猟師になりたい——その一歩を踏み出すための完全ガイド
「自然の中で生きたい」「食の安全・自給自足に興味がある」「農業被害対策に携わりたい」「副業・移住先で猟師を始めたい」——。
近年、そんな思いから狩猟に興味を持つ20〜40代が急増している。農林水産省の統計によると、日本の農業被害は年間約156億円(令和4年度)にのぼり、鳥獣被害対策の担い手不足は深刻だ。一方でジビエ(野生鳥獣の食肉)の市場規模は7年間で1.8倍に拡大し(農水省2023年度調査)、ジビエ業界で生きるチャンスも広がっている。
しかし、「猟師になるには何から始めれば?」という疑問に、わかりやすく答えてくれる情報はなかなか見つからない。
本記事では、猟師になるための完全ロードマップを、未経験者向けに丁寧に解説する。免許の種類から費用・試験内容・猟友会の入り方・実猟デビューまで、必要な情報をすべて網羅した。
猟師になるための5ステップ
猟師になるプロセスは大きく5つのステップに分かれる。
| ステップ | 内容 | 目安時期 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 狩猟の種類を決める(銃猟 or わな猟) | 即日 |
| STEP 2 | 狩猟免許を取得する | 約2〜3か月 |
| STEP 3 | 猟友会に入会し、先輩猟師に弟子入りする | 免許取得後 |
| STEP 4 | 狩猟者登録を行い、猟期を迎える | 毎年10〜11月 |
| STEP 5 | 実猟を重ねてスキルアップし、収入化を目指す | 猟期(11月〜2月) |
この5ステップを踏めば、誰でも猟師になることができる。ただし、銃猟の場合は「銃砲所持許可」の取得という追加プロセスが必要になる。それぞれ詳しく見ていこう。
狩猟免許の種類と特徴
日本の狩猟免許には4種類がある。まず自分が何の猟をやりたいかを決めることが、猟師への第一歩だ。
| 免許の種類 | 使用できる猟具 | 対象鳥獣 | 難易度 | 初期費用目安 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種銃猟免許 | 装薬銃(散弾銃・ライフル銃) | シカ・イノシシ・クマ・カモ等 | 高い | 40〜100万円以上 |
| 第二種銃猟免許 | 空気銃 | カモ・キジバト等の小型鳥獣 | 中程度 | 5〜20万円 |
| わな猟免許 | くくり罠・箱罠等 | シカ・イノシシ等(鳥類以外) | 低〜中程度 | 5〜30万円 |
| 網猟免許 | むそう網・霞網等 | カモ類・ヤマドリ等 | 高い | 10〜50万円 |
未経験者に最もおすすめのルート
初心者にはわな猟免許からスタートすることを強くすすめる。
理由は3つある。
1. 費用が安い:罠の購入費だけで始められ、銃のような高額な初期費用が不要
2. 取得が比較的容易:試験の技能試験でライフルの取り扱いを問われないため、学習ハードルが低い
3. 有害鳥獣駆除の需要が高い:シカ・イノシシ対策でわな猟師を求める自治体が多く、活躍の場が広い
「有害鳥獣対策のプロになりたい」「クマも対応できるようになりたい」という方は、わな猟免許を取得後に第一種銃猟免許へとステップアップするルートが王道だ。
狩猟免許の取り方:試験の内容と合格のコツ
試験の申し込み方法
狩猟免許の試験は、都道府県が主催している。以下の手順で申し込む。
1. 自分が住む都道府県の農林・環境担当部局(農政事務所、環境局など)のHPを確認
2. 試験日程・申請書類を確認し、申し込みを行う
3. 受験料(都道府県によって異なるが概ね5,200〜8,200円程度)を納付
4. 試験当日を迎える
試験は通常、年に2〜3回実施される(都道府県によって異なる)。多くの場合、7〜9月に第一回、10月に第二回が行われる。
試験の内容
狩猟免許の試験は3科目で構成される。
| 試験科目 | 内容 |
|---|---|
| 知識試験(筆記) | 鳥獣保護管理法・捕獲禁止鳥獣・猟具の仕組み・保護区・鳥獣の見分け方 |
| 技能試験 | 猟具の取り扱い・装填・分解(銃猟)、罠の設置・解除(わな猟)など |
| 適性試験 | 視力・聴力・運動能力など身体的な適性の確認 |
合格率はどのくらい?
狩猟免許試験の合格率は一般的に70〜80%程度といわれており、きちんと準備すれば合格は難しくない。
ただし、鳥獣の見分け(識別)が苦手な受験者が多い。試験では標本や写真を見て「この鳥は捕獲可能か」を答えさせるため、事前に狩猟鳥獣図鑑などで徹底的に覚えておくことが重要だ。
猟師志望者向け講習会の活用
各都道府県では、試験前に「狩猟免許事前講習会」を実施している。この講習会を受講することを強くすすめる。
- 試験の出題傾向を把握できる
- 鳥獣の識別を実物や標本で学べる
- 猟友会のベテランから直接アドバイスをもらえる
- 同期の受験者とつながれる(入会後の仲間作りにも有効)
講習会の受講費は5,000〜7,000円程度(都道府県によって異なる)。
猟師になるための費用:初期費用とランニングコスト
「猟師になるにはどのくらいお金がかかるの?」という質問は多い。正直に言うと、選ぶ猟の種類によって費用は大きく異なる。
初期費用の比較(わな猟 vs 銃猟)
| 項目 | わな猟 | 第一種銃猟(散弾銃) |
|---|---|---|
| 狩猟免許試験受験料 | 約5,200〜8,200円 | 約5,200〜8,200円 |
| 事前講習会受講費 | 約5,000〜7,000円 | 約5,000〜7,000円 |
| 猟友会入会費 | 約5,000〜20,000円 | 約5,000〜20,000円 |
| 銃砲所持許可申請 | 不要 | 約6,000〜8,000円 |
| 散弾銃購入費 | 不要 | 15〜50万円以上 |
| 銃用ロッカー購入費 | 不要 | 約3〜10万円 |
| 罠購入費(初期) | 3〜10万円 | 1〜5万円(罠も使用する場合) |
| 狩猟者登録料 | 約8,000〜1万5千円/年 | 約8,000〜1万5千円/年 |
| 猟友会年会費・保険料 | 約2〜5万円/年 | 約2〜5万円/年 |
| **初年度合計目安** | **約12〜31万円** | **約28〜74万円以上** |
毎年かかるランニングコスト
猟師として毎年発生する費用の目安は以下の通り。
- **狩猟者登録料**:8,000〜1万5千円(猟種・都道府県によって異なる)
- **猟友会年会費・狩猟保険料**:2〜5万円
- **わな・弾薬・消耗品費**:1〜10万円(猟の種類・規模による)
- **交通費・燃料費**:1〜10万円以上(猟場の距離による)
合計すると、毎年5〜30万円程度のランニングコストが発生する。
実猟デビューまでの道のり
免許を取得しただけでは猟師になれない。免許は「狩猟ができる資格」であり、実際に狩猟を行うためには以下のプロセスが必要だ。
銃猟の場合:追加の手続きが必要
銃猟(第一種・第二種)の場合、狩猟免許取得後に「銃砲所持許可」を取得しなければならない。これは都道府県の警察署(生活安全課)が管轄する手続きで、審査には概ね3〜6か月かかる。
手続きの流れ:
1. 警察署で申請書類を入手・作成
2. 身元照会・精神科医の診断書の取得
3. 射撃教習の受講(初回取得時は義務)
4. 所持許可申請
5. 銃砲店で銃を購入し、銃の確認
猟友会への入会が事実上の必須条件
免許・許可が揃ったら、次は「猟友会」への入会だ。正確には猟友会への加入は任意だが、事実上の必須条件と考えておいたほうがよい。
理由は以下の通り。
- **猟場の情報が猟友会を通じて共有される**
- **先輩猟師から技術を学べる**(独学での独り立ちは非常に難しい)
- **狩猟保険への加入**が猟友会経由で行いやすい
- **有害鳥獣駆除の仕事**は猟友会を通じて紹介されることが多い
猟友会への入会は「猟師」としての最初のコミュニティへの参加を意味する。先輩猟師に弟子入りし、2〜3シーズンかけて一人前の猟師として独り立ちするのが一般的なルートだ。
猟期を迎える:狩猟者登録
狩猟免許を取得したあと、実際に猟をするためには毎年「狩猟者登録」を行う必要がある。狩猟者登録は猟をする都道府県の農林担当部局に申請し、登録料(鳥獣保護区や猟種によって異なるが概ね8,000〜1万5千円程度)を支払う。
日本の猟期は原則11月15日〜翌2月15日(北海道は10月1日〜4月30日)。この期間内であれば、登録した都道府県内で狩猟が可能だ。
猟師の仕事と収入の実態
猟師の収入は「狩猟だけ」では成り立たない
正直に言おう。日本で「猟師だけ」で生計を立てるのは、現時点では非常に難しい。
理由は明確だ。猟期は約3か月(11月〜2月)しかなく、この期間外は原則として狩猟ができない。捕獲した鳥獣を「ジビエ」として販売するには、食肉処理施設を経由する必要がある。
しかし、複数の収入源を組み合わせることで、猟師として生きる道は十分にある。
猟師の収入モデル(年収の目安)
| タイプ | 収入源 | 年収目安 |
|---|---|---|
| 専業猟師 | 有害鳥獣駆除報酬+ジビエ販売+補助金 | 220〜350万円 |
| 兼業猟師 | 本業収入+有害鳥獣駆除報酬 | 本業+50〜150万円 |
| 農業+猟師 | 農業収入+自家食肉・被害防止 | 農業収入で変動 |
| ガバメントハンター | 自治体給与(正規・会計年度任用) | 200〜350万円 |
収入を得るための主なルート
1. 有害鳥獣駆除の報酬
自治体や農家から依頼を受けて、シカ・イノシシ等を駆除する。報酬は1頭あたり数千〜数万円(鳥獣の種類・自治体の補助制度による)。農業被害対策の予算が年間約99億円規模で継続的に投下されており、需要は安定している。
2. ジビエの販売
農林水産省の「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」によると、国内のジビエ販売金額は約54億円(e-Stat統計表ID: 0002119974)。食肉処理施設と連携してシカ・イノシシを販売することで収入が得られる。
3. ガバメントハンター・捕獲官への転身
安定収入を求めるなら、ガバメントハンター・捕獲官として自治体に雇用されるルートも有望だ。
4. 猟師としての体験・スクール事業
自らの経験を活かして、狩猟体験ツアーや、新規猟師向けの指導・スクール事業を行う猟師も増えている。
よくある質問
Q1. 猟師免許は何歳から取れますか?
狩猟免許の取得に年齢制限の下限はありません(未成年でも取得可能)。ただし、第一種銃猟免許の場合は「銃砲所持許可」の取得に20歳以上という要件があります。
Q2. 女性でも猟師になれますか?
もちろんです。近年は女性猟師(「狩女子」とも呼ばれる)が増えています。体力的なハードルはありますが、わな猟では女性でも十分に活躍できます。
Q3. 狩猟免許の試験はどのくらい難しいですか?
合格率は都道府県・猟種によって異なりますが、概ね70〜80%程度です。事前講習会を受講したうえで、鳥獣の識別と猟具の取り扱いをしっかり練習すれば、独学でも十分合格を目指せます。
Q4. 猟師は1人でもできますか?
独り立ちするまでには先輩猟師の指導が必要です。特に銃を使った巻き狩りは複数人で行うのが原則です。わな猟は比較的1人でも管理しやすいですが、最初は猟友会の先輩について学ぶことを強くすすめます。
Q5. 猟師になるのに何年かかりますか?
免許取得自体は最短2〜3か月で可能です。ただし「独り立ちして自分で獲物を仕留めること」ができるようになるには、通常2〜3シーズン(2〜3年)の実猟経験が必要です。
Q6. 猟師に向いている人の特徴は?
自然が好きで体を動かすことが苦にならない人、粘り強く諦めない忍耐力のある人、動物の行動・習性に興味がある人が向いています。また、地域コミュニティとの連携も重要なため、コミュニケーション能力も大切です。
Q7. 農業被害対策として猟師になりたいのですが?
素晴らしい動機です。農業被害対策には特にわな猟が重視されています。地域の農家や自治体と連携することで、有害鳥獣駆除の依頼を受けながら経験を積むことができます。猟師の転職・キャリアチェンジの観点でも、農業被害対策専門の猟師は今後の需要が期待できます。
関連記事: 捕獲官とは?仕事内容・採用要件・ガバメントハンターとの違いを徹底解説【2026年版】
まとめ:今すぐできる「猟師への第一歩」
猟師になることは、決して難しくない。
最初の一歩は「狩猟免許試験の申し込み」だ。居住地の都道府県の農林・環境担当部局のホームページを検索し、次回の試験日程を確認してほしい。多くの場合、試験は7〜10月に実施されており、今から準備を始めれば今シーズンの猟期(11月〜)に間に合う可能性がある。
農林水産省による鳥獣被害対策予算は年間約99億円規模で継続投下されており、担い手不足のなかで猟師の社会的価値はますます高まっている。ジビエ販売額も7年で1.8倍(農水省令和5年度調査)と成長が続いており、猟師として生計を立てるチャンスも広がっている。
「猟師の生活」の具体的なイメージをつかみたい方は「猟師の生活と収入の実態」もあわせてお読みください。
あなたの猟師ライフが充実したものになることを願っている。

コメント