2026年8月18日、東京都の審議会が2027年度からのツキノワグマ狩猟解禁計画を大筋で了承しました。「東京にクマが棲んでいる」という事実を知らない都市住民も多いなか、推定235頭が多摩地域の森に生息するという現実が一気に表面化したかたちです。
約20年間続いた「狩猟禁止」がなぜ今、解除されるのか。ハンターにとって何が変わるのか。そして全国各地に広がる「知事ハンター」「移住猟師」の潮流は、この動きとどうつながるのか。
本記事では、東京都の狩猟解禁計画の全貌を整理しながら、猟師・狩猟志望者にとって必要な情報を網羅的にまとめました。
東京にクマがいる現実──なぜ今、解禁が決まったのか
「東京都内にツキノワグマが235頭いる」という事実は、多くの人に衝撃を与えます。東京都環境局が令和7年度(2025年度)に実施した生息状況調査(DNAヘアトラップ法)によると、推定個体数は120〜378頭(平均235頭)、生息密度は0.47頭/㎢にのぼります。
この数字が現実になった背景には、2008年度以降の「狩猟禁止」政策があります。当時、東京都はツキノワグマの個体数が減少傾向にあることを危惧し、絶滅防止のために狩猟を一切禁じました。その結果、クマの個体数は着実に回復。ところが今度は人との軋轢が増加するという、保全政策のジレンマに直面することになったのです。
2026年に入ってから状況は一気に緊迫化しました。
- 2026年春以降、八王子市内で住宅や学校の近くに出没するクマが相次いで目撃
- 奥多摩町の山中では、登山中の男性がクマに襲われ重傷を負う事件が発生
- 同時期に、クマに襲われた可能性のある人の遺体が発見される事案も
東京都は、これ以上個体数の増加を放置することが困難と判断し、「保全から管理へ」という方針転換に踏み切ったのです。
「東京のクマ」はどこにいるのか
都内のツキノワグマは主に西多摩・南多摩エリアに分布しています。
| エリア | 主な生息地 |
|---|---|
| 西多摩 | 奥多摩町、檜原村、あきる野市周辺 |
| 南多摩 | 八王子市・日野市の山間部 |
| 北多摩 | 青梅市の丘陵地 |
奥多摩は標高2,000m級の山岳地帯が広がる、東京都とは思えないほど豊かな自然環境。全国的に見ても、クマ生息地としては十分に条件が揃っています。
2008年から続いた「禁止政策」の経緯と評価
東京都がツキノワグマの狩猟を禁じたのは2008年(平成20年)度のことです。その時点では「絶滅の危機」にある種を保全するという目的が優先されました。
狩猟禁止から約18年が経過し、東京都のクマ個体数は増加傾向に転じたとされます。この変化は保全政策の「成功」を意味する一方で、新たな問題の種にもなりました。
| 指標 | 2008年(禁止開始) | 2026年(現在) |
|---|---|---|
| 推定個体数 | 不明(減少懸念) | 平均235頭(増加傾向) |
| 年間目撃件数 | 低水準 | 増加傾向 |
| 人的被害 | 少数 | 増加 |
| 狩猟規制 | 禁止 | 2027年度から解禁予定 |
この動きは、東京だけでなく全国的な傾向と一致しています。環境省のデータでは、全国のツキノワグマの個体数は長期的に増加傾向にあり、2023年度は過去最多水準の人身被害件数を記録しました。
「保護」から「管理」へ──野生動物行政の世界的な転換点
現代の野生動物管理における基本思想は、「保全」から「持続可能な管理(サステナブル・ワイルドライフ・マネジメント)」へと移行しつつあります。一定の個体数を維持しながら、人との共存を図るために捕獲数をコントロールする考え方です。
東京都が今回示した計画はまさにこの考え方に沿ったもので、「絶滅を防ぎつつ、人身被害を減らす」という両立を狙っています。
2027年度解禁の具体的な計画内容
東京都が2026年8月に公表した管理計画の素案には、以下の内容が盛り込まれています(審議会が大筋了承)。
解禁の基本方針
- 解禁時期: 2027年度から
- 対象エリア: 八王子市など多摩地域(西多摩・南多摩を中心とする山林部)
- 捕獲目安: 年間34頭
- 解禁の種類: 狩猟(有害駆除とは別の枠組み)
「年間34頭」という数字は、現在の推定個体数(平均235頭)から計算される持続可能な捕獲量として設定されたものです。全体の個体数を維持しながら、人里近くへの出没リスクを下げることを目指しています。
ハンターへの要件と手続き
東京都は、狩猟解禁にあたってハンターに一定のルールを設ける方針です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 基本資格 | 第一種銃猟免許(クマ猟の場合、散弾銃またはライフル銃) |
| 追加講習 | 山林での安全管理・クマ識別講習(任意か必須かは検討中) |
| 捕獲報告 | 東京都への報告義務 |
| 捕獲場所 | 指定された多摩地域の山林内のみ |
現時点では、「わな猟でのクマ捕獲」については別途検討中とされていますが、銃猟が主軸になる見通しです。
AI技術の活用
東京都は今後、民間企業の技術も活用した総合的なクマ対策を推進します。注目されているのがAIを活用したクマ侵入検知システムです。
画像AIがカメラ映像からクマを自動識別し、行政・地域住民にリアルタイムで通知するシステムで、早期発見・早期対応による人身被害の防止が期待されています。狩猟解禁と並行して、こうしたテクノロジー対策が組み合わさる形になります。
ハンターへの影響と収入機会
東京都での狩猟解禁は、多摩地域で活動するハンターや首都圏在住の猟師志望者に直接的な影響をもたらします。
新たな猟場としての東京都西部
八王子・奥多摩エリアは、首都圏在住の猟師にとって「近場でクマを狙える」という画期的な猟場になりえます。従来は東京都内での大型野生動物の狩猟は実質的にできませんでしたが、2027年度からはルールに則った上で合法的に活動できるようになります。
現時点でクマを対象にした有害鳥獣駆除に従事したい場合は、都の委託事業や市町村からの依頼を受ける形が主流でしたが、狩猟解禁により一般のハンターにも参加の門戸が広がります。
収入面での可能性
クマ猟に関連する収入機会は複数あります。
| 収入源 | 内容 | 金額目安 |
|---|---|---|
| 有害駆除報奨金 | 自治体によって異なる | 1頭あたり1万〜5万円程度 |
| ジビエ販売 | 熊肉の食肉処理・販売 | 流通ルート次第 |
| 資材提供 | 熊の毛皮・爪・胆(くまのい)など | 希少価値高い |
| ガイド・教育 | 狩猟ガイドや安全講習 | 1回数万円〜 |
なお、熊肉(クマ肉)の取り扱いには食品衛生法に基づく適切な処理が必要です。寄生虫(旋毛虫)のリスクがあるため、必ず中心温度75℃以上で加熱することが義務づけられています。詳細はクマ駆除の仕事とは?収入・求人・必要資格を解説をご参照ください。
資格を取得しておくべきか
東京都の狩猟解禁を踏まえ、今から資格取得を考える人も増えています。クマ猟に必要な第一種銃猟免許の取得には一定の期間と費用がかかりますが、2027年度の解禁に向けて今から準備しておくのは十分に合理的です。
狩猟免許の取得に関しては狩猟免許の取り方・費用・難易度を完全解説で詳しく解説しています。
全国に広がる「知事ハンター」と移住猟師の潮流
東京都の動きと並行して、全国的にも「行政と狩猟の距離が縮まる」流れが加速しています。
群馬県知事が「全国初の知事ハンター」へ
2026年8月、産経ニュースが報道したのが、群馬県知事・山本一太氏の銃猟免許取得です。クマ対策の最前線に立つ知事自らが免許を取得するという、全国初の取り組みとして注目を集めました。
山本知事はこれに加えて、職員有志による「撃退チーム」の結成も表明。行政が単に「委託する側」から「現場に関与する側」へシフトする動きとして、全国の自治体に影響を与えるとみられています。
ガバメントハンター(公務員として狩猟・有害鳥獣対策を担う制度)については、すでに長野県小諸市が2011年に全国初の事例を作っています。ガバメントハンターとは?制度の仕組み・採用条件・年収を解説もあわせてご確認ください。
長野県麻績村の「狩猟班」──東京から移住した42歳ITエンジニアの奮闘
2026年8月19日付の信濃毎日新聞デジタルが報じたのが、長野県東筑摩郡麻績村(おみむら)に新設された「狩猟班」の取り組みです。
東京からの移住者である元ITエンジニア(42歳)が中心となり、地元猟友会だけでは手の回らない鳥獣害対策の実働部隊として機能する狩猟班を立ち上げました。
このケースが示すのは、「脱サラ移住×狩猟」という新しいキャリアの形が地方行政にとっても必要とされている現実です。ITスキルを持ちながらも自然と直接向き合う仕事を求める層と、人手不足に悩む地方自治体のニーズが合致した好例といえます。
| 従来モデル | 新しいモデル |
|---|---|
| 地元出身の農家・猟師 | 都市部からの移住者 |
| 猟友会が担当 | 自治体が組織する「狩猟班」 |
| 個人の技術・経験に依存 | IT技術(データ・AI)と組み合わせ |
| 高齢化・後継者不足 | 若手・中年層の流入 |
猟師としての移住・転職を検討している方には猟師移住を支援する自治体一覧|補助金・支援制度の全体像が参考になります。
東京都のクマ問題から見えてくる「野生動物管理」の未来
東京都のツキノワグマ狩猟解禁は、日本の野生動物管理が「保護一辺倒」から「科学的管理」へと移行しつつあることを象徴しています。
全国で同様の議論が起きているのはクマだけではありません。シカ、イノシシ、サル、アライグマなど、あらゆる野生動物との共存問題が日本社会の喫緊の課題になっています。
そしてこの課題を解決するための「担い手」として、猟師の役割はますます重要になっています。農水省の調査によれば、令和5年度の国産ジビエ販売額は54億円と7年で1.8倍に成長(農水省ジビエ利用拡大対策事業調査)しており、産業としての規模も拡大中です。
東京都での解禁は、都市部在住のハンター予備軍にとっても「身近な場所でハンターとして活躍できる」可能性を開くものです。
2027年度に向けて今からできること
| 時期 | 推奨アクション |
|---|---|
| 今すぐ | 狩猟免許の申請要件・試験日程を確認 |
| 〜2026年秋 | 第一種銃猟免許の取得(試験は年1〜2回) |
| 〜2026年末 | 猟銃所持許可申請(都道府県警察) |
| 2027年度 | 東京都の狩猟解禁・管理計画の確認 |
クマ猟はリスクが高く、経験と技術が求められます。いきなりクマを狙うのではなく、シカやイノシシ猟で実猟経験を積んでから挑戦するのが現実的なステップです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 東京都でのクマ狩猟はいつから始まりますか?
A. 2027年度(2027年4月以降)からの解禁が審議会で大筋了承されました。具体的な猟期・ルールは今後策定される「東京都クマ管理計画」に明記される予定です。
Q2. 対象エリアはどこですか?
A. 八王子市をはじめとする多摩地域の山林部が対象となる予定です。奥多摩町・檜原村など西多摩エリアが中心になるとみられています。住宅街や市街地での捕獲は含まれません。
Q3. 東京都でクマを狩猟するには何の免許が必要ですか?
A. クマ猟には基本的に第一種銃猟免許(散弾銃またはライフル銃)が必要です。わな猟免許でのクマ捕獲については、東京都の管理計画策定後に詳細が決まる予定です。
Q4. 狩猟解禁後、クマは絶滅しませんか?
A. 年間捕獲目安は34頭とされており、推定235頭の個体数を維持しながら人里への出没リスクを下げることが目的です。乱獲を防ぐ管理のもとで実施されます。
Q5. 熊肉はどこで売れますか?
A. 国産ジビエ認証を取得した食肉処理施設を通じて販売するルートがあります。処理施設との連携が前提となります。東京都がジビエ流通の支援体制を整備する可能性もあります。
Q6. 猟師として東京都のクマ対策に携わりたい場合は?
A. 現時点では、東京都や各市町村からの有害鳥獣駆除の委託を受けるルートが主流です。2027年度以降は狩猟という選択肢も加わります。詳しくは猟師の年収|熊猟で稼ぐ収入源と報奨金の実態をご確認ください。
Q7. 「知事ハンター」や「ガバメントハンター」に自分もなれますか?
A. ガバメントハンターは各自治体が採用する公務員・嘱託職員です。採用条件は自治体によって異なりますが、一般的に第一種銃猟免許またはわな猟免許の取得が必須です。詳しくはガバメントハンターとは?制度・採用条件を解説をご覧ください。
関連記事: ジビエ通販おすすめランキング9選【2026年版】鹿肉・猪肉・熊肉を選び方から徹底比較
まとめ:東京都のクマ解禁は猟師の新たな扉
東京都のツキノワグマ狩猟解禁は、単なる「害獣対策」を超えた意義を持ちます。
- 都市部と山間部が隣接する東京都という特殊な地形での、先進的な野生動物管理モデルの構築
- AIと人間(ハンター)が協働するスマート鳥獣管理の実証実験場
- 首都圏在住のハンターにとっての、近場での活動機会の拡大
全国の自治体が注目するこの動きは、2027年度の本格始動に向けて詳細が固まっていきます。今のうちに免許取得・技術習得を進めておくことが、この波に乗るための第一歩になるでしょう。
狩猟免許の取得から始めたい方は狩猟免許の取り方・費用・難易度を完全解説からスタートしてください。有害鳥獣駆除の報奨金制度については有害鳥獣駆除の報奨金はいくら?都道府県別の実態と受け取り方も参考になります。
参考情報
- 東京都環境局「ツキノワグマについて」(2026年)
- 東京都「第二種特定鳥獣管理計画(クマ管理計画)策定に向けた審議会資料」(2026年8月)
- 信濃毎日新聞「麻績村に「狩猟班」が新設 東京から移住の元ITエンジニア42歳が奮闘」(2026年8月19日)
- 産経ニュース「全国初、クマ対策で「知事ハンター」 山本一太氏が銃猟免許 職員有志と撃退チームも結成」(2026年8月18日)
- TBS NEWS DIG「東京都でツキノワグマ狩猟が限定的に解禁へ 2027年度から」(2026年8月18日)
- NHKニュース「東京都 20年ぶりにクマの狩猟解禁方針うけ 事業計画素案を公表」(2026年8月18日)
- 農水省「令和5年度国産ジビエ利用拡大対策事業調査」


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