2026年8月25日、サンテレビの報道で一気に注目を集めたニュースがある。兵庫県が東部エリアのツキノワグマ狩猟を3年ぶりに解禁する方針を固めたというものだ。
兵庫県環境審議会が8月24日に承認したこの決定は、単なる「クマを獲っていい」という話ではない。増えすぎた個体数を科学的に管理し、農業被害と人身被害の両方を抑制するための、証拠に基づく判断だ。
このページでは、兵庫県ツキノワグマ管理計画の仕組みから、解禁対象エリア・狩猟期間の具体的な内容、現地ハンターへの影響、そして全国のクマ問題との比較まで、猟師目線で徹底的に解説する。
兵庫県がツキノワグマ狩猟を解禁した理由
推定個体数が管理計画の「解禁基準」を超えた
兵庫県のツキノワグマ管理計画では、「推定個体数が800頭を超えた場合に狩猟解禁を検討する」という数値基準が設けられている。
2026年の調査で、兵庫県北東部から京都府北部にかけての個体群の推定個体数は837頭に達した。これが、3年ぶり解禁の直接的なトリガーだ。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 推定個体数(2026年) | 837頭 | 兵庫県北東部〜京都府北部の個体群 |
| 解禁基準(管理計画) | 800頭以上 | 第2期ツキノワグマ管理計画による |
| 前年からの増加 | 基準超過 | 2022〜2024年は禁猟 |
| 2026年の目撃・痕跡件数 | 393件(4〜7月末) | 過去最多ペース |
目撃件数が過去最多ペースを記録
2026年4月から7月末の段階で、兵庫県内のツキノワグマの目撃・痕跡情報は393件に達した。これは統計開始以来の同期間最多ペースであり、個体数増加に伴う人里への出没が明確に増加していることを示している。
山間部では農業被害(農作物の食害)が相次ぎ、ハイキングコース付近での目撃情報も増加。「個体数が増えすぎると管理が難しくなる」という、野生動物管理の鉄則がここでも顕在化していた。
3年間の禁猟の背景
兵庫県では2022〜2024年度、ツキノワグマの狩猟を禁止していた。個体数が安定していた時期に「過剰捕獲になるリスクを避けるため」という保護的な判断からだ。
ところが、ドングリ類の豊作が続いた影響もあり、3年間で個体群が順調に回復・増加。県の管理計画が設定した解禁基準を超えたため、今回の方針転換に至った。
解禁対象エリアと狩猟期間の詳細
東側エリアのみ解禁、西側は引き続き禁猟
今回の解禁は、兵庫県内の全域が対象ではない。朝来市などを流れる円山川・市川を境界として、東側エリアのみが対象だ。
| エリア | 狩猟規制 | 理由 |
|---|---|---|
| 円山川・市川より東側 | 2026年11月15日〜解禁(1か月) | 推定個体数が800頭基準を超過 |
| 円山川・市川より西側 | 引き続き禁猟 | 個体群の規模・状況が異なるため |
円山川は兵庫県北部を流れ、朝来市から豊岡市を経て日本海に注ぐ全長68kmの一級河川。市川はその東側を流れる姫路市方面への河川で、この2つの川が兵庫県のクマ個体群の「東西の境界線」として機能している。
狩猟期間は1か月限定
今回承認された狩猟期間は、2026年11月15日から1か月間(12月15日まで)だ。通常の狩猟解禁日(11月15日)に合わせた設定で、全国的な猟期のスタートと連動している。
1か月という期間は、「無制限の捕獲」ではなく「科学的な管理捕獲」の姿勢を示している。捕獲頭数の上限も設定される可能性が高く、期間中でも上限に達した場合は終了となる見込みだ(詳細は兵庫県公式の告示を確認すること)。
兵庫県のツキノワグマ問題の現状
兵庫県は西日本最大のクマ生息域
ツキノワグマ(学名:Ursus thibetanus)は、本州の山岳地帯を中心に分布する日本の代表的な大型哺乳類だ。兵庫県は、西日本において最大規模のツキノワグマ生息地を抱えており、丹波地域・但馬地域を中心に個体群が維持されてきた。
兵庫県森林動物研究センター(兵庫県立)が個体数調査・研究の中心となっており、GPSテレメトリーや糞DNA分析を活用した精度の高い個体数推定が行われている。
クマによる農業被害の実情
個体数が増加すると、山中の食べ物(ドングリ・木の実)が不足した際に、クマが農地に降りてきやすくなる。兵庫県では:
- 果樹被害: 柿・栗などの果樹が食い荒らされる
- 養蜂被害: 蜂の巣箱が壊される
- 農作物被害: トウモロコシ・ジャガイモなどの畑への侵入
こうした被害が山間部の農家に深刻なダメージを与えている。狩猟解禁はこれらの被害軽減にも直接つながる。
ハンターへの実際の影響
猟期直前の「朗報」
11月15日の猟期スタートまで残り約3か月。現地のハンターにとって、今回の解禁方針は文字通りの朗報だ。3年間、東部エリアのツキノワグマは「捕獲不可」だったため、その分だけ個体数が積み上がっている。
クマの狩猟は通常の鳥獣と比べて特殊な技術と装備が必要だ。以下の点に注意が必要だ:
1. 猟区・地権者の確認: クマ猟が可能なエリアを事前に把握する
2. 地元猟友会との連携: 単独猟より組猟(マキガリ)のほうが安全性が高い
3. 大口径猟銃の準備: .308 Winchester以上の威力が推奨される
4. クマ専用のとどめ道具: 安全なとどめを刺すための器具の準備
クマ肉の処理・活用
捕獲後のクマ肉の処理も重要な知識だ。クマ肉には旋毛虫(トリキネラ)が寄生している可能性があり、必ず中心温度75℃以上で1分以上加熱する必要がある(農水省ジビエ利用推進ガイドライン準拠)。
クマ肉の旬は脂がのる晩秋から冬(11月〜2月)。今年の解禁時期は個体が冬眠前に体重を蓄えている時期と一致しており、肉質が最高潮になるタイミングだ。
クマ肉の寄生虫リスクについては「ジビエの寄生虫リスクと安全な食べ方ガイド」で詳しく解説しているので参照してほしい。
全国のクマ狩猟解禁動向との比較
東京都の「約20年ぶり解禁」と比較
2026年8月18日には、東京都が2027年度にツキノワグマ狩猟を約20年ぶりに解禁する方針も報道された(TBS・NHK・朝日新聞など8社が報道)。東京都の多摩地域では推定235頭(120〜378頭)が生息しており、解禁の議論が加速している。
詳しくは「東京都 クマ狩猟解禁2027|多摩地域を対象に約20年ぶりの方針転換」を参照してほしい。
| 都府県 | 解禁年度 | 推定個体数 | 対象エリア |
|---|---|---|---|
| 兵庫県(東部) | 2026年11月〜(今年度) | 837頭(北東部+京都北部) | 円山川・市川より東側 |
| 東京都(多摩) | 2027年度(来年度) | 推定235頭 | 多摩地域 |
| 北海道 | 通年設定(エゾヒグマ) | 推定2〜3万頭以上 | 道内全域(管理計画あり) |
ガバメントハンターの活用も増加傾向
各地で「ガバメントハンター(行政雇用の猟師)」の活用も進んでいる。2025年9月には緊急銃猟制度も施行され、自治体が主体となってクマ被害に対応する体制が整いつつある。
猟師数の推移と獣害問題の関係については「日本の狩猟者数・免許取得者数の推移グラフ【環境省データ・2026年版】」で詳しく確認できる。
クマ駆除を職業にする「クマ駆除ハンターの仕事」については「クマ駆除の仕事とは?報奨金・資格・リアルな現場を解説」を参照してほしい。
狩猟に参加するために必要な準備
兵庫県東部でクマ猟をするための前提条件
- 第一種銃猟免許(散弾銃・ライフル銃) の取得
- 猟銃所持許可証 の取得(ライフル銃は10年ルールに注意)
- 狩猟者登録(兵庫県での猟期前登録)
- 地元猟友会への加入(安全・情報共有のため強く推奨)
兵庫県での狩猟者登録の詳細は兵庫県公式サイトで確認を。一般的な猟師装備については「猟師の装備完全ガイド|わな猟・銃猟別の必須アイテムと初期費用」で詳しく解説している。
猟師への転職を検討している方は「猟師に転職するには?現役猟師が語るキャリア変更の実態と年収」も参考にしてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 今回の解禁は兵庫県全域が対象ですか?
いいえ。今回解禁されるのは朝来市などを流れる円山川・市川より東側のエリアのみです。西側は引き続き禁猟となります。
Q2. 狩猟期間はいつからいつまでですか?
2026年11月15日から1か月間(2026年12月15日まで)です。ただし捕獲頭数の上限設定がある場合は、期間内でも上限達成で終了となります。詳細は兵庫県の公告を必ず確認してください。
Q3. なぜ3年ぶりの解禁になったのですか?
兵庫県の第2期ツキノワグマ管理計画では「推定個体数800頭以上」を解禁の判断基準としています。2022〜2024年は基準に満たなかったため禁猟でしたが、2026年の推定個体数が837頭に達し、基準を超えたため解禁が承認されました。
Q4. 他府県のハンターも参加できますか?
狩猟者登録を兵庫県で行えば、他府県のハンターも参加可能です。ただし、銃猟の場合は火薬類の持ち込み規制や地元猟友会との調整が必要です。
Q5. クマ肉は安全に食べられますか?
中心温度75℃以上で1分以上加熱すれば食べられます。クマ肉には旋毛虫(トリキネラ)のリスクがあり、冷凍では死滅しないため、必ず十分な加熱が必須です。詳しくは「ジビエの寄生虫リスクと安全な食べ方ガイド」をご覧ください。
Q6. 今後、他のエリアでも解禁される可能性はありますか?
西側エリアは今回禁猟が継続されますが、来年度以降の調査で個体数が増加し続けた場合、解禁エリアが拡大する可能性はあります。毎年秋の環境審議会での審査結果を注視してください。
Q7. ツキノワグマを捕獲した場合、報奨金はもらえますか?
自治体によって異なります。兵庫県の各市町村で有害鳥獣捕獲に対する報奨金制度が設けられているケースがありますが、今回は「狩猟解禁」(個人の狩猟行為)であるため、有害駆除の報奨金とは仕組みが異なります。詳細は地元の市町村農林水産部門に確認してください。
まとめ:科学的管理とハンターの役割
今回の兵庫県ツキノワグマ狩猟解禁は、「個体数が増えたから無制限に獲っていい」という話ではない。推定個体数の科学的なモニタリングに基づき、適切な水準に管理するための合理的な判断だ。
3年ぶりの解禁は、過去3年間の禁猟によって個体群が回復・安定したことを示すと同時に、「増えすぎると今度は農業被害や人身被害が増える」というトレードオフを管理計画が正しく捉えていることを意味する。
2026年11月15日からの猟期に向けて、兵庫県東部でクマ猟に参加を検討しているハンターは、今から猟区・地権者確認・装備の点検を進めておこう。クマは体格が大きく危険を伴う獲物だ。安全第一で、地元猟友会との連携を密にして臨んでほしい。
参考情報
- サンテレビニュース「ツキノワグマの狩猟を3年ぶり解禁へ 兵庫県東部」(2026年8月26日、目撃件数393件・推定個体数837頭・解禁基準800頭・円山川市川の東西区分・11月15日から1か月の解禁期間を確認)
- Yahoo!ニュース「ツキノワグマの狩猟を3年ぶり解禁へ 兵庫県東部」(サンテレビ配信)
- 兵庫県「ツキノワグマによる人身被害防止」(web.pref.hyogo.lg.jp/nk27/hw24_000000018.html)
- 兵庫県「令和7年度ドングリ類の豊凶調査結果とツキノワグマ出没注意喚起」(web.pref.hyogo.lg.jp/nk20/r7hokyochosa.html)
- Wikipedia「円山川」(全長68km、朝来市・豊岡市を経て日本海に注ぐことを確認)

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