最終更新: 2026-06-16
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理で得た金額は全国で約54億円に達しています(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。一方で狩猟者の高齢化は進行しており、若い担い手の確保が業界全体の課題です。
「猟師ってどんな仕事をするの?」「山で動物を獲るだけが仕事?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。実は、猟師に関わる仕事は驚くほど多岐にわたります。
この記事では、猟師の仕事内容を3つの業務領域に分けて整理したうえで、狩猟に関わる10種類の職種を比較テーブルで一覧化します。さらに、1年間の業務サイクル、必要な資格とスキル、職種別の収入目安まで、猟師の仕事の全体像をお伝えします。
猟師の仕事内容とは?3つの業務領域で理解する
猟師の仕事内容は、大きく3つの領域に分けて理解するとわかりやすいです。「捕獲」「防除」「利活用」の3本柱で成り立っています。
| 業務領域 | 具体的な内容 | 関わる場面 |
|---|---|---|
| 捕獲(狩猟・有害鳥獣駆除) | 銃猟・わな猟・網猟で野生鳥獣を捕獲する | 猟期の登録狩猟、自治体からの有害鳥獣捕獲許可 |
| 防除(被害対策) | 電気柵の設置、追い払い、見回り、住民への啓発 | 自治体の鳥獣被害対策事業、農家からの依頼 |
| 利活用(ジビエ・副産物) | 解体・食肉加工・販売、ペットフード製造、皮革加工 | ジビエ処理施設、直売所、ECサイト |
特に注目すべきは「利活用」の領域です。農林水産省のデータでは、ジビエの販売金額のうち食肉が81.5%(約44億円)、ペットフードが16.4%(約9億円)を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119974、令和5年度)。猟師の仕事は「獲って終わり」ではなく、獲った後の処理・加工・販売まで含むのが現代の実態です。
また、登録狩猟(毎年11月15日〜翌2月15日頃の猟期に行う狩猟)と、許可捕獲(自治体から許可を受けて通年で行う有害鳥獣駆除)では、業務内容も法的な位置づけも異なります。猟師の仕事内容を正確に理解するには、この違いを押さえておく必要があります。
猟師に関わる仕事の種類|10の職種マップ
「猟師」と一口にいっても、実際には多様な職種が存在します。以下の表は、狩猟に関わる10種類の仕事を雇用形態・収入・参入しやすさで比較したものです。
| 職種 | 雇用形態 | 年収目安 | 必要資格 | 参入しやすさ |
|---|---|---|---|---|
| 専業猟師 | 個人事業主 | 200万〜400万円 | 狩猟免許・猟銃所持許可 | 難しい |
| 兼業猟師(副業) | 会社員+個人 | 本業+50万〜100万円 | 狩猟免許 | やや易しい |
| 有害鳥獣駆除員 | 自治体委託 | 報奨金制(年100万〜300万円) | 狩猟免許 | 普通 |
| 地域おこし協力隊(鳥獣害枠) | 任期付公務員 | 200万〜280万円 | 狩猟免許(着任後取得可の自治体あり) | 易しい |
| ジビエ処理施設職員 | 正社員・パート | 250万〜350万円 | 食品衛生責任者(推奨) | 易しい |
| 狩猟インストラクター | 業務委託・講師 | 案件単価制 | 狩猟免許+実務経験 | 難しい |
| 野生動物管理の研究員・NPO職員 | 正社員・研究員 | 300万〜500万円 | 大学卒以上が多い | 普通 |
| 自治体の鳥獣対策担当 | 地方公務員 | 自治体規定に準ずる | 公務員試験 | 普通 |
| 狩猟用品の販売・開発 | 正社員・個人事業主 | 300万〜500万円 | 特になし(狩猟知識が強み) | やや易しい |
| ガイドハンター(狩猟体験ガイド) | 個人事業主 | 季節変動大 | 狩猟免許+ガイド実績 | やや難しい |
この10種の中から、特に注目度が高い5つの職種について詳しく解説します。
専業猟師:山で生計を立てるプロフェッショナル
専業猟師は、狩猟と有害鳥獣駆除を組み合わせて収入を得る「昔ながらの猟師」です。猟期中は登録狩猟で獲物を確保し、猟期外は自治体の有害鳥獣捕獲許可を得て活動します。ジビエの自家加工・販売まで手がける猟師もいます。
収入は猟師の年収リアル事情で詳しく解説していますが、報奨金・ジビエ販売・皮革販売・講師業など複数の収入源を組み合わせるのが一般的です。
有害鳥獣駆除員:自治体から委託される捕獲の専門家
各市町村が設置する「鳥獣被害対策実施隊」のメンバーとして、通年で有害鳥獣の捕獲にあたる仕事です。イノシシやシカによる農業被害の深刻化に伴い、全国的に担い手が求められています。
有害鳥獣駆除の報奨金は自治体によって異なりますが、イノシシ1頭あたり8,000円〜20,000円、シカ1頭あたり8,000円〜18,000円が一般的な水準です(国の交付金8,000円+自治体上乗せ分、2026年6月時点)。
地域おこし協力隊(鳥獣害対策枠)
総務省の地域おこし協力隊制度を活用して、鳥獣害対策を専門に担当するポジションです。任期は最長3年で、月額16万〜23万円程度の報酬が支給されます(年間最大280万円、総務省基準)。狩猟免許を持っていなくても着任後に取得を支援してくれる自治体もあり、未経験から猟師の仕事に入る際のルートとして注目されています。
猟師の求人を未経験で探す方法では、協力隊の募集情報の探し方を詳しく紹介しています。
ジビエ処理施設職員:食肉加工のプロ
捕獲された野生鳥獣を食肉として処理・加工する施設での仕事です。農林水産省のデータによると、ジビエ食肉処理施設への搬入重量は全国で約7,072トン(シカ79.3%、イノシシ20.7%)に上ります(e-Stat 統計表ID: 0002119971、令和5年度)。
施設では、解体・精肉・パッキング・品質管理・出荷管理を行います。食品衛生責任者の資格があると採用で有利です。「厚生労働省 野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」に基づいた衛生管理が求められるため、食品加工業の経験者が歓迎される傾向にあります。
ガイドハンター:狩猟体験を観光資源にする新しい仕事
近年注目されているのが、狩猟体験プログラムを企画・運営するガイドハンターです。一般の方に狩猟の文化や自然の仕組みを伝えながら、わな猟の見回りや解体体験をガイドします。観光業やアウトドア産業との掛け合わせで、猟師の仕事に新しい価値を生み出す職種です。
猟師の1年間の仕事サイクル
猟師の仕事内容は季節によって大きく変わります。猟期と非猟期で業務の重心が移り変わる、独特の年間サイクルを持っています。
| 時期 | 主な業務 | 補足 |
|---|---|---|
| 4月〜5月 | 猟場の下見、わな・猟具の整備、狩猟免許の更新手続き | 新年度の有害鳥獣捕獲許可申請もこの時期 |
| 6月〜8月 | 有害鳥獣駆除(わな猟中心)、ジビエ処理施設での加工作業 | 夏場は農作物被害が増えるため出動要請が多い |
| 9月〜10月 | 猟期に向けた準備、射撃練習、猟犬の訓練、狩猟者登録 | 都道府県への登録手続きは9月頃から |
| 11月〜翌2月 | 登録狩猟(猟期)、有害鳥獣駆除の継続 | 猟師の仕事が最も忙しい時期 |
| 3月 | 猟期終了後の道具整備、実績報告書の提出、翌シーズンの計画 | 自治体への捕獲報告もこの時期に集中 |
現場で活動する猟師に話を聞くと、「猟期の忙しさは想像以上」という声が多いです。早朝に山に入り、わなの見回り・獲物の回収・止め刺し・搬出を行い、午後はジビエ処理施設で解体作業。猟期中は週5〜6日このサイクルを繰り返す猟師も珍しくありません。
一方で、非猟期は有害鳥獣駆除の出動と猟具の整備が中心になるため、狩猟を副業として取り組む兼業スタイルの猟師にとっては、比較的両立しやすい時期でもあります。
猟師の仕事に必要な資格とスキル
猟師の仕事内容に応じて、必要な資格は異なります。以下の表で、職種別に求められる資格を整理しました。
| 資格名 | 概要 | 必要な職種 | 取得費用の目安 |
|---|---|---|---|
| わな猟免許 | くくり罠・箱罠を使った猟が可能になる | 全職種(特に有害鳥獣駆除員) | 約2万〜2.5万円 |
| 第一種銃猟免許 | 散弾銃・ライフル銃を使った猟が可能になる | 専業猟師、駆除員、ガイドハンター | 約2万〜2.5万円 |
| 第二種銃猟免許 | 空気銃を使った猟が可能になる | エアライフル猟を行う猟師 | 約2万〜2.5万円 |
| 猟銃所持許可 | 猟銃を所持するための公安委員会の許可 | 銃猟を行う全ての猟師 | 約5万〜8万円 |
| 食品衛生責任者 | 食品の製造・加工施設に必要 | ジビエ処理施設職員 | 約1万円 |
資格以外にも、実務で求められるスキルがあります。土地の地形を読む力、動物の行動パターンを予測する知識、天候や風向きから猟のタイミングを判断する経験則は、座学だけでは身につきません。先輩猟師や猟友会のメンバーから学ぶ「徒弟制」的な要素が、今でも猟師の世界には色濃く残っています。
狩猟免許の取り方では、免許の種類ごとの取得手順と費用を詳しく解説しています。
猟師の仕事の収入目安|職種別に比較
猟師の仕事内容によって、収入の構造はまったく異なります。以下は職種別の主な収入源と年収の目安です。
| 職種 | 主な収入源 | 年収目安 |
|---|---|---|
| 専業猟師 | 報奨金+ジビエ販売+皮革・角販売+講師料 | 200万〜400万円 |
| 兼業猟師 | 本業の給与+報奨金+ジビエ販売 | 本業+50万〜100万円 |
| 有害鳥獣駆除員(専従) | 自治体からの委託報酬+報奨金 | 100万〜300万円 |
| 地域おこし協力隊 | 月額報酬(16万〜23万円)+活動費 | 200万〜280万円 |
| ジビエ処理施設職員 | 給与(正社員・パート) | 250万〜350万円 |
農林水産省のデータによると、ジビエ販売先別の販売数量は全国で約146万6,215kgです。そのうち外食産業向けが27.7%、卸売業者向けが31.4%、消費者への直接販売(ネット通販含む)が13.1%を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119996、令和5年度)。この数字からもわかるとおり、ジビエの販路は確実に広がっており、猟師の収入源は多角化の傾向にあります。
なお、一次産業全体のキャリアという観点では、漁業も選択肢のひとつです。漁師の収入構造について知りたい方は、水産ナビの漁師年収ランキングも参考になります。
現場の声:猟師の仕事のやりがいと厳しさ
猟師の仕事に就いた方が共通して語るやりがいは、「地域に貢献している実感がある」という点です。農作物を荒らすイノシシやシカを駆除すると、農家の方から直接感謝されることがあります。「おかげで今年は作物が助かった」という一言が、猟師としての活動を続ける原動力になっているという声は少なくありません。
一方で、厳しさもあります。冬山での活動は体力的に過酷で、天候に左右される不安定さもあります。止め刺しや解体の作業には精神的な負荷がかかるため、「慣れるまでに時間がかかった」と話す猟師もいます。
また、猟師の高齢化が進む現場では、若手猟師に対して「もっと腕を磨け」と厳しく指導するベテランもいます。このような世代間のコミュニケーションに戸惑う新人猟師は少なくありません。ただし、2026年6月に秋田市で実施された狩猟免許試験では20代〜70代の58人が受験しており、幅広い年齢層が猟師の仕事に関心を寄せていることがうかがえます。
猟師の仕事内容に関するよくある質問
Q1: 猟師の仕事は未経験からでも始められますか?
はい、始められます。地域おこし協力隊の鳥獣害対策枠であれば、狩猟免許を持っていない状態から応募できる自治体もあります。着任後に免許取得の支援を受けながら、実地で猟師の仕事を学べる環境が整っています。
Q2: 猟師の仕事は通年で行えますか?
登録狩猟ができるのは猟期(多くの地域で11月15日〜翌2月15日)のみです。ただし、有害鳥獣駆除は自治体の許可を得れば通年で活動できます。ジビエ処理施設での勤務も通年です。
Q3: 女性でも猟師の仕事はできますか?
できます。近年は女性の狩猟免許取得者が増加傾向にあります。特にわな猟は銃猟に比べて体力的なハードルが低く、女性猟師の参入が多い分野です。
Q4: 猟師の仕事だけで生活できますか?
専業で生活できている猟師もいますが、多くの場合は他の収入源と組み合わせています。有害鳥獣駆除の報奨金、ジビエの加工販売、狩猟体験ガイド、講師業など、複数の収入源を持つことが安定した生活の鍵です。
Q5: 猟師の仕事を始めるのにいくらかかりますか?
狩猟免許の取得だけなら約2万〜2.5万円(申請料5,200円+診断書+予備講習)ですが、銃猟を行う場合は猟銃所持許可の取得費用、銃の購入費(中古で20万〜40万円)、弾代、保険料、猟友会費などを合わせると、初年度で総額25万〜39万円程度の投資が必要です。
Q6: 猟師の仕事で必要な体力はどの程度ですか?
銃猟の忍び猟では山中を数時間歩き続ける体力が必要です。わな猟の見回りでも、山道の往復で1日5km〜10km歩くことがあります。獲物の搬出にはイノシシで30kg〜80kg、シカで40kg〜100kg程度の重量を運ぶ場面もあるため、基礎的な体力と筋力が求められます。
まとめ:猟師の仕事内容のポイント
猟師の仕事内容について、要点をまとめます。
- 猟師の仕事は「捕獲」「防除」「利活用」の3つの業務領域で構成される
- 狩猟に関わる職種は10種類以上あり、専業猟師以外にも多様な選択肢がある
- 猟期(11月〜2月)と非猟期で業務内容が大きく変わる年間サイクルを持つ
- 最低限必要な資格は狩猟免許で、取得費用は約2万〜2.5万円
- 収入は職種や働き方によって幅があり、複数の収入源を組み合わせるのが一般的
猟師の仕事に興味を持った方は、まず猟師になるための7つのステップを確認してみてください。具体的な求人を探したい方は猟師の求人情報まとめも参考になります。
狩猟・ジビエ業界の最新統計データは狩猟・ジビエ業界の統計まとめページで定期更新しています。
参考情報
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119971, 0002119974, 0002119996)
- 環境省「鳥獣関係統計」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs2.html)
- 秋田魁新報「秋田市で狩猟免許試験、20〜70代の58人が受験」(2026年6月15日)
- 総務省「地域おこし協力隊」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html)
- 厚生労働省「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」

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