ジビエペットフードとは?市場規模・届出・製造手順を徹底解説【2026年版】

ジビエペットフードとは?市場規模・届出・製造手順を徹底解説【2026年版】 ジビエ料理

最終更新: 2026-06-11

農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設がペットフード用として販売した金額は888百万円にのぼり、食肉以外の販売金額のうち実に89.2%を占めています。捕獲した鹿やイノシシのうち、食肉基準を満たさない部位をペットフードとして活用する動きが全国で加速しているのです。

「狩猟で捕獲した鳥獣をもっと有効活用したい」「ペットフード事業に参入してみたいが、どんな届出が必要なのかわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、ジビエペットフードの基礎知識から市場規模の最新データ、製造に必要な届出手続き、衛生管理のポイント、そして収益モデルまでを一気に解説します。まずジビエペットフードが注目される背景を押さえたうえで、実際に参入するための具体的なステップと成功事例をお伝えします。

ジビエペットフードとは?注目される3つの理由

ジビエペットフードとは、狩猟や有害鳥獣駆除で捕獲されたシカ・イノシシなどの野生鳥獣の肉を原料として製造された犬猫用のフードのことです。近年、このジビエペットフードが注目される背景には、大きく3つの理由があります。

1つ目は、捕獲鳥獣の有効活用です。環境省の統計によると、令和4年度のシカ・イノシシの捕獲数は合計約130万頭(シカ約71.7万頭、イノシシ約59.0万頭)にのぼりますが、食肉として利用されるのはごく一部にとどまります。食用基準を満たさない部位や個体をペットフード原料として活用することで、廃棄ロスを大幅に削減できます。

2つ目は、ペットの健康志向の高まりです。国内ペットフード市場は2024年度の出荷総額が約4,594億円(農林水産省 2025年調査)と9年連続で拡大しており、特にプレミアムフードやナチュラルフードへの需要が伸びています。添加物を使わない天然素材のジビエは、アレルギー対応フードとしても評価されています。

3つ目は、猟師の新たな収入源としての可能性です。有害鳥獣駆除の報奨金だけでは十分な収入を得にくい現状において、ペットフード製造・販売は副収入の柱となりえます。

項目 内容
定義 野生鳥獣肉を原料とした犬猫用フード
主な原料 シカ肉、イノシシ肉(骨・内臓を含む場合もあり)
製品形態 ジャーキー、ドライフード、ウェットフード、おやつ
根拠法令 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)
所管省庁 農林水産省・環境省

ジビエとは何かを基礎から知りたい方は、こちらの解説記事もあわせてご確認ください。

ジビエペットフードの市場規模を政府統計で読み解く

ジビエペットフードの市場はどのくらいの規模なのか。農林水産省が公表している野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)のデータから、具体的な数字を見ていきます。

販売金額と構成割合

ジビエ食肉処理施設が野生鳥獣を処理して得た金額の全体像は以下のとおりです。

販売区分 金額(百万円) 構成割合
食肉販売(合計) 4,404 81.5%
うちシカ食肉 2,571 47.6%
うちイノシシ食肉 1,644 30.4%
ペットフード(合計) 888 16.4%
うちシカ用ペットフード 831 15.4%
うちイノシシ用ペットフード 57 1.1%
皮革 14 0.3%
鹿角製品(鹿茸等) 90 1.7%
合計 5,405 100%

出典: 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)、e-Stat 統計表ID: 0002119974

ここで注目すべきは、ペットフードの販売金額888百万円のうち、シカ由来が831百万円(93.6%)と圧倒的な割合を占めていることです。シカ肉はイノシシ肉に比べて脂肪が少なく、犬の低脂肪食として需要が高いことがこの数字に表れています。

解体実績から見る原料供給の安定性

食肉処理施設に搬入される野生鳥獣の重量データも、原料供給の観点から重要です。

指標 全体 イノシシ シカ
搬入時の重量(トン) 7,072 1,467 5,605
構成割合 100% 20.7% 79.3%
1頭当たり体重(kg) 44 37 46

出典: 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)、e-Stat 統計表ID: 0002119971

シカの搬入重量は全体の79.3%を占めており、安定的な原料供給が見込めることがわかります。詳しい業界データは狩猟・ジビエ業界の統計まとめページでも定期的に更新しています。

ジビエペットフードの種類と特徴

ジビエペットフードは製品形態によって大きく4つに分類できます。参入を検討する場合は、それぞれの特徴を理解したうえで、自分の設備や販路に合った製品を選ぶことが重要です。

製品タイプ 製造難易度 初期投資目安 賞味期限 主な販路
ジャーキー(乾燥肉) 低〜中 30〜100万円 6〜12か月 EC・直売所・ペットショップ
ドライフード(総合栄養食) 500万円以上 12〜18か月 ペットショップ・EC
ウェットフード(缶・パウチ) 中〜高 300万円以上 24〜36か月 ペットショップ・EC
冷凍生肉フード 50〜150万円 3〜6か月 EC・直売

小規模事業者が最も参入しやすいのはジャーキータイプです。食品用の乾燥機があれば製造でき、保存性も高いため、まずはジャーキーから始めて徐々にラインナップを拡大するケースが一般的です。

実際に猟師仲間の話を聞くと、最初は自分の猟犬用にジャーキーを作り始め、その評判がSNSで広まって本格的な販売に至るパターンが少なくありません。現場では、シカのモモ肉やスネ肉のうち食用に回しにくい部分をジャーキーに加工するのが定番の活用法です。

製造・販売に必要な届出と法的手続き

ジビエペットフードを製造・販売するには、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法、2009年6月施行)に基づく届出が必要です。特別な「許可」ではなく「届出」制度のため、要件を満たせば比較的スムーズに事業を開始できます。

届出の手続き

手続き項目 内容
届出先 管轄の地方農政局
届出期限 事業開始前
届出対象 製造業者・輸入業者(原材料のみの製造も対象)
届出費用 無料
届出書類 愛玩動物用飼料製造業者届出書
届出後の義務 帳簿の備付け、立入検査への対応

ここで注意すべきは、ジビエの食肉販売に必要な許可(食品衛生法に基づく食肉処理業・食肉販売業の許可)とペットフード安全法の届出は別の制度であるという点です。食用ジビエを販売する場合は保健所への許可申請が必要ですが、ペットフード専用であれば農政局への届出で事業を開始できます。

遵守すべき基準

ペットフード安全法では、以下の基準を守る義務が課されています。

基準区分 具体的な内容
成分規格 有害物質(農薬、重金属、カビ毒等)の基準値を超えないこと
製造方法の基準 加熱処理による病原体の不活化、金属探知機による異物混入防止
表示基準 犬用・猫用の区分、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名・住所の記載
帳簿記載義務 原材料の仕入先・数量・製造日・販売先等の記録保存

ペットフード安全法と食品衛生法の違い

ジビエ関連事業を始める方がつまずきやすいのが、食品衛生法(食用)とペットフード安全法(ペット用)の違いです。

比較項目 食品衛生法(食用ジビエ) ペットフード安全法(ペット用)
手続き種別 許可(保健所) 届出(地方農政局)
HACCP 義務化 推奨(義務ではない)
施設基準 食肉処理業・食肉販売業の基準あり 施設基準なし(衛生管理の自己責任)
検査 保健所の定期立入 農政局の立入検査あり
罰則 営業停止・罰金あり 製造停止命令・罰金あり

この違いを正しく理解していないと、食肉処理施設の許可が必要だと思い込んで参入をあきらめてしまうケースがあります。ペットフード専用であれば施設基準のハードルは比較的低く、自宅の作業場でも要件を満たせる可能性があります。

ジビエペットフードの製造手順と衛生管理のポイント

ここでは、最も参入障壁が低いジャーキータイプを例に、製造の流れを解説します。ジビエの衛生管理ガイドラインの内容もあわせて確認しておくことをおすすめします。

製造工程(ジャーキーの場合)

Step 1: 原料の受入・検品

捕獲した鳥獣は速やかに内臓を除去し、2時間以内に10度以下まで冷却します。銃弾の経路付近の肉は使用せず、外観検査で異常がないことを確認します。

Step 2: 除骨・整形

筋膜や血合いを除去し、3〜5mm程度の均一な厚さにスライスします。金属探知機を使用し、散弾の鉛片などが残っていないことを確認するのが必須工程です。

Step 3: 加熱・乾燥

食品乾燥機で65〜70度、8〜12時間かけてじっくり乾燥させます。野生鳥獣は寄生虫や細菌のリスクがあるため、中心温度が75度以上に達するよう十分な加熱が欠かせません。

Step 4: 冷却・検品

乾燥後は室温まで冷却し、水分活性を0.65以下に管理します。最終的に再度金属探知機で異物チェックを行い、規格外のものは除外します。

Step 5: 包装・表示

脱酸素剤を封入して真空包装し、ペットフード安全法に基づく表示ラベルを貼付します。賞味期限は製造日から6〜12か月が一般的です。

衛生管理の注意点

農林水産省が公表している「ジビエペットフード原料処理マニュアル」では、以下の点が特に強調されています。

管理項目 具体的な対策
寄生虫対策 中心温度75度以上での加熱、またはマイナス20度で48時間以上の冷凍
細菌汚染防止 捕獲から2時間以内の冷却開始、作業台・器具の定期消毒
異物混入防止 金属探知機による検査(受入時・出荷前の2回)、銃弾経路付近の肉の除外
交差汚染防止 食用肉と非食用肉の作業区域の分離、器具の使い分け
トレーサビリティ 捕獲日時・場所・個体情報の記録、原材料ロットの管理

ジビエの解体手順を正しく理解していることが、安全なペットフード製造の前提条件となります。

収益モデルと全国の成功事例

ジビエペットフード事業の収益性はどの程度なのか。ここでは、実際に参入している事業者のデータをもとに、収益モデルの目安を示します。

小規模事業者の収益シミュレーション(ジャーキーの場合)

項目 数値
原料調達コスト(1kg) 0〜500円(自家捕獲の場合は実質0円)
製造コスト(加工・包装・光熱費 / 1kg) 約1,500〜2,000円
製品歩留まり 原料肉1kgからジャーキー約300〜350g
販売価格(100gあたり) 800〜1,500円(EC販売の場合)
100gあたり粗利益 約300〜800円
月間製造量の目安(個人) 原料肉30〜50kg → ジャーキー約10〜17kg
月間売上の目安 8〜25万円程度

自家捕獲した鳥獣の非食用部位を原料にする場合、原料コストが大幅に抑えられるため、狩猟を副業にしている方にとっては非常に相性の良い事業モデルです。

全国の成功事例

農林水産省のWebサイトでは、ジビエペットフード事業に取り組む3つの地域が紹介されています。

長野県小諸市では、食肉処理施設に搬入されたシカのうち食用基準を満たさなかった個体をペットフード原料として加工し、処理施設の経費削減と新たな収益源の確保を両立させています。

兵庫県多可町では、地域ブランド商品としてジビエペットフードを開発し、道の駅やECサイトでの販売を通じて雇用創出にもつなげています。

京都府京丹波町では、捕獲従事者の報酬に加えて、ペットフード用の原料買取制度を設けることで、猟師の捕獲意欲を維持しつつ鳥獣被害の軽減を実現しています。

こうした事例に共通しているのは、食肉利用と組み合わせることでジビエ処理施設全体の採算性を高めている点です。ペットフード事業単独ではなく、食肉販売・皮革利用・鹿角製品など複数の収益源をつくる「全頭利用」の一環として位置づけられています。

よくある質問

Q1: ジビエペットフードの製造に食品衛生法の許可は必要ですか?

ペット用フードのみを製造・販売する場合、食品衛生法の許可は不要です。ただし、ペットフード安全法に基づく届出(地方農政局への愛玩動物用飼料製造業者届)が必要です。食用ジビエも同時に扱う場合は、食品衛生法の許可も別途必要になります。

Q2: 自宅で製造しても問題ありませんか?

ペットフード安全法には食品衛生法のような施設基準がないため、衛生管理が適切に行えるのであれば自宅の作業場でも製造は可能です。ただし、金属探知機の設置や原料の適切な保管など、衛生管理の自己責任が求められます。

Q3: ジビエペットフードの原料として使えるのはどの部位ですか?

食用に回せない部位(スネ肉、スジ、端材)のほか、内臓(心臓、レバーなど)や骨も原料として活用できます。ただし、銃弾の経路付近の肉や、外観に異常がある部位は除外する必要があります。

Q4: 猫用のジビエペットフードも作れますか?

はい、猫用のフードも製造・販売できます。ただし、犬と猫では必要な栄養素が異なるため、総合栄養食として販売する場合はペットフード公正取引協議会の基準に合致する栄養設計が必要です。おやつ・トッピング用としての販売であれば栄養基準は適用されません。

Q5: 届出から販売開始までどのくらいかかりますか?

届出自体は書類提出のみで即日受理されるケースがほとんどです。製造設備の準備や衛生管理体制の構築を含めると、小規模なジャーキー製造であれば1〜2か月程度で販売を開始できます。

Q6: シカ肉とイノシシ肉ではどちらがペットフードに向いていますか?

市場データ(令和5年度農林水産省調査)によると、ペットフード販売金額の93.6%がシカ由来です。シカ肉は高たんぱく・低脂肪で犬のアレルギー対応食材としての評価が高く、ペットフード原料としてはシカ肉が主流となっています。

Q7: ジビエペットフードの販路はどこで開拓できますか?

ECサイト(自社サイト、Amazon、楽天)が最も参入しやすい販路です。農林水産省の調査では、消費者への直接販売のうちインターネット経由が7.7%(全鳥獣ベース)を占めており、EC市場の伸びしろが大きいことがわかります。地域の道の駅や直売所、ペットショップへの卸売も有力な選択肢です。

まとめ:ジビエペットフード参入のポイント

ジビエペットフード市場のポイントを整理します。

  • ペットフード販売金額は888百万円で、ジビエ処理施設の食肉以外の収益の89.2%を占める成長分野
  • 原料はシカ肉が中心(93.6%)で、供給量は安定している
  • 参入に必要なのはペットフード安全法に基づく「届出」であり、食品衛生法の「許可」とは異なる
  • ジャーキータイプなら初期投資30〜100万円程度から小規模に始められる
  • 食肉販売・報奨金・皮革利用と組み合わせた「全頭利用」の一環として取り組むのが成功のカギ

まずは自家捕獲の鳥獣でジャーキーを試作し、品質と需要を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。猟師としての収入源を広げたい方は、猟師の年収と収入源に関する記事もあわせてご覧ください。

参考情報

  • 農林水産省「ペットフードへの利用等について」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/petfood.html)
  • 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974)
  • 農林水産省「ペットフード安全法 製造に関するQ&A」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/p_qa/seizo.html)
  • 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)「ジビエペットフードQ&A」(http://www.famic.go.jp/ffis/pet/sub3_gibier.html)
  • 農林水産省「ペットフード産業実態調査(令和6年度)」



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