最終更新: 2026-09-20
熊猟や有害鳥獣捕獲に携わる猟師も、熊に襲われて負傷する事故が実際に発生しています。環境省の集計によると、2025年度(令和7年度)のクマによる人身被害は全国で238人、うち死亡13人と統計開始以来最多を記録しました(2026年4月時点の速報値、環境省調べ)。被害の多くは山菜採り・キノコ狩りなど狩猟以外の入山者ですが、2026年には有害鳥獣捕獲活動中の猟師が熊に襲われ負傷する事故も実際に発生しています。
「熊撃ちは危険なイメージがあるが、実際どれくらいリスクがあるのか」「万が一のとき保険や補償はどうなるのか」といった疑問を持つ人に向けて、この記事では実際の被害事例、猟師特有のリスク要因、現場で実践されている安全対策、負傷時の労災・保険の扱いを整理します。
猟師が熊に襲われる被害は実際に起きている

2026年7月17日、北海道更別村で有害鳥獣の捕獲活動中だった40代の男性ハンターが熊に襲われる事故が発生しました。村からの依頼で巡回中に熊と遭遇し、両腕を噛まれるなどの重傷を負いながらも、素手で応戦しつつ発砲して仕留めたと報じられています。男性は帯広市内の病院に搬送され、命に別条はありませんでした(2026年7月時点、STV札幌テレビ報道による)。
(出典: STV札幌テレビ「有害鳥獣の捕獲活動中のハンターがクマに襲われ重傷」、確認日: 2026年9月20日。個別事案の詳細は発生地の自治体・警察発表を参照)
環境省の統計では、クマによる人身被害の約7割は山菜採りやキノコ狩りなど狩猟目的以外の入山者が占めるとされていますが、猟師・有害鳥獣捕獲従事者も熊と至近距離で対峙する機会が多い立場である以上、一般の登山者とは異なる種類のリスクを負っています。特に有害鳥獣捕獲やわな猟の見回りでは、単独行動や見通しの悪い藪の中での作業が発生しやすく、不意の遭遇につながりやすい点が指摘されています。
なぜ今、熊による被害・出没が増えているのか

背景には、狩猟者数の減少と熊の生息域拡大という2つの要因があります。
第一種銃猟免許の所持者数は2021年度時点で全国約8万4,400人と、2005年度以降で最少の水準にとどまっています。1975年度には50万人近くいたことを踏まえると、長期的な減少傾向が続いていることがわかります(環境省調べ、2026年時点)。担い手の減少に加え、過疎化に伴って熊の生息域・活動範囲が人里近くまで広がっていることが、出没件数の増加につながっていると考えられています。
こうした状況を受け、自治体によるハンター育成策も進んでいます。埼玉県では出没件数の急増を受けて緊急銃猟の運用とハンター育成研修を強化しており、詳細は「埼玉県のクマ緊急銃猟とハンター育成|出没172件で始まった長瀞射撃場研修」で紹介しています。2023年に施行された緊急銃猟制度についても「緊急銃猟とは?4つの要件・市町村長の権限・施行1年で81件の実態と課題を解説」で解説しています。
猟師が現場で実践している安全対策
熊猟・有害捕獲の現場では、次のような安全対策が基本とされています。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 単独行動を避ける | 複数人での行動を基本とし、見通しの悪い藪や沢筋では特に単独を避ける |
| 音・気配で存在を知らせる | 熊鈴・ラジオなどで人の気配を事前に伝え、不意の遭遇を減らす |
| 風向き・足跡・糞の確認 | 熊の新しい痕跡(足跡、糞、爪痕)を見つけたら行動範囲を見直す |
| 装弾・射撃姿勢の準備 | 熊猟では至近距離での遭遇を想定し、即座に対応できる態勢を保つ |
| 退避ルートの事前確認 | 遭遇時にすぐ逃げ込める場所(車両、建物、開けた場所)を事前に把握しておく |
熊との距離が近くなりやすい忍び猟・わな猟の見回りでは、特に単独行動のリスクが高いとされています。山中での基本的な熊対策は「山での熊出没対策ガイド|遭遇を防ぐ方法と対処法」でも詳しく解説しているので、あわせて確認しておくとよいでしょう。
熊に襲われて負傷した場合の労災・保険の扱い
有害鳥獣捕獲業務中に熊に襲われて負傷した場合、業務中の事故として労災保険の対象になり得ます。労災として認定されるには「事業主の支配・管理下で業務を行っていたこと(業務遂行性)」と「負傷が業務に起因すること(業務起因性)」の2つの要件を満たす必要があります。自治体からの委託で有害鳥獣捕獲に従事している場合は、委託形態によって労災の扱いが異なるため、契約時に確認しておくことが重要です。
猟友会に加入している場合は、会員全員が大日本猟友会の狩猟事故共済保険の対象になります。他人に損害を与えた場合の他損事故保険金(限度額4,000万円)に加え、自身が負傷・死亡した場合の自損事故保険金(死亡時300万円、入通院7日以上で1日あたり3,000円)が用意されています(2026年2月時点、大日本猟友会の制度概要による)。共済保険だけでは補償が不足する場合に備えて民間の狩猟保険を上乗せする猟師も多く、保険選びのポイントは「猟銃事故保険おすすめ|狩猟中の万が一に備える選び方」で紹介しています。
よくある質問
Q1: 熊猟の経験が浅くても大丈夫ですか?
熊猟は狩猟の中でも危険度が高いとされ、経験の浅いうちからの単独での熊猟は推奨されません。まずはベテラン猟師や猟友会の指導のもとで経験を積み、熊の生態や痕跡の見分け方を学んでから徐々にステップアップするのが一般的です。
Q2: 有害鳥獣捕獲中の事故は誰の責任になりますか?
委託元の自治体との契約内容や、事故発生時の状況によって判断が分かれます。労災保険の対象になるかどうかは業務遂行性・業務起因性の観点で個別に判断されるため、委託を受ける前に補償内容を自治体に確認しておくことをおすすめします。
Q3: 熊鈴やラジオは本当に効果がありますか?
音で人の存在を事前に知らせることで、熊が自ら回避する可能性を高める効果があるとされています。ただし風向きや地形によっては音が届きにくい場合もあるため、音による対策だけに頼らず、足跡・糞などの痕跡確認や複数人での行動とあわせて実践することが重要です。
まとめ:猟師が熊に襲われるリスクと対策のポイント
- 2025年度のクマ人身被害は全国238人・死亡13人で統計開始以来最多。捕獲活動中の猟師の負傷事故も2026年に複数報告されている
- 狩猟者数の減少と熊の生息域拡大が、出没・被害増加の背景にある
- 単独行動を避ける、音で気配を知らせる、痕跡を確認するなどの基本対策が現場で実践されている
- 業務中の負傷は労災保険の対象になり得るほか、猟友会の狩猟事故共済保険や民間の狩猟保険で備えることができる
熊猟や有害鳥獣捕獲に関心がある人は、経験を積む前にまず保険・補償の仕組みを理解しておくことが安心につながります。狩猟中の万が一に備える保険の選び方は「猟銃事故保険おすすめ|狩猟中の万が一に備える選び方」、クマ駆除に携わる猟師の実態は「クマ駆除を担う猟師の仕事実態|苦悩・報奨金・必要資格」もあわせてご覧ください。
参考情報
- 環境省「クマに関する各種情報・取組」(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html)— クマによる人身被害の統計を確認(確認日: 2026年9月20日)
- 時事通信「クマ被害、過去最悪を更新 5道県で死者13人―ハンターは減少傾向」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2026032700787&g=soc)— 被害統計・ハンター数の推移を確認(確認日: 2026年9月20日)
- STV札幌テレビ「有害鳥獣の捕獲活動中のハンターがクマに襲われ重傷 一夜明けクマは死がいで発見 北海道更別村」(https://www.stv.jp/news/stvnews/kiji/stb0c4bd4a22de43ee9c113f0a75f94114.html)— 発生日時・被害状況を確認(確認日: 2026年9月20日)
- 大日本猟友会「狩猟事故共済保険」(https://j-hunters.com/about/insurance.php)— 共済保険の補償内容を確認(確認日: 2026年9月20日)


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