最終更新: 2026-09-22
猟師による誤射での死亡事故は、統計的には決して多くはないものの、実際に毎年のように発生しています。環境省が公表しているデータでは、狩猟や許可捕獲等に伴う事故で平成10年度から平成28年度までの19年間に約150名が死亡しており、近年も銃猟免許交付数に対する事故率はおおむね0.015%前後で推移しています。この記事では、公表データに基づく事故の発生状況、実際に起きた誤射死亡事故の教訓、事故の主な原因と防止対策を整理して解説します。
狩猟事故の発生状況|環境省データで見る実態
環境省が大日本猟友会の協力を得て集計している統計によると、狩猟や許可捕獲等に伴う事故は次のような規模で発生しています。
| 集計期間 | 事故件数 | 死亡者数 | 重傷者数 |
|---|---|---|---|
| 平成10年度〜平成28年度(19年間) | 約1,500件 | 約150名 | 約540名 |
単純計算では年間平均およそ79件の事故、7〜8名程度の死亡者という規模になります。また、統計データを分析した報道によると、ハンター本人に起因する銃の誤射など銃猟に関わる事故は近年「年間概ね20名以下の死傷者数」で推移しており、銃猟免許交付数に対する事故率は0.015%前後とされ、ハンター人口が減少する一方で事故率自体が上昇しているとは言えない状況です。狩猟者数・免許取得者数の推移については「日本の狩猟者数・免許取得者数の推移グラフ」もあわせて確認してください。
なお、事故の原因は誤射だけではありません。環境省の分析では、以前は銃器取扱いによる過失が事故原因の多くを占めていたものの、近年は猟犬による咬傷事故や、しとめた獲物による反撃(逆襲)が原因となる事故の割合が高まっている傾向も指摘されています。
実際に起きた誤射死亡事故の教訓
統計上の数字だけでは実感しにくいため、実際に報道された事故例を確認します。2018年(平成30年)11月20日、北海道恵庭市で発生した事故では、猟銃を用いて狩猟をしていたハンターが、林道上で倒木の片付け作業をしていた北海道森林管理局恵庭森林事務所の職員をエゾシカと見誤って発砲し、死亡させました。ハンターは「動物と間違えて撃った」と説明し、業務上過失致死の疑いで捜査の対象となっています。
この事故で見落とせないのは、被害を受けた職員が赤色のジャンパーとオレンジ色のヘルメットという目立つ服装で作業をしていた点です。視認性の高い服装をしていても、矢先の確認が不十分であれば誤射は防げないという事実を示す事例であり、この事故を受けて北海道森林管理局と北海道水産林務部は翌年1月から3月にかけて銃器を用いた狩猟を一時禁止する措置を取りました。
誤射事故の主な原因
環境省の事故分析やハンターの意見をまとめると、誤射事故の主な原因は次のように整理できます。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 矢先の確認不足 | 獲物と断定できないまま、音や気配だけで発砲してしまう |
| 視認性への過信 | オレンジ色の服装等を身につけていれば安全という思い込みで、確認を怠る |
| 基本的な銃器取扱いの不徹底 | 安全装置の未使用や、発砲前の周囲確認の省略など、基本動作が徹底されていない |
| 単独猟での情報不足 | 他の猟師や作業者の位置を共有しないまま行動範囲が重なる |
環境省も、平成30年度に発生した死亡事故について「矢先の確認不足による誤射や、銃器の基本的な取扱いの不徹底など、基本的な事項を遵守していれば未然に防ぐことのできた事故であった」と分析しています。
誤射事故を防ぐための対策
誤射事故を防ぐために、猟師個人と組織それぞれの立場で取り組める対策を整理します。
| 対策 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 矢先の完全な確認 | 獲物と断定できるまで発砲しない。人の気配や物音だけで撃たない |
| 視認性の高い服装の着用 | オレンジ色のベスト・帽子等を着用し、他の猟師・作業者から見つけてもらいやすくする(ただし視認性は誤射を完全には防げない点に注意) |
| 猟場の情報共有 | 同じ猟場に入る猟師同士、または林業関係者等が作業する区域について事前に情報共有する |
| 定期的な射撃訓練・講習の受講 | 基本動作を体に定着させるため、猟期前の射撃教習や初心者講習を活用する |
なお、オレンジ色のベストの着用は法令で一律に義務付けられている装備ではありませんが、狩猟中の事故に備える共済・保険の契約内容によっては、指定された安全装備の着用有無が保険金の扱いに影響する場合があるとされています。正確な条件は加入している共済・保険の約款で個別に確認してください。射撃教習や初心者講習の具体的な内容・費用は「射撃教習の内容・費用を徹底解説」「猟銃初心者講習の内容を徹底解説」で確認できます。仕留めた獲物の止め刺し時の安全確保については「止め刺しの方法と安全な手順」も参考になります。
競合の狩猟事故記事の多くは統計の紹介にとどまりがちですが、恵庭市の事故のように「視認性の高い服装をしていても誤射は起こり得る」という教訓まで踏み込んで理解しておくことが、対策の実効性を高めるうえで重要です。
事故を起こした場合の法的責任
誤射により人を死傷させた場合、刑法上の業務上過失致死傷罪等に問われる可能性があります。恵庭市の事故でもハンターは業務上過失致死の疑いで捜査対象となりました。また、事故の内容によっては狩猟免許の取消し等の行政処分の対象になることもあります。免許が取り消される具体的な条件については「狩猟免許はどんな場合に剥奪される?取消し・停止の条件」で解説していますので、あわせて確認してください。
よくある質問
Q1: オレンジ色のベストの着用は法律で義務ですか?
国の法律で一律に着用を義務付けているものではありません。ただし安全確保の観点から広く推奨されており、加入している共済・保険によっては安全装備の着用有無が保険金の扱いに影響することもあるため、加入する共済の約款を確認してください。
Q2: 猟師以外の一般人が誤射に巻き込まれることはありますか?
恵庭市の事故のように、林業関係者など狩猟者以外の人が誤射の被害に遭った例が実際にあります。狩猟が行われる区域では、猟期中であることを示す標識の確認や、目立つ服装での入林が推奨されます。
関連記事: 猟師が使う猟犬の犬種一覧|猟法別の役割とおすすめ犬種を解説
まとめ:狩猟事故を防ぐために
- 環境省統計では19年間で約150名が死亡しており、近年も年間数名〜20名弱の死傷者数で推移している
- 誤射事故の主因は矢先の確認不足と基本的な銃器取扱いの不徹底
- 視認性の高い服装をしていても誤射は起こり得るため、確認の徹底が最優先
- 誤射で人を死傷させた場合は刑事責任や免許取消し等の行政処分の対象になり得る
狩猟を始める前・猟期に入る前には、今回紹介した対策を今一度確認し、射撃教習や初心者講習を通じて基本動作を体に定着させることから始めましょう。
参考情報
- 環境省「狩猟により発生した事故件数」(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs2/r01/R1-31.xls)— 平成10〜28年度の事故件数・死亡者数・重傷者数について参照(確認日: 2026年9月22日)
- 環境省「狩猟等事故防止映像『事故につながる分岐点』の作成について」(https://www.env.go.jp/press/109328.html)— 事故原因の分析コメントについて参照(確認日: 2026年9月22日)
- 日本経済新聞「誤射で森林管理局職員死亡 北海道、ハンター逮捕へ」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38002080Q8A121C1CC1000/)— 2018年11月の恵庭市誤射死亡事故の経緯について参照(確認日: 2026年9月22日)
- Yahoo!ニュース エキスパート「統計から見るハンターの誤射と高齢化」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/cff8551415d0ee2e4559b8888af386391cd42fbc)— 近年の事故率・死傷者数の推移分析について参照(確認日: 2026年9月22日)

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