最終更新: 2026-10-19
クマを駆除すると、自治体やハンターに批判や抗議の連絡が集中することがあります。2026年9月、京都府舞鶴市で府内初の緊急銃猟によってクマ2頭を駆除した際には、277件(9月10日時点)から456件(9月16日時点)にまで意見が膨らみ、「職員は死んだほうが良い」といった誹謗中傷も含まれていました。本記事では、この舞鶴市の事例を中心に、クマ駆除への批判がなぜ起こるのか、自治体がどう対応しているのかを一次報道に基づいて整理します。
舞鶴市で何が起きたか:発生から対応まで

2026年9月3日、京都府舞鶴市の住宅の軒下に、体重25キロほどの親グマと5キロほどの子グマ2頭のツキノワグマが長時間居座り、市民の安全確保のため緊急銃猟による駆除が行われました。京都府内で緊急銃猟が実施されたのはこれが初めてのことです。
駆除後、舞鶴市役所には電話やメールが相次ぎました。京都新聞デジタルの報道によると、9月10日までに寄せられた意見は277件、J-CASTニュースなどの報道では9月16日までに456件に達したとされています。駆除直後に寄せられた電話のうち、否定的な内容が占める割合は高く、ほとんどが府外、あるいはクマが生息していない地域からの連絡だったと報じられています。
寄せられた声の内容は、以下のようなものがあったと報じられています。
- 「なぜ殺すのか」「山に帰すことはできなかったのか」という駆除の是非を問う内容
- 「頭が悪い」「死んでくれ」といった職員への中傷
- 「職員は死んだほうが良い」という、業務に無関係な人格攻撃
- 「開示請求するぞ」という、抗議を超えた圧力的な言葉
30分以上にわたって電話で抗議を続けるケースもあったと報じられており、舞鶴市は誹謗中傷や恫喝と判断されるものには毅然とした対応を取る方針を示しています。
自治体側はどう対応したか

舞鶴市の鴨田秋津市長は、電話やメールの対応が市役所本部・現場・報道機関との連絡業務に支障をきたしたことを明らかにし、「クマの怖さを知る地域では『かわいそう』では済まされない場面がある」と発言しています。悪質なケースに対しては「これまでの電話はすべて録音してある」と明言し、不適切な連絡への抑止を図りました。
これは個別対応にとどまらず、国の政策動向とも連動しています。2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法によってカスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が事業主の義務となり、自治体も対象に含まれます。沖縄県糸満市や徳島県牟岐町など、カスハラ防止条例を独自に制定する自治体も出てきており、舞鶴市の事例は、こうした自治体側の体制整備が全国で進む中で起きた、クマ駆除に特化したケースという位置づけになります。
なぜクマ駆除は批判を集めやすいのか

同じ有害鳥獣の駆除でも、イノシシやシカに比べてクマの駆除は反応が大きくなりやすい傾向があります。背景として考えられる要因を整理します。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 見た目・体格の情報差 | 子グマなど体格の小さい個体の場合、「小さいから危険ではない」という印象を持たれやすい。実際には体重だけで危険性を判断できない |
| 生息地域との距離 | 舞鶴市の例では、苦情の多くがクマが生息しない地域からだったと報じられている。現場の危険性を直接知らない立場からの意見が集まりやすい |
| 情報の非対称性 | 現場の緊急性・住民の安全確保の経緯は、ニュースの見出しだけでは伝わりにくい |
| SNSの拡散速度 | 駆除の報道が出た直後に感情的な反応が広がりやすく、自治体の説明が追いつかないことがある |
このような構造は、クマに限らず緊急銃猟そのものに付随する課題でもあります。制度の詳細については「緊急銃猟とは?4つの要件・市町村長の権限・施行1年で81件の実態と課題を解説」で解説しています。
ハンター・現場への影響

批判が自治体に集中する一方で、実際に発砲を担うのはハンターです。北海道で緊急銃猟が初めて実施された際には、発砲した猟師自身が「もう撃ちたくない一発」と、重圧を語った例もあります。詳しくは「「もう撃ちたくない一発」緊急銃猟の現場でハンターが抱える重圧」で取り上げています。
自治体への批判が過熱すると、現場の判断そのものに萎縮効果が生まれる可能性があります。制度上は市町村長の判断で緊急銃猟を実施できますが、実施後に誹謗中傷が相次ぐと分かっていれば、次に同様の事案が起きた際の判断が遅れることも考えられます。これは、クマによる人身被害のリスクと、批判への対応コストを、自治体が天秤にかけざるを得ない構造を生んでいるとも言えます。
よくある質問
Q1: 批判的な意見を送ること自体は問題ないのか?
駆除の是非について疑問を持つこと自体は、報道でも紹介されているように自然な反応です。問題となるのは、人格攻撃や「死んでくれ」といった脅迫的な表現、業務に支障をきたすほどの長時間・大量の連絡です。舞鶴市も、意見を伝えること自体ではなく、誹謗中傷・恫喝に当たる内容への対応を検討しているとしています。
Q2: こうした批判は今後も増えるのか?
クマの目撃件数・緊急銃猟の実施件数が増える傾向にある中、同様の事案は今後も起こり得ます。一方で、2026年10月のカスハラ防止義務化や自治体の条例整備が進むことで、自治体側の対応体制は強化される方向にあります。
まとめ:クマ駆除への批判と向き合うために
- 2026年9月、京都府舞鶴市の緊急銃猟によるクマ駆除に対し、277件(9月10日時点)から456件(9月16日時点)の意見が寄せられ、誹謗中傷も含まれていた
- 舞鶴市長は業務への支障を訴え、悪質な電話には「録音してある」と明言して毅然とした対応を示した
- クマ駆除への批判は、見た目の印象・生息地域との距離・情報の非対称性などが重なって起こりやすい
- 2026年10月のカスハラ防止義務化など、自治体側の対応体制も全国で強化されつつある
緊急銃猟の制度そのものについては「緊急銃猟とは?」、現場のハンターが抱える重圧については「「もう撃ちたくない一発」」も参考にしてほしい。狩猟・ジビエ業界の最新データは「狩猟・ジビエ業界の統計まとめページ」で定期更新している。
参考情報
- J-CASTニュース「『頭が悪い』『死んでくれ』クマ緊急銃猟の舞鶴市にカスハラ電話 『地元の人なんだろうか』と宮根誠司氏」(確認日: 2026年10月19日) https://www.j-cast.com/2026/09/19518048.html
- 京都新聞デジタル「クマ殺処分で『職員は死んだ方がいい』 京都府舞鶴市に相次ぐ『苦情』で『カスハラ』対応検討」(確認日: 2026年10月19日) https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1788790
- かせまと!「【京都】緊急猟銃、誹謗中傷に晒される 市長『これまでの電話はすべて録音してある』」(確認日: 2026年10月19日) https://kasemato.net/archives/97752680.html
- LINE WORKS「カスハラ対策義務化はいつから|2026年法改正で企業が講ずべき措置をわかりやすく解説」(確認日: 2026年10月19日) https://line-works.com/roger/column/customer-harassment-law/


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