最終更新: 2026-10-02
イノシシ猟には大きく「巻き狩り(グループ猟)」「待ち猟」「忍び猟(単独猟)」の3つの猟法があります。どの猟法を選ぶかは、仲間の人数、猟場の地形、経験年数によって変わりますが、いずれの猟法でも共通して欠かせないのが「突進してくるイノシシへの対策」です。時速40km近い速度で突進してくるとされ、特に手負いの個体は攻撃性が増すため、鹿猟とは異なる危険管理が必要になります。この記事では3つの猟法の違い、痕跡の見つけ方、そして安全に猟を行うための対策を整理します。
農林水産省の野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)によると、ジビエ食肉処理施設へのイノシシ搬入重量は全体の20.7%を占め、シカに次ぐ主要な狙獣です。搬入されたイノシシ1頭あたりの平均体重は37kgとされており、成獣になればこれを大きく超える個体もいます。体格の大きさと俊敏さを兼ね備えた相手であることを踏まえたうえで、猟法ごとの特徴を見ていきます。
イノシシ猟3つの猟法の違い

| 猟法 | 概要 | 向いている場面 | 必要な人数・難易度 |
|---|---|---|---|
| 巻き狩り | 勢子(追い出し役)がイノシシを追い出し、待ち(タツマ)の射手が獣道で仕留める連携猟 | 広い猟場、グループでの出猟、初心者が経験者と組む場合 | 複数人が必須。連携の経験が問われるが、単独猟より危険の分散ができる |
| 待ち猟 | ヌタ場や獣道など、イノシシが通る場所で待機して仕留める | 痕跡が濃く通り道が特定できている猟場 | 単独〜少人数。待機中の忍耐力と痕跡の読みが問われる |
| 忍び猟(単独猟) | 足跡・ヌタ場などの痕跡を頼りに、風向きに注意しながら気配を消して接近する | 経験者が単独で猟果を求める場合 | 単独。接近技術・判断力が求められ、3つの中で最も経験を要する |
鹿の忍び猟との技術的な共通点は多いものの、イノシシは接近に気づくと逃げるだけでなく、距離によっては反転して向かってくる点が大きな違いです。鹿を対象にした忍び猟の歩き方・風読みの基本は「鹿の忍び猟のコツ」で解説しているので、単独猟の基礎を押さえたい方はあわせて確認してください。
痕跡の見つけ方:ヌタ場・掘り跡・足跡
猟法を問わず、イノシシの痕跡を正確に読めることが成果を左右します。
- ヌタ場:イノシシが泥浴びをする水場・湿地。体の寄生虫や体温調整のために繰り返し利用するため、同じ場所に通う習性がある
- 掘り跡(ほじり跡):ミミズや根を探して地面を掘った跡。新しいほど土が湿っていて柔らかく、直近の出没を示す
- 足跡:鹿の足跡が細く尖っているのに対し、イノシシの足跡は丸みがあり幅も広い。蹄の2本の先端が開いているかどうかでも判別できる
これらの痕跡が複数重なっている獣道やヌタ場の周辺は、待ち猟のポイントとして有力です。わな猟での痕跡の使い方については「くくり罠の仕掛け方」「箱罠の設置方法」でも詳しく解説しています。
突進の危険性と対策
イノシシがパニック状態になると、人に向かって突進してくることがあります。体の大きさに比べて俊敏で、突進の速度は時速40km近いとされ、牙が当たりやすい太もも内側には太い血管が通っているため、直撃すれば大けがにつながりかねません。特に矢数で仕留め損ねた「手負い」の個体は攻撃性が増すため、致命傷を与えられる自信がない距離や体勢では発砲を控える判断も必要です。
対策として押さえておきたい点は次のとおりです。
- 発砲は急所(頭部・頸部)を確実に狙える距離・体勢でのみ行う
- 手負いの個体を追う際は、仲間と連携し単独で近づかない
- 突進された場合、イノシシは木に登れないため、近くに登れる木や遮蔽物があれば退避する
- 猟場に入る前に撤退ルート・遮蔽物の位置を確認しておく
装備面では、スラッグ弾・ライフル・ハーフライフルなど、対象や猟場の規制に応じた銃種選びも重要です。銃種ごとの特徴は「猟師が使える銃の種類」を参考にしてください。また、万が一のケガや猟犬の負傷に備えた保険の選び方は「狩猟保険おすすめ4選」「猟犬保険はどう選ぶ?」で解説しています。
まとめ:猟法の選択は経験値とリスク管理に合わせる
- 巻き狩り・待ち猟・忍び猟の3猟法は、必要な人数と経験値、リスクの取り方が異なる
- 痕跡(ヌタ場・掘り跡・足跡)の見分け方は猟法を問わず成果を左右する基礎技術
- 突進は時速40km近く、手負いの個体はより危険。急所を確実に狙える体勢以外では発砲を控え、退避ルートを常に意識する
初めてイノシシ猟に挑戦する場合は、単独の忍び猟よりもまず巻き狩りで経験者と組み、危険回避の立ち回りを学ぶところから始めることをおすすめします。狩猟免許の取得からまだの方は「狩猟免許の取り方」もあわせてご覧ください。
参考情報
- 農林水産省「令和5年度野生鳥獣資源利用実態調査」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/chojyu/r5/index.html)— イノシシ・シカの搬入重量割合、1頭当たりの平均体重(確認日: 2026年10月2日)
- 千葉県「イノシシに出会った場合の対応について」(https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/choujuu/inosisi-tirasi.html)— イノシシ遭遇時の危険性と対応(確認日: 2026年10月2日)
- ダイヤモンド・オンライン「イノシシに突進されたとき、どうすれば助かる?」(https://diamond.jp/articles/-/351211)— 突進速度・回避行動の専門家解説(確認日: 2026年10月2日)

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