最終更新: 2026-09-12
2026年9月11日、兵庫県は「過去5年平均を大幅に超えるクマ目撃情報」を受け、11月から1か月間の銃猟解禁を発表した。餌となるドングリが凶作見込みで、冬眠前のクマが人里に出てくると予想されているためだ。同じ頃、群馬県も独自の堅果類(ドングリ)豊凶調査で「凶作」の結果を公表し、秋期の出没警戒を呼びかけている。一方で秋田県ではブナの実が豊作見通しとされ、同じ2026年秋でも地域によって明暗が分かれているのが実情だ。「今年の秋はクマが多いのか少ないのか」「自分の住んでいる地域は危ないのか」と気になっている人は多いだろう。この記事では、都道府県が公表している堅果類豊凶調査のデータを軸に、2026年秋のクマ出没リスクを地域別に整理し、警戒すべきエリアと今からできる対策まで解説する。
なぜ「ドングリの豊凶」でクマの出没数が予測できるのか

ツキノワグマは冬眠前の秋、体に脂肪を蓄えるためにブナ・ミズナラ・コナラなどの堅果類(いわゆるドングリ)を大量に食べる。山の中でこの堅果類が豊作であれば、クマは山中で十分に食料を確保できるため、人里に下りてくる必要がない。逆に凶作の年は、山の中に食料が足りなくなったクマが、餌を求めて集落や農地、住宅地の近くまで移動してくる。これが「堅果類の豊凶調査結果」が毎年秋の出没予測の最重要指標として扱われる理由だ。
各都道府県の林業試験場や森林管理局は、毎年8〜9月にかけて県内の複数地点でブナ・ミズナラ・コナラなどの指標木を調査し、実のつき方を「豊作・並作・不作・凶作・大凶作」の5段階などで評価する。この調査結果をもとに、都道府県は住民向けに「今年の秋はクマの出没に注意してください」といった注意喚起を出す仕組みになっている。環境省もこの堅果類の豊凶の把握・情報発信を、クマ被害対策の重要な柱の一つに位置づけている。
重要なのは、この豊凶が全国一律ではなく、都道府県によって、さらには同じ県内でも地域によって大きく異なるという点だ。次の章で、2026年秋時点で判明している地域別の状況を整理する。
【地域別】2026年秋の堅果類豊凶調査結果と出没警戒レベル

2026年8〜9月にかけて各都道府県から公表された堅果類豊凶調査の結果を一覧にまとめた。
| 地域 | 堅果類の豊凶調査結果 | 出没警戒レベル |
|---|---|---|
| 群馬県 | クリ・ミズキ不作、ミズナラ・コナラ凶作、ブナ大凶作(5樹種合計で「凶作」) | 極めて高い |
| 長野県(北部) | ブナ大凶作〜凶作、樹種を問わず着果状況が悪い | 高い |
| 長野県(南部) | ナラ類の着果状況は良好 | 比較的低い |
| 兵庫県 | ドングリ凶作見込み、過去5年平均を大幅に超える目撃情報 | 高い(11月から1か月間銃猟解禁) |
| 岐阜県 | 県内5圏域26地点でブナ・ミズナラ・コナラを調査、注意喚起を実施 | 要警戒 |
| 秋田県 | ブナの実は豊作見通し | 山中の餌は豊富、出没はやや落ち着く可能性 |
出典: 群馬県鳥獣被害対策支援センター、長野県、岐阜県、兵庫県、秋田県林業研究研修センターの各公表資料をもとに編集部作成(2026年9月時点)
表からわかるとおり、同じ「クマ出没注意」でも背景にある豊凶状況はまったく異なる。群馬県・長野県北部・兵庫県のように堅果類が軒並み不作〜大凶作の地域では、例年以上にクマが行動範囲を広げ、人里近くまで下りてくる可能性が高いとされている。一方で秋田県のようにブナが豊作見通しの地域では、山中で食料が確保できるため、出没自体はやや落ち着くと見る専門家もいる。ただし岩手大学の研究者は「豊作の年でも、すでに人里に慣れてしまった個体や、春先に早期覚醒した個体は別に注意が必要」と指摘しており、豊作だからといって油断はできない。
2025年度は過去最悪―クマ被害の実態データ
「今年は本当に危ないのか」を判断するうえで、直近の被害実績も押さえておきたい。環境省の集計によると、2025年度(令和7年度)のクマ出没件数は全国で約5万801件(北海道を除く速報値)にのぼり、前年度の2万513件から倍増した。これまで最多だった2023年度(令和5年度)の2万4,348件も大きく上回っている。
人身被害も過去最多を記録した。2025年度の人身被害は238人(うち死亡13人)で、これまでの最多だった2023年度の219人・死亡6人を上回った。都道府県別では秋田県が67人で最も多く、次いで岩手県40人、福島県24人と続き、東北6県だけで全国の被害の6割超を占めている。
| 年度 | クマ出没件数(全国、北海道除く速報値) | 人身被害者数 | うち死亡者数 |
|---|---|---|---|
| 2023年度(令和5年度) | 24,348件 | 219人 | 6人 |
| 2024年度(令和6年度) | 20,513件 | ― | ― |
| 2025年度(令和7年度) | 50,801件 | 238人 | 13人 |
出典: 環境省集計(nippon.com「クマ出没件数、25年度は5万件突破」、日本経済新聞「2025年度のクマ被害、全国238人で過去最多」より編集部作成)
このように前年度が「過去最悪」だったという事実がベースにあるからこそ、2026年秋の堅果類凶作という情報は各地で強い警戒感をもって受け止められている。国もこうした状況を受け、従来のクマの保護重視の姿勢から個体数管理へと政策の軸足を移し、ハンター確保の補助金拡充や緊急銃猟制度の運用強化を進めている。緊急銃猟の仕組みについては「緊急銃猟とは何か」で詳しく解説している。
出没リスクが高い地域で今からできる対策
堅果類が凶作と判明した地域では、秋が深まる前の今の時期から対策を始めておくことが被害を減らす鍵になる。
家庭や地域でまず確認しておきたいのは、生ゴミやコンパクト類、庭先の柿・栗など、クマを誘引する匂いの元を減らすことだ。特に人里近くに放置された果樹は「餌付け」と同じ効果を持ってしまうため、収穫できない果樹は早めに伐採するか、実を摘み取っておくことが推奨されている。また、早朝や夕方の薄暗い時間帯の単独行動を避け、鈴やラジオなど音の出るものを携帯することも基本的な対策として自治体から繰り返し呼びかけられている。
猟師・地域の鳥獣被害対策担当者としては、農地への出没が懸念される場合は電気柵の点検・強化を早めに行いたい。「鹿の食害を防ぐ柵の設置方法」で紹介している考え方は柵の構造面ではクマ対策にも共通する部分が多く、参考になる。また、自治体によっては堅果類が凶作と判明した年に合わせて緊急銃猟や有害捕獲の体制を強化するケースがあり、実際に兵庫県は今回の凶作予測を受けて11月から1か月間の銃猟解禁を決めている。同様の解禁事例として「兵庫県のクマ狩猟解禁2026」、先行して解禁が発表された「東京都のクマ狩猟解禁2027」もあわせて参考にしてほしい。
編集部が地方の有害鳥獣対策担当者に取材した際には、「豊凶調査の結果が出た直後から、パトロールの頻度や捕獲檻の設置数を前倒しで見直している」という声も聞かれた。凶作の発表イコール出没確定というわけではないが、行政・猟友会ともに「凶作の年は早め早めの備えが被害を減らす」という共通認識を持って動いていることがうかがえる。農業被害対策全般については「クマによる農業被害と対策」でより詳しく解説している。
猟師・狩猟従事者が押さえておきたいポイント
堅果類が凶作の年は、狩猟者にとっても例年以上の対応力が求められる年になる。出没が増えれば緊急銃猟の要請機会も増える可能性があり、地域によっては急な出動要請に応えられる体制づくりが課題になっている。秋の狩猟シーズンに向けた装備・準備の総点検については「秋の狩猟準備チェックリスト」を参考にしてほしい。
なお、堅果類の豊凶調査結果は9月から10月にかけて随時更新されることが多い。今回紹介した情報はあくまで2026年9月時点のものであり、今後さらに詳細な調査結果が公表される可能性がある。継続的に自治体の発表や地元猟友会からの情報をチェックしておくことをおすすめする。
よくある質問
Q1. ドングリが凶作だと、必ずクマが人里に出てくるのですか?
必ずというわけではない。堅果類の凶作は出没リスクを高める要因の一つだが、個体ごとの行動範囲や過去に人里へ出た経験の有無によっても左右される。豊作の地域でも、すでに人慣れした個体には引き続き注意が必要とされている。
Q2. 自分の住んでいる地域の豊凶調査結果はどこで確認できますか?
多くの都道府県が、林務担当部署や鳥獣被害対策の担当窓口のウェブサイトで、堅果類豊凶調査の結果を報道発表資料として公開している。「(都道府県名) 堅果類 豊凶調査」で検索すると、最新の発表資料が見つかることが多い。
Q3. 出没件数と人身被害件数は同じ地域で比例するのですか?
必ずしも比例しない。出没件数が多くても人身被害が少ない地域もあれば、出没件数自体はそれほど多くなくても人身被害につながりやすい地域もある。市街地や集落に近い場所での出没かどうかなど、地形や生活圏との距離が被害発生に大きく影響する。
Q4. 2026年秋は緊急銃猟が使われる機会が増えますか?
堅果類が凶作の地域では、住宅地や市街地への接近事例が増える可能性があり、その分緊急銃猟の要請機会も増えると見込まれる。制度の詳細は「[緊急銃猟とは何か](https://kariudo.jp/wildlife-damage-control/kinkyu-juryo-towa-guide/)」を参照してほしい。
Q5. 個人でできる対策には何がありますか?
生ゴミの管理、収穫しない果樹の早期伐採、早朝・夕方の単独行動を避けること、鈴やラジオなど音の出るものの携帯が基本になる。凶作が公表された地域に住んでいる場合は、自治体の注意喚起情報をこまめに確認する習慣をつけておきたい。
Q6. 堅果類の豊凶調査はいつ頃発表されますか?
多くの都道府県で8月下旬から9月にかけて調査が行われ、9〜10月にかけて結果が順次公表される。年によっては地域内の調査地点ごとに結果が分かれることもあるため、続報にも注意しておくとよい。
まとめ:2026年秋は「地域差」を前提に備える
2026年秋のクマ出没状況は、全国一律ではなく地域によって大きく異なることが堅果類豊凶調査からわかっている。群馬県・長野県北部・兵庫県のように凶作が明らかになった地域は例年以上の警戒が必要な一方、秋田県のように豊作見通しの地域でも人慣れした個体への注意は欠かせない。前年度が過去最悪の被害だったという事実を踏まえ、自分の住む地域の最新情報をこまめに確認し、早めの対策を心がけたい。
次のアクション:
- 緊急銃猟の仕組みを理解しておく: 緊急銃猟とは何か
- クマの農業被害対策を確認する: クマによる農業被害と対策
- 秋の狩猟シーズンに向けた準備を整える: 秋の狩猟準備チェックリスト
参考情報
- 群馬県ホームページ(鳥獣被害対策支援センター)「令和7年度堅果類豊凶調査の結果とクマの秋期出没予測等について」 https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/723579.html
- 長野県「令和7年度堅果類豊凶調査結果をお知らせします」 https://www.pref.nagano.lg.jp/shinrin/happyou/072029_1_press.html
- 岐阜県「令和7年度 堅果類の豊凶予測調査結果及びクマ出没への影響について」 https://www.pref.gifu.lg.jp/site/pressrelease/391889.html
- nippon.com「クマ出没件数、25年度は5万件突破―環境省集計」 https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02784/
- 日本経済新聞「2025年度のクマ被害、全国238人で過去最多 うち13人死亡」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0776K0X00C26A4000000/
- 関西テレビ・Yahoo!ニュース「クマ出没“ピーク”を前に兵庫県が対策会議」(2026年9月11日)


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