猟銃の所持許可を取得した後、多くのハンターが見落としがちなのが「更新手続き」の存在だ。銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)に基づき、猟銃の所持許可は3年ごとに更新が必要となる。この更新を忘れると許可が失効し、愛銃を手放さなければならなくなる。
2026年現在、猟師人口の減少が深刻化する中、環境省は担い手確保策としてクマ捕獲ハンターへの税免除を検討するなど、行政も猟師の経済的負担軽減に動き始めている。一方で、更新手続きの煩雑さや費用負担が、離銃の一因になっているとも指摘される。
本記事では、猟銃所持許可更新の全プロセスを費用内訳を含めて徹底解説する。初めて更新を迎えるハンターから、手続きの流れを再確認したい中堅ハンターまで、必要な情報をすべて網羅した。
猟銃所持許可の更新制度の基本
更新の根拠法令と周期
猟銃所持許可の更新義務は、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)に定められている。所持許可を受けた者は3年ごとに都道府県公安委員会の更新を受けなければならないと規定されており、更新を受けない場合は許可が失効する。
許可の有効期間は、最初の許可を受けた日から3年間(正確には「許可を受けた日から3回目の誕生日まで」)。ただし、許可証に記載されている有効期限の確認が最も確実だ。
更新申請は、有効期限の3ヶ月前から受け付けが始まるのが一般的だ。管轄の警察署(生活安全課または地域課)に早めに問い合わせることを推奨する。
更新に必要な3つの要件
猟銃所持許可の更新には、大きく3つの要件を同時に満たす必要がある。「技能講習」と「経験者講習」は名前が似ているが別の講習であり、更新時にはどちらも修了している必要がある点に注意したい。
(1)経験者講習の修了
都道府県公安委員会(窓口は警察署)が実施する「猟銃等講習会(経験者講習)」を受講すること。所持許可の制度・法令に関する座学と確認が中心で、初めて所持許可を受けるときの「初心者講習」に相当する、更新者向けの講習だ。
(2)技能講習の修了
指定射撃場等で実施される「技能講習」を受講し、修了すること。銃の操作(点検・分解結合等)と実射による技能確認が行われ、原則として3年ごとの更新のたびに受講が必要になる。
(3)欠格事由への非該当
銃刀法第5条に定める欠格事由(精神疾患、薬物依存、前科など)に該当しないことを医師の診断書等で証明すること。
この3要件を満たした上で、所管警察署に更新申請書を提出することが、更新手続きの骨格だ。
猟銃所持許可更新の費用内訳
更新にかかる費用は一つではなく、複数の項目が重なる。以下に2026年時点の標準的な費用内訳を示す。なお、金額は都道府県・実施機関によって異なるため、事前に各窓口で確認すること。
| 費用項目 | 金額の目安 | 支払先 |
|---|---|---|
| 更新申請手数料(収入証紙) | 7,200円前後 | 都道府県 |
| 経験者講習受講料 | 3,000円 | 都道府県公安委員会 |
| 技能講習受講料 | 14,000円前後 | 指定射撃場等 |
| 医師の診断書発行料 | 3,000〜10,000円 | 内科・精神科クリニック等 |
| 写真代(証明写真) | 500〜1,000円 | 証明写真機など |
| 合計(概算) | **約28,000〜35,000円** | — |
出典: 神奈川県警察・千葉県警察の講習案内、他記事での更新手数料の公開情報(いずれも2026年時点)。都道府県・実施機関により金額は前後する。
申請手数料:7,200円前後
都道府県公安委員会に納める更新申請の手数料で、申請書に添付する収入証紙で納めることが多い。金額は都道府県によって差があるため、管轄警察署または都道府県警察のウェブサイトで確認すること。
猟銃を複数丁所持している場合、1丁ごとに手数料が必要な点に注意が必要だ。2丁持ちなら手数料だけで1万円を超える計算になる。
経験者講習受講料:3,000円
経験者講習は都道府県公安委員会(窓口は警察署)が実施する座学中心の講習で、手数料は3,000円程度と比較的安価だ(神奈川県警察の例)。初めて所持許可を受けるときの「初心者講習」(手数料6,900円程度)に比べて短時間・低料金だが、更新のたびに必須となる。
技能講習受講料:14,000円前後
技能講習は、都道府県公安委員会が指定する実施機関(指定射撃場等)が担当する、実射を含む実技確認の講習だ。経験者講習とは別の講習で、受講料は14,000円前後(千葉県・神奈川県の例)と、更新費用の中で最も大きな割合を占める。受講料に弾薬代が含まれる場合と別途必要な場合があるため、料金体系を事前に確認しておくこと。
医師の診断書:3,000〜10,000円
銃刀法第5条の欠格事由に関する医師の診断書が必要で、これが費用の中でもばらつきが大きい項目だ。一般の内科クリニックで3,000〜5,000円程度、精神科・神経科では5,000〜10,000円以上になることもある。
診断書の取得先は「精神科または神経科の専門医」の記名が求められる自治体もあるため、管轄警察署の指示に従うこと。「かかりつけ医の診断書で可」とする都道府県もある。
費用を抑えるポイント
- 猟友会会員は講習料が割引になる場合が多い(非会員より2,000〜3,000円安いケースも)
- 医師の診断書は、かかりつけ医に相談すると追加の専門医への受診を省ける場合がある
- 証明写真はスマートフォンアプリで自作してコンビニプリントすれば300〜500円に抑えられる
技能講習・経験者講習の内容と合格基準
技能講習の概要
技能講習は、猟銃の安全な取り扱い技術が維持されているかを確認するための実技中心の講習で、銃刀法に基づき都道府県公安委員会の指定する機関(指定射撃場等)が実施する。前述の経験者講習(座学・公安委員会実施)とは別の講習であり、更新時にはどちらも修了している必要がある。
一般的なプログラムは、銃の操作確認(点検・分解結合等)と実射による技能確認で構成される半日〜1日のプログラムが多い。
実技(実射)の内容
実技では、指定射撃場において以下の内容が審査される。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 安全確認 | 銃の点検・弾倉確認・安全装置の操作 |
| 構え方・姿勢 | 射撃姿勢、銃床への当て方 |
| 弾込め・弾抜き | 適切な手順での操作 |
| 実射 | クレー射撃(散弾銃)または的への射撃(ライフル) |
| 不発処理 | 不発弾の安全な取り扱い手順 |
| 後処理 | 弾の確認・銃のクリーニング姿勢 |
散弾銃の場合、クレー射撃場でのトラップ射撃またはスキート射撃が一般的だ。「何枚中何枚以上」という明確な合格基準を設ける機関と、総合的な技能・安全確認で評価する機関がある。
不合格になった場合
技能講習に不合格となった場合、再受講が可能だ。ただし、再受講料が別途かかる。また、有効期限内に再講習の日程が取れない場合は、許可の更新が間に合わない可能性があるため、早めに受講申込をすることが重要だ。
技能講習の申込みは、猟銃等射撃場や都道府県猟友会のウェブサイト、または電話で受け付けていることが多い。人気の日程は数ヶ月前から埋まることがあるため、有効期限の半年前には情報収集を始めるのが賢明だ。
更新手続きのステップと必要書類
STEP 1:必要書類の準備(有効期限3〜6ヶ月前から)
更新に向けた準備は、有効期限の半年前から始めると余裕を持って進められる。まず、管轄の警察署(生活安全課)に連絡し、最新の必要書類一覧を入手することから始めよう。都道府県によって若干異なることがあるためだ。
標準的な必要書類一覧:
1. 猟銃等所持許可更新申請書(警察署で入手、または都道府県警察のウェブサイトからダウンロード)
2. 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm、申請前6ヶ月以内に撮影したもの)
3. 医師の診断書(精神疾患等がないことを証明)
4. 経験者講習修了証明書(猟銃等講習会・経験者講習の受講後に発行されるもの)
5. 技能講習修了証明書(技能講習の受講後に発行されるもの)
6. 現在の所持許可証(更新で返還する)
7. 手数料分の収入証紙(都道府県によって金額が異なる)
8. 住民票の写し(省略できる自治体もある)
一部の都道府県では、銃砲の譲渡等に係る経緯書や保管状況の申告書を追加で求める場合もある。
STEP 2:経験者講習・技能講習の受講(有効期限の3〜2ヶ月前)
経験者講習・技能講習の修了証明書は、いずれも更新申請の際に必要な書類だ。この2つを取得することが、更新プロセスの実質的な第一歩となる。
経験者講習は管轄警察署(公安委員会)が、技能講習は都道府県猟友会・指定射撃場等が窓口になっていることが多い。どちらも早めに申し込み、受講当日は現行の所持許可証(技能講習では猟銃本体も、射撃場での確認に使用)を持参する必要がある。
STEP 3:医師の診断書の取得
技能講習と並行して、医師の診断書も取得しておく。診断書は発行日から一定期間内のものが有効とされる(3ヶ月以内など)ため、申請日に合わせてタイミングを計ること。
STEP 4:警察署への更新申請(有効期限の3〜1ヶ月前)
書類が揃ったら、管轄警察署(住所地を管轄する警察署)に更新申請書を提出する。申請後、警察による身元確認・審査が行われ、通常2〜4週間程度で新しい許可証が交付される。
繁忙期(猟期前の秋など)は審査に時間がかかる場合があるため、余裕を持ったスケジュールが重要だ。
更新を忘れた場合の対処法と不許可になる条件
許可が失効してしまったら
有効期限内に更新手続きを完了しなかった場合、所持許可は自動的に失効する。この場合、銃を所持していることが違法状態となるため、直ちに以下の対応が必要だ。
1. 警察署に届け出る:速やかに管轄警察署に連絡し、失効の事実を報告する
2. 猟銃の保管場所確認:適切な保管場所(登録済みの保管庫)に厳重に保管しているかを確認
3. 新規申請の検討:失効後は更新ではなく、新規の所持許可申請が必要になる
一部の都道府県では、更新期限後6ヶ月以内であれば特例的な手続きが可能な場合もあるが、これは例外的な扱いであり、通常は新規申請からやり直しとなる。新規申請では、猟銃等講習会(初心者講習)の受講から始める必要が生じる場合もある。
失効は重大な問題を引き起こすため、スマートフォンのカレンダーに有効期限を登録し、1年前・半年前・3ヶ月前にリマインダーを設定しておくことを強く勧める。
不許可・更新拒否になる主な条件
以下の欠格事由に該当する場合、更新が認められない。
銃刀法第5条の欠格事由(抜粋):
- 精神障害者(統合失調症・そううつ病・それに類する精神疾患)
- 麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等の中毒者
- アルコール依存症者
- 禁錮以上の刑に処せられた者(執行後5年以内など条件あり)
- 住居の定まらない者
- 技能講習の不合格
さらに、以下のような状況も不許可の理由となりうる。
- 精神科への通院歴の不申告(申告義務がある都道府県)
- 住所変更の未届け(変更後20日以内の届け出義務)
- 銃の保管状況が不適切(保管設備の基準未達)
- 過去の銃の紛失・盗難歴
医師の診断書に関する重要事項:一部の疾患(うつ病の治療歴など)については、現在の状態が問題なければ更新できるケースも多い。「病歴があると絶対に不許可」と諦める前に、管轄警察署や猟友会に相談することを推奨する。
複数丁所持・ライフル銃の更新における注意点
複数丁所持の場合
猟銃を複数丁所持している場合、許可はそれぞれ個別に管理される。有効期限も丁ごとに異なることがあるため、所持許可証を定期的に確認し、各丁の有効期限を一元管理することが重要だ。
費用面では、申請手数料は1丁ごとに必要だが、技能講習は1回の受講で複数丁分に対応できることが多い(実施機関・都道府県によって異なる)。この点は実施機関に事前確認を。
ライフル銃の場合
ライフル銃は散弾銃に比べて規制が厳しく、更新要件も一部異なる。特にライフル銃10年以上所持要件(一般的なハンターがライフルを所持するためには10年以上の猟銃所持歴が必要)と絡む場合には、更新状況が次の許可に影響することがある。
ライフル銃を所持しているハンターは、都道府県猟友会や警察署のライフル担当窓口に早めに相談するとよい。
猟銃種別変更と更新の関係
更新のタイミングで「散弾銃からライフルへ」「口径の異なる銃への変更」を検討するハンターもいるが、種別・口径の変更は更新ではなく、新規の所持許可申請が必要となる。更新手続きとは別の手続きになることを覚えておこう。
ベテランハンターが実践する「更新管理術」
年間スケジュールへの組み込み
更新を忘れない最善策は、狩猟免許の更新・狩猟登録・猟銃更新を一括でカレンダー管理することだ。多くのベテランハンターは、「秋前にすべての手続きを完了する」という方針を持っている。
猟期(11月15日〜2月15日)の前には諸手続きが集中するため、夏(7〜9月)のうちに技能講習を受講しておくハンターが多い。夏の射撃場は空いていることが多く、日程の選択肢も広い。
費用の積立
更新費用は3年に一度の出費だが、月割りで積み立てておくと計画的に準備できる。仮に更新総費用を20,000円とすると、月550円程度の積み立てで賄える計算だ。
複数丁所持の場合は費用が倍増するが、同様に月次積立で対応できる。
猟友会への加入メリット
都道府県猟友会に加入していると、技能講習の案内や日程が会員向けに優先的に届く。また、講習料の割引、手続きに関するサポート、仲間からの情報共有など、更新手続きをスムーズに進めるための環境が整っている。
猟銃所持の継続を考えるなら、猟友会への加入は費用と時間の節約につながる実用的な選択だ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 更新申請はいつから受け付けてもらえますか?
一般的に、有効期限の3ヶ月前から受け付けが始まります。一部の警察署では「2ヶ月前から」とする場合もあるため、管轄署に確認してください。
Q2. 技能講習は有効期限前にいつでも受けられますか?
技能講習の受講は、原則として更新申請と関連付けて行われます。「更新のための技能講習」として実施機関に申込む際に、許可証の有効期限を伝えると適切な時期の案内をもらえます。ただし、有効期限が1年以上先の時点での受講は認められない場合があります。
Q3. 技能講習に不合格になったらどうなりますか?
再受講が可能です。ただし、有効期限内に再受講・合格する必要があるため、早めの受講が肝心です。不合格後すぐに再受講の申込みをするのがベストです。なお、技能講習不合格の場合は更新が認められません。
Q4. 引越しをした場合、更新申請先の警察署は変わりますか?
はい、変わります。住所変更後は速やかに(20日以内)新住所を管轄する警察署に変更届を提出する義務があります。次の更新は新しい住所の管轄警察署で手続きします。引越し後に変更届を怠ると、更新に影響する場合があります。
Q5. 医師の診断書はどの科で取ればよいですか?
「精神科または神経科を標榜する医師」の診断書を求める都道府県が多いですが、「かかりつけの内科医でよい」とする自治体もあります。管轄警察署に「どの科の医師の診断書が必要か」を必ず確認してください。
Q6. 更新費用の合計はいくらくらいかかりますか?
標準的には1丁で約28,000〜35,000円程度です。更新申請手数料(7,200円前後)+経験者講習(3,000円)+技能講習(14,000円前後)+医師の診断書(3,000〜10,000円)+証明写真(500〜1,000円)が主な内訳です。都道府県・実施機関・医療機関によって金額は異なります。
Q7. 猟銃の種類(散弾銃・ライフル)によって更新手続きは異なりますか?
基本的な手続きの流れは同じですが、ライフル銃は規制が厳しく、更新の際に保管状況や使用実績の確認がより詳細に行われることがあります。また、ライフルの実射ができる射撃場は散弾銃用射撃場より少ないため、技能講習の日程選択肢が限られることがあります。
まとめ
猟銃所持許可の更新は、3年ごとに必ず発生する義務的手続きだ。費用の目安は1丁につき約28,000〜35,000円で、主な内訳は更新申請手数料・経験者講習・技能講習・医師の診断書・写真代となる。
大切なポイントを改めて整理すると:
- 有効期限の半年前から準備を開始する
- 経験者講習・技能講習は早めに申込む(技能講習は特に繁忙期に日程が埋まりやすい)
- 医師の診断書は申請直前に取得し鮮度を保つ
- 複数丁所持は申請手数料が丁数分かかることを忘れない
- 失効は重大問題。カレンダーにリマインダーを設定する
更新手続きに不安がある場合は、管轄の警察署または都道府県猟友会への相談が近道だ。ベテランハンターのサポートを受けながら、確実に更新手続きを完了させ、狩猟活動を長く続けよう。
参考情報
- 神奈川県警察「猟銃等講習会及び技能講習開催のお知らせ」(経験者講習3,000円・技能講習14,000円の手数料を確認) https://www.police.pref.kanagawa.jp/tetsuzuki/koshu/mesd0072.html
- 千葉県警察「技能講習(猟銃の操作及び射撃の技能に関する講習)」の案内 https://www.police.pref.chiba.jp/fuhoka/window_hunting_school-00_04.html
- 警視庁「猟銃等講習会・年少射撃資格講習会・技能講習」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/firearms/kousyu/ryoju_kosyu.html
- 猟人編集部「猟銃等講習会(初心者講習)の内容と考査対策」「猟銃の所持許可を取る流れ」「射撃教習の内容と費用」(更新手数料7,200円等の既公開記事との整合を確認)
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