最終更新: 2026-09-21
猟師が使う猟犬は、大きく「獣猟犬」と「鳥猟犬」の2つに分かれ、日本犬(甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬など)と洋犬種(ビーグル・ポインター・レトリバーなど)がそれぞれ得意な役割を持っています。さらに同じ獣猟犬でも、巻き狩り・忍び猟・わな猟の補助といった猟法によって向き不向きが変わります。この記事では、猟師が実際に使っている猟犬の犬種を分類ごとに一覧で整理し、猟法別にどの犬種が向いているかを比較表で解説します。なお、猟犬の訓練方法や、猟犬を捨てる問題については別記事で詳しく扱っているため、本記事では犬種と役割の分類に絞って解説します。
猟犬とは?基本をわかりやすく解説

猟犬とは、狩猟の現場で獲物の捜索・追い出し・追跡・回収などを担う、猟師のパートナーとなる犬のことです。大日本猟友会は猟犬を大きく「鳥猟犬」と「獣猟犬」の2種類に分類しており、対象となる獲物や役割によって適した犬種が異なるとしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 狩猟の現場で獲物の捜索・追い出し・追跡・回収を行う犬 |
| 大分類 | 獣猟犬(イノシシ・シカ・ノウサギなど)/鳥猟犬(キジ・ヤマドリ・カモ類など) |
| 由来・歴史 | 日本犬は山岳地帯での獣猟のために古くから飼育され、甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬は国の天然記念物にも指定されている。洋犬種の多くは英国・欧州で鳥猟用に改良された系統 |
| 猟師との関係 | 「一犬二足三鉄砲」という言葉があるほど、猟犬の能力が猟果を左右するとされる |
猟師が使う猟犬の犬種一覧・分類

猟犬は対象とする獲物によって、大きく「獣猟犬」「鳥猟犬」に分類されます。ここでは代表的な犬種を、日本犬・洋犬種に分けて整理します。
獣猟犬の代表犬種|日本犬
イノシシやシカを対象とする獣猟では、獲物と対峙しても引かない中型の日本犬が古くから使われてきました。甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬はいずれも日本犬保存会が指定する天然記念物6犬種に含まれています。
| 犬種 | 主な産地・由来 | 特徴 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 甲斐犬 | 山梨県の山岳地帯 | 虎毛の被毛で「甲斐虎」とも呼ばれる。警戒心が強く、単独でも獲物に立ち向かう気性 | イノシシ・シカ |
| 紀州犬 | 和歌山県・三重県 | 白い被毛が多く、忍耐強く粘り強い性格。獲物を見つけても吠えすぎない気質が評価される | イノシシ |
| 四国犬 | 高知県 | 胡麻・赤・黒褐色の被毛。骨格が丈夫で、山岳地形での持久力に優れる | イノシシ・シカ |
| 北海道犬 | 北海道(アイヌの人々が飼育) | がっしりとした筋肉質な体格で、大型獣にもひるまない | ヒグマ・シカ |
獣猟犬の代表犬種|洋犬種
洋犬種の獣猟犬は、嗅覚と持久力を生かして獲物を追跡する役割で使われることが多く、日本犬とは異なる猟のスタイルに向いています。
| 犬種 | 由来 | 特徴 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| ビーグル | 英国原産のセントハウンド | 嗅覚をたどって獲物を追跡するのが得意。本来はノウサギ猟用だが、近年はイノシシ・シカ猟にも用いられる | ノウサギ・イノシシ・シカ |
| プロットハウンド | 米国原産(1750年代にドイツから移住した猟師が持ち込んだ系統) | 大型獣にも臆さず追跡する勇敢な性格で、獲物を木の上や逃げ場のない場所へ追い詰める「ツリーイング」を得意とする。日本ではまだ数が少ない | イノシシ・クマなど大型獣 |
鳥猟犬の代表犬種
鳥猟犬は、対象とする鳥の種類や役割によってさらに細分化されます。獲物の位置を指し示す「ポインティング・ドッグ」と、撃ち落とした獲物を回収する「レトリバー」が代表的です。
| 分類 | 代表犬種 | 役割 |
|---|---|---|
| ポインティング・ドッグ | 英国ポインター、英国セター、ドイツ・ポインター | 嗅覚で獲物の位置を探索し、前肢を曲げて静止する姿勢(ポイント)や伏せる姿勢(セット)で猟師に知らせる |
| レトリバー | ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー | 泳ぎが得意で、撃ち落とした水鳥を回収する |
| スパニエル系 | ブリタニー・スパニエル、コッカー・スパニエル | 茂みに潜む鳥を追い出す役割 |
猟法別|猟犬の向き不向き比較表
同じ猟犬でも、猟法によって求められる役割はまったく異なります。ここでは巻き狩り・忍び猟・わな猟の補助・鳥猟の4つの猟法について、猟犬の向き不向きを整理しました。競合記事の多くは犬種の一覧にとどまりますが、猟師が実際にどの場面でどの犬種を選ぶべきかを判断できるよう、猟法軸で比較する点が本記事の独自の切り口です。
| 猟法 | 猟犬の主な役割 | 向いている犬種 | 向かない・注意が必要なケース |
|---|---|---|---|
| 巻き狩り(グループ猟) | 「勢子(せこ)」として茂みに潜む獲物を追い出し、鳴き声で仲間に位置を知らせる | 甲斐犬・紀州犬・四国犬などの日本犬、ビーグル | 単独では制御が難しいため、複数人でのハンドリング経験が必要 |
| 忍び猟(単独忍び猟) | 基本的に犬は同伴させないのが原則。気配を消して接近する猟法のため、吠え声や動きが逆効果になりやすい | 使用しないケースが多い(血判・血追い専用犬を除く) | 訓練が不十分な猟犬を連れて行くと、獲物に気づかれて逃げられる原因になる |
| わな猟の補助 | くくりわなにかかった獲物の位置確認や、負傷して逃げた個体の血痕を追う「血追い」 | 嗅覚に優れたセントハウンド系(ビーグルなど) | わな猟免許があれば猟犬なしでも成立するため、必須ではなく補助的な位置づけ |
| 鳥猟 | 獲物の探索・追い出し・回収 | ポインター、セター、レトリバー、スパニエル系 | イノシシ・シカなど大物猟には基本的に使われない |
わな猟でくくりわなを設置する際の考え方は、猟師から罠師になる方法を解説した記事で詳しく紹介しています。くくりわなの仕組み自体を確認したい場合は用語集のくくりわなの解説もあわせてご覧ください。
猟犬を使うメリット・魅力
猟犬を使う最大のメリットは、捕獲の効率と安全性が高まることです。茂みの奥に潜む獲物を人間だけで発見するのは難しく、優れた嗅覚を持つ猟犬がいることで発見率が大きく変わります。また、撃った獲物が負傷して逃げた場合も、血の臭いを追う訓練を受けた猟犬がいれば、無駄に獲物を長時間苦しませずに追跡・回収できるという動物福祉の面での利点もあります。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設への搬入重量は年間7,072トンに達し、シカが79.3%、イノシシが20.7%を占めています(e-Stat 統計表ID: 0002119971)。これほどの捕獲頭数を支えている背景には、巻き狩りなどで活躍する猟犬の存在があります。狩猟・ジビエ業界の最新データは狩猟・ジビエ業界の統計まとめページで定期更新しています。
巻き狩りにおける猟犬の具体的な使われ方は、巻き狩りのやり方を解説した記事で詳しく紹介しています。
猟犬を飼う・使う際の注意点・デメリット
猟犬を持つことにはメリットだけでなく、以下のような負担も伴います。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 訓練に時間と費用がかかる | 銃声に慣らすことや、獲物への攻め方、回収・血追いの訓練など、実猟レベルに育てるには年単位の期間が必要とされる |
| 猟期以外の飼育計画が必要 | 猟期は11月15日から2月15日(北海道は10月1日から1月31日)に限られるため、それ以外の期間の飼育環境も考える必要がある |
| 引退後の生活を見据える | 高齢になり実猟が難しくなった猟犬の余生をどう過ごさせるか、飼い主が責任を持って計画する必要がある |
| 猟場との相性 | 猟犬を連れて行ける猟場かどうか、事前の確認が必要な場合がある |
猟犬の具体的な訓練の進め方については、猟犬の訓練方法を解説した記事で子犬期から実猟デビューまでのステップを紹介しています。また、猟期が終わった後に猟犬が遺棄されてしまう問題も現実に起きており、責任ある飼い方については猟犬を捨てる問題について解説した記事で取り上げています。猟犬を迎える前に、こうした課題にも目を通しておくことをおすすめします。
自分に合った猟場を探す際のポイントは、猟場の探し方ガイドでも解説しています。忍び猟のように猟犬を同伴させない猟法との使い分けについては、鹿の忍び猟のコツを解説した記事を参考にしてください。
猟師の猟犬に関するよくある質問
Q1: 猟犬を飼うのに特別な免許は必要ですか?
猟犬の飼育自体に免許は不要です。ただし、猟犬を連れて実際の狩猟を行うには、飼い主であるハンドラー自身が狩猟免許を取得し、狩猟者登録を済ませている必要があります。
Q2: 猟犬は何歳から猟に出せますか?
犬種や個体差によって異なりますが、生後1〜2年ほど基礎的なしつけと猟犬としての訓練を積んでから実猟デビューさせるのが一般的とされています。
Q3: 日本犬と洋犬種、初心者にはどちらが向いていますか?
どちらが向いているかは猟法次第です。巻き狩りで日本犬を使う場合は、地域の猟友会に日本犬の扱いに慣れた先輩猟師がいるかどうかも選択の目安になります。鳥猟であれば、ポインターやレトリバーなど洋犬種が中心になります。
まとめ:猟師が使う猟犬のポイント
- 猟犬は大きく「獣猟犬」と「鳥猟犬」に分かれ、獣猟犬にはさらに日本犬(甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬)と洋犬種(ビーグル・プロットハウンドなど)がある
- 鳥猟犬はポインティング・ドッグ(ポインター・セター)とレトリバー(ラブラドール・ゴールデンレトリバー)に分かれ、探索・追い出し・回収の役割を分担する
- 猟法によって猟犬の向き不向きは異なり、巻き狩りでは追い出し役、わな猟の補助では血追い役として使われる一方、忍び猟では基本的に猟犬を同伴させない
- 猟犬を持つには訓練の時間・費用に加え、猟期以外の飼育計画や引退後の生活まで見据えた責任が求められる
犬種を選んだら、次は具体的な訓練の進め方を確認してみましょう。子犬期から実猟デビューまでの流れは、前述の猟犬の訓練方法を解説した記事で詳しく紹介しています。
この記事は猟人編集部が執筆しました。猟人 -KARIUDO-は狩猟・ジビエ業界に特化した専門メディアです。詳しくは編集部についてをご覧ください。
参考情報
- 大日本猟友会「猟犬」(http://j-hunters.com/intro/hounds.php)確認日: 2026-09-21。猟犬の大分類(鳥猟犬・獣猟犬)、対象ゲーム、代表犬種の分類に使用
- 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)e-Stat 統計表ID: 0002119971(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?toukei=00500248&tstat=000001112115&tclass1=000001113551&tclass2=000001224300)確認日: 2026-09-21、対象期間: 令和5年度調査。ジビエ食肉処理施設への搬入重量とシカ・イノシシの割合の裏付けに使用
- 「日本犬とは?天然記念物の全6種の特徴、歴史や飼い方も解説」(https://aikenonline.jp/article/10124/)確認日: 2026-09-21。甲斐犬・紀州犬・四国犬・北海道犬が天然記念物6犬種に含まれること、各犬種の産地・特徴の確認に使用
- 「プロットハウンドの性格と特徴、値段や寿命など」(https://wanchan.jp/dogbreed/detail/9099)確認日: 2026-09-21。プロットハウンドの由来と役割の確認に使用


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