最終更新: 2026-08-11
「ジビエバーガーを作ってみたいけど、臭みが出そうで不安」「せっかくいただいた鹿肉を、家族が喜ぶ料理に変えたい」——そんな悩みを持つ人が増えている。
農林水産省が実施する野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエの販売総額は約54億円に達し、うち27.7%が外食産業向けに出荷されている。ファインダイニングだけでなく、カジュアルなバーガーやサンドイッチとして提供するジビエ料理が、都市部のカフェや道の駅で急増しているのだ。
ジビエバーガーの最大の魅力は、通常の牛肉・豚肉ハンバーガーにはない「野性味のある旨み」と「高たんぱく・低脂質という栄養的な優位性」にある。特に鹿肉は100gあたりのカロリーが約102kcalと低く、タンパク質は23.9gと牛肉を上回る。しかし調理にはちょっとしたコツが必要で、それを知らずに作ると「パサつく」「臭い」という失敗につながりやすい。
この記事では、猟師や料理人の視点から、ジビエバーガーの基礎知識・肉の種類別特徴・下処理・本格レシピ・おすすめの食べ方までを体系的に解説する。猟師がいただいた獲物を活用したい人も、通販でジビエ肉を購入して挑戦したい人も、この記事を読めばジビエバーガーの全工程を把握できる。
ジビエバーガーとは何か|なぜ今注目されているのか

ジビエバーガーとは、野生の鳥獣(シカ・イノシシ・クマ・キジなど)の肉を挽いてパティ(肉のタネ)を作り、バンズに挟んで仕上げるハンバーガーのことだ。「ジビエ」はフランス語で「猟師が獲った野生の鳥獣を食用にしたもの」を意味し、ヨーロッパでは王侯貴族の食卓を彩る高級食材として数百年の歴史を持つ。
日本でジビエバーガーが注目を集めるようになった背景には、大きく3つの要因がある。
第一に、ジビエ市場の急成長だ。農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエの食肉としての販売額はシカが約25億7千万円、イノシシが約16億4千万円で、合計食肉販売の比率は全体の81.5%を占める。ジビエ市場は2016年からわずか7年で約1.8倍に成長しており、その需要の一端をバーガー業態が担っている。
第二に、健康志向の高まりだ。鹿肉は低脂質・高たんぱくで鉄分も豊富(100gあたり鉄3.9mg)。通常の牛肉ハンバーガーに比べてカロリーを大幅に抑えられることから、ジムトレーニーやダイエット中の人にも支持されている。
第三に、ジビエ文化の普及だ。農水省が「国産ジビエ認証制度」を整備し、安全・安心なジビエ肉が流通するようになったことで、一般家庭でも購入しやすい環境が整った。猟師自身が獲物を加工してバーガー店を開くケースも各地で増加している。
ジビエバーガーに使う肉の種類と特徴比較

ジビエバーガーに使われる主な野生鳥獣には、シカ・イノシシ・クマ・キジがある。それぞれ味の特徴・脂質の量・調理の難易度が異なるため、目的に合わせて選ぶことが重要だ。
| 肉の種類 | 味の特徴 | 脂質量 | カロリー(100g) | バーガーへの適性 |
|---|---|---|---|---|
| 鹿肉(シカ) | 赤身が強く、軽いクセ | 低い(1.1g) | 約102kcal | 高い(ヘルシー志向向け) |
| 猪肉(イノシシ) | 豊かな旨み、脂の甘み | 中〜高(部位による) | 約130〜200kcal | 非常に高い(ジューシーなパティに) |
| 熊肉(クマ) | 濃厚でこってりとした風味 | 高め | 約160〜220kcal | やや難(下処理が重要) |
| キジ肉 | 上品な鶏肉に近い風味 | 低め | 約100kcal | やや難(パサつきやすい) |
初めてジビエバーガーを作る場合は、比較的クセが少なく扱いやすい「猪肉」か「鹿肉」から始めることを強くすすめる。猪肉は脂の甘みが乗っているため、つなぎなしでも成形しやすくジューシーに仕上がる。鹿肉は低脂質なためパサつきやすいが、下処理のコツを押さえれば絶品のバーガーパティになる。
ジビエバーガーパティの下処理と臭み取り|猟師直伝のポイント
ジビエ肉が「臭い」と感じる最大の原因は、処理の遅れと血抜き不足だ。適切に処理された認証ジビエ肉であれば、特別な臭み取りをしなくても十分においしく食べられる。しかし、追加の臭み取り処理をすることで、よりマイルドな風味に仕上げることができる。
臭み取りの基本3ステップ
1. 冷蔵解凍:冷凍保存の肉は必ず冷蔵庫でゆっくり解凍する。急解凍は旨みの流出と臭みの発生につながる。
2. 乳製品漬け:牛乳またはヨーグルトに30分〜1時間浸す。乳製品に含まれるカゼインが臭み成分を吸着する。
3. 水分をしっかり拭き取る:乳製品から取り出した後、キッチンペーパーで表面の水分をしっかり除去する。これを怠るとパティが崩れやすくなる。
ジビエの臭み取り方法を徹底解説|下処理のコツと失敗しないポイント
鹿肉パティのパサつきを防ぐポイント
鹿肉は脂質が少ないため、そのまま加熱するとパサつきやすい。以下の方法でしっとりとしたパティに仕上げよう。
- 牛乳で湿らせたパン粉を加える(肉汁を抱き込む効果)
- 牛脂や豚バラ肉のミンチを2〜3割混ぜる(脂分の補充)
- 焼く前にオリーブオイルをパティ表面に薄く塗る
- 蓋をして蒸らし焼き(弱火4〜5分)にする
猪肉パティのポイント
猪肉はシカよりも脂が多く、ジューシーなパティに仕上がりやすい。ただし部位によって脂質量が大きく異なるため、バーガーにはバラ肉とモモ肉を混ぜたミンチが最適だ。
【本格レシピ】鹿肉バーガーの作り方
材料(2人分)
| 材料 | 分量 | 備考 |
|---|---|---|
| 鹿挽肉 | 250g | 冷凍品は前日から冷蔵解凍 |
| 塩 | 2.5g(挽肉の1%) | 肉の旨みを引き出す |
| 牛乳 | 大さじ2 | 保湿・パサつき防止 |
| パン粉 | 大さじ3 | 牛乳で湿らせておく |
| 玉ねぎ(微塵切り) | 1/4個分 | 炒めて冷ましておく |
| バター | 10g | パティ焼き用 |
| バンズ | 2個 | 軽くトースト |
| トッピング | 好みで | レタス・トマト・ピクルスなど |
手順
1. 玉ねぎを弱火でしっかり炒め(飴色になるまで)、粗熱を取る。
2. ボウルに鹿挽肉・塩・牛乳で湿らせたパン粉・炒め玉ねぎを入れ、粘りが出るまでよくこねる。
3. 2等分し、バンズよりひとまわり大きく(5mm厚)均等に丸く整える。中央を軽く凹ませる(焼き縮み防止)。
4. フライパンにバターを入れ中火で加熱。パティを入れ、片面に焼き目がついたら裏返す。
5. 蓋をして弱火で4〜5分蒸らし焼きにする。中心温度75℃以上になっていることを確認する(厚生労働省のジビエ加熱基準に準拠)。
6. バンズをトーストし、好みのトッピングとソースでアレンジする。
相性の良いソース・トッピング
鹿肉の赤身の旨みを活かすなら、ベリー系のソース(クランベリーソース、ブルーベリージャム)が定番だ。酸味が肉の風味を引き立てる。マスタードとハーブ(ローズマリー・タイム)の組み合わせも、野趣あふれる風味をエレガントにまとめてくれる。
【本格レシピ】猪肉バーガーの作り方
材料(2人分)
猪挽肉230g・塩2.3g・黒胡椒少々・バンズ2個・トッピング(キャベツの千切り・スライストマト・ピクルス)・照り焼きソース(醤油大さじ1・みりん大さじ1・砂糖小さじ1)
手順
1. ボウルに猪挽肉・塩・黒胡椒を入れ、粘りが出るまでよくこねる。猪肉は脂が多いため、パン粉などのつなぎは不要。
2. 2等分し、バンズと同じサイズに成形する。冷蔵庫で10分休ませると成形が安定する。
3. フライパンを中火に熱し、サラダ油(小さじ1)を入れてパティを焼く。強火で表面をしっかり焼き固め、旨みを閉じ込める。
4. 裏返した後、蓋をして弱火で3〜4分蒸らし焼きにする。中心温度75℃以上を確認。
5. 照り焼きソースの材料を小鍋で煮詰めてパティに絡める。
6. バンズにキャベツ・トマト・パティを順に乗せ、ソースをかけて完成。
猪肉は脂の甘みが強いため、照り焼きソースとの相性は抜群だ。ベリー系ソースを合わせる場合は、クランベリーとはちみつのソースがおすすめ。脂のこってり感を程よく中和してくれる。
ジビエバーガーのアレンジと楽しみ方
季節の食材を使ったアレンジ
ジビエバーガーは季節の野菜・薬味と掛け合わせることで、さらに魅力が増す。夏(8月)は東京の平均気温26.9℃(気象庁1991〜2020年平年値)と高温が続くため、さっぱりとしたトッピングが合う。
みょうがの千切りをトッピングに加えると、清涼感のある和風ジビエバーガーが楽しめる。みょうが独特のα-ピネンの香り成分が鹿肉の赤身と絶妙に調和し、夏向けの爽やかな一品になる。
ゴーヤの薄切りを添えると苦味が脂を引き締め、猪肉のこってり感とのバランスが取れる。暑い時季の食欲増進にもつながる。
ソーセージ・加工品との組み合わせ
猟師や有害鳥獣処理施設では、ジビエ肉をソーセージやパテ(肉のペースト)に加工してから料理に活用するケースも多い。ジビエソーセージをトッピングに加えると、一品で2種類の肉の旨みを楽しめるダブルジビエバーガーにアレンジできる。
カレー風味のジビエバーガー
ジビエカレーで培ったスパイス技法をバーガーに応用するのも面白い。パティにクミン・コリアンダー・ターメリックをひとつまみ混ぜ込むだけで、エスニックな風味のジビエバーガーが完成する。スパイスの臭み消し効果も期待できる。
ジビエバーガーを食べられる店・お取り寄せ情報
道の駅・ジビエ施設
国産ジビエ認証を取得した加工施設や道の駅では、地元産の野生鳥獣肉を使ったバーガーを提供していることが多い。農林水産省の「ジビエト」ポータルサイトでは、全国のジビエ提供店舗を地域別に検索できる。
通販で自宅調理
認証ジビエの鹿挽肉・猪挽肉は、農水省認定の通販サイトでも購入可能だ。冷凍配送で届くため、解凍方法さえ守れば安全に利用できる。
食べる前に確認すべき衛生管理
ジビエ肉は必ず中心温度75℃以上で1分以上加熱することが厚生労働省から求められている。E型肝炎ウイルス等への対策として、加熱不足は厳禁だ。ジビエの衛生基準については農水省ガイドラインを参照してほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 鹿肉バーガーはどんな味がしますか?
鹿肉は牛肉に比べて赤身が強く、あっさりとした中に野性的な旨みがあります。しっかり下処理をすれば特有のクセはほとんど感じず、赤身肉好きな人には特に喜ばれます。脂が少ない分パサつきやすいですが、パン粉と玉ねぎを加えることでジューシーに仕上がります。
Q2. ジビエバーガーのパティは生焼けで食べても大丈夫ですか?
いいえ、絶対にNGです。ジビエ肉には豚肉同様にE型肝炎ウイルスや寄生虫(有鉤条虫等)のリスクがあります。厚生労働省の基準に従い、必ず中心温度75℃以上・1分以上の加熱を徹底してください。
Q3. 猪肉と鹿肉はどちらがバーガーに向いていますか?
初心者には猪肉がおすすめです。猪肉は天然の脂が多くジューシーに仕上がりやすく、調理失敗のリスクが低いです。一方、鹿肉はカロリーが低くダイエット向きですが、油分を補う工夫が必要です。目的に合わせて選んでください。
Q4. ジビエ挽肉はどこで購入できますか?
農林水産省が認定する「国産ジビエ認証制度」を取得した施設の通販サイト、または大型スーパーや道の駅などで購入可能です。オンラインでは「北のジビエ」「宇佐ジビエファクトリー」などの専門業者が取り扱っています。
Q5. ジビエバーガーはアウトドアで作れますか?
はい、キャンプやBBQとの相性は抜群です。ただし、中心温度の確認が難しい環境では食中毒リスクが高まるため、調理用温度計を必ず携帯し、しっかり火を通してから食べてください。
Q6. ジビエバーガーの保存方法は?
生のパティは成形後すぐに焼くのが基本です。どうしても保存する場合は、ラップで個包装して冷凍(−20℃以下)が安全です。解凍する際は必ず冷蔵庫でゆっくりと行ってください。
まとめ:ジビエバーガーは「知識」と「下処理」で決まる
ジビエバーガーの成否を分けるのは、食材選びと下処理の知識だ。臭み取りの基本(乳製品漬け・水分除去)、鹿肉のパサつき対策(パン粉・脂分の補充)、加熱温度の徹底(75℃以上1分以上)——この3点を押さえれば、家庭でも本格的なジビエバーガーを楽しむことができる。
農水省のデータが示すように、ジビエ市場は着実に拡大している。猟師として獲物を無駄なく活用したい人も、ジビエ料理に挑戦したい食の冒険者も、まずは鹿肉か猪肉の挽肉でバーガー作りを試してみてほしい。「野生の肉」に対する先入観が、きっと変わるはずだ。
ジビエ料理のさらなる深みを探求したい方は、以下の記事も参考に:
- [ジビエの臭み取り方法を徹底解説](https://kariudo.jp/gibier/gibier-odor-removal-methods/)
- [ジビエとは?歴史・種類・栄養価を丸ごと解説](https://kariudo.jp/gibier/what-is-gibier/)
参考情報
- 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)— ジビエ食肉処理施設の販売金額・販売数量
- 農林水産省 国産ジビエ認証制度(gibierto.jp)
- 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)— 鹿肉・猪肉の栄養成分
- 厚生労働省 野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン(2018年改訂版)
- 国産ジビエ認証機構 猪肉バーガーレシピ(cert.gibier.or.jp)


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