女性猟師が増えている理由とは?狩りガールの実態と始め方

女性猟師が増えている理由とは?狩りガールの実態と始め方 猟師の暮らし

最終更新: 2026-05-13

農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエの食肉販売金額は約44億円に達し、業界全体が拡大を続けています(出典: e-Stat 統計表ID: 0002119974)。この成長を支える担い手のひとつとして注目されているのが、女性猟師の存在です。「狩猟に興味はあるけれど、女性でも本当にできるの?」「始め方がわからない」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。この記事では、女性猟師が増えている背景や具体的な統計データ、実際の暮らしぶり、そして女性が狩猟を始めるためのステップまで、現場目線で徹底解説します。まず増加の背景を整理し、次に女性猟師の実態、そして具体的な始め方と活躍の場までお伝えします。

女性猟師が増えている背景と統計データ

近年、女性の狩猟免許取得者数は顕著な増加傾向にあります。環境省の狩猟者登録統計によると、平成23年度から令和初期にかけて女性の狩猟免許所持者数は2倍以上に増加しました。全体に占める割合は約2%とまだ少数ですが、伸び率そのものは男性を大きく上回っています。

この背景にはいくつかの要因があります。

要因 具体的な動き
獣害対策の深刻化 シカ・イノシシの農業被害が年間約188億円(農林水産省 令和6年度調査)に達し、自治体が女性含む新規担い手を積極的に募集
ジビエブームの拡大 ジビエ食肉販売金額が約44億円(令和5年度、農林水産省調査)に成長し、「食」への関心から狩猟に入る女性が増加
大日本猟友会の啓発活動 「目指せ!狩りガール」キャンペーンを展開し、実在の女性猟師をモデルにした情報発信を継続
地方移住トレンド 都市部から地方への移住者が増加し、自給自足や自然との共生を求める女性が狩猟を生活の一部に取り入れる
SNSによる可視化 Instagram・YouTubeで「#狩猟女子」「#女性ハンター」が広がり、ロールモデルが身近になった

とりわけ注目すべきは、わな猟免許の取得者増加です。2015年施行の改正鳥獣保護管理法で網猟・わな猟免許の取得年齢が20歳から18歳に引き下げられたことも追い風となり、わな猟免許は銃猟免許を上回るペースで新規取得者が増加しています。体力面のハードルが銃猟より低いわな猟は、女性の新規参入の入口として機能しています。

「狩りガール」とは?女性猟師の実態

「狩りガール」とは、大日本猟友会が女性の狩猟参入を促進するために使い始めた呼称で、現在は広く女性猟師全般を指す言葉として定着しています。では実際に、女性猟師はどのような活動をしているのでしょうか。

女性猟師のタイプと活動スタイル

タイプ 活動内容 特徴
わな猟専門型 くくり罠・箱罠を中心に活動 体力的な負担が比較的少なく、女性の入口として人気が高い
銃猟チャレンジ型 エアライフルまたは散弾銃で鳥獣を捕獲 射撃場での練習を重ね、巻き狩りグループに参加するケースが多い
有害鳥獣駆除従事型 自治体の依頼で有害鳥獣の捕獲に参加 [報奨金](https://kariudo.jp/%e7%8d%a3%e5%ae%b3%e5%af%be%e7%ad%96/wildlife-removal-bounty/)を得ながら地域貢献
半農半猟型 農業と狩猟を組み合わせた生活 自分の畑を守るために狩猟を始めたケースが典型的
ジビエ加工・販売型 捕獲から解体、加工、販売までを一貫して行う 6次産業化を実現し、独立した事業として成立させている女性もいる

女性猟師の1日(わな猟の場合)

実際にわな猟を行っている女性猟師の典型的な1日を紹介します。

時間帯 活動内容
5:30 起床、準備(長靴・手袋・ナイフなど装備の確認)
6:00 山に入り、設置済みの罠を巡回(5〜10基程度)
8:00 獲物がかかっていた場合は止め刺し・搬出
10:00 解体処理施設へ搬入、または自宅での解体作業
12:00 午後は罠の新規設置や既存罠のメンテナンス
15:00 解体した肉の加工・パッキング、SNSでの発信活動

ある女性猟師は「もともと家庭菜園をやっていて食材にこだわっていたが、子どもが生まれてからさらに安全な食に関心を持ち、自分で獲った肉を食べたいと思って狩猟を始めた」と語っています。こうした「食」を起点とした動機は女性猟師に特に多い傾向があります。

女性猟師ならではの強みと魅力

狩猟は長らく男性中心の世界でしたが、女性ならではの強みが認められる場面も増えています。

観察力と忍耐力

罠猟では、動物の足跡や糞、獣道を丹念に読み取る観察力が求められます。細かな変化に気づく力は性別によるものではありませんが、実際の現場では「女性の方が細かい痕跡に気づきやすい」と評価する声も聞かれます。

コミュニケーション力と地域連携

狩猟は地域との連携が欠かせません。地元農家への被害状況のヒアリング、猟友会での情報共有、自治体との連絡調整など、コミュニケーションが求められる場面が多くあります。女性猟師の参入により、地域住民との関係構築がスムーズになったという報告も複数の自治体から上がっています。

ジビエの6次産業化

捕獲した獲物をただ処分するのではなく、食肉として加工し、SNSを活用して販路を開拓する。こうした6次産業化の取り組みにおいて、女性猟師が先駆的な役割を果たしているケースが目立ちます。個人でのジビエ販売許可を取得し、ネット通販やマルシェで販売する女性猟師は年々増加しています。

農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエの消費者への直接販売は全体の13.1%を占め、そのうちインターネット経由が7.7%と拡大傾向にあります(出典: e-Stat 統計表ID: 0002119996)。SNSマーケティングに長けた女性猟師がこの販路を牽引している側面もあります。

角や骨を活用したクラフト

捕獲した鹿の角や骨をアクセサリーやインテリアに加工する「猟師クラフト」も、女性猟師を中心に広がっています。命を無駄にしない姿勢と、クリエイティブな発想を掛け合わせた活動として注目されています。

女性が狩猟を始めるためのステップ

「やってみたい」と思ったら、具体的にどう動けばよいのか。狩猟の始め方の概要を、女性目線のポイントを交えて解説します。

Step 1: 狩猟免許の種類を選ぶ

狩猟免許は4種類あります。女性の初心者には「わな猟免許」から始めることをおすすめします。

免許の種類 概要 女性初心者へのおすすめ度
わな猟 くくり罠・箱罠で獣類を捕獲 とても高い(体力的負担が少なく、費用も抑えられる)
第一種銃猟 散弾銃・ライフルを使用 やや高い(猟銃所持許可の取得が必要で手続きが多い)
第二種銃猟 空気銃のみ使用 高い(エアライフルから始める女性も多い)
網猟 網を使って鳥類を捕獲 低い(取得者自体が非常に少ない)

わな猟免許の難易度については別記事で詳しく解説していますが、筆記試験の合格率は約80%と比較的高く、事前に都道府県が実施する予備講習会を受講すれば十分に合格を目指せます。

Step 2: 狩猟免許試験を受験する

各都道府県が年に1〜3回実施する狩猟免許試験を受験します。試験は「知識試験」「適性試験」「技能試験」の3科目で構成されます。

試験科目 内容 対策のポイント
知識試験 鳥獣保護管理法、猟具の知識、鳥獣の判別 予備講習会のテキストを繰り返し学習
適性試験 視力・聴力・運動能力の確認 特別な対策は不要(普通自動車免許が取れるレベルで可)
技能試験 罠の架設実技(わな猟の場合) 予備講習会で実際に練習できる

狩猟免許の取り方の記事で、申請書類の準備から当日の流れまで詳しくまとめています。

Step 3: 狩猟者登録と装備の準備

免許取得後は、猟をしたい都道府県で狩猟者登録を行い、装備を揃えます。わな猟の初期費用は比較的リーズナブルです。

費用項目 目安金額 備考
狩猟免許試験の受験料 5,200円 都道府県により異なる場合あり
予備講習会受講料 5,000〜10,000円 猟友会主催のものが一般的
狩猟者登録費用 約20,000円 狩猟税+手数料+保険料
くくり罠(1基) 3,000〜8,000円 初心者は市販品からスタートが無難
装備一式(ウェア・長靴・ナイフ等) 30,000〜50,000円 ワークマンなどでコストを抑える女性も多い

合計すると、わな猟の場合は10万円以内で始められるケースがほとんどです。狩猟の初心者装備一式については専用記事で詳しく紹介しています。

Step 4: 師匠を見つける・猟友会に入る

ひとりで山に入るのはリスクが高いため、経験者のもとで学ぶことが重要です。地元の猟友会に入会すれば、ベテラン猟師から直接指導を受けられます。最近は女性会員の増加に対応して、女性向けの入門講習を開催する猟友会も出てきています。

女性猟師のキャリアパスと収入の実態(独自視点)

競合サイトではあまり語られていない、女性猟師の「キャリアとしての可能性」を深掘りします。

女性猟師の収入モデル

猟師の年収は活動形態によって大きく異なりますが、女性猟師に多い収入パターンを整理します。

収入源 年間収入目安 備考
有害鳥獣駆除の報奨金 30万〜80万円 シカ1頭あたり7,000〜15,000円、イノシシ1頭あたり8,000〜20,000円(自治体による)
ジビエ肉の販売 20万〜100万円 食肉処理業の営業許可を取得し、直販する場合
クラフト・副産物の販売 5万〜30万円 鹿角アクセサリー、革製品など
SNS・メディア活動 0〜50万円 YouTube、Instagram、執筆依頼など
講師・ガイド 10万〜40万円 狩猟体験ツアーのガイド、講習会の講師

副業として狩猟に取り組む場合、年間50万〜100万円程度の収入を得ている女性猟師が増えています。専業で独立している場合は、ジビエ加工・販売とSNSを組み合わせて年収300万〜500万円を実現しているケースも報告されています。

狩猟は副業としてできるのかの記事では、副業猟師の収入構造をさらに詳しく解説しています。

キャリアパスの例

女性猟師のキャリアは「捕獲する人」にとどまりません。

キャリアステージ 内容 期間の目安
入門期 わな猟免許取得、ベテランへの同行、初捕獲 1年目
実践期 単独での罠設置・管理、解体技術の習得 2〜3年目
発展期 有害鳥獣駆除への本格参加、ジビエ販売開始 3〜5年目
独立期 ジビエ加工事業の立ち上げ、狩猟体験ガイド、SNS発信 5年目以降

女性猟師を支援する制度

女性猟師の参入を後押しする公的支援も広がっています。

支援制度 内容
地域おこし協力隊(有害鳥獣対策枠) 月給16〜22万円程度+住居支援。任期中に狩猟免許取得を支援してくれる自治体も多い
狩猟免許取得補助金 受験料・予備講習費を全額〜半額補助する自治体が増加中
鳥獣被害対策実施隊員手当 実施隊に任命されると日当8,000〜12,000円(自治体による)

猟師の移住支援制度では、各自治体の具体的な支援内容を比較しています。

女性猟師が直面する課題と対策

増加傾向にある女性猟師ですが、現場では依然としていくつかの課題が存在します。

体力面の不安

獲物の搬出は重労働です。シカ1頭の体重は平均46kg(農林水産省 令和5年度調査、出典: e-Stat 統計表ID: 0002119971)、イノシシは平均37kgに達します。対策として、ソリや滑車を活用した搬出方法を取り入れたり、解体を現場で行い分割して持ち帰る方法を選ぶ女性猟師が多くいます。

安全面への配慮

山での単独行動にはリスクが伴います。GPS付きのスマートウォッチを携帯する、必ず家族に行き先と帰宅予定時刻を伝える、携帯電話の電波が届くエリアを把握しておくなど、安全対策は男女問わず徹底すべきです。

周囲の理解

「女性が狩猟をする」ことへの偏見は、残念ながらゼロではありません。しかし、SNSで活動を発信する女性猟師が増えたことで、社会的な認知度は着実に向上しています。家族の理解を得るために、まず狩猟体験ツアーに一緒に参加してもらうという方法を取る女性もいます。

装備のサイズ問題

狩猟用のウェアやブーツは男性向けサイズが中心で、女性に合うものが限られています。近年はワークマンの女性向けアウトドアウェアを活用したり、登山用のレディースウェアを代用する猟師が増えています。

女性猟師に関するよくある質問

Q1: 女性でも猟銃を所持できますか?

はい、性別による制限はありません。猟銃所持許可は都道府県公安委員会が審査しますが、審査基準に性別の項目はなく、身辺調査や適性検査に問題がなければ男女関係なく許可を受けられます。

Q2: 体力に自信がなくても狩猟はできますか?

わな猟であれば、日常的な登山ができる程度の体力があれば十分です。罠の設置自体は重労働ではなく、獲物の搬出も工夫次第で対応できます。まずはわな猟から始め、慣れてきたら銃猟にステップアップする方法がおすすめです。

Q3: 女性ひとりで山に入っても大丈夫ですか?

初心者がひとりで山に入ることはおすすめしません。最初はベテラン猟師に同行し、山の歩き方やリスク管理を学んでください。経験を積んだ後も、GPSの携帯と家族への連絡を徹底することが重要です。

Q4: 狩猟を始めるのに最適な年齢はありますか?

わな猟・網猟免許は18歳以上、銃猟免許は20歳以上で受験できます。実際には30代〜40代で始める女性が多い傾向にあります。体力がある20代のうちに始めるメリットもありますが、「食への関心」や「地方移住」をきっかけに30代以降で参入するケースも多く、年齢を気にする必要はありません。

Q5: 子育てをしながら狩猟活動はできますか?

可能です。猟期(11月15日〜2月15日)は活動が集中しますが、有害鳥獣駆除は通年で行えるため、子どもの学校時間に合わせて活動する女性猟師もいます。わな猟の巡回は朝の1〜2時間で済むことも多く、家事や育児との両立は十分に現実的です。

Q6: 女性猟師のコミュニティはありますか?

大日本猟友会の「狩りガール」プロジェクトのほか、SNS上では「#狩猟女子」「#女性ハンター」のハッシュタグで活発な情報交換が行われています。地域によっては女性限定の狩猟サークルも存在します。まずは地元の猟友会に問い合わせてみるのがよいでしょう。

Q7: 虫や血が苦手でも大丈夫ですか?

解体作業では血液や内臓に触れることは避けられません。ただし、最初から平気な人は少数派で、多くの猟師が徐々に慣れていったと語っています。まず見学から始め、自分のペースで慣れていくことが大切です。

まとめ:女性猟師が切り拓く狩猟の未来

女性猟師が増えている背景には、獣害対策の担い手不足、ジビエブーム、地方移住トレンド、SNSによる情報発信の拡大など、複数の要因が重なっています。

  • 女性の狩猟免許所持者数は平成23年度から2倍以上に増加
  • わな猟免許は体力的なハードルが低く、女性の入口として機能
  • 初期費用10万円以内で始められるケースが多い
  • ジビエの6次産業化やSNS発信など、女性ならではの強みを活かせる場が広がっている
  • 地域おこし協力隊や補助金など、公的支援制度も充実してきている

「狩猟に興味がある」と感じたら、まずは各都道府県が開催している狩猟フォーラムや体験イベントに参加してみてください。座学で学ぶだけでなく、現役猟師の話を直接聞ける貴重な機会です。

狩猟・ジビエ業界の最新統計データは狩猟・ジビエ業界の統計まとめで定期更新しています。専門用語がわからない場合は狩猟・ジビエ用語集も参考にしてください。

参考情報

  • 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974、0002119971、0002119996)
  • 環境省「狩猟者登録証交付状況」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/index.html)
  • 大日本猟友会「狩猟者数の推移」(http://j-hunters.com/info/suii.php)
  • 大日本猟友会「目指せ!狩りガール」(http://kari-girl.com/hajime/)
  • 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和5年度)」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/h_zyokyo2/r5_higai.html)
  • 農林水産省「鳥獣保護管理政策の現状と行政上の諸対策について」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_kensyu/attach/pdf/R5/r5kensyu-030.pdf)



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