指定管理鳥獣捕獲等事業とは?シカ・イノシシ・クマ類を集中捕獲する仕組みを解説

指定管理鳥獣捕獲等事業とは?シカ・イノシシ・クマ類を集中捕獲する仕組みを解説 獣害対策

最終更新: 2026-10-06

指定管理鳥獣捕獲等事業とは、2015年の鳥獣保護管理法改正で創設された、都道府県が主体となってシカ・イノシシ(2024年4月からはクマ類も追加)を広域かつ集中的に捕獲するための国の制度です。市町村単位の対策では追いつかない個体数増加に対応するため、都道府県や複数県の協議会が計画を立て、国の財政支援を受けて捕獲事業を実施します。

「獣害対策の補助金」や「鳥獣被害対策実施隊」といった記事ではこの事業は表やリンクの中で一行だけ触れられていますが、制度そのものの仕組み、誰が実際に捕獲するのか、2024年のクマ類追加で何が変わったのかは意外と知られていません。この記事では、制度の創設経緯から対象鳥獣の変遷、財政支援の仕組み、猟師がどう関わるかまでを環境省・農林水産省の一次資料に基づいて整理します。

指定管理鳥獣捕獲等事業とは?制度の基本

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項目 内容
定義 集中的かつ広域的に管理を図る必要がある鳥獣(指定管理鳥獣)について、都道府県等が捕獲等をする事業
根拠法 鳥獣保護管理法(旧鳥獣保護法を2015年改正で名称・制度変更)
創設年 2015年(平成27年)
指定管理鳥獣の指定者 環境大臣
実施主体 都道府県・市町村、または複数の都道府県が参加する広域協議会
対象鳥獣(2026年時点) ニホンジカ、イノシシ(2015年指定)、ヒグマ・ツキノワグマ(四国の個体群を除く、2024年4月追加)

出典: 環境省「指定管理鳥獣捕獲等事業」「指定管理鳥獣対策事業交付金事業」をもとに編集部作成(2026年10月確認)

制度の出発点は、2015年の法改正でニホンジカとイノシシが指定管理鳥獣に指定されたことです。当時、両種は10年間で生息数を半減させるという目標が掲げられ、市町村単位の鳥獣被害対策実施隊や猟友会への捕獲依頼だけでは管理が追いつかない状況になっていました。そこで、都道府県(または複数県の協議会)が主体となり、広域的な捕獲計画を立てて実行する仕組みが設けられました。市町村が設置する「鳥獣被害対策実施隊」が地域の被害防止活動を担うのに対し、指定管理鳥獣捕獲等事業は都道府県が広域で個体数そのものを減らす捕獲事業という役割分担になっています。

2024年のクマ類追加|市街地出没と人身被害の急増が背景

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2024年4月、指定管理鳥獣にヒグマ・ツキノワグマ(四国の個体群を除く)が追加されました。シカ・イノシシの指定から約9年ぶりの対象拡大です。

時期 指定内容 背景
2015年 ニホンジカ、イノシシを指定 10年で生息数を平成23年度水準から半減させる目標
2024年4月 ヒグマ・ツキノワグマ(四国の個体群を除く)を追加指定 分布拡大による市街地出没・人身被害の多発

出典: 環境省令改正(2024年4月16日施行)に関する報道・自治体資料をもとに編集部作成

クマ類の追加は、シカ・イノシシのような「個体数半減」目標ではなく、市街地への出没と人身被害の増加という緊急性の高い課題への対応として位置づけられています。都道府県が広域協議会を組んでクマ類の集中的な管理を行えるようになった点が、2024年改正の実質的な意味です。なお、市町村長が住宅地等での発砲を一時的に認める「緊急銃猟とは」制度は、個別の出没事案への即応措置であり、指定管理鳥獣捕獲等事業(計画的な広域捕獲)とは発動の仕組みが異なります。クマの被害対策全体の政府目標は「クマ対策ロードマップとは」で解説しています。

個体数の現状と半減目標

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環境省の推定(令和6年4月更新)によると、ニホンジカは約155万頭、イノシシは約64万頭が生息しています。シカについては令和10年度(2028年度)までに生息数を平成23年度水準から半減させることを目標とし、イノシシは早期の半減達成後も被害軽減に向けた捕獲圧の維持が目標とされています。

出典: 環境省「シカ・イノシシの捕獲強化対策と捕獲目標について」(環境省・農林水産省、2026年10月確認)

令和5年度の実施計画では、ニホンジカについて39都道府県と1協議会、イノシシについて24県と1協議会が指定管理鳥獣捕獲等事業を実施する計画となっており、全国の約8割の都道府県がこの事業に取り組んでいることになります。

財政支援の仕組み|特別交付税措置

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指定管理鳥獣捕獲等事業には、国による財政支援(指定管理鳥獣対策事業交付金事業)が用意されています。特別交付税措置による地方負担分の措置率は、事業内容によって異なります。

事業内容 特別交付税の措置率
捕獲事業・専門人材の配置 0.8
出没防止対策等その他の事業 0.5

出典: 環境省「指定管理鳥獣対策事業交付金事業」(2026年10月確認)

この交付金は、市町村向けの「獣害対策の補助金(鳥獣被害防止総合対策交付金)」とは別の財源です。前者は農家・猟師が電気柵や罠の購入費を補助される市町村主体の制度であるのに対し、指定管理鳥獣捕獲等事業の交付金は都道府県が広域的な捕獲計画を実行するための財源という違いがあります。農家や個人の猟師が直接申請する窓口ではなく、都道府県の自然環境担当部署が事業全体を運用します。

猟師はどう関わるのか|実際に捕獲するのは誰か

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指定管理鳥獣捕獲等事業は都道府県が「事業主体」ですが、実際の捕獲作業は都道府県が直接行うわけではありません。都道府県は事業の全部または一部を、「認定鳥獣捕獲等事業者」その他環境省令で定める者に委託することができます。

認定鳥獣捕獲等事業者は、捕獲の安全管理体制や従事者の技能・知識について都道府県知事の認定を受けた法人・団体です。各地の猟友会(例: 山口県猟友会、京都府猟友会など)がこの認定を受けて、指定管理鳥獣捕獲等事業を受託しているケースが各県にあります。つまり、個人の猟師が都道府県事業に直接参加するルートは、猟友会や認定事業者に所属し、委託された捕獲業務に従事者として加わる形が中心になります。認定鳥獣捕獲等事業者の認定基準や、猟師がどう関わるべきかは「認定鳥獣捕獲等事業者とは」で詳しく解説しています。

捕獲した個体への報奨金は、指定管理鳥獣捕獲等事業の受託業務として支払われる契約金とは別に、自治体の捕獲報奨金制度が適用される場合もあります。報奨金の全国的な相場は「有害鳥獣駆除の報奨金はいくら?都道府県別の金額と申請方法」で整理しています。

よくある質問

Q1: 指定管理鳥獣捕獲等事業と鳥獣被害対策実施隊の違いは何ですか?

鳥獣被害対策実施隊は市町村が設置し、民間隊員が非常勤公務員として地域の被害防止活動(捕獲・追い払い・柵の設置など)を担う組織です。指定管理鳥獣捕獲等事業は都道府県が主体となり、個体数そのものを減らすための広域的な捕獲計画を実行する国の制度で、実施主体の階層(市町村か都道府県か)が異なります。

Q2: 個人の猟師が直接この事業に申し込むことはできますか?

都道府県が直接個人と契約する形は一般的ではありません。都道府県が事業を認定鳥獣捕獲等事業者(猟友会など)に委託し、その事業者の従事者として捕獲に加わるルートが中心です。

Q3: なぜクマ類が2024年に追加されたのですか?

シカ・イノシシの「個体数半減」目標とは異なり、クマ類は分布拡大に伴う市街地への出没と人身被害の増加が深刻化したことが理由です。都道府県や広域協議会による集中的な管理を可能にするため、2024年4月に指定管理鳥獣へ追加されました。

Q4: この事業の財源は農家向けの補助金と同じですか?

異なります。指定管理鳥獣対策事業交付金事業は都道府県の広域捕獲事業向けの財源で、農家・猟師が罠や電気柵の購入費を補助される鳥獣被害防止総合対策交付金とは別の制度です。

関連記事: イノシシ・シカ被害はなぜ減らない?「捕獲7割の壁」を専門家が解説

まとめ:指定管理鳥獣捕獲等事業のポイント

  • 2015年の鳥獣保護管理法改正で創設され、都道府県が主体となりニホンジカ・イノシシを広域で集中捕獲する制度
  • 2024年4月、市街地出没・人身被害の増加を背景にヒグマ・ツキノワグマ(四国の個体群を除く)が追加指定された
  • シカは令和10年度までに平成23年度水準から半減させる目標、イノシシも早期の半減達成を目指す
  • 財政支援は特別交付税措置(捕獲事業・専門人材配置0.8、出没防止対策等0.5)
  • 実際の捕獲は都道府県から委託を受けた認定鳥獣捕獲等事業者(猟友会など)が担うことが多く、個人の猟師はその従事者として関わるのが現実的なルート

猟友会に所属していない猟師がこの事業に関わりたい場合は、まず地元の猟友会や市町村の鳥獣対策窓口に、認定鳥獣捕獲等事業者としての受託状況を問い合わせてみるとよいでしょう。認定事業者制度の詳細は「認定鳥獣捕獲等事業者とは」で解説しています。

この記事は猟人編集部が執筆しました。猟人 -KARIUDO- は猟師・ジビエ業界に特化した専門メディアです。

参考情報

  • 環境省「指定管理鳥獣対策事業交付金事業」https://www.env.go.jp/nature/choju/reinforce/index2.html(確認日: 2026-10-06)
  • 環境省「指定管理鳥獣捕獲等事業」https://www.env.go.jp/nature/choju/reinforce/index.html(確認日: 2026-10-06)
  • 環境省・農林水産省「シカ・イノシシの捕獲強化対策と捕獲目標について」(令和5年9月1日)https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort9/kyouka_taisaku.pdf(確認日: 2026-10-06)
  • 宮城県「クマ類の指定管理鳥獣への追加指定に係る情報と今後の県の対応方針について」https://www.pref.miyagi.jp/documents/24283/05_r6_kuma_siryou2_3.pdf(確認日: 2026-10-06)
  • 一般社団法人日本熊森協会「環境省令で指定管理鳥獣にクマ追加」(2024年12月5日)https://kumamori.org/topics/kumamori-news/20241205.html(確認日: 2026-10-06)



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