最終更新: 2026-06-20
農林水産省の令和5年度調査によると、全国のジビエ食肉処理施設が野生鳥獣を処理して得た金額は約54億円に達し、1施設あたりの平均は約701万円にのぼる(e-Stat 統計表ID: 0002119974、2024年公表)。施設単体で700万円超の売上が出ている以上、猟師個人でも年収1000万円は本当に不可能なのだろうか。
「猟師の平均年収は240万円」と聞いて、高収入は無理だと諦めていないだろうか。確かに狩猟だけで1000万円を稼ぐのは現実的ではない。しかし、捕獲・加工・販売・教育・法人契約を組み合わせる「複合型猟師」なら、話は変わってくる。
この記事では、猟師の年収1000万円が実現可能かどうかをデータで検証し、達成に必要な5つの収入チャネル、法人化のステップ、年商モデルの組み立て方までを解説する。まず平均年収の実態を確認し、次に収入を積み上げるチャネルを一つずつ解説、最後に1000万円到達のロードマップを提示する。
猟師の年収1000万は現実的か?データで検証する
結論から言えば、「狩猟のみ」で年収1000万円を達成している猟師は、国内にほぼ存在しない。しかし、狩猟を基盤にした事業展開で年商1000万円を超えている個人・法人は確実に増えている。
まずは猟師の年収の現実を確認しよう。
| 働き方 | 年収の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 趣味・副業ハンター | 0〜30万円 | 年数回の出猟、報奨金中心 |
| 副業本格派 | 30〜100万円 | 週末中心に年間30頭以上捕獲 |
| 専業猟師(個人) | 150〜300万円 | 報奨金+ジビエ販売 |
| 認定鳥獣捕獲等事業者(雇用) | 300〜450万円 | 自治体契約、安定した基本給 |
| 複合型猟師(法人経営) | 500〜1500万円 | 捕獲+加工+販売+教育の複合 |
ここで注目すべきは「複合型猟師」の存在だ。猟だけに頼らず、ジビエの加工・販売・スクール運営・コンサルティングなどを掛け合わせることで、年収1000万円ラインを突破しているケースが出てきている。
ポイントは「捕獲で稼ぐ」のではなく、「捕獲を起点に価値を積み上げる」という発想の転換にある。
年収1000万を目指す5つの収入チャネル
猟師が1000万円の年収を構築するには、以下の5つのチャネルを戦略的に組み合わせることが鍵になる。
チャネル1: 有害鳥獣駆除の報奨金・委託費
猟師の基礎収入となるのが、自治体からの報奨金だ。クマの場合、自治体ごとに金額差が大きい。
| 地域 | クマ1頭あたり報奨金 | 備考 |
|---|---|---|
| 北海道(十勝の一部町村) | 約8万円 | 2025年時点 |
| 北海道奈井江町 | 日当4万1600円 | 2025年に引き上げ |
| 北海道紋別市 | 5万円 | 補助金として支給 |
| 山形県村山市 | 3万円 | 2024年に1万円→3万円に増額 |
| イノシシ(全国平均) | 8000〜1万5000円 | 鳥獣被害防止総合対策交付金 |
| シカ(全国平均) | 7000〜1万円 | 同上 |
2026年6月には、秋田県がガバメントハンター6人の採用を発表し、東京都もツキノワグマ猟を20年ぶりに解禁する方針を示した。自治体の需要は今後も拡大が見込まれる。
報奨金だけで見ると、年間100頭のシカを捕獲しても70〜150万円程度。これだけでは1000万円には届かない。報奨金はあくまで「基礎収入」であり、次のチャネルと組み合わせることで収入を伸ばしていく。
有害鳥獣駆除の報奨金について詳しくはこちらの記事で自治体別の金額を一覧で紹介している。
チャネル2: ジビエ食肉の加工・販売
収入を大きくスケールさせる鍵は、自分で獲った獲物を自分で加工・販売する「6次産業化」にある。
農林水産省の令和5年度調査(e-Stat 統計表ID: 0002119974)によると、ジビエ食肉処理施設が野生鳥獣を処理して得た金額の内訳は以下の通りだ。
| 売上区分 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 食肉販売(合計) | 約44億円 | 81.5% |
| うちシカ肉 | 約25.7億円 | 47.6% |
| うちイノシシ肉 | 約16.4億円 | 30.4% |
| ペットフード | 約8.9億円 | 16.4% |
| 皮革 | 約1,400万円 | 0.3% |
| 鹿角製品(鹿茸等) | 約9,000万円 | 1.7% |
| 合計 | 約54億円 | 100% |
出典: 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)、e-Stat 統計表ID: 0002119974
販売先の構成も重要だ(e-Stat 統計表ID: 0002119996)。卸売業者が31.4%と最多だが、消費者への直接販売も13.1%を占め、うちインターネット経由が7.7%に達している。EC販売は個人でも参入しやすいチャネルと言える。
食肉処理施設を自前で構えるか提携施設を使うかで初期投資は大きく変わるが、仮に年間150頭のシカを処理・販売できれば、食肉だけで年間300〜500万円の売上が見込める。ペットフード用の端材販売も加えれば、さらに上積みが可能だ。
ジビエの個人販売に必要な許可については、ジビエ販売許可の取得方法で詳しく解説している。
チャネル3: 認定鳥獣捕獲等事業者としての法人契約
認定鳥獣捕獲等事業者とは、鳥獣保護管理法に基づき、都道府県知事から捕獲事業の認定を受けた法人のことだ。この認定を取得すると、都道府県が実施する指定管理鳥獣捕獲等事業の委託を直接受けることができる。
法人として認定を受けた場合のメリットは大きい。
| 項目 | 個人猟師 | 認定事業者(法人) |
|---|---|---|
| 受注可能な事業 | 市町村の有害捕獲のみ | 都道府県の指定管理事業も受注可 |
| 狩猟税 | 通常課税(1万6500円〜) | 免除 |
| 捕獲方法 | 猟期・区域の制限あり | 指定事業は猟期外・区域外も可 |
| 収入の安定性 | 頭数次第で不安定 | 年間契約で安定 |
| 1件あたりの契約規模 | 数十万円 | 数百万〜数千万円 |
認定事業者として従事者を雇用する場合、1人あたり年収300〜450万円が相場だ。法人代表として3〜5人のチームで複数自治体から年間契約を受注すれば、法人としての年商は1000万〜3000万円規模に達する。そこから経費と人件費を差し引いた後の代表者報酬として、年収1000万円は十分に射程圏内に入る。
チャネル4: 教育・スクール・コンサルティング
狩猟者の高齢化が進む中、猟師育成のニーズは急速に高まっている。環境省のデータによると、狩猟免許所持者の約60%が60歳以上で、若手ハンターの育成は全国的な課題となっている。
この需要に応える形で、狩猟スクールやコンサルティングを展開する猟師が増えつつある。
収入モデルの一例を示す。
| 事業内容 | 単価の目安 | 年間回数 | 年間売上 |
|---|---|---|---|
| 狩猟体験ツアー(日帰り) | 1人1万5000〜3万円 | 月2回×8名 | 288〜576万円 |
| わな猟入門講座(2日間) | 1人3〜5万円 | 年6回×10名 | 180〜300万円 |
| 自治体向け捕獲技術研修 | 1回20〜50万円 | 年5回 | 100〜250万円 |
| 獣害対策コンサルティング | 月額10〜30万円 | 3〜5件 | 360〜1800万円 |
実際に現場で活動している猟師の中には、狩猟体験や講座の運営だけで年間200〜300万円の売上を上げている人もいる。自治体や農業法人からの獣害対策コンサルを組み合わせれば、このチャネルだけでも相当な収入になる。
猟師の高齢化と若手育成の現状については別記事で詳しく解説しているので、あわせて確認してほしい。
チャネル5: メディア発信・コンテンツ収入
YouTube、SNS、ブログなど、狩猟をテーマにしたメディア発信で収入を得る猟師も増えている。狩猟系YouTuberの中には、チャンネル登録者数が10万人を超え、広告収入だけで年間100〜300万円を稼ぐ人もいる。
メディア発信のメリットは、狩猟活動そのものがコンテンツになる点だ。猟の様子、解体の技術、ジビエ料理のレシピ、装備のレビューなど、日常の活動をそのまま収入に変換できる。
また、メディアでの認知が広がれば、スクールやコンサルへの集客導線にもなり、チャネル4との相乗効果が大きい。
年収1000万を実現する複合モデルのシミュレーション
ここまで紹介した5つのチャネルを組み合わせた場合、年収1000万円がどのように見えてくるかをシミュレーションしてみよう。
| 収入チャネル | 年間売上(目安) |
|---|---|
| 報奨金(シカ80頭+イノシシ20頭+クマ5頭) | 150〜250万円 |
| ジビエ食肉販売(EC+飲食店卸) | 300〜500万円 |
| 認定事業者としての委託事業 | 200〜400万円 |
| 狩猟スクール・体験ツアー | 150〜300万円 |
| メディア収入(YouTube+記事監修) | 50〜150万円 |
| 合計 | 850〜1600万円 |
もちろん、これらすべてを1人でこなすのは現実的ではない。しかし、法人化して2〜3人のチームで分担すれば、法人売上として1000万〜1500万円は決して夢物語ではないことがわかる。
ここで重要なのは、「1つのチャネルで1000万円を目指す」のではなく、「5つのチャネルを掛け合わせて積み上げる」という考え方だ。
1000万円に到達するまでのロードマップ
では、実際にゼロから猟師として年収1000万円を目指すとしたら、どのようなステップが必要だろうか。
Phase 1: 基盤構築(1〜2年目)
まずは猟師になるための基本ステップから始める。
- 狩猟免許(わな猟・第一種銃猟)を取得する
- 猟友会に加入し、先輩猟師のもとで実猟を経験する
- 有害鳥獣駆除に参加し、報奨金の仕組みを体で覚える
- 年間捕獲目標: 20〜30頭
- この段階での年収目安: 30〜80万円(副業として)
副業として狩猟を始める際のポイントは、当サイトの副業猟師の記事で詳しく解説している。
Phase 2: 専業化と6次産業化(3〜5年目)
- 食肉処理施設との提携、または自前施設の開設を検討する
- ジビエ食肉のEC販売を開始する
- 狩猟体験ツアーや初心者向け講座を試験的に実施する
- 年間捕獲目標: 80〜150頭
- この段階での年収目安: 300〜500万円
Phase 3: 法人化と事業拡大(5〜8年目)
- 認定鳥獣捕獲等事業者の認定を取得する
- 複数自治体との年間契約を締結する
- チームメンバーを2〜3名雇用する
- ジビエ事業の販路を飲食店・卸売へ拡大する
- コンサルティングや研修事業を本格化する
- この段階での年収目安: 800〜1500万円
現場の声: 「掛け算」が重要
ある山間部で認定鳥獣捕獲等事業者として活動する猟師は、「捕獲だけでは時給換算すると最低賃金を下回ることもある。でも、獲った獲物を自分で加工して売り、その過程を動画にして発信し、さらに獣害対策の相談を受けるようになったら、年間の売上が一気に変わった」と語っている。
特に重要なのは、ジビエ販売とペットフード販売の組み合わせだ。農林水産省の統計によれば、ペットフード向けのジビエ販売額は約8.9億円で全体の16.4%を占める(令和5年度)。食肉にならない部位をペットフード用に販売すれば、1頭あたりの収益を最大化できる。
猟師の年収1000万に関するよくある質問
Q1: 猟師の平均年収はいくらですか?
猟師の平均年収は約240万円とされている。ただし、これは副業・趣味の猟師も含んだ数字であり、専業猟師に限れば150〜300万円、認定鳥獣捕獲等事業者であれば300〜450万円が目安だ。詳しくは[猟師の年収リアル事情](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e5%b8%ab%e3%81%ae%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97/hunter-real-income/)で解説している。
Q2: 狩猟だけで年収1000万円は達成できますか?
狩猟(報奨金による捕獲活動)のみで年収1000万円を達成するのは、現実的には極めて難しい。仮にシカ1頭1万円の報奨金で1000頭捕獲しても1000万円だが、1人で年間1000頭捕獲するのは物理的にほぼ不可能だ。ジビエ販売やスクール運営、法人契約などを組み合わせた「複合型」での達成が現実的な道筋となる。
Q3: 認定鳥獣捕獲等事業者になるにはどうすればよいですか?
認定鳥獣捕獲等事業者は法人格が必要であり、個人では取得できない。法人を設立した上で、安全管理体制の整備、従事者の技能基準(射撃技能や安全講習の修了など)を満たし、都道府県知事に申請して認定を受ける。狩猟税が免除されるなど経済的メリットも大きい。
Q4: ガバメントハンターとは何ですか?年収はどのくらいですか?
ガバメントハンターとは、自治体が直接雇用する鳥獣捕獲の専門職員のことだ。2026年6月に秋田県が6人の採用を発表したことでも話題になった。給与は自治体の非常勤職員や会計年度任用職員の基準に準じるため、年収300〜450万円程度が多い。安定した雇用形態である反面、上限はあるため、年収1000万円を目指すなら独立して事業化するルートが必要になる。
Q5: 猟師として開業するのに初期費用はどれくらいかかりますか?
銃猟の場合、猟銃購入(20〜50万円)、保管設備(3〜10万円)、狩猟免許取得費用(約5万円)、猟友会入会・登録費(3〜5万円)、狩猟保険(約3万円)で、初年度は合計35〜75万円程度が必要だ。さらにジビエの加工販売を始めるなら食肉処理施設の許可取得や設備投資が追加で必要となる。小規模なら数百万円、本格的な施設なら1000万円以上の初期投資が見込まれる。
Q6: 熊猟は年収アップに有効ですか?
クマの報奨金は他の鳥獣に比べて高額(1頭3〜8万円)であり、熊胆や熊肉の販売も高値がつきやすい。ただし、クマ猟は危険性が高く、高度な技術と経験が必要だ。熊猟で年収を上げたい方は、当サイトの熊猟師の年収解説記事もあわせて読んでほしい。
まとめ:猟師の年収1000万は「掛け算」で実現する
猟師の年収1000万円は、狩猟のみでは到達が困難だが、以下の5つの収入チャネルを組み合わせれば現実的な目標になる。
- 有害鳥獣駆除の報奨金で基礎収入を確保する(150〜250万円)
- ジビエ食肉の加工・販売で売上を積み上げる(300〜500万円)
- 認定鳥獣捕獲等事業者として法人契約を受注する(200〜400万円)
- 狩猟スクール・コンサルティングで知見を収益化する(150〜300万円)
- メディア発信で認知と副収入を獲得する(50〜150万円)
重要なのは、Phase 1で基礎を固め、Phase 2で6次産業化に取り組み、Phase 3で法人化して事業を拡大するという段階的なアプローチだ。いきなり全チャネルを始めるのではなく、捕獲の技術を磨きながら一つずつ収入源を増やしていくのが現実的なルートとなる。
まずは猟師の仕事内容と10種の職種を確認し、自分がどの領域で強みを発揮できるかを見極めることから始めてみよう。
参考情報
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974)— ジビエ食肉処理施設の売上データ
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査 販売先別販売数量(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119996)— 販売チャネル構成比
- 環境省「鳥獣保護管理法に基づく認定鳥獣捕獲等事業者制度」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort5/)— 認定制度・狩猟税免除の根拠
- 総務省「狩猟税」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_17.html)— 狩猟税額の法的根拠
- 日本経済新聞「狩猟免許、6割が60歳以上 獣害対策の担い手減」(2024年2月)— 狩猟者の高齢化データ
- 日本経済新聞「クマ対策、自治体で相次ぎ強化 ハンターに報酬拡充」(2025年10月)— 自治体報奨金の動向
- 平均年収.jp「猟師(マタギ)の年収」(https://heikinnenshu.jp/other/matagi.html)— 平均年収240万円の出典

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