最終更新: 2026-07-17
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、国内のジビエ食肉処理施設が販売した肉類の合計金額は約54億円に達し、外食産業向けの販売量は全体の27.7%を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119996)。都市部でジビエを楽しめる店が全国各地に増える中、東京・両国というエリアが持つジビエとの関係は、他の地域とはまったく次元が異なります。
「ももんじ屋」という業態が誕生したのは江戸時代。獣肉の販売を行う店の総称として使われた「ももんじ屋」は、肉食が禁じられた時代でも「薬食い(やくぐい)」の名のもとに人々に猪肉を提供し続けました。両国1-10-2に今も暖簾を掲げる「ももんじや(富田屋)」は、1718年(享保3年)の創業以来、実に300年以上にわたってその伝統を守り続けています。
「両国でジビエを食べたいけど、どのお店が本当におすすめなのか?」「老舗の山くじら鍋と現代のジビエレストランは何が違うのか?」こうした疑問に、この記事で徹底的にお答えします。歴史的背景から最新の店舗情報、ジビエを食べる上での基礎知識まで、両国エリアのジビエ体験を完全解説します。
両国とジビエの300年|江戸「山くじら」文化の発祥地

肉食禁止令と「薬喰い」文化
江戸時代、幕府は獣肉食を公式には禁じていました。しかしこれは建前であり、実態としては「薬食い(やくぐい)」という名目で、牡丹(ぼたん)=猪、紅葉(もみじ)=鹿、桜(さくら)=馬、柏(かしわ)=鶏という隠語を使いながら、冬至の前後を中心に庶民が獣肉を食べていたのが実情です。
なかでも両国という場所は、隅田川(大川)沿いに生きた猪を運び込む商いが盛んで、両国橋の袂は事実上の獣肉集積地として機能していたと伝わります。「山くじら(猪)」を「薬」として提供するももんじ屋が軒を連ね、力士や庶民が冬の獣肉を楽しんだのがこの地でした。
「ももんじ」という名称の由来
「ももんじ」という言葉は「百獣(ひゃくじゅう)」が転じた語で、四足の動物(獣)の肉を扱う店の総称を意味します。猪・鹿・熊・狸・狼・狐など、さまざまな獣肉を扱っていたことから「もも(百)んじ(獣)屋」と呼ばれるようになったとされています。江戸後期の随筆「守貞漫稿」にも両国のももんじ屋の記述が残されており、当時から名の知れた食文化スポットだったことがうかがえます。
こうした「命をいただく」という哲学は、現代のジビエ文化にも通底しています。ジビエとは何かを基礎から知りたい方は、まずこちらの記事をご参照ください。
現代の両国エリアのジビエシーン
現在の両国駅周辺(JR総武線・都営大江戸線 両国駅)と隣接する錦糸町(JR総武線・東京メトロ半蔵門線 錦糸町駅)を含む墨田区エリアは、相撲の聖地・国技館と江戸東京博物館を擁する文化的なエリアです。観光客と地元住民が共存するこの街に、現在も複数のジビエ専門店が根付いています。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(e-Stat 統計表ID: 0002119971、令和5年度)によると、国内のジビエ食肉処理量はシカが全体の79.3%(約5,605トン)、イノシシが20.7%(約1,467トン)を占めています。両国のももんじやが300年以上にわたり変わらず猪鍋を提供し続けていることは、日本のジビエ食文化の中心にイノシシが位置し続けてきた歴史を体現しているとも言えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エリア | 墨田区両国(JR・都営大江戸線 両国駅)、錦糸町(JR・東京メトロ 錦糸町駅) |
| ジビエの歴史 | 1718年ももんじや創業。江戸時代から300年以上の「山くじら」食文化が根付く |
| 主なジビエ食材 | 猪(丹波篠山・兵庫産)、蝦夷鹿(北海道直送)、ニホンジカ、ヒグマ |
| ベストシーズン | 10月〜2月(猟期最盛期。猪鍋は冬が最高品質) |
| エリアの特徴 | 相撲文化と獣肉食の親和性。力士の体づくりと「山くじら鍋」の関係が深い街 |
| 価格帯の幅 | 4,000円〜(カジュアル居酒屋)〜7,999円(老舗コース)と選択肢が多い |
両国・錦糸町のジビエ料理おすすめ店を比較
両国・錦糸町エリアでジビエ料理が楽しめる厳選店を、ジャンル・予算・特徴とともに比較しました。訪問前には必ず公式サイトや食べログ・一休.comレストランなどの予約サービスで、最新の営業情報・メニューをご確認ください。
| 店名 | ジャンル | 予算目安(1名) | 定休日 | ジビエの特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ももんじや(富田屋) | 和食・すき焼き鍋 | 6,000〜7,999円 | 月曜(要確認) | 1718年創業。丹波篠山産猪の山くじら鍋・鹿肉料理・熊汁 |
| マタギ東京(錦糸町) | ジビエ居酒屋 | 4,000〜4,999円 | 水曜 | 北海道直送エゾ鹿・ヒグマ。現代的な居酒屋スタイル |
ももんじや(富田屋)|1718年創業・江戸ジビエ文化の生き証人
歴史と創業背景
「山くじら すき焼 ももんじや」の正式名称は「ももんじや 富田屋(とみだや)」。1718年(享保3年)の創業は、徳川吉宗が将軍職に就いた翌々年のことです。元々は漢方薬を扱う薬種商だったとされますが、薬効があるとして扱われた猪肉(山くじら)が評判を呼び、次第に獣肉料理専門の飲食店へと転身しました。
店の外に設置された大きな猪の剥製(はくせい)は両国の名物として知られており、隅田川のほとりにたたずむ外観は、江戸時代から変わらない「ももんじ屋」の風情をそのまま今に伝えています。
300年以上の歴史の中で、大正から昭和にかけての幾度かの戦災・震災をくぐり抜け、現在は11代目が暖簾を守っています。その経営継続の長さは、江戸東京の食文化の中でも類を見ないものです。
シグニチャーメニュー「猪鍋(山くじら鍋)」の特徴
ももんじやの看板料理は、丹波篠山(兵庫県)産の天然猪肉を使ったすき焼きスタイルの猪鍋(いのしし鍋)。店が「山くじら鍋」と呼ぶこの料理は、独自の甘みそ割下でじっくり煮込むスタイルです。赤身には臭みが少なく、脂身には牛・豚にない独特の甘みと旨みがあり、ジビエ初心者でも食べやすいと好評です。
鍋コースには前菜・鍋・ご飯ものがセットになっており、接待や宴会、記念日の利用を前提とした落ち着いた座敷空間で提供されます。
| メニュー | 食材 | 特徴 |
|---|---|---|
| 山くじら鍋(猪鍋) | 丹波篠山産天然猪 | 甘みそ割下のすき焼きスタイル。赤身のさっぱり感と脂の甘みが共存 |
| 鹿肉料理・鹿ハム | ニホンジカ | 赤身の上品な旨みが特徴。鹿肉の繊細な風味を堪能できる |
| 熊汁 | 熊 | 脂が豊かでコクのある汁物。山の幸のエッセンスが凝縮 |
| 各種野生獣肉料理 | 猪・鹿・その他 | シーズンに応じて希少部位も登場する |
予約・アクセス・価格帯
- **住所**: 東京都墨田区両国1-10-2
- **アクセス**: JR総武線・都営大江戸線 両国駅西口より徒歩約5分(隅田川方面)
- **予算**: 1名6,000〜7,999円(コース)
- **席のスタイル**: 全部屋座敷(個室・半個室あり)
- **予約**: 食べログ・一休.comレストランなどのオンライン予約可
コースは事前予約が基本です。はじめて訪問する場合は「猪鍋コース」からスタートするのが王道ルートです。接待・会食・記念日の利用にも最適で、全席座敷という空間が非日常感を高めてくれます。
マタギ東京(錦糸町)|北海道直送エゾ鹿・ヒグマが楽しめる現代のジビエ居酒屋
現代型ジビエ居酒屋の魅力
ももんじやから電車で約2分の錦糸町に、現代的なスタイルでジビエを提供する居酒屋「マタギ東京」があります。店名が示す通り、北海道のマタギ(伝統的猟師)が仕留めた蝦夷鹿(エゾシカ)とヒグマを中心に、直送された希少なジビエを提供しています。
ももんじやが「接待・宴会・特別な記念日」向けの格式ある空間であるのに対し、マタギ東京は「仕事帰りに気軽にジビエを楽しむ」現代のジビエ居酒屋スタイルを確立しています。予算が4,000〜4,999円程度と入りやすく、はじめてジビエを食べる人のハードルを大きく下げています。
エゾシカとヒグマが主役
マタギ東京の最大の特徴は、北海道の猟師から直送されるエゾシカとヒグマという希少食材の安定供給です。
エゾシカ(蝦夷鹿) は北海道全体の農業・林業被害が深刻化する中、積極的な利活用が推進されている食材です。赤身の割合が高く、鉄分と良質なたんぱく質が豊富。農林水産省のデータによれば牛肉の約2倍の鉄分を含み、ジビエの中でも特に栄養価が高く評価されています。
ヒグマ は、日本のジビエの中でも最も希少な存在の一つです。捕獲量が非常に少なく、食材として提供できる店は全国でも限られています。赤身の深い旨みと独特の香りが特徴で、「一度は食べてみたい」とジビエ経験者が求める食材です。マタギ東京ではヒグマを焼き物や鍋物で提供しており、ヒグマを食べられる数少ない東京の店として知られています。
予約・アクセス・価格帯
- **住所**: 東京都墨田区江東橋2-10-6(錦糸町エリア)
- **アクセス**: JR総武線・東京メトロ半蔵門線 錦糸町駅 徒歩約4分
- **予算**: 1名4,000〜4,999円(各種飲み放題コースあり)
- **定休日**: 水曜日
- **予約**: ホットペッパーグルメ・食べログなどで予約可能
両国駅から錦糸町駅まではJR総武線で1駅(約2分)の距離です。ももんじやで伝統の山くじら鍋を楽しんだ後、二軒目にマタギ東京で北海道直送ジビエを楽しむ「ジビエはしご」も、墨田区エリアならではの楽しみ方です。
両国でジビエを楽しむための基礎知識
ジビエを安心して食べるための衛生管理
ジビエ(野生鳥獣肉)は適切な処理が行われていないと、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌のリスクがあります。農林水産省は「野生鳥獣の適切な処理に関するガイドライン」を定めており、飲食店が仕入れるジビエは捕獲後の血抜き→解体→冷却→検査というプロセスが求められています。
ももんじやもマタギ東京も、信頼できる仕入れルートを確保した店舗です。生食が提供される場合は、衛生管理が適切に行われた処理施設からの仕入れが前提となります。食事前に店側の説明をよく聞き、安心して楽しんでください。
詳しくはジビエの衛生管理ガイドライン完全解説をご参照ください。
ジビエのベストシーズンと旬
| 月 | 猟期の状況 | ジビエの品質 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 11月〜2月 | 猟期最盛期 | 最高品質。脂のりが最高峰 | 猪鍋が特においしい時期 |
| 3月〜10月 | 猟期外(一部有害鳥獣駆除あり) | 品質は安定。冷凍保管品が主体 | 夏でも冷凍保管により品質維持 |
| 10月後半 | 猟期開始直前〜早期 | 年間最初の新物が入荷 | 「今期最初の猪」を楽しめる貴重な時期 |
ジビエは猟期の11月〜2月が最もおいしい時期です。ただし、ももんじやのような老舗は通年安定した品質の猪肉を確保しており、猟期外でも品質の高いジビエを提供しています。ジビエの旬の詳細はジビエの旬と食べごろを解説をご覧ください。
ジビエ特有の臭みが心配な方へ
「ジビエは臭いから苦手」という声を聞くことがあります。しかし、ももんじやの甘みそ仕立ての猪鍋のように、適切な下処理と調理法で臭みは大幅に軽減されます。猪肉は特に皮下脂肪の処理と冷却が重要で、仕入れから調理までの管理が徹底された店では、野性的な風味が「香り」として楽しめる程度に落ち着いています。
ジビエ料理の臭み取りについて詳しく知りたい方はジビエの臭み取り方法完全ガイドも参照ください。
「山くじら」から学ぶジビエの価値観
江戸時代の人々が猪を「山くじら」と名付けて食べた背景には、単なる禁忌の抜け道ではなく、自然の恵みに対する感謝と知恵が込められていました。クジラも猪も「海・山の野生の生き物」として同じ次元に置き、人間の生存に必要な「命の糧」として受け止めていたのです。
このような哲学は現代のジビエ食文化にも通じます。猟師が自ら仕留め、自らの手で解体・加工したジビエを消費者が食べることで、野生動物と人間の関係が「閉じたサイクル」として成立します。両国でジビエを食べることは、単なる食体験ではなく、江戸時代から続く人間と自然の関係への参加でもあるのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 両国でジビエが食べられるお店はどこですか?
A1. 最も有名なのは1718年(享保3年)創業の「ももんじや(富田屋)」(墨田区両国1-10-2)です。丹波篠山産の猪を使った山くじら鍋・鹿肉料理・熊汁など本格的なジビエ料理が楽しめます。また、隣接する錦糸町エリアには「マタギ東京」があり、北海道直送のエゾ鹿・ヒグマをカジュアルな居酒屋スタイルで楽しめます(錦糸町駅徒歩4分)。
Q2. ももんじやは予約が必要ですか?
A2. はい、事前予約が基本です。食べログ・一休.comレストラン・ホットペッパーグルメなどのオンライン予約サービスから予約可能です。特にコースメニューは席数が限られるため、訪問の1週間前を目安に予約することをおすすめします。
Q3. ジビエを初めて食べる場合はどちらのお店がおすすめですか?
A3. はじめての方には「ももんじや」の猪鍋コースがおすすめです。甘みそ割下のすき焼きスタイルは、ジビエ特有の野性的な風味が程よく抑えられており、牛肉・豚肉に慣れた方でも食べやすい仕上がりです。一方、希少なヒグマ料理を試してみたい方にはマタギ東京が向いています。
Q4. ジビエは何月に食べるのが最もおいしいですか?
A4. 一般的には猟期にあたる11月〜2月が旬のピークです。特に猪は脂が最もよく乗る12〜1月が絶品で、ももんじやの山くじら鍋はこの時期に最高の状態となります。ただし通年提供している店舗では、冷凍保管技術の向上により猟期外でも品質は安定しています。
Q5. 両国はなぜジビエと縁の深い街なのですか?
A5. 江戸時代から「ももんじ屋」という獣肉専門店が両国に集積し、1718年創業のももんじやが今も現役で営業し続けているためです。「山くじら(猪)」という文化的概念が生まれた土地であり、日本のジビエ食文化の原点とも言えます。さらに国技館を擁する相撲の街でもあり、大きな体づくりに必要な良質なたんぱく源として獣肉食が受け入れられてきた土地的背景も重なります。
Q6. ヒグマが食べられるお店は全国的にも少ないと聞きましたが、両国エリアで食べられますか?
A6. はい、錦糸町の「マタギ東京」でヒグマ料理を提供しています。ヒグマは捕獲量が非常に少なく、食材として安定供給できる店は全国的に希少です。マタギ東京は北海道の猟師から直送されるルートを確保しており、ヒグマをジビエとして楽しめる数少ない東京の店の一つです。予算も4,000〜4,999円とリーズナブルです。
Q7. 両国のジビエとマタギ文化にはどんな関係がありますか?
A7. 「マタギ」とは東北・北海道の山間部に伝わる伝統的な猟師集団のことです。マタギ東京はその名の通り、北海道マタギの猟師から直接仕入れたジビエを提供しています。江戸の「ももんじ屋」文化と東北・北海道の「マタギ文化」が両国エリアで出会うという、日本のジビエ食文化の縮図が体験できるのが、この街の特別なところです。マタギ文化の歴史も合わせてご覧ください。
関連記事: ジビエパンとは?鹿肉・猪肉を使ったパンの種類・全国事例・レシピを完全解説【2026年版】
関連記事: 大船のジビエ料理おすすめ店ガイド|鎌倉・湘南エリアの名店を徹底比較【2026年版】
関連記事: 五反田のジビエ料理おすすめ店ガイド|品川・大崎エリアの名店を徹底比較【2026年版】
まとめ|300年の伝統と現代が共存する両国のジビエシーン
両国は、日本のジビエ食文化の「原点」と「現在地」が同時に体験できる唯一無二のエリアです。
- **1718年創業のももんじや**: 山くじら(猪)の伝統を守り続ける江戸ジビエ文化の生き証人。甘みそ割下の猪鍋が看板
- **マタギ東京(錦糸町)**: 北海道直送エゾ鹿・ヒグマを現代スタイルで楽しめるジビエ居酒屋
どちらの店も「野生の命をいただく」というジビエ本来の哲学を大切にしながら、異なるアプローチで都市の食卓にジビエを届けています。はじめてジビエを試すなら、300年の伝統が詰まったももんじやの猪鍋から。ジビエ経験者でさらに希少な食材に挑戦したいなら、マタギ東京のヒグマ料理が新たな扉を開いてくれるでしょう。
猟師がどのようにジビエを仕留め、届けているかを知ることで、食体験はさらに深まります。ジビエ料理の世界全体を知りたい方はジビエ料理の総合ガイドもあわせてご覧ください。
参考情報
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」e-Stat 統計表ID: 0002119996(2026年7月確認)
- 農林水産省「野生鳥獣の捕獲頭数及び食肉処理頭数等調査(令和5年度)」e-Stat 統計表ID: 0002119971(2026年7月確認)
- 農林水産省「ジビエの魅力」(maff.go.jp、2026年7月確認)
- ももんじや(富田屋)公式情報・食べログ掲載情報(2026年7月確認)
- マタギ東京 食べログ・ホットペッパーグルメ掲載情報(2026年7月確認)
- 農林水産省「野生鳥獣の適切な処理に関するガイドライン」(2026年7月確認)


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