漁師と猟師の違いを徹底比較|年収・資格・仕事内容をプロが解説

漁師と猟師の違いを徹底比較|年収・資格・仕事内容をプロが解説 狩猟入門

最終更新: 2026-06-30

農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエの販売金額は合計約54億円に達し、猟師という職業への注目が高まっています。一方、漁業就業者数は2023年時点で約12.1万人と減少が続いており、担い手確保は両業界の共通課題です。

「漁師と猟師、どちらも”りょうし”と読めるけれど何が違うのか」「転職先としてどちらが現実的なのか」。そんな疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、漁師と猟師の違いを年収・資格・仕事内容・1日のスケジュールまで公的データを基に徹底比較します。まず基本的な定義と管轄の違いを確認し、次に仕事内容と年収を比較、最後に資格取得のロードマップと文化的な共通点まで解説していきます。

漁師と猟師の選び方:3つの判断基準

漁師と猟師のどちらを目指すか迷っている場合、以下の3つの基準で判断すると整理しやすくなります。

選ぶ基準 チェックポイント
フィールドの好み 海で働きたいか、山で働きたいか。体力的な適性も異なる
収入の安定性 漁師は雇用型で安定収入を得やすい。猟師は報奨金+ジビエ販売の変動型が多い
参入のハードル 漁師は資格不要で始められるが漁協加入が必要。猟師は狩猟免許の取得が必須

それぞれの詳細を以下で掘り下げていきます。

漁師と猟師の基本的な違い:定義・管轄・法律

まず、漁師と猟師の根本的な違いを整理します。

比較項目 漁師 猟師
読み方 りょうし(漁師) りょうし(猟師)
活動フィールド 海・川・湖 山・森・里山
対象 魚介類・海藻 鳥獣(シカ、イノシシ、クマなど)
管轄省庁 水産庁(農林水産省) 環境省
根拠法 漁業法 鳥獣保護管理法
業界団体 各地の漁業協同組合(漁協) 大日本猟友会・各都道府県猟友会
就業者数 約12.1万人(2023年漁業センサス) 免許所持者約21.8万人、実猟者は約15万人(2021年度環境省統計)

同じ「りょうし」でも、漢字が示す通り「漁」は水中の獲物を獲る行為、「猟」は陸上の獣を狩る行為を指します。そして管轄省庁も、適用される法律もまったく異なります。

漁師は水産庁の管轄で、漁業法に基づく漁業権制度のもとで操業します。一方、猟師は環境省の管轄で、鳥獣保護管理法に基づいて狩猟免許を取得してから活動を始めます。

この違いは日常の仕事にも大きく影響します。漁師は漁協という組織を通じて操業する仕組みが確立していますが、猟師は個人の活動が基本で、猟友会への加入は任意です。

仕事内容と1日のスケジュールを比較

漁師と猟師では、1日の過ごし方がまったく異なります。

漁師の1日(沿岸漁業の場合)

時間帯 作業内容
3:00〜4:00 出港準備・出港
4:00〜10:00 操業(網を引く・仕掛けを回収)
10:00〜12:00 帰港・水揚げ・市場への搬入
13:00〜15:00 漁具の手入れ・翌日の準備
15:00以降 自由時間

沿岸漁業の漁師は早朝出港が基本で、昼過ぎには仕事が終わるパターンが一般的です。ただし、遠洋漁業の場合は数週間から数か月の航海になることもあります。天候に左右されやすく、荒天時は「シケ休み」として休漁になります。

猟師の1日(猟期の巻き狩りの場合)

時間帯 作業内容
5:00〜6:00 起床・装備確認・猟場へ移動
6:30〜7:00 集合・作戦会議・配置決め
7:00〜12:00 巻き狩り実施(勢子と射手に分かれて行動)
12:00〜14:00 捕獲獣の搬出・解体処理
14:00〜16:00 肉の処理・分配・道具の手入れ
16:00以降 帰宅

猟師の場合、猟期(11月15日〜2月15日が基本)は上記のような流れですが、通年で行う有害鳥獣駆除では、罠の見回りが日課になります。なお、巻き狩りやくくり罠といった狩猟の専門用語に馴染みがない方は、用語集もあわせてご覧ください。罠猟師の場合は、早朝にくくり罠や箱罠を巡回して獲物の確認と処理を行い、午後は罠の設置場所の調整や新規設置に時間を使います。

猟師の仕事は季節による変動が大きく、猟期以外は罠の整備、猟場の下見、解体施設での作業などが中心になります。猟師の1日のスケジュールについては、別記事で詳しく解説しています。

年間カレンダーの違い

漁師 猟師
1〜2月 通常操業(寒ブリ・タラなど旬の魚種) 猟期の最盛期(巻き狩り・わな猟)
3〜4月 春漁シーズン(サワラ・シラスなど) 猟期終了(2/15)→有害鳥獣駆除に移行
5〜8月 夏漁シーズン(カツオ・アジなど) 有害鳥獣駆除中心。罠の見回り・猟場整備
9〜10月 秋漁シーズン(サンマ・サケなど) 猟期前の準備。銃の点検・猟場の下見
11〜12月 冬漁シーズン(フグ・カニなど) 猟期開始(11/15)。巻き狩り・忍び猟

漁師は季節ごとに狙う魚種を変えながら通年で操業するのに対し、猟師は猟期(約3か月)と有害鳥獣駆除(通年)で仕事の性質が変わります。

年収・収入構造の違い

漁師と猟師の収入は、その構造が根本的に異なります。

漁師の年収

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、漁師の平均年収は約352万円です(平均年齢42.5歳)。ただし、漁業形態によって大きな差があります。

漁業形態 年収の目安 特徴
沿岸漁船漁業 約219万円 個人経営が多く、収入は漁獲量に依存
養殖業 約1,533万円 計画的な生産が可能で高収益
遠洋漁業 600万〜800万円 長期航海だが高収入
雇用型(船員) 300万〜400万円 安定した月給制

出典: 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」、農林水産省「漁業経営に関する統計」

猟師の年収

猟師には漁師のような公的な職種別年収統計が存在しません。そのため正確な平均年収を算出するのが難しいのが実情です。一般的には年収220万〜260万円程度と推計されています。

猟師の収入は主に以下の3つの柱で構成されています。

収入源 金額の目安 備考
有害鳥獣駆除の報奨金 イノシシ成獣1頭13,000〜20,000円、シカ成獣1頭13,000〜18,000円 自治体によって差あり
ジビエ肉の販売 年間50万〜150万円(処理頭数による) 食肉処理施設との連携が必要
自治体との契約(認定鳥獣捕獲等事業者) 日当8,000〜15,000円 安定的だが枠が限られる

農林水産省の令和5年度調査によると、ジビエの販売金額は合計約54億円で、そのうち食肉販売が約44億円(81.5%)、ペットフードが約9億円(16.4%)を占めます(e-Stat 統計表ID: 0002119974)。

重要なのは、猟師だけの収入で生活する「専業猟師」はごく少数ということです。大多数は農業や林業などとの兼業で、狩猟は収入の一部にすぎません。猟師の年収の実態については、別記事でさらに詳しく解説しています。

将来性の比較

ジビエ市場は拡大傾向にあり、販売先別では外食産業が27.7%、卸売業者が31.4%、消費者への直接販売(ネット通販含む)が13.1%を占めます(e-Stat 統計表ID: 0002119996)。特にインターネット経由の直接販売は販売数量全体の7.7%に達しており、猟師が自ら販路を開拓できる可能性が広がっています。

一方、漁業は就業者数が2023年時点で12万1,389人と前回調査(2018年)から20.0%減少しており、担い手不足が深刻です。しかし養殖業は安定した収益を上げており、テクノロジーを活用したスマート水産業への転換が進んでいます。

資格・免許の違いと「なるまで」のロードマップ

漁師と猟師では、必要な資格と参入までのプロセスが大きく異なります。

漁師になるために必要なもの

漁師には法律で義務付けられた「漁師免許」のようなものはありません。雇われ船員として始める場合は、特別な資格なしでも就業できます。ただし、独立して自分の船で操業するには実質的に以下の資格が必要です。

資格 内容 取得費用の目安 難易度
小型船舶操縦士(2級) 20トン未満の船舶を操縦 約10万〜15万円 合格率90%以上
海上特殊無線技士 海上での無線通信 約2万〜5万円 合格率80%以上
漁協の組合員資格 漁場で操業するための権利 出資金数万〜数十万円 一定期間の漁業経験が必要

漁師のなり方について詳しくは、水産ナビの漁業の資格一覧も参考になります。

猟師になるために必要なもの

猟師になるには、狩猟免許の取得が法律で義務付けられています。さらに銃猟を行う場合は、銃砲所持許可の取得も必要です。

資格 内容 取得費用の目安 難易度
わな猟免許 くくり罠・箱罠を使用 約1万〜3万円 合格率80%以上
第一種銃猟免許 装薬銃(散弾銃・ライフル)を使用 約3万〜5万円 合格率60〜70%
銃砲所持許可 銃を所持するための警察の許可 約5万〜10万円 審査期間2〜3か月
狩猟者登録 各都道府県での狩猟者登録 年間約2万〜4万円(保険料含む) 免許取得後に申請

猟師の場合、免許取得から実際に狩猟ができるまで最短でも3〜6か月かかります。銃猟の場合は初心者講習→教習射撃→所持許可申請と手続きが多く、半年以上を見込む必要があります。猟師に必要な資格の全体像は別記事で詳しくまとめています。

参入のしやすさ比較

比較項目 漁師 猟師
資格取得の手間 少ない(雇用型なら資格不要) 多い(免許+所持許可で半年以上)
初期費用の目安 0円(雇用型)〜300万円(独立) 約10万〜30万円(わな猟)〜100万円以上(銃猟)
住む場所の制約 沿岸部に限定 山間部が有利だが都市部からの通いも可能
始めるまでの期間 最短1か月(雇用型) 最短3〜6か月
兼業のしやすさ 雇用型は時間拘束あり 罠猟は朝の見回りのみで兼業しやすい

未経験からの参入のしやすさでは、雇用型の漁師に軍配が上がります。一方、副業や兼業として始めたい場合は、猟師(特にわな猟)のほうが時間の融通が利きます。猟師になるための具体的なステップについては別記事で解説しています。

猟師と漁師に共通する文化的ルーツ

現代では別々の職業として認識される漁師と猟師ですが、歴史的には深いつながりがあります。

縄文時代の日本列島では、人々は「狩猟採集」という生活様式で暮らしていました。森で獣を追い、海や川で魚を獲り、木の実や山菜を集める。これらはすべて一体の営みであり、「漁師」と「猟師」の区別はありませんでした。

この名残は現在も一部の地域に残っています。北東北のマタギの中には、冬は山で猟をし、夏は川でイワナやヤマメを獲る生活を続けている方がいます。北海道の先住民族アイヌの文化でも、鮭漁と鹿猟はどちらも「カムイ(神)からの贈り物」として同じ信仰体系の中に位置付けられていました。

興味深いのは、漁師の世界にも猟師の世界にも「山の神」「海の神」への信仰が共通して存在することです。猟師が山に入る前に山の神に安全を祈るように、漁師も出港前に海の神に豊漁と安全を祈願します。自然の恵みを「いただく」という姿勢は、両者に共通する根本的な価値観です。

現代の地方では、猟師と漁師を兼業する方も珍しくありません。特に沿岸部の山間地域では、冬の猟期に山で猟をし、猟期外は沿岸で漁をするという暮らしが今も営まれています。マタギの文化と歴史を知ると、こうした複合的な自然との関わり方がより深く理解できます。

漁師と猟師の違いに関するよくある質問

Q1: 漁師と猟師、どちらが稼げますか?

平均年収で比較すると、漁師のほうがやや高い傾向にあります。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、漁師の平均年収は約352万円です。猟師は公的な統計がないものの、220万〜260万円程度と推計されています。ただし、漁師は養殖業で1,533万円を超えるケースもあり、猟師もジビエの販路開拓次第で収入を大きく伸ばせます。

Q2: 漁師と猟師を兼業できますか?

法律上の制限はなく、兼業は可能です。実際に沿岸部の山間地域では、猟期(11月〜2月)に山で猟をし、猟期外は漁をする方がいます。ただし、漁師は漁協の組合員として操業義務がある場合もあるため、事前に所属する漁協への確認が必要です。

Q3: 女性でも漁師・猟師になれますか?

どちらも性別による制限はありません。近年は女性漁師・女性猟師ともに増加傾向にあります。猟師については、狩猟免許の新規取得者に占める女性の割合が年々上昇しており、わな猟から始める方が多いのが特徴です。

Q4: 漁師・猟師は「差別用語」ですか?

いいえ、どちらも差別用語ではありません。漁師・猟師はそれぞれの職業を指す一般的な名称です。「漁業従事者」「狩猟者」という表現もありますが、業界内でも「漁師」「猟師」は日常的に使われています。

Q5: 未経験からどちらが始めやすいですか?

雇用型の漁師は特別な資格なしで就業できるため、最も手軽に始められます。猟師の場合は狩猟免許の取得が必須ですが、わな猟免許は合格率80%以上で取りやすく、費用も比較的安く抑えられます。副業で始めたい場合は、時間の融通が利くわな猟がおすすめです。

Q6: 都市部に住んでいても猟師になれますか?

なれます。都市部に住みながら週末に猟場に通う「通い猟師」は増えています。ただし、漁師の場合は沿岸部に住む必要があるため、居住地の制約が大きくなります。猟師のほうが住む場所の自由度は高いと言えます。

まとめ:自分に合った「りょうし」を選ぶために

漁師と猟師の違いをまとめると、以下の通りです。

  • 漁師は海で魚介類を獲り、猟師は山で鳥獣を狩る。管轄省庁も法律も異なる
  • 年収は漁師が平均約352万円、猟師は推定220万〜260万円。ただし働き方による差が大きい
  • 漁師は雇用型なら資格不要で始めやすいが、沿岸部への移住が必要な場合が多い
  • 猟師は狩猟免許の取得が必須だが、副業や都市部からの通いでも可能
  • 歴史的には同じ「狩猟採集」がルーツで、兼業する方も今なお存在する

まずは自分の適性を見極めることが大切です。海が好きで安定収入を求めるなら漁師、山が好きで副業から始めたいなら猟師(わな猟)から検討してみてください。

猟師に興味を持った方は、猟師になるための完全ガイドから具体的なステップを確認できます。

参考情報

  • 厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」(2024年)
  • 農林水産省「2023年漁業センサス結果の概要(確定値)」(漁業就業者数12.1万人)
  • 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」(e-Stat 統計表ID: 0002119974 / 0002119996)
  • 環境省「鳥獣関係統計 種別狩猟免許所持者数」(2021年度、約21.8万人)
  • 農林水産省「漁業経営に関する統計」(漁業形態別所得データ)
  • 水産庁「令和5年度 水産白書」(新規就業者数1,754人/年)



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