大きな参入チャンスでもあります。ここでは、キャリアの観点から「なぜ今なのか」を整理します。
需要と供給のギャップが最大
農作物被害額は年間約164億円(令和5年度、農林水産省調べ)、鳥獣害対策の国家予算は年間約99億円規模で投下され続けています。それに対して担い手は減る一方です。需要が高く供給が少ない市場は、新規参入者にとって最も有利な環境です。
ジビエ市場の成長
農林水産省の調査では、ジビエ食肉処理施設への搬入重量はシカが5,605トン、イノシシが1,467トンにのぼります(e-Stat 統計表ID: 0002119971、令和5年度)。販売先も卸売業者(31.4%)、外食産業(27.7%)、消費者への直接販売(13.1%)と多様化しており、特にインターネット通販が全体の7.7%を占めるなど、個人猟師でも販路を持てる環境が整いつつあります(e-Stat 統計表ID: 0002119996)。
詳しいデータは狩猟・ジビエ業界の統計まとめをご覧ください。
猟師の年収のリアルでも解説していますが、ジビエの6次産業化(捕獲→解体→加工→販売)を自ら手がけることで、安定した収入を得ている若手猟師も出てきています。
複業・パラレルキャリアとの相性
現代の働き方は「一つの仕事に専念する」スタイルから、複数の収入源を持つ「パラレルキャリア」へと変化しています。狩猟を副業として行う選択肢は、特にリモートワークが可能な職種との相性が良く、平日はデスクワーク、週末は猟場という働き方を実践している人も増えています。
行政の支援制度が充実
前述のガバメントハンター制度に加え、地域おこし協力隊として有害鳥獣対策に携わるポジションも各地で募集されています。協力隊の場合、月額約16〜20万円の報酬に加え、活動費も別途支給される自治体が多く、移住のハードルも下がります。
狩猟免許の取り方を確認し、自治体の補助制度を活用すれば、初期費用の負担は大きく軽減できます。
女性猟師の増加が示す変化の兆し
近年、女性猟師が増加傾向にあることも、業界の変化を示すシグナルです。これまで「男性・高齢者」に偏っていた猟師の属性が多様化することは、新しい視点や文化が業界に入ってくることを意味し、若手にとって参入しやすい空気が醸成されつつあります。
実際に若手猟師として活動する人の声
現場の声を聞くと、若手猟師の多くが「高齢化している今だからこそ、ベテラン猟師から直接技術を学べるチャンスがある」と語っています。ベテランの知識と経験は書籍やインターネットでは得られない貴重なものであり、世代交代が進む前にその技術を受け継ぐことには大きな価値があります。
ある30代の猟師は「地域の猟友会に入ったとき、最初は年齢差に戸惑ったけれど、むしろ歓迎してもらえた。若手が珍しいからこそ、手厚く教えてもらえる環境がある」と話しています。高齢化が進んでいるからこそ、若手の存在は地域から歓迎されるのです。
また、脱サラして猟師になった40代の方からは「前職のIT知識を活かして、罠の遠隔監視やSNSでのジビエ販売を行っている。異業種からの転身だからこそ、これまでの猟師にはない発想で仕事ができている」という声も聞かれます。
猟師の高齢化問題に関するよくある質問
Q1: 猟師は何歳まで続けられますか?
法律上の年齢上限はありません。体力と判断力が維持できれば、70代でも現役で猟を続けている方はいます。ただし、銃猟の場合は猟銃の所持許可更新時に認知機能検査が行われるため、健康状態によっては継続が難しくなることもあります。
Q2: 若手が猟師になるには、まず何から始めればよいですか?
最初のステップは狩猟免許の取得です。わな猟免許であれば銃を扱う必要がなく、比較的手軽に取得できます。試験は年に数回実施されており、事前講習を受ければ合格率は比較的高い水準です。詳しくは[狩猟の始め方ガイド](https://kariudo.jp/hunting/hunting-beginner-guide/)をご覧ください。
Q3: 猟師の高齢化は今後改善する見込みはありますか?
わな猟免許の新規取得者は増加傾向にあり、若年層の参入は徐々に進んでいます。しかし、銃猟免許の所持者減少には歯止めがかかっておらず、ガバメントハンター制度などの政策的な対応が今後の鍵を握ります。現状の増加ペースが続けば、20年後には所持者が10万人を切る可能性も指摘されています。
Q4: ガバメントハンターになるにはどうすればよいですか?
ガバメントハンターは自治体が狩猟免許保持者を職員として雇用する仕組みです。現時点では各自治体が独自に採用を進めており、北海道・東北を中心に制度整備の要望が出ています。狩猟免許を持っていること(または取得意思があること)が前提となります。各自治体の公式サイトや求人情報を定期的に確認しましょう。
Q5: 猟師として安定した収入を得ることは可能ですか?
有害鳥獣駆除の報奨金(シカ1頭あたり7,000〜15,000円程度、自治体により異なる)に加え、ジビエの販売、皮革や鹿角の加工品販売など、収入源を複数持つことで安定化を図ることは可能です。ただし、猟だけで年収400万円以上を得ている人は少数派であり、多くの場合は他の仕事との兼業がベースとなります。
まとめ:猟師の高齢化問題を正しく理解し、次の一歩を踏み出そう
猟師の高齢化問題について、改めてポイントを整理します。
- 狩猟免許所持者は1975年の約51.8万人から約20万人に減少し、60歳以上が約65%を占める
- 高齢化の原因は都市化、銃規制、経済的負担、流通課題、組織の硬直化の5つが複合的に絡み合っている
- 農作物被害額は年間約164億円(令和5年度)、一方でジビエ市場は約54億円規模に成長中
- ガバメントハンター制度やICT活用など、新たな対策が動き出している
- 需要と供給のギャップ、支援制度の充実、ジビエ市場の成長が若手参入の追い風
高齢化が深刻だからこそ、今から参入する若手には大きなチャンスがあります。まずは狩猟免許の取り方を確認し、自分に合ったスタイルを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考情報
- 環境省「鳥獣関係統計」(狩猟免許所持者数・年齢構成の推移)
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974、0002119971、0002119996)
- 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和5年度)」(2024年12月公表)
- 環境省「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」(2025年)
- 大日本猟友会「狩猟者数の推移」
- 日本経済新聞「狩猟免許、6割が60歳以上 獣害対策の担い手減、課題」(2024年2月)
- 日本経済新聞「クマ被害、猟銃使用緩和でもハンター高齢化 猟友会頼み見直し必要」(2025年5月)

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