最終更新: 2026-08-11
2026年8月、静岡県の狩猟免許実技講習会に関するニュースが波紋を呼んだ。「女性や若者を中心に受講者が前年比1.5倍に増加している」——その背景には、クマやイノシシによる農業被害や市街地への出没増加があった。全国各地で有害鳥獣問題が深刻化する中、狩猟を始めたいと考える人が急増しているのだ。
しかし、いざ狩猟免許の取得に向けて動き出すと、多くの人が「実技試験って何をするの?」「どうやって準備すればいい?」と壁にぶつかる。知識試験(マークシート)については情報が多いが、実技試験の具体的な内容や合格のコツについては情報が少ない。
この記事では、狩猟免許の実技試験に特化して、わな猟と第一種銃猟それぞれの試験内容、試験当日の流れ、そして合格率を高めるための実践的なコツを詳しく解説する。これから免許取得を目指す人が「事前に何を練習すべきか」「当日どう立ち回るべきか」を明確にわかる内容にしている。
狩猟免許の取得プロセス全体を把握したい方は、まず狩猟免許の取り方|初心者向け完全ガイドを確認してほしい。
2026年、狩猟免許の実技試験が注目される理由

狩猟免許の受験者数は、ここ数年で大きく変化している。環境省の調査によると、全国の狩猟免許登録者数は一時期減少傾向にあったが、2022年以降は若年層・女性の参入が増え、再び増加に転じている。
その大きな要因のひとつが「クマ被害の拡大」だ。2024〜2026年にかけて、クマの市街地出没件数と人身被害件数が記録的な水準で推移しており、埼玉県では2026年に射撃場での緊急銃猟研修(市街地出没獣への対応)が初めて実施された。2025年9月には「緊急銃猟制度」が法整備され、一般ハンターが自治体の要請に応じて市街地でも緊急対応を行える仕組みが整った。
このような社会的な需要の高まりを受けて、狩猟免許取得を目指す人が全国的に増加している。しかし、受験者が増えれば試験への準備が十分でない人も増える。特に「実技試験でのつまずき」が課題として浮かび上がっている。
狩猟免許試験全体の合格率は約7〜9割と高めだが、準備不足の受験者は実技試験で戸惑うことが多い。特に「猟具の架設(くくり罠の組み立て)」と「鳥獣の判別」で失点するケースが目立つ。
狩猟免許の実技試験とは|種類別の試験内容一覧

狩猟免許は4種類(第一種銃猟・第二種銃猟・わな猟・網猟)あり、受験する免許の種類によって実技試験の内容が大きく異なる。ここでは最も受験者が多い「わな猟」と「第一種銃猟」の実技試験内容を詳しく解説する。
| 試験の種類 | 主な試験項目 | 試験の難易度感 | 特に注意すべき項目 |
|---|---|---|---|
| わな猟(実技) | 猟具の判別・猟具の架設・鳥獣の判別 | 易〜中 | 猟具の架設(くくり罠の正確な組み立て) |
| 第一種銃猟(実技) | 銃の点検・分解結合・装填・射撃姿勢・脱包・団体行動・距離目測・鳥獣の判別 | 中〜難 | 銃の取り扱い作法・距離目測(300m・50m・30m・10m) |
| 第二種銃猟(実技) | 空気銃の操作・鳥獣の判別 | 易 | 空気銃の適切な操作手順 |
| 網猟(実技) | 猟具の判別・鳥獣の判別 | 易 | 使用禁止猟具の識別 |
わな猟免許の実技試験の詳細
わな猟の実技試験は、大きく3項目で構成される。
(1)猟具の判別:複数のわな(くくり罠・箱罠・とりもちなど)の中から、「使用可能なもの」と「禁止されているもの」を正確に分類する。禁止猟具の基準(開口部12cm超・ワイヤー径4mm未満など)を事前に頭に入れておくことが必須だ。
(2)猟具の架設:くくり罠を実際に「捕獲可能な状態」に組み立てる。トリガー(罠が作動する機構)が正確にセットされているかどうかが評価される。手順を間違えたり、トリガーが不安定な状態で提出すると減点の対象となる。
(3)鳥獣の判別:写真やイラストで提示された動物を見て、「狩猟鳥獣(捕獲可能)」か「非狩猟鳥獣(捕獲禁止)」かを分類する。鳥類の区別(カラス類・ドバト・ヒヨドリなど)が特に問われる。
第一種銃猟免許の実技試験の詳細
第一種銃猟の実技試験は、わな猟に比べて試験項目が多く複雑だ。模造銃(実弾は使用しない)を使って以下の操作を審査される。
(1)銃の点検・分解・結合:銃の部品が正常かどうかを確認した上で、指定された箇所を分解し、再び結合する。正しい順序と動作が評価される。
(2)装填・射撃姿勢・脱包:模造弾を装填し、安全を確認した上で適切な射撃姿勢を取り、その後脱包する。一連の動作が安全に行われているかが重点的にチェックされる。
(3)団体行動・銃の受け渡し:複数人での行動中に銃をどう保持するか、受け渡しの作法を正確に行えるかを評価される。
(4)距離の目測:指定された目標物までの距離(300m・50m・30m・10m)を目視で推定する。測定器は使えないため、目測の感覚を事前に鍛えておく必要がある。
(5)鳥獣の判別:わな猟同様に、写真やイラストで狩猟鳥獣と非狩猟鳥獣を識別する。特に猛禽類(タカ・ワシ類)は全て捕獲禁止であることを覚えておこう。
第一種銃猟試験の詳細については第一種銃猟免許の試験内容と難易度を解説も参照してほしい。
わな猟免許の実技試験攻略|くくり罠の架設を確実に決めるコツ
わな猟の実技試験で最も多い失敗が「くくり罠の架設(組み立て)」だ。試験会場では試験官が組み立て方の説明をしてくれるが、初めて触る人は説明だけでは理解しきれないことが多い。
事前に準備しておくこと
わな猟の実技試験対策で最も有効なのは「実物のくくり罠を事前に触ること」だ。地域の猟友会や狩猟免許事前講習会では、実際の猟具に触れる機会が設けられていることが多い。積極的に参加しておくと、試験本番で大きなアドバンテージになる。
農林水産省「ジビエトポータルサイト」では、狩猟免許の予備講習を開催している団体のリストを確認できる。所轄の都道府県の農政担当部署に問い合わせると、近隣の予備講習情報を入手できる。
架設時の5つのチェックポイント
1. ワイヤーの先端(スリーブ部分)がしっかり締まっているか確認する
2. トリガーが正しくセットされているか(軽く引っ張って作動確認)
3. スプリングが適切なテンションで巻かれているか
4. 地面に置いた際に罠が安定して立っているか
5. くくり輪の開口部が規定内(12cm以下)に収まっているか
これらを試験前の「自己チェック用ルーティン」として体に染み込ませておくと、当日も落ち着いて作業できる。
鳥獣の判別のコツ
わな猟・銃猟ともに「鳥獣の判別」は試験の必須項目だ。環境省が公開している「狩猟鳥獣の捕獲等に係る適法性の確認ガイドライン」には、狩猟可能な鳥獣と禁止種の一覧が写真付きで掲載されている。事前に印刷して繰り返し見ておくのが最も効果的な対策だ。
特に間違えやすい組み合わせ:
- ドバト(狩猟可)とカワラバト(同一種のため実質的に同様の扱い)
- ヒヨドリ(狩猟鳥)とムクドリ(禁止)
- マガモ(狩猟鳥)とカルガモ(禁止)
- タヌキ(狩猟獣)とアナグマ(禁止)
第一種銃猟の実技試験攻略|距離目測と銃操作の当日ポイント
第一種銃猟の実技試験で特に難しいとされるのが「距離目測」と「銃の操作手順」だ。
距離目測のトレーニング方法
距離目測は日常的に練習することが最も効果的だ。日常生活の中で「あの電柱まで何m?」「あの交差点まで何m?」と目測し、実際に歩いて測る習慣をつけると、自然と距離感が養われる。
試験で求められる4段階(300m・50m・30m・10m)のうち、日常的に経験しにくいのは300mだ。学校の校庭や河川敷など、比較的広い場所で「この距離は300mだ」という基準を体感しておくと有利だ。
銃の取り扱い作法の基本
第一種銃猟の試験で重点チェックされるのが「銃口の向き」だ。銃口を人に向けないことは、試験中の基本中の基本で、これを守れていない場合は即失格になることもある。
試験中に意識すべき「銃口の向き ルール」:
- 移動中は銃口を必ず空(斜め上)か地面に向ける
- 他の受験者に近づく際は銃口の向きを常に確認する
- 銃の受け渡し時は「安全装置をかけた状態で銃口を上向きにして渡す」
事前講習会では模造銃を使った銃操作の練習が行われる。第一種銃猟を受験する場合は、この事前講習への参加は事実上マストと考えてよい。
費用・申請の詳細については狩猟免許の費用合計まとめも確認してほしい。
実技試験に合格するための7つのコツ
ここでは、実技試験で合格率を高めるための実践的なアドバイスを7点まとめた。
1. 予備講習会には必ず参加する
都道府県の猟友会や農政担当部署が主催する「狩猟免許予備講習会」は、試験会場と同じ形式で模擬試験が体験できる。実技試験の猟具や手順を事前に体験できる唯一の公式な機会だ。費用は地域によって異なるが、3,000〜6,000円程度が多い。
2. くくり罠は事前に反復練習する
わな猟の架設は「手順を知る」だけでなく「手が動く」レベルまで練習する必要がある。農業・農村振興機構のホームページや農水省の普及啓発動画では、くくり罠の組み立て手順を動画で確認できる。ホームセンターで規格品のくくり罠を購入し、自宅で繰り返し組み立て練習するのが最も効果的だ。
3. 試験は「ゆっくり・確実に」が基本
実技試験に時間制限はほとんどない(試験官が特別に急かすことはない)。「早く終わらせよう」と焦って操作を間違えるよりも、「一つひとつ確認しながら確実に進める」スタイルのほうが評価が高い。
4. 鳥獣の写真を繰り返し見る
狩猟鳥獣の判別は、知識として「〇〇は狩猟可能」と覚えるより「見た目で瞬時に区別できる」状態にすることが理想だ。環境省が公開している鳥獣写真一覧を印刷し、電車の中やスキマ時間に繰り返し確認しよう。
5. 銃口の方向を常に意識する(銃猟のみ)
第一種銃猟の試験で最もやってはいけないのが「銃口を人に向ける」行為だ。日常的に模造銃(またはそれに近い形の棒)を手に持ち、「銃口の向き」を意識する習慣をつけておくと、試験本番でも自然にできるようになる。
6. 当日は余裕を持って会場に到着する
試験は原則として「開始30分前までに受付を済ませる」ことが義務付けられている。遅刻すると受験できないケースもある。公共交通機関の場合は最低でも開始60分前を目標に会場に向かうと安心だ。
7. 体調管理と服装
実技試験は屋外・屋内混合で実施されることが多い。特に夏場は熱中症対策が必要で、水分補給できるよう飲み物を持参しよう。服装は動きやすい格好(長袖長ズボン推奨)が適切だ。ハイキールやサンダルは避け、しっかりとした履き物で臨むこと。
試験当日の持ち物・スケジュール・よくある失敗例
| 持ち物カテゴリ | 具体的な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 受験必須書類 | 受験票・本人確認書類(免許証など) | 受験票を忘れると受験不可 |
| 筆記用具 | 鉛筆・消しゴム | HB推奨、シャープペンシルも可 |
| 飲み物・食べ物 | 水筒・昼食(試験が半日以上になる場合) | 会場での購入が困難なことも |
| 服装 | 動きやすい長袖長ズボン・運動靴 | 屋外実技に対応した格好で |
| その他 | 猟銃等所持許可証(銃猟受験者で既所持の場合) | 確認のため求められる場合がある |
当日のおおまかな流れ(わな猟の例)
午前中:受付・適性試験(視力・聴力)・知識試験(マークシート)
午後:実技試験(猟具の判別→猟具の架設→鳥獣の判別の順)
夕方:合格発表(当日発表の都道府県が多い)
実際のスケジュールは都道府県によって異なるため、受験票に記載されたタイムテーブルを必ず確認すること。
よくある失敗例と対策
失敗例1「くくり罠が捕獲可能な状態にならなかった」→対策:事前に実物で反復練習。架設後に自分でトリガーを軽く引っ張り、正常に作動するか確認するクセをつける。
失敗例2「鳥獣の判別で身近な鳥を見誤った」→対策:スズメ・ハト類・カモ類の写真を重点的に覚える。「大きさ」「くちばしの形」「体の模様」の3点でチェックする習慣をつける。
失敗例3「銃操作で銃口の向きがおかしくなった」→対策:試験中は常に「銃口の向きは安全か?」と自問する。わからない操作が出てきたら、焦らず試験官に確認を求める。
よくある質問(FAQ)
Q1. 狩猟免許の実技試験だけ別日に受けることはできますか?
いいえ、通常は知識試験・適性試験・実技試験が同一日程で実施されます。ただし都道府県によって多少のスケジュール差があるため、受験を希望する都道府県の農政担当部署に事前確認してください。
Q2. わな猟の実技試験でくくり罠の種類は指定されますか?
試験で使用するくくり罠の種類は試験会場が指定するものを使います。受験者自身が猟具を持参する必要はありません。ただし、事前練習には市販のくくり罠(規格品)を使うのが有効です。
Q3. 実技試験で落ちた場合、再試験は受けられますか?
はい、次回の試験日程に再受験できます。試験は各都道府県で年に数回実施されており、次のチャンスを待つことになります。1〜3か月以内に再試験の機会があることが多いです。
Q4. 第一種銃猟の実技試験は本物の銃を使いますか?
試験では模造銃(実弾が使用できない訓練用の銃)が使われます。本物の銃は使いません。ただし、銃の操作は本物と同様の手順で行われるため、正確な手順を覚えることが重要です。
Q5. 試験当日に緊張してしまう場合の対処法はありますか?
深呼吸と「ゆっくり・確実に」の意識が効果的です。実技試験は速さを競うものではなく、手順の正確さを見るものです。試験官は「ちゃんとできているか」を確認しているので、焦らず一つひとつの動作を丁寧に行えば問題ありません。わからないことは試験中でも試験官に質問できます。
Q6. 狩猟免許を取得した後、すぐに猟に出られますか?
いいえ、狩猟免許取得後はさらに「狩猟者登録」を行う必要があります。また、銃猟の場合は「猟銃所持許可」の取得も別途必要です。登録・許可取得の流れは[狩猟 始め方 初心者ガイド](https://kariudo.jp/hunting/hunting-beginner-guide/)をご確認ください。
まとめ:実技試験の合格は「事前準備」で9割決まる
狩猟免許の実技試験は、決して難易度が高い試験ではない。問題は「試験当日に初めて猟具を触る」という状態で臨んでしまうことだ。
今回解説した7つのコツをおさらいしよう:
1. 予備講習会に必ず参加する
2. くくり罠の架設は事前に反復練習
3. 試験はゆっくり・確実に
4. 鳥獣の写真を繰り返し見る
5. 銃口の向きを常に意識する(銃猟)
6. 会場に余裕を持って到着する
7. 体調と服装を整えて臨む
クマや有害鳥獣による被害が社会問題化する中、狩猟免許保持者の社会的意義はこれからさらに高まる。2025年9月に施行された緊急銃猟制度も、一般ハンターが社会を守る場面が増えることを示している。
まずは都道府県の農政担当部署に連絡し、次回の試験日程と予備講習会の情報を確認することから始めよう。免許取得に向けた費用の全体感は狩猟免許の費用合計ガイド、わな猟の難易度詳細はわな猟免許の難易度解説を参照してほしい。
参考情報
- 環境省 狩猟免許制度概要(env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/license.html)
- 東京都環境局 狩猟免許試験について
- 高知県 狩猟免許試験の試験内容(pref.kochi.lg.jp)
- 農林水産省 野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)
- テレビ静岡NEWS「女性や若者中心に1.5倍 狩猟免許の実技講習会 クマ被害拡大で受講者増加」(2026年8月9日)
- 埼玉新聞「クマやイノシシ、市街地に出没したら…射撃場で緊急銃猟の研修 埼玉県が初開催」(2026年8月9日)

コメント