猟師とは?5つの働き方と役割をデータで徹底解説【2026年版】

猟師とは?5つの働き方と役割をデータで徹底解説【2026年版】 狩猟入門

最終更新: 2026-06-12

農林水産省の令和5年度調査によると、ジビエ(野生鳥獣肉)の販売金額は約54億円に達し、食肉だけで約44億円を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。この成長市場を支えているのが「猟師」という職業です。

「猟師って具体的に何をする仕事なの?」「猟師になるにはどうすればいい?」「実際に食べていけるのか?」こうした疑問を持つ方は少なくありません。特に近年は、獣害問題の深刻化や地方移住ブームの影響で、猟師という職業に注目が集まっています。

この記事では、猟師の定義から種類、具体的な仕事内容、年収の実態、必要な資格まで、政府の統計データをもとに網羅的に解説します。まず猟師の基本的な定義と歴史を押さえ、次に5つの働き方パターンを比較し、最後に猟師を目指すための具体的なステップをお伝えします。

猟師とは?定義と歴史をわかりやすく解説

猟師とは、山野で野生の鳥獣を捕獲することを生業とする人のことです。「ハンター」「狩猟者」とも呼ばれ、銃やわな、網などの猟具を使って野生動物を捕らえます。

日本における猟師の歴史は古く、10世紀ごろにはすでに獲物が一般に需要されていたことが記録に残っています。14世紀には、猟師は商人や職人と並んで領主経済を支える存在でした。

現代の猟師は、単に動物を捕るだけの仕事ではありません。増えすぎた野生動物による農林業被害を防ぐ「有害鳥獣駆除」、捕獲した動物を食肉として活用する「ジビエ産業」、そして地域の自然環境を守る「生態系管理」という3つの社会的役割を担っています。

項目 内容
定義 野生の鳥獣を捕獲することを生業とする人
別名 ハンター、狩猟者、マタギ(東北地方の伝統的猟師)
歴史 10世紀から職業として記録あり。14世紀には経済を支える職種に
現代の主な役割 有害鳥獣駆除、ジビエ供給、生態系管理
必要な資格 狩猟免許(4種)、銃猟の場合は猟銃所持許可
活動時期 狩猟期間は原則11月15日〜翌2月15日(有害駆除は通年可能)

猟師と似た言葉に「マタギ」がありますが、マタギは東北地方(主に青森・秋田・岩手)で受け継がれてきた伝統的な集団猟法を行う猟師集団のことを指します。独自の文化・風習・山の神への信仰を持ち、猟師という大きなカテゴリの中の特殊な存在といえます。

猟師の5つの働き方パターン|あなたに合うのは?

「猟師」と一口に言っても、実はさまざまな働き方があります。ここでは、現代の猟師の5つのキャリアパターンを比較します。この分類は、猟人編集部が実際の猟師への取材や求人情報の分析を通じてまとめたものです。

パターン 概要 年収目安 向いている人
専業猟師 狩猟と解体・販売を本業とする 200〜500万円 山の暮らしに腰を据えたい人
副業猟師 本業のかたわら猟期に狩猟する 本業+30〜100万円 まずは小さく始めたい人
有害鳥獣対策員 自治体から委嘱を受けて通年で駆除活動 300〜450万円 安定した収入が欲しい人
ジビエ事業者 捕獲から加工・販売まで一貫して行う 300〜800万円 ビジネスとして取り組みたい人
猟師ガイド・講師 狩猟体験ツアーや猟銃講習の指導 200〜400万円 人に教えるのが好きな人

それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。

パターン1:専業猟師

狩猟そのものを本業とするスタイルです。猟期(11月〜2月)には集中的に猟を行い、オフシーズンは解体処理や食肉加工、猟具の手入れ、山の下見などに時間を使います。収入源は捕獲した獲物の食肉販売と、有害鳥獣駆除の報奨金が中心です。

自治体によっては、シカ1頭あたり7,000〜15,000円、イノシシ1頭あたり8,000〜20,000円の報奨金が支給されます。

パターン2:副業猟師

会社員や農家など、本業を持ちながら猟期に狩猟を行うスタイルです。近年は公務員でも副業として狩猟が認められるケースが増えています。週末だけ山に入る「週末ハンター」も多く、狩猟の入り口として最もハードルが低い働き方です。

パターン3:有害鳥獣対策員

市町村から正式に委嘱を受け、通年で野生動物の捕獲や被害防止にあたる職種です。自治体の「地域おこし協力隊」として採用されるケースも増えており、給与制で安定した収入を得られる点が魅力です。

パターン4:ジビエ事業者

捕獲から食肉処理、加工、販売までを一貫して手がけるビジネスモデルです。農林水産省の令和5年度調査によると、ジビエの食肉販売金額はシカ肉だけで約25.7億円、イノシシ肉で約16.4億円に達しています(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。

加えて、ペットフード用途の販売も約8.9億円と急成長しており、食肉以外の販路も広がっています。ジビエの販売許可の取り方を押さえておくと、事業化への道筋が見えてきます。

パターン5:猟師ガイド・講師

近年注目されているのが、狩猟体験ツアーの企画やわな猟講習の講師として活動するスタイルです。「狩猟に興味はあるけれど一人では不安」という初心者層の増加に伴い、需要が高まっています。

猟師の仕事内容|1年間の流れと具体的な業務

猟師の仕事は季節によって大きく変わります。ここでは1年間のスケジュールに沿って、具体的な業務内容を解説します。

猟期(11月〜翌2月):本格的な狩猟活動

猟期は猟師にとって最も忙しい時期です。早朝に山に入り、鳥獣の痕跡(足跡、糞、食痕)を追跡しながら獲物を探します。

銃猟の場合は、単独で行う「忍び猟」と、複数人で山を取り囲む「巻き狩り」の2つが主な猟法です。わな猟の場合は、くくり罠や箱罠を獣道に設置し、毎日見回りを行います。

獲物を捕獲したら、現場での血抜き(放血)が最初の作業です。その後、食肉処理施設に搬入するか、自身で解体処理を行います。農林水産省の令和5年度調査によると、食肉処理施設への搬入重量はシカが5,605トン(全体の79.3%)、イノシシが1,467トン(20.7%)と、シカが圧倒的に多い状況です(e-Stat 統計表ID: 0002119971)。

オフシーズン(3月〜10月):準備と副次的な活動

猟期以外は以下のような業務を行います。

  • 有害鳥獣駆除の依頼対応(自治体からの委嘱で通年活動が可能)
  • わなの整備・猟具のメンテナンス
  • 猟犬の訓練・管理
  • 猟場の下見(獣道の確認、動物の生息状況調査)
  • 射撃場での練習(銃猟者)
  • ジビエの加工品開発や販路開拓

実際の猟師の声を聞くと、「猟期の4か月間は毎日が勝負で体力的にきつい。でもオフシーズンに準備をどれだけ丁寧にやるかで、猟期の成果が変わる」という話をよく耳にします。つまり、猟師は1年を通じて仕事がある職業なのです。

猟師の1日のスケジュール例(猟期)

時間 活動内容
4:30 起床・装備の準備・猟犬の世話
5:30 山へ出発(車で猟場へ移動)
6:00〜11:00 狩猟活動(忍び猟またはわなの見回り)
11:00〜13:00 獲物の搬出・血抜き・食肉処理施設への運搬
13:00〜15:00 解体作業・肉の部位分け
15:00〜17:00 わなの点検と再設置、翌日の準備
18:00 帰宅・猟具の手入れ・記録の整理

猟師の現状|統計データで見る業界の今

ここでは、政府統計を中心に、猟師を取り巻く業界の現状をデータで確認します。最新のデータは狩猟・ジビエ業界の統計まとめでも定期的に更新しています。

狩猟免許所持者と高齢化の現状

全国の狩猟免許交付件数は約21万件で、実際の狩猟者数は約15万人とされています。ピーク時の1975年には約51.8万人いた狩猟者は、この50年間で約3分の1にまで減少しました。

特に深刻なのが高齢化です。60歳以上の割合が過半数を占めており、若い担い手の確保が業界全体の課題となっています。

一方で明るいニュースもあります。わな猟免許の取得者数はこの10年で大幅に増加し、現在では銃猟免許の交付数を上回っています。30歳未満の取得者割合もこの10年で倍増しており、若い世代の関心が高まっていることがわかります。猟師を目指す女性が増えているという動きも注目に値します。

野生鳥獣の個体数と捕獲状況

環境省の調査(令和4年度末時点)によると、本州以南のニホンジカの個体数は約246万頭、イノシシは約78万頭と推定されています。2022年度のシカの捕獲数は約57万頭、イノシシは約59万頭でした。

政府は令和10年度(2028年度)までに、シカの生息頭数を平成23年度水準から半減させることを目標に掲げています。しかし現時点でこの目標は未達成のまま延長されており、さらなる捕獲の強化が求められています。

つまり、猟師の需要は今後も増え続ける見通しです。

ジビエ市場の拡大

農林水産省の令和5年度調査によると、食肉処理施設でのジビエ販売金額の内訳は以下のとおりです。

販売区分 金額(百万円) 構成割合
食肉販売(シカ) 2,571 47.6%
食肉販売(イノシシ) 1,644 30.4%
食肉販売(その他鳥獣) 189 3.5%
ペットフード 888 16.4%
皮革 14 0.3%
鹿角製品(鹿茸等) 90 1.7%
合計 5,405 100.0%

(出典: 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査 令和5年度、e-Stat 統計表ID: 0002119974)

特に注目すべきは販売先の多様化です。外食産業への販売が全体の27.7%、消費者への直接販売(ネット通販含む)が13.1%を占めており、ジビエの流通経路は着実に広がっています。ジビエとは何かをまだ知らない消費者も多い中、市場はまだ成長途上にあります。

猟師に向いている人の特徴と必要なスキル

猟師は体力勝負のイメージがありますが、実際にはさまざまなスキルが求められます。

猟師に向いている人

  • 自然の中で体を動かすことが好きな人
  • 動物や生態系に関心があり、命と向き合う覚悟がある人
  • 忍耐力があり、長時間の待機や早朝の活動に耐えられる人
  • 地域コミュニティに溶け込むコミュニケーション力がある人
  • 自分で考えて行動できる自立心がある人

猟師に必要な資格

猟師として活動するには、狩猟免許の取得が必須です。免許は4種類あり、猟法によって必要な免許が異なります。

免許の種類 対象の猟法 試験の難易度 取得費用の目安
第一種銃猟免許 散弾銃・ライフル銃 やや難しい 5〜10万円
第二種銃猟免許 空気銃のみ 普通 3〜5万円
わな猟免許 くくり罠・箱罠など 比較的易しい 2〜3万円
網猟免許 網を使った鳥類捕獲 比較的易しい 2〜3万円

初心者にはまず「わな猟免許」の取得がおすすめです。銃の所持許可が不要で、費用も抑えられます。狩猟免許の取り方については、別記事で試験対策から申請手続きまで詳しく解説しています。

銃猟を始める場合は、狩猟免許に加えて警察署での「猟銃所持許可」の手続きが別途必要です。講習受講、教習射撃、身辺調査など、取得まで3〜6か月程度かかるため、早めに動き始めることが大切です。

猟師のキャリア形成に役立つスキル

現場で重宝されるのは以下のようなスキルです。

  • 地形の読解力(等高線地図やGPSの活用)
  • 動物の行動パターンに関する知識
  • 解体・食肉処理の技術
  • 車両の整備や林道走行のスキル
  • 食品衛生に関する知識(ジビエ事業者を目指す場合)

猟師に関するよくある質問

Q1: 猟師は未経験からでもなれますか?

なれます。実際に、都市部から地方に移住して猟師になる方は増えています。まずはわな猟免許を取得し、地元の猟友会に入会して先輩猟師から学ぶのが一般的な流れです。自治体の「地域おこし協力隊」として猟師の研修を受けるルートもあります。[猟師になるための7ステップ](https://kariudo.jp/hunting/how-to-become-hunter/)を参考にしてください。

Q2: 猟師だけで生計を立てることはできますか?

可能ですが、複数の収入源を組み合わせることが現実的です。食肉販売、有害鳥獣駆除の報奨金、自治体からの委託料、ジビエ加工品の販売などを組み合わせて年収300〜500万円程度を得ている猟師が多いです。[猟師の年収の実態](https://kariudo.jp/%e7%8c%9f%e5%b8%ab%e3%81%ae%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97/hunter-real-income/)で詳しく解説しています。

Q3: 猟師の活動に年齢制限はありますか?

狩猟免許の取得は原則として20歳以上(網猟・わな猟は18歳以上)です。上限に法的な定めはなく、70代で現役の猟師もいます。ただし銃猟の場合は、猟銃所持許可の更新時に身体能力の確認があるため、安全に活動できる体力は必要です。

Q4: 猟師になるのにいくらかかりますか?

免許取得にかかる費用は、わな猟で約2〜3万円、第一種銃猟で約5〜10万円が目安です。銃猟の場合はこれに加えて猟銃の購入費(中古で10〜30万円程度)、ガンロッカー(3〜5万円)、弾薬費なども必要です。自治体によっては狩猟免許取得に補助金を出しているところもあるので、お住まいの地域で確認してみてください。

Q5: 猟師とマタギの違いは何ですか?

猟師は野生鳥獣を捕獲する人の総称で、銃猟・わな猟・網猟を含むすべてのハンターを指します。一方マタギは、東北地方(主に青森・秋田・岩手)に古くから伝わる伝統的な集団猟法を行う猟師集団のことです。山の神への信仰や独自の掟、秘伝の猟法など固有の文化体系を持つ点が大きな違いです。

Q6: 女性でも猟師になれますか?

もちろんなれます。近年は女性の狩猟免許取得者が増加傾向にあり、「狩りガール」という言葉も生まれています。体力面の不安からわな猟を選ぶ女性が多く、地域によっては女性猟師向けの支援制度もあります。

Q7: 猟師は普段どこに住んでいますか?

山間部や中山間地域に住む方が多いですが、地方都市に住みながら週末だけ山に入る「通い猟師」のスタイルもあります。最近は地方移住と猟師を組み合わせたライフスタイルが注目されており、[移住支援を行う自治体](https://kariudo.jp/hunter-life/hunter-relocation-municipal-support/)も増えています。

まとめ:猟師とは日本の自然と地域を守る仕事

この記事のポイントを整理します。

  • 猟師とは、野生鳥獣を捕獲することを生業とし、獣害対策・ジビエ供給・生態系管理の3つの役割を担う職業
  • 働き方は5パターン(専業、副業、有害鳥獣対策員、ジビエ事業者、猟師ガイド)に分かれ、自分に合ったスタイルを選べる
  • ジビエ市場は約54億円規模に成長し、販路も多様化している
  • 狩猟者の高齢化により若い担い手が求められており、わな猟免許の取得者は増加傾向
  • 未経験からでも始められ、わな猟免許なら約2〜3万円で取得可能

猟師は、人と自然の関係を最前線で調整する仕事です。野生動物の数を適正に管理し、農山村の暮らしを守りながら、ジビエという食文化を次世代につなぐ。その社会的な意義は今後ますます高まるでしょう。

猟師に興味を持った方は、まず狩猟の始め方ガイドで全体像をつかんでみてください。同じ一次産業のキャリアに関心がある方には、水産ナビの漁師の年収データも参考になります。

参考情報

  • 環境省「狩猟の意義や役割」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/about/) — 猟師の社会的役割の検証に使用
  • 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)(e-Stat 統計表ID: 0002119971, 0002119974, 0002119996) — ジビエ市場規模・食肉処理実績の数値
  • 環境省「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について」(https://www.env.go.jp/press/press_03122.html) — シカ約246万頭・イノシシ約78万頭の個体数推定
  • 大日本猟友会「狩猟者数の推移」(http://j-hunters.com/info/suii.php) — 1975年ピーク時51.8万人からの推移
  • 環境省「狩猟免許を取得する」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/license.html) — 狩猟免許の年齢要件・種別



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