最終更新: 2026-09-09
環境省の集計によると、2025年9月1日に施行された緊急銃猟制度は、2026年8月末までの約1年間で東北・北陸を中心とする14道県で81件実施されました。都道府県別では山形県の19件が最多で、新潟県14件、岩手県と富山県が各8件と続きます。件数の7割弱は、冬眠前のクマが餌を求めて活発に動く10〜12月に集中しています。つまりこの制度は、施行からわずか1年で「例外的な特別措置」から「秋のクマ対応の標準装備」へと位置づけを変えたことになります。
一方で、緊急銃猟という言葉はニュースで頻繁に聞くものの、「誰が撃つと決めるのか」「猟友会の有害駆除と何が違うのか」「撃った弾で建物が壊れたら誰が払うのか」「猟師志望者にとってはどんな仕事になるのか」といった疑問に、まとまって答えている情報は多くありません。制度の中身を知らないまま出動を頼まれるハンターも、判断を迫られる自治体職員も、実際に少なくないのが現状です。
この記事では、緊急銃猟の定義と法的な仕組み、発動に必要な4つの要件、市町村長が持つ権限と損失補償、施行1年の実施状況、現場で見えてきた課題、そしてハンター側に求められる技術と報酬の実態までを、環境省の資料と報道に基づいて整理します。まず制度の全体像を押さえ、次に従来の捕獲との違いを確認し、最後に猟師志望者がこの制度とどう向き合うべきかをお伝えします。
緊急銃猟とは何か:制度の定義と成立の背景

緊急銃猟とは、クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入した際に、市町村長の判断と指示のもとで、通常は銃猟が禁止されている住宅地などでも銃を使って捕獲できる制度です。2025年4月に成立した「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律」によって創設され、2025年9月1日に施行されました。
従来の鳥獣保護管理法では、住居が集合している地域や公園などでの銃猟は原則として禁止されており、市街地にクマが出た場合は、警察官職務執行法に基づいて警察官が現場でハンターに発砲を命じる方法しかありませんでした。しかしこの方法は、警察官の判断が現場任せになりやすく、発砲の責任の所在も曖昧で、実際には「撃てない」まま長時間膠着する事例が全国で相次いでいました。2023年度以降のクマ人身被害の急増を受け、市町村長が主体的に判断できる仕組みとして整備されたのが緊急銃猟です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 緊急銃猟(改正鳥獣保護管理法に基づく制度) |
| 施行日 | 2025年9月1日 |
| 判断・指示の主体 | 市町村長 |
| 対象鳥獣 | 政令で定める危険鳥獣(ヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ) |
| 実施者 | 市町村職員、または市町村から委託を受けたハンター |
| 使用する銃 | ライフル銃、スラッグ弾を使う散弾銃、麻酔銃など |
| 付随する権限 | 通行の禁止・制限、区域外や屋内への退避の指示 |
| 損失補償 | 弾丸による建物・車両の損壊などは市町村が補償 |
| ガイドライン | 環境省「緊急銃猟ガイドライン」(2025年策定、2026年4月改訂) |
出典: 環境省「緊急銃猟ガイドライン」および各自治体の制度案内をもとに編集部作成(2026年9月時点)
制度の核心は「判断の主体が市町村長になった」点にあります。現場の警察官やハンター個人ではなく、地域の安全に責任を持つ首長が組織として決定し、その決定に伴うリスクも市町村が引き受ける。この構造の転換が、緊急銃猟が「とは」で検索される理由であり、同時に1年間で81件という実績を生んだ理由でもあります。
農林水産省の調査(令和5年度)によると、野生鳥獣による全国の農作物被害額は164億円で、前年度から増加しています。農地での被害が生活圏への出没と地続きになっている以上、緊急銃猟は獣害対策の延長線上にある制度だと理解しておくと、全体像がつかみやすくなります。
緊急銃猟を発動できる4つの要件

緊急銃猟は「クマが出たら撃てる」制度ではありません。市町村長が実施を判断するには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。環境省のガイドラインと各自治体の案内で示されている要件は共通しています。
| 要件 | 内容 | 現場での判断ポイント |
|---|---|---|
| 1. 生活圏への侵入 | 危険鳥獣が人の日常生活圏に侵入している、または侵入するおそれが大きい | 住宅地、学校、商業施設、農地に隣接する集落など |
| 2. 緊急性 | 人の生命または身体への危害を防ぐため緊急の対応が必要 | 追い払いで山に戻った場合は該当しないことがある |
| 3. 他の方法の困難性 | 銃猟以外の方法では的確かつ迅速な捕獲が困難 | 成獣のクマは箱わなや麻酔での対応が難しい |
| 4. 安全性 | 銃猟によって住民や第三者に危害を及ぼすおそれがない | 通行制限、避難誘導、バックストップの確保が前提 |
出典: 環境省「緊急銃猟ガイドライン」、奈良市・静岡市・青森市の制度案内をもとに編集部作成
4つの中で実務上もっとも重い要件が4番目の「安全性」です。弾が外れた場合や貫通した場合に受け止める土手や壁、いわゆるバックストップが確保できなければ、たとえクマが目の前にいても発砲はできません。2026年4月に福島県郡山市で起きた事例では、体長約150cmのクマが4月7日に公園で確認されてから、4月8日午後3時40分ごろに緊急銃猟で駆除されるまで30時間以上を要しました。市は「周辺の安全確保に時間がかかった」と説明しており、時事通信の集計では住民の避難誘導とバックストップの確保に約43時間かかったと報じられています。
この「安全性の要件」は、ハンターの技術だけでは満たせません。警察による交通規制、市町村職員による住民周知、消防や学校との連携が揃って初めてクリアできる要件です。緊急銃猟が「ハンターの制度」ではなく「自治体の制度」と言われるゆえんはここにあります。
対象はクマとイノシシだけ
緊急銃猟の対象は、政令で「危険鳥獣」と定められたヒグマ、ツキノワグマ、イノシシの3種に限定されています。シカやサルがどれだけ住宅地に出没しても、緊急銃猟の対象にはなりません。これらは従来どおり、有害鳥獣捕獲の許可や追い払いで対応することになります。
市町村長の権限と損失補償の仕組み
緊急銃猟を実施する際、市町村長には通常の有害鳥獣捕獲にはない強い権限が与えられています。同時に、その権限の裏返しとして補償の責任も市町村が負います。ここを理解しておくと、ハンターとして委託を受ける際の安心材料になります。
通行制限と避難指示
市町村長は緊急銃猟の実施区域を定め、その区域内の道路や場所について通行の禁止や制限を行い、住民に対して区域外への退避や屋内への退避を指示できます。防災無線や緊急速報メール、SNSを使った周知はこの権限に基づいて行われます。射線上に人がいない状態を法的な裏付けをもって作れるようになったことが、従来の警察官職務執行法による対応との最大の違いです。
損失補償と保険
緊急銃猟によって建物や車両に弾丸が着弾して損壊した場合、あるいは捕獲のために土地に立ち入ったり障害物を除去したりして損失が生じた場合、改正法に基づいて市町村が損失補償を行います。人身事故が生じた場合は国家賠償の枠組みが想定されています。環境省のガイドラインは、こうした事態に備えて市町村が事前に保険に加入することを推奨しており、2025年7月には東京海上日動火災保険が国内初とされる「緊急銃猟時補償費用保険」を開発したと発表しました。従来からある鳥獣被害対策総合補償制度にも、緊急銃猟が対象として組み込まれています。
| 損失の種類 | 補償の主体 | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 弾丸による建物・車両の損壊 | 市町村 | 改正法に基づく損失補償 |
| 土地への立ち入り・障害物除去による損失 | 市町村 | 同上 |
| 第三者への人身被害 | 市町村(国家賠償の枠組み) | 過失の有無により判断 |
| ハンター自身の負傷 | 市町村の条例・保険による | 実施隊員なら公務災害補償の対象 |
| 事前準備(訓練・装備・保険料) | 市町村(国の交付金・特別交付税措置あり) | 環境省交付金の対象 |
出典: 環境省「緊急銃猟ガイドライン」、東京海上日動火災保険プレスリリース(2025年7月17日)をもとに編集部作成
委託を受けるハンターにとって重要なのは、「市町村長の指示に従って適切に実施した発砲の結果責任は市町村が負う」という構造です。警察官職務執行法で発砲を命じられた時代には、万一の事故の際に個人が責任を問われるのではないかという不安が現場に根強くありました。緊急銃猟はこの不安を制度的に解消することを狙っています。ただし、指示の範囲を逸脱した発砲や明らかな過失があれば、ハンター個人の責任が問われる可能性は残ります。
施行1年の実施状況:14道県81件の内訳
緊急銃猟の第1号は、施行から約1か月半後の2025年10月14日、仙台市太白区鈎取の住宅地近くの雑木林で確認されたクマに対して実施されました。仙台市は翌15日に「改正法に基づく緊急銃猟としては全国初」と発表しています。その後、東北・北陸を中心に実施が相次ぎ、環境省の集計では2026年8月末までに14道県で計81件に達しました。
| 都道府県 | 実施件数(2025年10月〜2026年8月末) |
|---|---|
| 山形県 | 19件 |
| 新潟県 | 14件 |
| 岩手県 | 8件 |
| 富山県 | 8件 |
| 青森県 | 4件 |
| その他9道県 | 28件 |
| 合計 | 81件(14道県) |
出典: 環境省集計(時事通信2026年9月5日報道、青森市の公表資料)をもとに編集部作成
実施件数の7割弱が10〜12月に集中している点は、ハンター側の準備という意味で重要です。秋のクマは冬眠前の飽食期で行動範囲が広がり、ブナやミズナラの結実が少ない年には集落まで下りてきます。緊急銃猟の出動要請が来るのは、狩猟期の開始(11月15日)と重なる時期なのです。2026年の秋も同じ傾向が予想されるため、委託ハンターとして登録されている人は、9月のうちに自治体との連絡体制や装備を確認しておく必要があります。
環境省は2026年4月6日にガイドラインを改訂し、それまで仮想だった実施事例を実際の7事例に差し替え、各工程の運用ポイントを16件追加しました。改訂時点で50件以上の実施があり、人員数、所要時間、発砲の向き、跳弾を防ぐバックストップの考え方などが具体的に示されています。これから緊急銃猟に関わる人は、改訂版のガイドラインを一読しておくと現場のイメージがつかめます。
現場で見えてきた3つの課題
1年間の運用で、制度の有効性と同時に課題も浮かび上がっています。報道と環境省の発言から整理すると、課題は「時間」「人材」「地域差」の3つに集約されます。
課題1:判断から発砲までの時間
郡山市の事例が示すように、緊急銃猟は「決めてから撃つまで」に想像以上の時間がかかります。住民の避難誘導、通行規制、バックストップの確認、射手の配置という手順をひとつずつ踏むためです。福島市でも2026年6月の対応が長期化しました。クマが移動し続ける中で安全を確保し続ける難しさは、制度をどう整えても残る構造的な課題です。
課題2:対応できるハンターの不足
夜間や住宅密集地での発砲には、通常の狩猟とは異なる高度な技術と冷静さが求められます。暗闇での照準、跳弾リスクの判断、住民が見ている中での射撃といった条件に対応できるハンターは限られており、多くの自治体で「頼める人がいない」状況が続いています。読売新聞の2026年8月末の報道では、岩手県内で緊急銃猟に出動できるハンターが10人未満の市町村が10あると伝えられました。狩猟者全体の高齢化と担い手不足が、この制度の実効性を直接左右しています。担い手不足の全体像は「狩猟の担い手不足の現状と対策」で詳しく解説しています。
課題3:自治体ごとの体制の差
環境省の担当者は「自治体の対応力に差が出ている」と指摘しています。警察との連携協定を結び、訓練を重ねている市町村がある一方で、マニュアルすらない自治体も残っています。山形県の担当者が「市町村によって体制が整い始めたところもある」と述べているように、同じ県内でも温度差があるのが実情です。環境省は先行事例を共有する研修会と、ガバメントハンターなど専門人材の育成支援に力を入れる方針を示しています。
郡山市の経過を現場のハンターの立場で追い直すと、この制度の本質が見えてきます。クマを視認してから市の指示が出るまで、射手は住民の避難と通行規制が終わるのを待ちながら、移動し続ける個体を見失わないよう追い続けなければなりません。引き金を引く数秒よりも、その前の十数時間の待機と連携のほうがはるかに長く、消耗します。緊急銃猟は射撃技術の制度である以上に、忍耐と組織連携の制度なのです。
ハンターに求められる技術と報酬の実態
猟師志望者や現役ハンターにとって、緊急銃猟は「新しい仕事の入口」であると同時に「安易に引き受けてはいけない仕事」でもあります。ここでは委託を受ける側の視点で、必要な技術と報酬の相場を整理します。
必要な技術と免許
緊急銃猟でクマを確実に仕留めるには、脳、心臓、肺といった急所を一発で狙える精度が必要です。ガイドラインが想定する銃は、ライフル銃かスラッグ弾を使用する散弾銃です。ライフル銃は原則として散弾銃の所持経験10年以上が必要なため、若手ハンターの多くはスラッグ弾の散弾銃で対応することになります。銃の種類と選び方は「猟師が使うライフルの種類」で解説しています。
加えて、市町村と協定を結んだ猟友会の会員であること、または鳥獣被害対策実施隊の隊員であることが、委託を受ける実質的な条件になっている自治体がほとんどです。実施隊員であれば公務災害補償の対象になり、ライフル銃の10年要件の特例も受けられます。制度の詳細は「鳥獣被害対策実施隊とは」を参照してください。
報酬の相場と自治体の動き
緊急銃猟そのものに全国一律の報酬規定はなく、各市町村が有害鳥獣捕獲の出動手当や条例に基づいて支払っています。2024年に北海道奈井江町で「日当8,500円」を巡って猟友会が出動を辞退した問題が全国に知られて以降、報酬を引き上げる自治体が相次いでいます。
| 自治体 | 報酬の内容(2025〜2026年の報道による) |
|---|---|
| 北海道奈井江町 | 出動8時間で41,600円の新体制(従来は日当8,500円) |
| 北海道池田町 | ヒグマ駆除の報酬を5万円から81,300円に引き上げ |
| 秋田市 | 出動報酬を8,000円に倍増 |
| 長野県飯山市 | 日当5,700円から2倍近くに引き上げ |
出典: 共同通信、UHB北海道文化放送などの報道をもとに編集部作成(2026年9月時点)
報酬は改善傾向にあるものの、クマの捕獲1頭あたりの危険度と比べれば依然として高いとは言えません。緊急銃猟を副収入の柱にするというより、地域の安全を担う役割として引き受け、その上で自治体と適正な報酬を交渉していくのが現実的なスタンスです。クマ対応を仕事にする道筋は「クマ駆除の仕事とは」で、自治体に雇用される形は「ガバメントハンターとは」で解説しています。
初心者が今からできる準備
免許を取ったばかりの人がいきなり緊急銃猟に出動することはありません。しかし、数年後に地域から頼られるハンターになるための準備は今から始められます。第一に、地元の猟友会や実施隊に加入して自治体との接点を作ること。第二に、射撃場でスラッグ弾の精度を上げること。第三に、クマの行動と急所の知識を身につけることです。山でクマに遭遇した際の基本は「熊の出没対策と山での安全行動」で確認しておいてください。
緊急銃猟と従来の捕獲制度との違い
「有害鳥獣捕獲と何が違うのか」という疑問は、ハンター自身からもよく聞かれます。3つの制度を並べて比較すると、緊急銃猟の位置づけがはっきりします。
| 比較項目 | 緊急銃猟 | 有害鳥獣捕獲 | 警察官職務執行法による発砲命令 |
|---|---|---|---|
| 判断の主体 | 市町村長 | 都道府県知事または市町村長の許可 | 現場の警察官 |
| 住宅地での発砲 | 可能(要件を満たす場合) | 原則不可 | 警察官の命令があれば可能 |
| 対象鳥獣 | クマ類・イノシシのみ | 被害を出す鳥獣全般 | 危険な動物全般 |
| 通行制限・避難指示 | 市町村長の権限で可能 | なし | 警察の権限による |
| 損失補償 | 市町村が補償 | 原則なし | 責任の所在が曖昧 |
| 主な場面 | 生活圏への侵入時の緊急対応 | 農地や里山での計画的捕獲 | 緊急銃猟導入前の市街地対応 |
出典: 環境省資料および各制度の根拠法令をもとに編集部作成
緊急銃猟は有害鳥獣捕獲に取って代わる制度ではありません。山際の農地での計画的な捕獲は引き続き有害鳥獣捕獲で行い、生活圏に入り込んだ個体だけを緊急銃猟で対応する、という役割分担です。実際、2026年秋には東京都や兵庫県で数年ぶりにクマの狩猟が解禁される動きもあり、狩猟、有害鳥獣捕獲、緊急銃猟の三層で個体数と出没の両方を管理する体制に移行しつつあります。東京都の動きは「東京都のクマ狩猟解禁2027」で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 緊急銃猟は誰が「撃つ」と決めるのですか?
市町村長です。4つの要件をすべて満たすと市町村長が判断した場合に、市町村職員または委託を受けたハンターに実施を指示します。現場の警察官やハンター個人が独断で判断する制度ではありません。実務上は市町村の農林担当課や危機管理担当課が状況を集約し、首長の決裁を得る流れになります。
Q2. 緊急銃猟でシカやサルを撃つことはできますか?
できません。対象は政令で定める危険鳥獣、すなわちヒグマ、ツキノワグマ、イノシシの3種に限られます。シカやサルが住宅地に出没した場合は、従来どおり有害鳥獣捕獲の許可や追い払いで対応します。
Q3. 撃った弾で民家が壊れたら、ハンターが弁償するのですか?
いいえ。市町村長の指示に基づいて適切に実施した緊急銃猟で建物や車両が損壊した場合は、改正法に基づいて市町村が損失補償を行います。市町村は保険に加入して備えることが推奨されており、専用の保険商品も2025年7月に登場しています。ただし、指示の範囲を逸脱した発砲や重大な過失があった場合は、個人の責任が問われる可能性があります。
Q4. 緊急銃猟に出動するには何が必要ですか?
第一種銃猟免許と猟銃の所持許可に加え、実務上は市町村と協定を結んだ猟友会の会員か、鳥獣被害対策実施隊の隊員であることが求められます。ライフル銃かスラッグ弾を使う散弾銃で急所を確実に狙える射撃技術、夜間や住宅地での冷静な判断力も不可欠です。免許を取ったばかりの人がいきなり出動することは通常ありません。
Q5. 緊急銃猟の報酬はいくらですか?
全国一律の規定はなく、各市町村が有害鳥獣捕獲の出動手当や条例に基づいて支払います。2025〜2026年の報道では、北海道池田町がヒグマ駆除の報酬を81,300円に、奈井江町が出動8時間で41,600円に引き上げるなど改善の動きが目立ちますが、地域差は大きいのが実情です。
Q6. 施行から1年で何件実施されましたか?
環境省の集計では、2025年10月の全国初の事例(仙台市)から2026年8月末までに14道県で81件です。山形県19件、新潟県14件、岩手県と富山県が各8件で、7割弱が10〜12月に集中しています。
Q7. 緊急銃猟の実施中に通行制限区域に入ったらどうなりますか?
市町村長は緊急銃猟の実施区域内で通行の禁止や制限を行い、住民に退避を指示する権限を持っています。指示に従わない場合は法律上の制裁の対象になり得るほか、何より自分の命に関わります。防災無線や緊急速報メールで区域が案内された場合は、必ず指示に従ってください。
まとめ:緊急銃猟は「自治体の制度」であり「ハンターの技術」に支えられている
緊急銃猟は、市町村長の判断でクマやイノシシを生活圏でも銃で捕獲できるようにした2025年9月施行の制度です。4つの要件、通行制限と避難指示の権限、市町村による損失補償という仕組みによって、それまで現場任せだった市街地での発砲に法的な土台を与えました。施行1年で14道県81件という実績は、制度が確実に機能し始めたことを示しています。
同時に、判断から発砲までの時間、対応できるハンターの不足、自治体間の体制の差という3つの課題も明らかになりました。これらはいずれも、最終的には「地域に信頼できるハンターがいるかどうか」に帰着します。緊急銃猟が本当に住民の安全を守れるかは、制度ではなく人にかかっているのです。
猟師を志す人にとって、緊急銃猟は数年後に自分が担うかもしれない役割です。今日からできることは、狩猟免許と猟銃の所持許可を取り、地域の猟友会や実施隊に加わり、射撃場で技術を磨くこと。その積み重ねが、10月の出動要請に応えられるハンターを地域に一人増やすことにつながります。
次のアクション:
- 猟銃の所持許可を取る手順を確認する: 猟銃の所持許可の流れ
- 自治体に雇用されるハンターの働き方を知る: 捕獲官とは
- 猟師としての保険の備えを確認する: 狩猟保険のおすすめ
参考情報
- 環境省「緊急銃猟ガイドラインの公表について」(報道発表資料、2025年) https://www.env.go.jp/press/press_00195.html
- 環境省「緊急銃猟ガイドラインの改訂について」(報道発表資料、2026年4月6日) https://www.env.go.jp/press/press_03867.html
- 環境省「緊急銃猟ガイドライン(令和8年4月改訂)」 https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort15/doc/guideline.pdf
- 時事通信「クマ緊急銃猟、14道県で81件 開始1年、安全確保に時間も」(2026年9月5日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026090500117&g=soc
- 河北新報「仙台・鈎取の住宅近くで『緊急銃猟』クマ1頭駆除 法改正後、全国初」(2025年10月15日) https://kahoku.news/articles/20251015khn000027.html
- 郡山市「【4月8日実施】緊急銃猟の終了について」(2026年4月) https://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/112/174076.html
- 静岡市「緊急銃猟について」 https://www.city.shizuoka.lg.jp/s8937/s012504.html
- 東京海上日動火災保険「【国内初】『緊急銃猟時補償費用保険』の開発」(2025年7月17日) https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/250717_01.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況(令和5年度)」
- 共同通信「ハンター、各地で報酬拡充 自治体組織強化も」(2025年)


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