最終更新: 2026-10-13
2026年10月12日午前7時45分ごろ、広島市安佐北区可部町勝木の民家の畑で、箱わなにかかったツキノワグマ(雄・体長1.1メートル・体重28.1キロ)が見つかった。市は警戒本部を設置して協議し、同日午後1時17分ごろ、広島県内で初めてとなる「緊急銃猟」でこの個体を駆除した。
この一報を見て「わなに捕まっているクマを駆除するのに、なぜ緊急銃猟という特別な制度を使うのか」と疑問に思った人も多いはずだ。緊急銃猟は本来、生活圏を歩き回る危険な個体に対応するための制度であり、箱わなに捕獲済みの個体への適用はこれまで報道で目立った例が少ない。本記事では、今回の経緯を一次報道に基づいて整理し、緊急銃猟制度の中でこの事例がどう位置づけられるかを解説する。
制度の全体像(4つの発動要件や損失補償の仕組みなど)を先に確認したい方は、「緊急銃猟とは?4つの要件・市町村長の権限を解説」を参照してほしい。
何が起きたのか:発見から駆除までの経緯

中国新聞デジタル・広島テレビ・テレビ新広島など複数の地元報道によると、経緯は次の通りだ。
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 10月12日 午前7時45分ごろ | 市から委託を受けた有害鳥獣駆除班(地元猟友会)が、民家の畑に設置した箱わなの中にクマ1頭を発見 |
| 同日 午前11時5分ごろ | 広島市・安佐北区が警戒本部を設置し、対応を協議 |
| 同日 午後1時17分ごろ | 緊急銃猟により駆除を完了 |
捕獲されたのは体長1.1メートル、体重28.1キロの雄のツキノワグマ。広島市および安佐北区は、この対応が「緊急銃猟」の制度に基づくものであり、広島県内では初めての実施になると説明している。
現場近くの住民はテレビ新広島の取材に対し、「駆除してもらったのでまた安心して農作業もできる」と話す一方で、「なるべく(クマの)命を奪われたくないが、動物と人間の共存の難しさを感じた」とも語っている。
なぜ「緊急銃猟」が使われたのか

緊急銃猟は、2025年9月1日に施行された改正鳥獣保護管理法に基づく制度で、クマやイノシシが人の生活圏に侵入し、かつ銃猟以外の方法では的確・迅速な捕獲が困難な場合に、市町村長の判断で住宅地等でも発砲できるようにする仕組みだ(詳しい要件は緊急銃猟とはで解説している)。
今回のケースが従来報じられてきた緊急銃猟の事例(住宅街を歩き回る個体に対応したもの)と異なるのは、クマが箱わなに捕獲済みだった点だ。わなにかかって身動きが取れない個体であれば、通常は有害鳥獣捕獲の許可の範囲内で対応できるはずだが、現場が民家の畑という生活圏のすぐそばだったことが影響したと考えられる。鳥獣保護管理法では、住居が集合する地域での銃猟は原則として禁止されており、わなにかかった個体であっても、その場で銃を使って仕留めるには別の法的な根拠が必要になる。緊急銃猟は、まさにこの「生活圏に近い場所での発砲」を可能にする制度であるため、箱わなでの確保後も、最終的な処置にはこの制度が使われたとみられる。
ただし、なぜ麻酔銃や移動・保護といった選択肢ではなく銃猟による駆除が選ばれたのかについて、現時点の報道では市からの詳しい説明は確認できていない。一般に麻酔銃は効果が出るまで時間がかかり射程も短いため、民家に近い状況では使いにくいとされるが、これは一般論であり、今回の判断の直接の根拠として報じられたものではない点には注意してほしい。
全国の実施状況との比較:中国地方にも広がった

環境省の集計では、緊急銃猟は施行から2026年8月末までの約1年間で、山形県・新潟県・岩手県・富山県など東北・北陸地方を中心に14道県で81件実施されている(詳しくは緊急銃猟とはを参照)。広島県での実施はこの集計期間より後の10月12日であり、件数にはまだ反映されていない。これまで実施が目立たなかった中国地方でも制度の運用が始まったことを示す事例といえる。
同様に「県内初」の緊急銃猟としては、2026年10月9日に兵庫県丹波市で発生したケースもある。こちらは住宅街に出没した個体を麻酔銃の使用後に駆除したもので、箱わなでの確保を経た広島のケースとは発見から駆除までの経路が異なる。両事例の詳細は「兵庫県初の緊急銃猟|丹波市の事例」で比較できる。
まとめ:広島のケースが示すもの
- 2026年10月12日、広島市安佐北区可部町で広島県内初の緊急銃猟が実施され、箱わなに捕獲済みのツキノワグマ(雄・体長1.1m・体重28.1kg)が駆除された
- 発見(午前7時45分ごろ)から駆除完了(午後1時17分ごろ)まで約5時間半、市と区が警戒本部を設置して対応を協議した
- わなに捕獲済みの個体であっても、現場が生活圏に近い場合は緊急銃猟の枠組みで対応されることがある
- 麻酔銃を使わなかった理由など、判断の詳細な根拠は現時点の報道では明らかになっていない
- 緊急銃猟は東北・北陸中心だった実施実績が、中国地方にも広がり始めている
猟師を目指す人にとって、こうした個別事例は制度の運用実態を知る手がかりになる。委託ハンターとして求められる技術や報酬の実態は「緊急銃猟とは」の後半で詳しく解説しているので、あわせて確認してほしい。
統計で見る狩猟・ジビエ業界の全体像は「狩猟・ジビエ業界の統計まとめ」でも定期更新している。
参考情報
- 中国新聞デジタル「広島県で初の緊急銃猟、クマを駆除 広島市安佐北区可部 体長1・1メートル」(2026年10月12日) https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/908321
- テレビ新広島「箱わなで捕獲されたクマ緊急銃猟で駆除 広島県内では初めて」(2026年10月12日) https://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000036082.html
- 広島テレビ「クマ駆除で県内初の『緊急銃猟』を実施 広島市安佐北区の畑で箱わなにかかる」(2026年10月12日) https://iraw.rcc.jp/topics/articles/37093
- 猟人「緊急銃猟とは?4つの要件・市町村長の権限・施行1年で81件の実態と課題を解説」(確認日: 2026-10-13)


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