最終更新: 2026-10-04
「ジビエハンター研修」とは、農林水産省が2023年(令和5年)3月に始めた、ハンター向けの衛生管理研修制度のことだ。狩猟免許を持っていれば誰でも、オンラインかつ無料で受講できる。これまでに全国で約1,000人が受講してきた(農林水産省所管の実施団体発表、2025年9月時点)。
狩猟免許は「捕獲する資格」を与えるものだが、捕獲した個体を食肉として適切に処理施設へ搬入できるかどうかは、ハンター自身の衛生知識に大きく左右される。ジビエハンター研修は、まさにこの「捕獲後」の知識を補うために設計された制度だ。本記事では研修の内容・受講資格・申込方法・受講するメリットを、一次情報に基づいて解説する。
ジビエハンター研修とは何か

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度開始 | 2023年(令和5年)3月 |
| 所管 | 農林水産省(農村振興局) |
| 対象 | 狩猟免許所持者(ハンター)。食肉処理施設職員・地方公共団体関係者も受講可 |
| 費用 | 無料(テキスト代を含む) |
| 形式 | オンライン(Zoom)、実技なし。基礎研修は15分程度の動画コンテンツも用意 |
| 累計受講者数 | 約1,000人(2025年9月時点、実施団体発表) |
| 実施団体 | 株式会社一成、糸島ジビエ工房など、全国複数の民間事業者・地方公共団体 |
研修は農林水産省が直接運営するのではなく、同省の委託・連携のもとで民間事業者や地方公共団体が実施する形をとる。そのため開催団体によって日程や申込窓口が異なり、受講希望者は農林水産省の「ジビエハンター研修」ページから実施団体の最新情報を確認する必要がある。
出典: 農林水産省「ジビエハンター研修」、一般社団法人日本農業新聞(JAcom)2025年9月2日配信記事。
研修の内容|3つのカリキュラム

研修は以下の3つの柱で構成される。
| カリキュラム | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 総論・法律・制度 | 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の概要、ジビエ利用を取り巻く制度全体 |
| 捕獲〜食肉処理施設搬入までの衛生管理 | 止め刺し後の放血・内臓摘出・運搬時の温度管理など、食中毒や品質劣化を防ぐための手順 |
| 捕獲個体の異常確認・食品衛生管理 | 外見・内臓の異常の見分け方、食肉として利用できない個体の判断基準 |
既存記事の「ジビエ衛生管理ガイドライン」は食肉処理施設側が守るべき衛生基準を扱っているが、ジビエハンター研修はその手前の工程、つまりハンター自身が捕獲現場で行う一次処理の衛生管理に重点を置く。両者は対象者も扱う工程も異なり、補完関係にある。
受講資格・申込方法

受講資格は「狩猟免許を所持し、オンラインで受講できること」のみで、年齢・経験年数などの制限は公開情報には見当たらない。食肉処理施設の職員や地方公共団体の鳥獣対策担当者も受講対象に含まれる。
令和7年度は、委託先の一例である株式会社一成が年4回のオンライン開催を予定している(A日程9月26日・B日程10月18日・C日程11月6日・D日程11月26日、いずれも9:30〜12:30、各回定員50名・先着順)。この日程はあくまで一実施団体の例であり、実際の開催回数・日程は団体ごとに異なる。申込を検討する場合は、農林水産省のジビエハンター研修ページまたは各実施団体の公式サイトで最新の募集状況を確認してほしい。
受講後は理解度チェック(Zoom・Googleフォーム等)が行われるが、公開情報の範囲では国家資格や免許のような法的効力を持つ証明書の発行は確認できなかった。あくまで「知識習得の証」としての位置づけと捉えるのが実情に近い。
出典: 一般社団法人日本農業新聞(JAcom)2025年9月2日配信記事、PR TIMES配信の株式会社一成プレスリリース(2025年9月時点)。
研修を受けるメリット

なぜこの制度が作られたのか
農林水産省によると、ジビエの利用率向上を妨げる要因の一つが「捕獲から食肉処理施設搬入までの衛生管理が不適切で、処理施設に引き取られず捨てられてしまう個体」の存在だ。狩猟者自身が適切な一次処理の知識を持つことで、食肉として活用できる個体を増やし、ジビエの利用拡大につなげることが研修の狙いとされている。
農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査」(令和5年度)によると、全国の食肉処理施設に搬入されたシカ・イノシシ等の重量は合計7,072トン(シカ79.3%・イノシシ20.7%)に上る(e-Stat掲載データ)。この規模の捕獲個体を無駄にしないためにも、ハンター側の衛生知識は処理施設側の受け入れ可否を左右する実務的なポイントになる。
読者にとっての価値
- 処理施設との関係構築: 衛生管理を理解したハンターは、ジビエ処理施設側からの信頼を得やすく、持ち込みを断られるリスクを減らせる。「ジビエ加工処理施設の仕事」で紹介した施設側の品質管理担当者と同じ基準を理解しておくことは、搬入時のやり取りを円滑にする。
- ガバメントハンター等への応募時のアピール: 「ガバメントハンターとは」で解説した公務員ハンターの採用では、捕獲技術に加えて個体の適正な取り扱い知識が評価されうる分野であり、受講歴は実務経験の一つとして示しやすい。
- 無料・オンラインで完結: 狩猟免許取得(「狩猟免許の取り方」参照)後のスキルアップとして、費用・移動の負担なく参加できる点は、地方在住者や兼業猟師にとってのハードルが低い。
受講前に知っておくべき限界
研修はオンライン・実技なしのため、実際の止め刺し・内臓摘出の技術そのものは習得できない。あくまで「知識」の習得に特化した制度であり、技術面は現場での実地経験や猟友会の先輩猟師からの指導と組み合わせて身につける必要がある。
まとめ
ジビエハンター研修は、狩猟免許所持者が無料・オンラインで受講できる衛生管理の知識習得制度であり、2023年3月の開始以来、約1,000人が受講してきた。捕獲した個体を確実に食肉として活用できるようにし、ジビエ業界全体の利用率向上につなげることが制度の狙いだ。狩猟免許を取得したばかりの人も、ジビエ業界でのキャリアを考えている人も、次のスキルアップの選択肢として検討する価値がある。
この記事は猟人編集部が執筆しました。猟人 -KARIUDO- は猟師・ジビエ業界に特化した専門メディアです。
参考情報
- 農林水産省「ジビエハンター研修」(確認日: 2026-10-04)
- 一般社団法人日本農業新聞(JAcom)「令和7年度『ジビエハンター育成研修』オンライン 受講者を募集 一成」2025年9月2日配信(確認日: 2026-10-04)
- PR TIMES「令和7年度ジビエハンター育成研修(オンライン)の受講者募集」株式会社一成(確認日: 2026-10-04)
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査」(令和5年度) — e-Stat(政府統計の総合窓口 https://www.e-stat.go.jp/) 統計表ID: 0002119971(確認日: 2026-10-04)


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