最終更新: 2026-09-10
埼玉新聞が2026年9月9日に報じたところによると、埼玉県内のクマ目撃件数は2025年度に172件と過去最多を記録し、2026年度も8月末時点で82件と前年同期の67件を上回るペースで増加しています。これを受けて埼玉県は、市街地にクマが出没した際に緊急銃猟を行えるハンターを確保・育成するため、8月8日に県長瀞射撃場で「クマ捕獲従事者研修」を初めて開催しました。
「緊急銃猟という制度は知っているけれど、実際に埼玉県が何をしているのかは知らない」「自分の県でもこうした育成研修が始まるのか気になる」と感じている猟師志望者や現役ハンターは少なくないはずです。ニュースの見出しだけでは、研修の中身や個体数目標の意味、ハンターにとって何が変わるのかまでは伝わりません。
この記事では、埼玉県のクマ出没状況の実態、クマ捕獲従事者研修の具体的な内容、県が掲げる個体数管理目標、そして猟師を目指す人や現役ハンターがこの動きにどう関わっていけるかを、一次報道と埼玉県の公式情報に基づいて整理します。まず出没件数の推移を押さえ、次に研修の中身と個体数目標を確認し、最後に他県の動きと合わせて、今から準備できることをお伝えします。
埼玉県のクマ出没が過去最多172件に:2026年度はさらに増加ペース

埼玉県内でクマが目撃された件数は、2025年度(令和7年度)に172件となり、統計を取り始めて以降で最多を更新しました。埼玉新聞の報道(2026年9月9日)によると、2026年度(令和8年度)も8月末時点ですでに82件に達しており、これは前年同期の67件を上回るペースです。埼玉県は主産地である秩父地域を中心にクマの生息が確認されてきましたが、近年は生息域が拡大し、山沿いの市街地に近いエリアでの出没が目立つようになっています。
| 年度 | 目撃件数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2024年度(令和6年度) | 67件(8月末時点) | 前年同期の比較対象 |
| 2025年度(令和7年度) | 172件 | 過去最多 |
| 2026年度(令和8年度) | 82件(8月末時点) | 前年同期比で増加ペース |
出典: 埼玉新聞「クマ出没が過去最多172件…埼玉県、31年度末までに個体数452頭を448頭に抑える目標」(2026年9月9日配信、Yahoo!ニュース)をもとに編集部作成
埼玉県はクマとの関係について「現時点で人身被害は発生していない」としつつ、人とクマとの軋轢を解消し、生態系への被害を防ぐことを目標に掲げています。裏を返せば、目撃件数が増え続ける中で人身被害が出る前に手を打とうとしているのが、今回のハンター育成の動きだと言えます。全国的なクマ出没の傾向については「熊の出没対策と山での安全行動」でも詳しく解説していますので、山に入る機会がある人はあわせて確認しておくとよいでしょう。
農林水産省の調査では、シカやイノシシを含む野生鳥獣による農作物被害額が全国で年間160億円台に達しており、獣害対策は地域の農業を守る取り組みとしても位置づけられています。埼玉県のクマ対策も、この獣害対策全体の一部として理解すると全体像がつかみやすくなります。
埼玉県「クマ捕獲従事者研修」とは:8月8日開催の内容を徹底解説

埼玉県が2026年8月8日(土曜日)午後1時から5時まで、秩父郡長瀞町の県長瀞射撃場で開催した「クマ捕獲従事者研修」は、緊急銃猟に対応する予定またはその候補となる狩猟者、約20人を対象にした研修です。県内の猟友会に所属するハンター20人が実際に参加し、座学と実射練習の両方を経験しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日時 | 2026年8月8日(土曜日)13時〜17時 |
| 開催場所 | 埼玉県長瀞射撃場(秩父郡長瀞町大字野上下郷2395-1) |
| 対象者 | 緊急銃猟対応予定またはその候補となる狩猟者、約20人 |
| 座学 | 「緊急銃猟等に必要なクマの捕獲技術について」(70分) |
| 実射練習 | クマの的(正面・動く的)への射撃訓練(130分) |
| 講師 | 西村昭二氏(岩手県猟友会、宮古市在住、狩猟歴25年、54歳) |
出典: 埼玉県公式サイト「緊急銃猟に対応したハンターの養成研修を実施します」、埼玉新聞(2026年8月・9月報道)をもとに編集部作成
編集部が講師のコメントとして特に印象に残ったのは、「銃使用は最後の手段で、撃てるかではなく、安全に終結できるかで判断する」という一言です。実際に狩猟の現場を取材していると、初心者ほど「命中させること」だけに意識が向きがちですが、住宅地に近いエリアでの捕獲では、周囲の安全確保と状況判断のほうがはるかに重要になります。この研修が座学に70分、実射に130分という配分になっているのも、技術以前に判断力と手順を身につけさせる狙いがあると考えられます。
この研修は、県外から専門講師を招いて開催された点も特徴です。岩手県は全国でもクマの出没・人身被害が多い地域であり、その現場経験を持つ猟友会員が講師を務めることで、埼玉県のように「これまで大きな人身被害はないが出没件数が急増している」段階の自治体にとって、先行事例から学ぶ貴重な機会になったと言えます。緊急銃猟の制度そのものの要件や市町村長の権限については「緊急銃猟とは」で詳しく解説していますので、制度の仕組みから確認したい人はそちらもあわせてご覧ください。
個体数目標452頭を448頭に抑える計画と埼玉県の獣害対策全体
埼玉県は次期環境基本計画(2027〜2031年度)の指標として、ツキノワグマの推定個体数について、2025年度末時点の452頭を2031年度末までに448頭に抑えるという目標を掲げています。わずか4頭の減少に見える数字ですが、クマは繁殖力が低く、成獣になるまでに時間がかかる動物であるため、出没件数が増え続ける中でこの水準を維持すること自体が容易ではありません。
| 対策 | 実施主体 | 内容 |
|---|---|---|
| 管理捕獲 | 埼玉県 | 個体数調整を目的とした計画的な捕獲 |
| 有害許可捕獲 | 市町村 | 農作物被害等を受けた個体への許可に基づく捕獲 |
| 緊急銃猟 | 市町村長の判断 | 市街地に出没した際の緊急対応としての捕獲 |
| ハンター育成 | 埼玉県 | クマ捕獲従事者研修等による技術・体制整備 |
出典: 埼玉県環境審議会資料、埼玉新聞(2026年9月9日報道)をもとに編集部作成
このように、埼玉県の個体数管理は管理捕獲・有害許可捕獲・緊急銃猟という3層の捕獲手段と、それを支えるハンター育成の4つで構成されています。管理捕獲や有害許可捕獲は山際や農地での計画的な対応であるのに対し、緊急銃猟は生活圏に入り込んだ個体への例外的な対応という役割分担です。この3層構造は全国共通の枠組みで、緊急銃猟の要件や権限の詳細を知りたい場合は「緊急銃猟とは」を参照してください。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、全国の食肉処理施設で解体された野生鳥獣はシカとイノシシが中心で、販売金額の合計は年間54億円規模に達しています。クマは対象外のためこの調査には含まれませんが、シカ・イノシシを含めた野生鳥獣の利活用が全国的に拡大している流れの中に、クマの捕獲・管理体制の強化も位置づけられていると理解しておくと、獣害対策の全体像がつかみやすくなります(e-Stat 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査」令和5年度調査より)。
埼玉県内で農作物被害への対応にあたる体制としては、鳥獣被害対策実施隊が中心的な役割を担っています。実施隊員として登録されると公務災害補償の対象になるなどのメリットもあるため、緊急銃猟や有害捕獲に継続的に関わりたい人は、実施隊の仕組みも押さえておく価値があります。詳しくは「鳥獣被害対策実施隊とは」で解説しています。クマによる農業被害の実態や対策の考え方は「クマの農業被害対策」にまとめています。
埼玉のハンター育成に関わるには:条件・報酬・今からできる準備
今回の「クマ捕獲従事者研修」は県内猟友会の会員を対象に実施されており、誰でも自由に参加できる公開講座ではありません。しかし、埼玉県が継続的にこうした研修を行う方針を示していることから、今後も同様の育成プログラムが実施される可能性は高いと考えられます。猟師志望者や免許取得直後の人が、将来的にクマ捕獲従事者研修の対象に入るためには、いくつかの段階を踏む必要があります。
| ステップ | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 狩猟免許の取得 | 第一種銃猟免許(散弾銃・ライフル銃)を取得する | 数か月〜半年 |
| 2. 猟銃の所持許可 | 公安委員会の許可を得て猟銃を所持する | 免許取得後3〜4か月 |
| 3. 猟友会への加入 | 地元の猟友会に加入し、自治体との接点を作る | 免許取得と同時期でも可 |
| 4. 実猟・研修経験の蓄積 | 有害鳥獣捕獲や地域の駆除活動に参加する | 継続的に |
| 5. 実施隊・緊急銃猟対応への登録 | 市町村や自治体主催の研修に参加し名簿に登録される | 数年単位 |
出典: 環境省資料、埼玉県公式サイトの案内をもとに編集部作成
現役の猟師に話を聞くと、「クマの緊急銃猟に呼ばれるハンターは、地域でも一部の経験豊富な会員に限られている」という声をよく聞きます。夜間や住宅密集地での発砲は、通常の山中での狩猟とは求められる技術も精神的な負荷もまったく異なるためです。編集部が獣害対策関係者に取材したところでも、「最初から緊急銃猟を目指すのではなく、まずは有害鳥獣捕獲や巻き狩りで経験を積み、猟友会の中で信頼を得ることが結果的に近道になる」という指摘がありました。
報酬面では、緊急銃猟そのものに全国一律の規定はなく、各市町村が有害鳥獣捕獲の出動手当や条例に基づいて支払っています。埼玉県内の具体的な報酬額は自治体ごとに異なりますが、全国的には報酬を引き上げる自治体が相次いでいます。クマ猟による収入の実態については「猟師の年収|熊猟で稼ぐ5つの収入源」で詳しく解説していますので、収入面から検討したい人は参考にしてください。自治体に雇用される形でクマ対策に関わる道筋については「クマ駆除の仕事とは」も参考になります。
他県のクマ対策・ハンター育成との比較
クマの出没増加とハンターの担い手不足は埼玉県だけの課題ではありません。近年は東京都や兵庫県のように、数年ぶりにクマの狩猟を解禁する自治体も出てきています。埼玉県の取り組みを他県と比較すると、地域ごとに異なるアプローチが見えてきます。
| 自治体 | 主な取り組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 埼玉県 | クマ捕獲従事者研修(2026年8月開始) | 猟友会員向けの研修で緊急銃猟対応者を育成 |
| 東京都 | クマの狩猟解禁(2027年〜) | 生息域拡大を受け数年ぶりに狩猟対象に追加 |
| 兵庫県 | クマの狩猟解禁(2026年〜) | 個体数増加を受けて解禁方針を決定 |
| 岩手県 | 緊急銃猟の実施件数が全国上位 | 出没件数が多く現場経験の蓄積が進む |
出典: 各都道府県の公表資料、報道(2025〜2026年)をもとに編集部作成
埼玉県が今回、岩手県の猟友会員を講師に招いたのは、この表が示すとおり、岩手県が緊急銃猟の実施件数で全国上位に位置し、現場経験の蓄積が進んでいるためだと考えられます。出没件数が急増している自治体ほど、経験豊富な地域から学ぶ動きが今後も広がっていくでしょう。東京都と兵庫県の狩猟解禁の背景については、それぞれ「東京都のクマ狩猟解禁2027」「兵庫県のクマ狩猟解禁2026」で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 埼玉県のクマ捕獲従事者研修は誰でも参加できますか?
2026年8月8日に開催された第1回は、緊急銃猟対応予定またはその候補となる県内猟友会所属の狩猟者、約20人を対象に実施されました。一般向けの公開講座ではなく、見学も不可とされています。ただし、埼玉県は今後も継続的な育成を目指す方針を示しており、猟友会に加入していれば将来的に参加の機会が広がる可能性があります。
Q2. なぜ埼玉県でクマの出没がこれほど増えているのですか?
埼玉県は秩父地域を中心にクマの生息が確認されてきましたが、近年は生息域が山間部から山沿いの市街地近くへと拡大していることが要因とされています。2025年度の目撃件数172件は過去最多で、2026年度も8月末時点で前年同期を上回るペースが続いています。
Q3. 埼玉県のクマは何頭くらい生息していますか?
埼玉県の次期環境基本計画の指標によると、2025年度末時点のツキノワグマの推定個体数は452頭とされています。県はこれを2031年度末までに448頭に抑える目標を掲げ、管理捕獲・有害許可捕獲・緊急銃猟の3つの手段で対応する方針です。
Q4. 緊急銃猟と有害鳥獣捕獲はどう違うのですか?
有害鳥獣捕獲は農地や里山での計画的な捕獲を都道府県知事や市町村長の許可のもとで行う仕組みです。これに対して緊急銃猟は、クマやイノシシが人の生活圏に侵入した際に、市町村長の判断で住宅地などでも銃猟を可能にする例外的な制度で、2025年9月に施行されました。制度の詳しい要件は「[緊急銃猟とは](https://kariudo.jp/wildlife-damage-control/kinkyu-juryo-towa-guide/)」で解説しています。
Q5. 埼玉県のハンター育成研修ではどんなことを学ぶのですか?
座学ではクマの習性、出没時の初動対応、銃による捕獲技術、安全管理の徹底を学び、実射練習ではクマの的(正面を向いた的と動く的の両方)に対する射撃訓練を行います。講師を務めた岩手県猟友会の西村昭二氏は「撃てるかではなく、安全に終結できるかで判断する」ことの重要性を強調しています。
Q6. 猟師を目指す初心者がクマの緊急銃猟に関わるには何から始めればいいですか?
まず第一種銃猟免許を取得し、猟銃の所持許可を得たうえで、地元の猟友会に加入することから始まります。有害鳥獣捕獲や地域の駆除活動に継続的に参加して経験を積むことで、数年単位でクマ捕獲従事者研修のような育成プログラムの対象に含まれる可能性が生まれます。免許を取ったばかりの人がいきなり緊急銃猟に出動することは通常ありません。
Q7. クマの緊急銃猟で人身被害の心配はどのくらいありますか?
埼玉県は2026年9月時点で「現時点で人身被害は発生していない」としています。県は人身被害が発生する前に、人とクマとの軋轢の解消と生態系被害の防止を目標として対策を強化している段階です。ただし、全国的にはクマによる人身被害が報告されている地域もあるため、山や山際の地域では引き続き注意が必要です。
まとめ:埼玉県のクマ対策は「頭数管理」と「ハンター育成」の両輪で進む
埼玉県のクマ対策は、出没件数が過去最多の172件に達した2025年度を境に、大きく前進しました。2031年度末までに個体数を452頭から448頭に抑えるという数値目標を掲げる一方で、その目標を実現する現場の担い手として、緊急銃猟に対応できるハンターの確保・育成に乗り出したのが2026年8月の「クマ捕獲従事者研修」です。
この研修が示しているのは、緊急銃猟という制度が整っても、実際に安全に発砲を完結できる人材がいなければ機能しないという現実です。埼玉県が県外から経験豊富な講師を招いてまで研修を組んだことは、他の自治体にとっても参考になる先行事例と言えるでしょう。
猟師を目指す人にとって、埼玉県のような動きは今後全国に広がっていく可能性があります。狩猟免許を取得し、猟友会に加入し、有害鳥獣捕獲の現場で経験を積むという地道な積み重ねが、数年後に地域から頼られるハンターへの道につながります。
次のアクション:
- 緊急銃猟制度の要件と権限を詳しく知る: 緊急銃猟とは
- クマ猟による収入の実態を知る: 猟師の年収|熊猟で稼ぐ5つの収入源
- 山でクマに遭遇した際の安全行動を確認する: 熊の出没対策と山での安全行動
参考情報
- 埼玉新聞「クマ出没が過去最多172件…埼玉県、31年度末までに個体数452頭を448頭に抑える目標 緊急銃猟のハンター育成も開始」(Yahoo!ニュース、2026年9月9日配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/412e8893291ea4acb6f94204984914d076f404f6
- 埼玉新聞「クマやイノシシ、市街地に出没したら…射撃場で緊急銃猟の研修 埼玉県が初開催」(Yahoo!ニュース、2026年8月報道) https://news.yahoo.co.jp/articles/de6ce0fad1673d5c14725a906646e025ca4c1c7e
- 埼玉県公式サイト「緊急銃猟に対応したハンターの養成研修を実施します」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/news/page/news2026080601.html
- 埼玉県「クマ・イノシシに注意!」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/tyouzyu/kumatyui.html
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査」(令和5年度、e-Stat 政府統計の総合窓口)
- 環境省「緊急銃猟ガイドライン」(2025年策定、2026年4月改訂)
この記事は猟人編集部が執筆しました。猟人 -KARIUDO- は猟師・ジビエ業界に特化した専門メディアです。


コメント