最終更新: 2026-08-16
2026年8月第3週は、クマ被害の深刻化が起点となって「狩猟の担い手をいかに確保するか」という議論が全国各地で具体的な動きへと結実した週となった。静岡では女性・若者を中心に狩猟免許の実技講習受講者が1.5倍に増加し、埼玉県は射撃場での緊急銃猟研修を初めて開催した。山口県光市は猟友会への加入を奨励する新制度を創設し、行政が担い手不足に直接介入する姿勢を鮮明にした。一方、現場で活動するハンターやマタギからは、クマとの関係性について従来の「排除」とは異なる視座からの発信が続いている。制度整備と文化的理解の両輪が動いた週を振り返る。
狩猟行政・法改正
クマ被害拡大が後押し——静岡で狩猟免許の実技講習受講者が女性・若者中心に1.5倍増
テレビ静岡が報じたところによると、静岡県内で開催された狩猟免許実技講習会の受講者数が前回比1.5倍に増加したことが明らかになった。とりわけ女性や若者層からの申し込みが目立っており、近年のクマによる人身被害の報道が狩猟への関心を押し上げている構図が見えてくる。
実技講習会は、免許試験本番に向けて猟具の扱い方や安全管理を実地で学ぶ機会だ。筆記試験の対策に比べて参加のハードルが高いとされてきた実技講習に、これだけの人数が集まるのは近年まれなことだという。
狩猟者登録数が全国的に減少傾向をたどる中、こうした裾野の広がりは業界にとって明確な好材料だ。特に女性や20〜30代の若い層が増えることで、これまで高齢男性が担ってきた狩猟の担い手構造が変わる可能性がある。クマ被害がもたらす「不安」が、狩猟への参加という形で社会的なエネルギーに転換されていることに注目したい。(情報元:テレビ静岡NEWS/Yahoo!ニュース)
埼玉県が射撃場で緊急銃猟研修を初開催——「撃てるかでなく、安全に終結できるか」
埼玉新聞の報道によると、埼玉県が射撃場を会場とした緊急銃猟の研修を初めて開催し、県内の猟友会所属ハンター20人が参加した。市街地にクマやイノシシが出没した際を想定した緊急対応の手順を学ぶ内容で、「銃使用は最後の手段」という原則のもと、「撃てるかどうかではなく、安全に事態を終結できるかが問われる」という姿勢が研修全体を貫いていたという。
2025年9月に施行された緊急銃猟制度を踏まえ、各都道府県での実動体制整備が急務となっている。緊急銃猟は、通常の狩猟期間外であっても市街地での人身被害回避を目的として知事の判断で銃を使用できる仕組みだ。ただし、人家が密集した環境での銃使用には周囲への流弾リスクや第三者への影響を最小化する高度な判断力が求められる。
埼玉県での初開催は、関東平野に隣接する秩父山系からのクマの出没増加を受けた緊急的な取り組みだ。こうした研修を積み重ねることで、有事の際に即応できる体制を地域ごとに整えていくことが、これからの獣害対策の標準となっていくだろう。(情報元:埼玉新聞)
山口県光市が猟友会加入者に奨励金を支給——担い手確保へ新制度を創設
山口新聞電子版は、山口県光市が猟友会への新規加入者を対象に奨励金を支給する新制度を設けたと報じた。猟友会の会員数が年々減少し、地域での有害鳥獣捕獲の担い手確保が困難になっている現状に、行政が直接介入する形で対策を講じた。
奨励金制度は、狩猟免許を取得して猟友会に入会した新規会員に対し、初期コストの一部を支援することを主な目的としている。狩猟免許の取得費用や猟友会の入会費、猟具の初期購入費用は少なくない負担であり、これが参入の壁になっているという声はかねてから多い。
全国の市町村がガバメントハンター採用や報奨金の引き上げなどさまざまな手を打つ中、奨励金という形での「入口支援」は、特に若年層の取り込みに効果的なアプローチとして注目される。光市の事例が他の山口県内自治体や全国各地に波及するかどうかが今後の注目点だ。(情報元:山口新聞 電子版)
どうぶつ基金がノネコ・ノイヌの狩猟除外を求め追加署名を環境省に提出
動物保護団体「どうぶつ基金」が、野良猫(ノネコ)と野良犬(ノイヌ)を狩猟の対象から除外するよう求める署名活動の追加分を環境省に提出したとcoki.jpが報じた。ノネコやノイヌは現行の鳥獣保護管理法の下で狩猟鳥獣に指定されておらず、直接の狩猟対象ではないが、農村・山間部での増加が在来の野生動物や農業に影響を与えているとして管理の在り方が議論されてきた。
狩猟と動物保護の接点にある問題として、こうした署名活動は業界内外での関心を集めやすい。狩猟者の立場からは、野生動物の生態系バランスを守るという観点で管理の必要性を訴える声がある一方、動物愛護の観点からは「飼育由来の動物を駆除対象にすべきでない」という主張もある。
双方の立場が法制度の整備を通じてどのように折り合いをつけていくかは、今後も注視が必要なテーマだ。環境省がどう応答するかを引き続き追いたい。(情報元:coki.jp)
獣害対策
マタギが語る「山に入るな」は逆——共存の視点で見えてくるもの
Yahoo!ニュースに掲載されたHint-Potの取材記事では、都市部に暮らす人々に向けてマタギが「山に入るな、という言い方は逆だ」と語るインタビューが紹介された。市街地への野生動物の出没が増えている背景として、人間が山から遠ざかることで野生動物の生息域と人間の生活圏の境界が曖昧になっていることを指摘する内容だ。
山を知らない人間が増えることは、逆説的に人と野生動物の距離を縮める。山での人間の気配が薄れることで動物の警戒心が弱まり、里まで下りてくるようになる——というのがマタギの実感だという。「山に入ること」自体が、人間の存在を動物に刻み込む行為であり、それが自然との距離感の調整につながるという考え方は、現代の獣害対策が見落としてきた視点かもしれない。
こうした在来知を現代の政策に組み込もうとする動きは全国各地で起きている。マタギの知恵を制度に生かす取り組みが今後どう広がるか、業界関係者には引き続き注目してほしいテーマだ。(情報元:Yahoo!ニュース/Hint-Pot)
業界トレンド
「愛するから、撃つ」——動物好きの27歳ハンターが直面するクマ駆除の現実
Yahoo!ニュースが配信した特集記事では、動物が好きでありながらハンターとして活動する27歳の若者が、クマ駆除に向き合う内面の葛藤と挑戦を描いていた。「愛するから、撃つ」という逆説的なタイトルが示す通り、命に向き合う仕事の重さを正面から伝える内容だ。
動物を愛しているからこそ、野生の個体が人間社会に近づきすぎる前に適正な形で管理するという考え方は、狩猟を長年経験してきた人々の多くが持つ倫理観と重なる。しかし若い世代にとって、その葛藤を言語化・発信することには大きな意味がある。SNSや記事を通じて「なぜ私は撃つのか」を語ることが、狩猟に対する社会的理解の醸成につながるからだ。
狩猟者の高齢化と担い手不足が深刻化する中で、こうした若い世代のハンターが内面をオープンにしながら活動を続けることは、新規参入を検討する層への強力なメッセージとなる。制度だけでは解決できない「狩猟の倫理」をどう社会に伝えるかは、業界全体が取り組むべき課題の一つだ。(情報元:Yahoo!ニュース)
今週の主要ニュース一覧
| 日付 | 地域 | 内容 | カテゴリ | 情報元 |
|---|---|---|---|---|
| 8/9 | 静岡県 | 狩猟免許実技講習会の受講者が1.5倍増、女性・若者層の関心高まる | 狩猟行政・法改正 | テレビ静岡NEWS |
| 8/9 | 埼玉県 | 射撃場での緊急銃猟研修を初開催、猟友会ハンター20人が参加 | 狩猟行政・法改正 | 埼玉新聞 |
| 8/11 | 全国 | 動物好きの27歳ハンターがクマ駆除への葛藤を語る特集記事 | 業界トレンド | Yahoo!ニュース |
| 8/12 | 全国 | どうぶつ基金がノネコ・ノイヌの狩猟除外を求める追加署名を提出 | 狩猟行政・法改正 | coki.jp |
| 8/13 | 全国 | マタギが「山に入るな」は逆と語る、クマとの共存のヒント | 獣害対策 | Yahoo!ニュース |
| 8/13 | 山口県 | 光市が猟友会加入者への奨励金支給制度を新設、担い手確保へ | 狩猟行政・法改正 | 山口新聞 電子版 |
まとめ
今週のニュースを通じて浮かび上がったのは、担い手不足への対策が「制度」と「文化」の両面で同時進行しているという現実だ。
制度面では、静岡での講習受講者増加、埼玉の緊急銃猟研修初開催、光市の奨励金新制度と、行政が具体的なアクションを次々と打ち出した。これらはいずれも、「免許を取りたい人を増やす」「取った後も業界に留まらせる」「緊急時に動ける人材を育てる」というサイクルを強化しようとする動きだ。
文化面では、マタギによる共存論の発信や、27歳ハンターによる内面の告白が注目を集めた。これらは制度整備では補えない「なぜ狩猟をするのか」という根本的な問いへの答えを社会に届けようとする試みだ。
猟期まで3か月を切った今、免許取得や狩猟者登録の手続きを考えている人は早めに動き出すことを勧めたい。また、ガバメントハンターという新しい選択肢も含め、狩猟をキャリアとして位置づける可能性についても改めて検討してみてほしい。
参考記事
- テレビ静岡NEWS「女性や若者中心に1.5倍 狩猟免許の実技講習会 クマ被害拡大で受講者増加」(2026年8月9日)
- 埼玉新聞「クマやイノシシ、市街地に出没したら…射撃場で緊急銃猟の研修 埼玉県が初開催 県内猟友会のハンター20人が参加、緊急時の対応方法学ぶ」(2026年8月9日)
- Yahoo!ニュース「『愛するから、撃つ』動物好きの27歳ハンターが引く命の境界線、クマ駆除への苦悩と挑戦」(2026年8月11日)
- coki.jp「どうぶつ基金、ノネコ・ノイヌの狩猟除外求め追加署名を環境省へ」(2026年8月12日)
- Yahoo!ニュース(Hint-Pot)「クマ出没で『山に入るな』は逆 都会の暮らしにマタギが一石、共存のヒントとは」(2026年8月13日)
- 山口新聞 電子版「光市が猟友会加入者に奨励金 担い手確保へ新制度」(2026年8月13日)

コメント