最終更新: 2026-08-06
農林水産省の発表によると、令和6年度(2024年度)の野生鳥獣による農作物被害額は全国で188億円にのぼり、前年度から24億円増加しました。シカだけで79億円、イノシシで45億円と被害は拡大しており、捕獲担い手の確保が急務となっています。
有害鳥獣を捕獲した際に支払われる「捕獲報奨金」は、国・都道府県・市町村の3層構造で決まります。しかし、具体的な金額が自治体ごとに異なるため、「自分の地域でいくらもらえるのか」を把握しにくいのが現状です。
この記事では、有害鳥獣の報奨金制度の仕組み、動物別の全国相場、都道府県別の代表的な金額、そして環境省の最新捕獲頭数データをまとめます。毎年8月に更新予定です。
有害鳥獣の報奨金制度とは?3層構造の仕組み
捕獲報奨金は「国の交付金」「都道府県の補助」「市町村の独自報奨金」の3つが組み合わさって決まります。住んでいる自治体によって総額が大きく異なるのはこのためです。
| 層 | 根拠 | 金額の目安 | 対象動物 |
|---|---|---|---|
| 国(農林水産省) | 鳥獣被害防止総合対策交付金 | 8,000円/頭(ジビエ利用)、7,000円/頭(埋設) | イノシシ・ニホンジカ |
| 都道府県 | 各県の補助制度 | 0〜10,000円/頭(県によって差が大きい) | 都道府県が設定 |
| 市町村 | 独自報奨金 | 0〜15,000円/頭 | 市町村が独自設定 |
国の交付金(8,000円/頭)はあくまでベースラインです。都道府県や市町村が独自に上乗せするため、実際の受取額は自治体によって2倍以上の差が生まれます。
報奨金は「有害鳥獣捕獲許可証」に基づく捕獲が前提です。狩猟者登録のみで捕獲した場合は対象外となるため、必ず事前に市町村の農林担当窓口で有害捕獲の許可を取得してください。
動物別 報奨金の全国相場一覧
| 動物 | 国の交付金 | 自治体上乗せ(目安) | 合計相場 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| イノシシ(成獣) | 8,000円 | 5,000〜12,000円 | 13,000〜20,000円 | 被害深刻地域は高め |
| ニホンジカ(成獣) | 8,000円 | 5,000〜10,000円 | 13,000〜18,000円 | 北海道はエゾシカとして別計上 |
| ニホンザル | 国なし | 5,000〜30,000円 | 5,000〜30,000円 | 自治体判断。群れの管理が目的のため高め |
| ツキノワグマ | 国なし | 20,000〜50,000円 | 20,000〜50,000円 | 人身被害リスクが高いため高報奨 |
| エゾシカ(北海道) | 国なし(道独自) | 道+市町村合計 | 8,000〜18,000円 | 北海道独自の管理計画に基づく |
| カラス・アライグマ等 | 国なし | 500〜5,000円 | 自治体次第 | 種類・地域差が大きい |
イノシシ・シカとも「ジビエとして食肉処理施設に搬入する場合」は国交付金が最大8,000円支給されます。埋設・焼却処分の場合は7,000円に下がるため、ジビエ利活用のほうが実質的に有利です。
都道府県別 報奨金の代表事例(2025年度時点)
報奨金の金額は市町村レベルで設定されるため、同じ都道府県内でも差があります。以下は各都道府県の代表的な事例・水準です。実際の申請前には必ず最寄りの市町村農林担当窓口に確認してください。
| 都道府県 | 主な対象獣 | 報奨金水準(目安) | 参考事例 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | エゾシカ | 8,000〜18,000円/頭 | 道の助成制度+市町村上乗せ |
| 青森 | シカ・イノシシ | 13,000〜18,000円/頭 | 農水省交付金+市町村 |
| 岩手 | シカ・イノシシ・クマ | 13,000〜20,000円/頭 | クマは自治体独自で50,000円超の例も |
| 宮城 | シカ・イノシシ | 13,000〜18,000円/頭 | 仙台市周辺・山形との県境地域 |
| 長野 | シカ・イノシシ | 15,000〜22,000円/頭 | 山間部の市町村は高め |
| 群馬 | イノシシ・シカ | 13,000〜20,000円/頭 | 上野村等は独自に上乗せ |
| 静岡 | イノシシ・シカ | 13,000〜18,000円/頭 | 静岡市:イノシシ5,000円+国交付金 |
| 兵庫 | シカ・イノシシ | 15,000〜20,000円/頭 | 全国最多水準の捕獲実績 |
| 奈良 | シカ | 13,000〜18,000円/頭 | 吉野・南部山間部が中心 |
| 広島 | イノシシ・シカ | 13,000〜18,000円/頭 | 東広島市:市独自7,000円+国交付金 |
| 岡山 | イノシシ・シカ | 15,000〜18,000円/頭 | 県:成獣7,000〜9,000円+市町村 |
| 高知 | シカ・イノシシ | 13,000〜20,000円/頭 | 四万十川流域は被害深刻で高め |
| 熊本 | シカ・イノシシ | 13,000〜18,000円/頭 | 阿蘇周辺は被害が多い |
| 鹿児島 | シカ・イノシシ | 13,000〜20,000円/頭 | 南部・島嶼部を含む |
報奨金が高い地域の共通点は「被害が深刻」「捕獲担い手が不足」「中山間地域で過疎化が進んでいる」の3点です。これらの地域は猟師不足を補うために報奨金を引き上げる傾向があります。
全国の有害鳥獣捕獲頭数【環境省統計データ】
環境省は毎年度、ニホンジカ・イノシシの捕獲数速報値を公表しています。以下は令和元年度以降の全国合計値の推移です。
| 年度 | ニホンジカ(頭) | イノシシ(頭) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 令和元年度(2019年度) | 約672,000 | 約588,000 | 約1,260,000 |
| 令和2年度(2020年度) | 約600,000 | 約530,000 | 約1,130,000 |
| 令和3年度(2021年度) | 約595,000 | 約547,000 | 約1,142,000 |
| 令和4年度(2022年度) | 約570,000 | 約590,000 | 約1,160,000 |
出典:環境省「ニホンジカ・イノシシ捕獲数速報値」各年度版
令和元年度から令和4年度にかけて、シカの捕獲数は減少傾向にある一方でイノシシは増加に転じています。環境省はシカ・イノシシそれぞれを「指定管理鳥獣」に指定し、令和10年度末(2028年度)までに令和元年度比で半減を目指す管理目標を設定していますが、シカについては目標達成が依然として困難な状況が続いています。
地域別 捕獲傾向(令和4年度 環境省データより)
| 地方 | シカ捕獲傾向 | イノシシ捕獲傾向 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 多い(エゾシカが中心) | 少ない(近年北上傾向あり) | エゾシカは北海道独自の管理計画 |
| 東北 | 多い | 多い | 青森・岩手のシカ、秋田のクマも要注意 |
| 関東・甲信越 | 多い | 多い | 長野・群馬・栃木が特に多い |
| 近畿 | 最多水準 | 最多水準 | 兵庫が全国屈指の捕獲数 |
| 中国 | 多い | 多い | 広島・岡山・山口が主産地 |
| 四国 | 多い | 多い | 高知のシカ密度は全国上位 |
| 九州 | 多い | 多い | 鹿児島・熊本・宮崎が主産地 |
| 北陸・東海 | 中程度 | 中程度 | 愛知・三重・静岡は増加傾向 |
ニホンジカの分布は、令和4年度時点で43都道府県(環境省推計)に及んでいます。かつて生息していなかった東北北部・北関東の平野部でも目撃事例が増加しており、今後は捕獲頭数の全国的な底上げが続くと見込まれます。
報奨金を受け取るための申請手順
1. 市町村の農林担当窓口で「有害鳥獣捕獲許可申請書」を提出し、捕獲許可証を取得する
2. 許可証に記載された期間・地域・頭数の範囲内で捕獲する
3. 捕獲後、定められた期間内(通常3〜7日以内)に報告書と証拠写真(耳・尾等)を窓口に提出する
4. 窓口でサイズ・種別を確認後、報奨金の交付決定通知が来る
5. 口座振込で受け取る(通常1〜2か月後)
注意点として、ジビエとして食肉処理施設に搬入する場合は「搬入証明書」の写しが必要になる自治体が多いです。また、捕獲した個体の不法投棄は鳥獣保護管理法違反になるため、適切に処理してください。
申請方法の詳細は「獣害対策の補助金を申請するには?」も参照してください。
よくある質問
Q. 狩猟者登録で捕獲した場合も報奨金はもらえますか?
いいえ。報奨金の対象は「有害鳥獣捕獲許可証」に基づく捕獲に限られます。狩猟期間中の狩猟による捕獲は対象外です。ただし、狩猟期間外や禁猟区内での有害捕獲は許可があれば対象になります。
Q. 報奨金は確定申告が必要ですか?
報奨金は所得税の課税対象です。受取額が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。猟友会を通じて受け取る場合も個人への支払いとして扱われるため、注意してください。
Q. 幼獣・子獣でも報奨金はもらえますか?
自治体によって異なります。成獣の半額や定額を設定している自治体もあれば、幼獣は対象外としている自治体もあります。申請前に必ず確認してください。
Q. 報奨金の金額は毎年変わりますか?
変わります。国の交付金は原則一定ですが、自治体独自の上乗せ分は毎年度の予算次第で変更されます。捕獲シーズン前(毎年4〜5月)に最新情報を確認することを推奨します。
Q. 捕獲の上限頭数に制限はありますか?
有害鳥獣捕獲許可証には捕獲許可頭数が記載されており、その範囲内での捕獲に限られます。上限に達したら再申請が必要です。市町村によっては通期許可(年間許可)の制度もあります。
まとめ
有害鳥獣の捕獲報奨金は「国の交付金(8,000円/頭)+都道府県補助+市町村独自報奨金」の3層構造で決まります。全国相場はイノシシで13,000〜20,000円、シカで13,000〜18,000円ですが、被害が深刻な中山間地域や担い手不足の地域では上乗せが大きく、2万円を超える例もあります。
環境省のデータによると令和4年度の全国捕獲数はシカ・イノシシ合計で約116万頭に達しており、農作物被害額188億円(令和6年度)の抑制に大きく貢献しています。一方で政府が掲げる「2028年度までに半減」目標の達成には、引き続き捕獲強化と担い手育成が求められています。
自分の地域の最新の報奨金額は市町村農林担当窓口に直接確認してください。本記事のデータは毎年8月に更新します。
参考情報
- 農林水産省「令和6年度 野生鳥獣による農作物被害状況」
- 環境省「ニホンジカ・イノシシ捕獲数速報値(令和4年度)」
- 環境省「捕獲数及び被害等の状況」https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/index.html
- 農林水産省「鳥獣被害防止総合対策交付金」https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/
- 各都道府県・市町村の農林担当部署(最新の報奨金額は各自治体にご確認ください)
引用・転載について: 本記事のデータを引用・転載する場合は、出典として「猟人 -KARIUDO- (https://kariudo.jp)」を明記の上、リンクをお願いします。データは毎年更新予定です。


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