最終更新: 2026-07-09
群馬県は長らく「捕ったシカを食用として出荷できない県」でした。2011年の原発事故に伴う放射性物質の影響で野生鳥獣肉に出荷制限がかけられていたためです。転機は令和5年8月18日。高崎市・みどり市を対象にシカ肉の出荷制限が一部解除され、同年9月には制限解除後初となる県産シカ肉が食用として出荷されました。以降、桐生市・安中市へと対象が広がり、「上州ジビエ」のブランド化が動き出しています。ジビエ産業の再起動とともに、群馬で「猟」を仕事にするチャンスは今まさに生まれつつある段階です。
「群馬県で猟師の求人を探しているが、求人サイトにはほとんど出てこない」「移住して狩猟に関わる仕事がしたいが、収入の実態がわからない」「未経験からでも入り口はあるのか知りたい」。そんな疑問を持つ方は多いはずです。
この記事では、群馬県で猟師として働く4つの現実的なルートと収入の目安、求人を探す5つの方法、地域おこし協力隊という選択肢の詳細、そして群馬で狩猟免許を取得する手順までを一気に解説します。あわせて、他県にはない「出荷制限解除」という群馬特有の事情がキャリアにどう影響するのかも掘り下げます。
まず結論となる「働き方の全体像」から見ていきましょう。
群馬県に猟師の求人はある?結論と4つの働き方

最初に押さえておきたいのは、群馬県に限らず「猟師」という職種名の正社員求人はほとんど存在しないという現実です。狩猟だけで生計を立てる専業猟師は全国的にも少数派で、多くの猟師は複数の収入源を組み合わせています。猟師の働き方の全国的な全体像は猟師の求人はどこで探すかを解説した記事にまとめていますが、群馬県では実質的に次の4つのルートに集約されます。
| 働き方 | 雇用形態 | 収入の目安 | 必要な資格・条件 |
|---|---|---|---|
| 地域おこし協力隊(鳥獣害対策ミッション) | 自治体の委嘱(1〜3年) | 報償費 月16〜25万円程度+活動費 | 都市部からの住民票移動。免許は着任後取得可の場合も |
| 自治体の有害鳥獣捕獲・実施隊 | 非常勤・会計年度任用職員など | 日当+捕獲報奨金(1頭数千円〜) | 狩猟免許、多くは猟友会所属 |
| ジビエ処理施設・食肉加工のスタッフ | パート〜正社員 | 地域の一般的な給与水準 | 狩猟免許不問の場合あり。食品衛生の知識は歓迎 |
| 副業猟師(本業+猟期の狩猟・駆除) | 個人事業 | 報奨金・獣肉販売で年数万〜数十万円 | 狩猟免許、狩猟者登録、猟友会加入が事実上の標準 |
「猟師 求人 群馬」と検索してIndeedなどに表示されるのは、多くが害獣駆除会社の作業員や食肉加工場の求人です。それらも入り口の1つですが、山に入って獲物を追う「猟師」のイメージに最も近いのは、地域おこし協力隊と自治体の捕獲事業、そして副業猟師の3つです。
未経験からのステップとしては、まず狩猟免許を取得し、猟友会経由で有害鳥獣捕獲に参加しながら経験を積むのが王道です。未経験者向けの職種選びと応募の手順は猟師の求人に未経験で応募する方法で詳しく解説しています。
群馬特有の事情|シカ肉出荷制限の解除と「上州ジビエ」の再起動
群馬で猟師キャリアを考えるなら、他県にはない歴史的経緯を知っておく必要があります。それが放射性物質による野生鳥獣肉の出荷制限です。
2011年の東京電力福島第一原発事故の後、群馬県内で捕獲された野生鳥獣の肉は放射性セシウムの基準値超過を理由に国から出荷制限を受け、捕獲したシカやイノシシを食肉として販売する道が長く閉ざされていました。つまり群馬では「駆除はするが、肉は活用できない」状態が10年以上続いていたのです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2011年 | 原発事故の影響で県内の野生鳥獣肉が順次出荷制限に |
| 令和5年8月18日 | 高崎市・みどり市を対象にシカ肉の出荷制限を一部解除(処理施設: 株式会社箕輪フーズ) |
| 令和5年9月 | 県産シカ肉が食用として出荷再開。「上州ジビエ」としてブランド化へ |
| 令和7年1月 | 出荷・検査体制に桐生市が追加。同年2月末から桐生市産シカ肉の出荷開始 |
| 令和7年度以降 | 安中市産シカ肉も出荷開始。対象エリアが段階的に拡大中 |
出荷されるシカ肉は、県の出荷・検査方針に基づく全頭検査で放射性セシウムが基準値(1kgあたり100ベクレル)以下であることを確認したものに限られます。高崎市の箕輪フーズは県内初のジビエ加工センターとして、自治体と連携しながら「上州ジビエ」の販路拡大を進めています(上毛新聞報道より)。
この経緯がキャリアに与える意味は小さくありません。ジビエ活用が10年以上止まっていたぶん、処理施設・販路・人材のすべてがこれから整備される段階であり、後発だからこそ参入余地が残っているのが群馬の特徴です。実際、県も西部農業事務所などを通じてジビエ加工処理施設の整備支援を打ち出しており、処理加工・流通の担い手需要は今後増えることが見込まれます。
また群馬県には「鳥獣被害対策支援センター」という専門組織があり、被害対策技術の開発やデータ収集、地域への技術支援を担っています。行政側に獣害対策の専門部署が確立している点も、公的な捕獲事業に関わりたい人には追い風です。
群馬県で猟師系求人を探す5つのルート
専業の「猟師募集」がない以上、探し方には工夫が必要です。編集部で群馬県関連の募集情報を定点観測していると、鳥獣害対策系の募集は通年で出るものではなく、年に数回、思い出したように現れては短期間で締め切られる印象があります。だからこそ、複数のチャネルを定期的に巡回する体制を作ることが何より重要です。
| 探し方 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ツナグンマ(群馬県地域おこし協力隊ポータル) | 県内全市町村の協力隊募集を一覧できる公式サイト | 移住とセットで狩猟に関わりたい人 |
| SMOUT・ニッポン移住交流ナビ | 「猟師・ハンター・鳥獣被害」特集など全国横断の募集掲載 | 群馬以外も比較検討したい人 |
| Indeedなど一般求人サイト | 害獣駆除会社・食肉加工場の求人が中心 | まず雇用されて安定収入を得たい人 |
| 市町村の広報・公式サイト | 実施隊員・会計年度任用職員の募集が掲載される | 特定の市町村に狙いを定めている人 |
| 群馬県猟友会・地区猟友会 | 有害鳥獣捕獲の従事者は猟友会経由が主流 | 免許取得後に実戦経験を積みたい人 |
とくに4つ目と5つ目は見落とされがちです。有害鳥獣捕獲の従事者募集は「求人」の形を取らず、市町村の鳥獣行政の窓口や猟友会の内部で人づてに決まることが少なくありません。狩猟免許を取って地区猟友会に顔を出しておくことが、結果的に最強の「求人検索」になります。猟友会の役割や入会方法は猟友会への入り方とメリットを参考にしてください。
なお、みなかみ町や利根沼田地域など県北部の山間エリアは、シカ・イノシシ・サルの被害対策ニーズが高い地域です。移住相談イベントでも「狩猟のはじめ方」をテーマにした群馬発のセミナーが開催されるなど、移住×狩猟の文脈での情報発信が増えています。
地域おこし協力隊という現実的な選択肢
未経験から群馬で狩猟に関わる仕事に就く最も現実的なルートが、鳥獣害対策をミッションとする地域おこし協力隊です。
地域おこし協力隊は、都市部から対象地域に住民票を移して自治体の委嘱を受け、最長3年間(延長制度あり)活動する総務省の制度です。総務省の財政措置は令和7年度時点で隊員1人あたり年間550万円が上限(うち報償費等350万円、活動費200万円)とされており、実際の支給額は自治体によりますが、月16〜25万円程度の報償費に加えて、活動に必要な車両・研修などの経費が別途手当てされるケースが一般的です。
鳥獣害対策ミッションの協力隊には、次のような利点があります。
- 狩猟免許の取得費用や講習費を活動費で支援してもらえる場合がある
- 地元猟友会・ベテラン猟師とのつながりを役場が仲介してくれる
- 罠の見回り、捕獲補助、ジビエ活用の企画など実務を給料をもらいながら学べる
- 任期後は捕獲事業の担い手やジビエ処理施設スタッフとして定着する道がある
群馬県内では、みどり市が令和7年10月着任予定の協力隊を募集するなど、各市町村が随時隊員を募集しています。募集テーマは農業支援や観光など多岐にわたるため、「鳥獣害対策」「ジビエ」をテーマにした募集が出た瞬間を逃さないよう、ツナグンマとSMOUTの両方をブックマークしておきましょう。注意点は、協力隊はあくまで「最長3年の期限付き」であることです。任期中に狩猟免許・銃所持許可・地域の信頼という3つの資産を築き、任期後の収入源(捕獲事業+ジビエ加工+副業など)を設計しておくことが、群馬で猟師キャリアを続ける鍵になります。
群馬県で狩猟免許を取るには|費用・日程・県特有の支援
どのルートを選ぶにしても、狩猟免許が事実上のスタートラインです。群馬県の免許取得には、費用面で見逃せない特徴があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 免許の種類 | 網猟・わな猟(18歳から)、第一種・第二種銃猟(20歳から) |
| 試験の実施主体 | 群馬県(自然環境課)。年数回、前橋市などで実施 |
| 受験手数料 | 1種目5,200円(既に他の狩猟免許を持つ場合は3,900円) |
| 事前講習会 | 群馬県猟友会が県公社総合ビル(前橋市)で開催。令和7年度は6月・9月・12月に実施 |
| 銃を持つ場合 | 別途、県警の猟銃等初心者講習会(手数料6,900円)から始まる所持許可手続きが必要 |
特筆すべきは、群馬県猟友会が開催する狩猟免許試験の事前講習会です。多くの都道府県では数千円から1万円程度の受講料がかかるのに対し、群馬県では無料で受講できます(令和7年度時点)。事前講習会は試験の実技対策として合格率を大きく左右するため、これから受験する人は必ず日程を確認して申し込んでください。
免許取得の全体像(試験内容・勉強法・取得までのスケジュール)は狩猟免許の取り方完全ガイドで解説しています。銃猟まで視野に入れる場合は、免許とは別に公安委員会の銃所持許可が必要で、申請から所持まで半年程度かかることも織り込んでおきましょう。
収入のリアル|報奨金とジビエ活用でどこまで稼げるか
猟師としての収入の柱は、当面は有害鳥獣捕獲の報奨金です。国の鳥獣被害防止総合対策交付金では、イノシシ・ニホンジカ・ニホンザルの成獣1頭あたり8,000円(幼獣1,000円)を上限とする捕獲活動経費の支援が設定されており、市町村が独自の上乗せをする場合は1頭あたり合計1〜2万円台になる地域もあります。金額は市町村ごとに大きく異なるため、活動予定地の要綱を必ず確認してください。報奨金制度の仕組みと注意点は有害鳥獣駆除の報奨金解説にまとめています。
ジビエ活用側の収入も見てみましょう。農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度、e-Stat統計表ID: 0002119974)によると、全国のジビエ処理施設が野生鳥獣の処理で得た金額は約54億円、1施設あたり平均約701万円です。販売金額の内訳はシカ食肉が47.6%と最大で、シカのペットフードも15.4%を占めます。群馬はシカ肉出荷が再開されたばかりで処理施設の数もこれから増える段階ですから、「捕獲+処理加工+販売」を組み合わせた事業モデルを早期に築けるかが、収入を伸ばす分かれ目になります。
専業でどこまで稼げるのか、収入源の組み合わせ方については猟師の年収ガイドで全国データをもとに詳しく解説していますが、群馬に当てはめると「協力隊または本業で生活基盤を確保しつつ、捕獲報奨金とジビエ関連の副収入を積み上げる」のが現実的な設計です。
群馬県の猟師求人に関するよくある質問
Q1: 群馬県で「猟師」の正社員求人はありますか?
「猟師」という職種の正社員求人はほぼ存在しません。実際にあるのは、害獣駆除会社の作業員、食肉加工場のスタッフ、自治体の鳥獣害対策関連の非常勤職、地域おこし協力隊などです。狩猟そのものを仕事にしたい場合は、協力隊か猟友会経由の有害鳥獣捕獲が現実的な入り口です。
Q2: 未経験・免許なしでも応募できる求人はありますか?
あります。地域おこし協力隊の鳥獣害対策ミッションには「着任後に狩猟免許を取得すればよい」とする募集が少なくありません。ジビエ処理施設や害獣駆除会社の求人にも免許不問のものがあります。ただし、いずれも早期の免許取得が期待されるため、応募前に取得計画を立てておくと選考でも有利です。
Q3: 群馬県のシカ肉やイノシシ肉は今、販売できるのですか?
シカ肉については、令和5年8月以降、高崎市・みどり市・桐生市・安中市などを対象に出荷制限が一部解除され、県の方針に基づく全頭検査(放射性セシウム基準値100ベクレル/kg以下)を経たものが出荷されています。対象地域・施設は段階的に拡大中ですが、県内全域で自由に販売できる状態ではないため、ジビエ事業を考える場合は最新の解除状況を群馬県のホームページで確認してください。
Q4: 地域おこし協力隊の給料だけで生活できますか?
単身であれば生活可能な水準です。報償費は自治体によりますが月16〜25万円程度が相場で、家賃補助や活動用車両が支給される場合は手取りの実質価値が上がります。ただし任期は最長3年(延長制度あり)のため、在任中に任期後の収入源を作ることが前提と考えてください。
Q5: 猟友会には必ず入らないといけませんか?
法律上の義務はありません。ただし、群馬県内の有害鳥獣捕獲の従事者は地区猟友会を通じて組織されることが多く、狩猟事故共済保険への加入や先輩猟師からの技術指導の面でも、加入のメリットは大きいのが実情です。捕獲事業への参加を目指すなら、加入を強くおすすめします。
まとめ: 「再起動する上州ジビエ」は後発参入のチャンス
- 群馬県に「猟師」の正社員求人はほぼないが、協力隊・自治体の捕獲事業・処理施設・副業猟師の4ルートで狩猟を仕事にできる
- 令和5年8月のシカ肉出荷制限一部解除で「上州ジビエ」が再起動。処理・流通の担い手需要はこれから増える段階
- 求人はツナグンマ・SMOUT・市町村サイト・猟友会の4チャネル巡回が基本。鳥獣害対策の募集は不定期なので見逃さない体制を
- 未経験者は鳥獣害対策ミッションの地域おこし協力隊が最有力。報償費を得ながら免許・経験・人脈を築ける
- 群馬県は狩猟免許試験の事前講習会が無料(令和7年度時点)。免許取得のコストハードルは全国的に見ても低い
次のアクションとしては、まず狩猟免許の取り方で取得までの流れを確認し、ツナグンマで現在の募集をチェックすることから始めてください。山の仕事に限らず一次産業のキャリアを幅広く比較したい方には、姉妹メディア水産ナビの北海道の漁師求人ガイドも参考になります。
出荷制限という長い足踏みを経て、群馬の山はいま担い手を求めています。動き出したばかりの「上州ジビエ」の現場に、最初の世代として関わってみませんか。
参考情報
- 群馬県「野生鳥獣肉(シカ肉)出荷制限の一部解除について」 https://www.pref.gunma.jp/page/217923.html
- 群馬県「ジビエ活用による地域活性化(鳥獣被害対策)」 https://www.pref.gunma.jp/page/652942.html
- 上毛新聞「駆除された群馬県産シカ肉を『上州ジビエ』に 箕輪フーズ(高崎市)がブランド化」 https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/656665
- 一般社団法人群馬県猟友会「講習会・試験」 https://www.gunmaryoyu.jp/institute
- 総務省「令和7年度地域力創造グループの新規・拡充施策について」(地域おこし協力隊の財政措置) https://www.soumu.go.jp/main_content/001022439.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」野生鳥獣を処理して得た金額(e-Stat統計表ID: 0002119974)
- 農林水産省「鳥獣被害対策コーナー」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/

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