最終更新: 2026-08-10
「猟師になりたい」と思ってまず検索するのは、もはやテレビでも本でもなく、SNSやYouTubeになってきた。
農林水産省の調査によると、ジビエ市場は年間54億円規模に成長し、SNSを通じたジビエ消費者への直接販売(インターネット)が全体の7.7%を占めるようになった(農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査・令和5年度」)。情報の入口も出口も、SNSが猟師の世界を大きく変えている。
しかし「猟師がSNSに投稿するのは難しそう」「何を気をつければいいかわからない」と感じている猟師志望者や現役ハンターも多い。プラットフォームごとに異なる規制、投稿内容の表現の難しさ、フォロワー獲得の壁。これらの疑問を一気に解決するのが本記事だ。
猟師としてSNSを始めるメリットから、プラットフォーム別の使い方、注意すべき規制、実際にフォローしておきたいアカウントまで、現場目線で詳しく解説する。
猟師がSNSを活用するメリット

1. 仲間・師匠が見つかりやすい
狩猟の世界は、かつて地元の猟友会を通じてしか入門できなかった。しかし今はSNSで現役猟師に直接メッセージを送り、同行を申し込むことも可能になった。
猟師の高齢化が進む中、SNSを通じた横のつながりは新規参入者にとって最も現実的な入門ルートの一つになっている。猟友会の入り方・メリットと組み合わせて活用することで、学びのスピードが格段に上がる。
2. 情報収集コストが劇的に下がる
- 狩猟免許の取り方・試験対策
- 地域ごとの獣害対策の最新情報
- 猟期の解禁情報・報奨金の変更
- 新しい罠や猟具のレビュー
- ジビエ加工・販路開拓の事例
これらの情報をリアルタイムで無料で手に入れられるのがSNSの強みだ。特にXは速報性が高く、法改正情報や行政の動きをいち早くキャッチするのに役立つ。
3. ジビエの販路・収入源が広がる
SNSで獲物の写真や調理レシピを発信し続けることで、ジビエ肉や加工品の直接販売につながる事例が増えている。農林水産省のデータでも、ジビエの消費者向け直接販売は全流通量の13.1%を占め、インターネット経由が7.7%を占める。
YouTubeでは広告収入だけでなく、スーパーサンクス・メンバーシップ・商品販売など複数の収益化手段がある。猟師として副収入を得る新しい道が開かれている。猟師の副業・収入についても参照してほしい。
4. 狩猟文化の普及・理解促進
都市部では狩猟に対して「残酷」「危険」というイメージを持つ人も多い。しかし現役猟師がSNSでリアルな現場・哲学・食文化を発信することで、狩猟への理解が深まりつつある。「猟師の1日を見てジビエに興味が湧いた」という声も増えている。これは担い手不足の解消にも間接的につながる動きだ。
プラットフォーム別の特徴と使い分け

猟師のSNS活用において、プラットフォームごとの特性を理解することが重要だ。目的に応じて複数を組み合わせるのが最も効果的だ。
| プラットフォーム | 向いている用途 | 狩猟コンテンツの規制 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| YouTube | 動画で詳しく解説・記録 | 中(ガイドライン変更あり) | 高 |
| 写真・短動画で雰囲気を伝える | 低〜中 | 中 | |
| X(Twitter) | 速報・交流・情報収集 | 低 | 低 |
| note | 長文記事・有料コンテンツ | 低 | 低〜中 |
| TikTok | 短い動画で若い層へリーチ | 高(銃器映像に厳しい) | 中 |
| 地域コミュニティ・グループ | 低 | 低 |
YouTube
動画で狩猟の様子を記録・発信するのに最も向いているプラットフォームだ。一度作ったコンテンツが長期間にわたって視聴され続ける「ストック型」の発信ができる。
重要な注意点: 2022年8月にYouTubeの暴力的コンテンツに関するガイドラインが大幅に改定され、狩猟系チャンネルは「動物虐待」として誤認識され削除されるリスクが高まった。ただし、食材として捕獲する・有害鳥獣駆除など「一般的に認められた目的」での狩猟描写は例外として認められている。
安全に投稿するためのポイント:
- 止め刺し・内臓処理などの生々しいシーンは過度に映さない(カット or 概要欄で説明に留める)
- 動画タイトル・説明欄で「食材として捕獲」「有害鳥獣駆除」等の文脈を明示する
- コメント欄は荒らされやすいため、承認制または非表示も選択肢に入れる
投稿後にAIが自動審査し、削除された場合は「異議申し立て」で人間による再審査を求めることができる。
写真映えする獣の解体前写真・ジビエ料理の完成写真・山の景色などを投稿するのに適している。リールでは30秒〜90秒の短動画が投稿でき、ショート動画的な活用もできる。
投稿のコツ:
- 料理・自然風景・猟具のディテールなど「美しいもの」を中心にする
- ハッシュタグは `#ジビエ` `#狩猟` `#猟師` `#gibier` `#hunter` を使う
- ストーリーズで日常的な発信を続けることでフォロワーとの距離を縮められる
X(Twitter/旧Twitter)
情報収集・交流・速報に最も向いているプラットフォームだ。猟師コミュニティのハブとして機能しており、質問ポストに先輩猟師から返信が来ることも珍しくない。
活用法:
- 狩猟関連キーワードをフォロー/リスト化して情報収集
- 「#狩猟免許」「#ジビエ」「#有害鳥獣」などのハッシュタグで同じ関心を持つ人を探す
- 法改正・行政情報などをリアルタイムでチェック
note
長文の体験記・技術解説・有料マガジンなど、深い内容のコンテンツ発信に向いている。YouTube規制が厳しい内容(解体の手順など)も比較的自由に書きやすい。月額有料マガジンを作れば収益化もできる。
猟師のSNS投稿で注意すべき規制と表現

プラットフォームごとの規制
YouTube(2022年8月改定後)
- 禁止: 動物に悪意をもって苦痛を与えている映像
- 許容: 狩猟・有害鳥獣駆除・食材準備など一般的に認められた行為
- グレーゾーン: 止め刺し・解体の詳細映像(コンテキストによって判断が分かれる)
TikTok
- 猟銃や刃物が映る映像は問答無用で削除される傾向がある
- 「捕獲後の加工食品」「料理」などに絞ると規制を回避しやすい
- 若い層へのリーチは大きいが、狩猟の「現場」発信には向かない
- 過度に血が映る解体写真は削除リスクあり
- 料理・風景・道具にフォーカスしたコンテンツは問題になりにくい
法律面の注意点
SNS上での狩猟に関する発信において、以下の法律に抵触しないよう注意が必要だ。
| 注意事項 | 根拠 | 詳細 |
|---|---|---|
| 無登録・無許可狩猟の自慢 | 鳥獣保護管理法 | 違法採捕を「自慢」するSNS投稿は証拠になりうる |
| 非猟期の捕獲映像 | 鳥獣保護管理法 | 猟期外の捕獲は禁止。時期を示す投稿は特に注意 |
| 農地・他人の所有地での狩猟 | 民法・鳥獣保護管理法 | 地権者の許可なく入猟した映像は違法 |
| 希少種の捕獲示唆 | 鳥獣保護管理法 | ニホンジカ以外でも保護種の誤認トラブルに注意 |
合法的な有害鳥獣駆除・猟期内の正規の狩猟であっても、投稿の仕方によって誤解を招きやすい。特に以下のポイントを動画・キャプションに明示することで、誤解を防げる。
- 「猟期中の正規狩猟(○○月○○日)」
- 「地権者の許可を得た農地での有害鳥獣駆除」
- 「食材として利用するため自家消費」
日本の猟師SNSアカウント・チャンネル紹介
実際にフォローしておきたい猟師・狩猟関連のSNSアカウントを紹介する。
YouTube
| チャンネル名 | 特徴 | コンテンツ傾向 |
|---|---|---|
| 九州の猟師よりより(JIMNY4LIFE) | 九州・イノシシ専門の有害鳥獣捕獲従事者。猟犬との連携が見もの | 猟犬、箱罠、くくり罠、解体(食材利用前提) |
| Nozomi’s狩チャンネル | 狩猟免許取得からの農業・狩猟・キャンプ田舎暮らし。2023年に15万登録達成 | 初心者視点、ライフスタイル系 |
| 見習い猟師の奮闘記 | 20代で脱サラ移住後、猟師を目指す若者のリアルな記録 | キャリアチェンジ、シカ・イノシシ |
X(Twitter)
| アカウント | 特徴 |
|---|---|
| @jimny4life(九州の猟師よりより) | YouTube連動、狩猟情報の速報・コミュニティ交流 |
| @naru422(小林成彦:見習い猟師カメラマン) | 狩猟×写真の視点で発信。初心者の質問に丁寧に対応 |
| アカウント | 特徴 |
|---|---|
| @hunters_works_land(猟師工房ランド) | 千葉県・猟師工房グループのドッグラン。実践的な現場情報 |
| @huntr_xxofficial(HUNTR/X) | フォロワー1万超。ジビエライフスタイル・アパレルとの連携も |
note
狩猟に関する長文コンテンツの場としてnoteを活用している猟師も増えている。有料マガジンで技術・体験記を有料公開するハンターも登場しており、収益化の選択肢の一つになっている。
SNSで情報発信を始める実践ステップ
猟師として初めてSNSを始める場合、以下のステップで進めると迷いにくい。
Step 1: まずX(Twitter)から始める
最初は文字ベースのXがハードルが低い。
- アカウント名に「猟師」「ジビエ」「狩猟」などのキーワードを入れると見つけてもらいやすい
- 最初の投稿は自己紹介(「狩猟歴○年・○県在住・主にわな猟」など)
- 先輩猟師の投稿をリツイート・返信しながらコミュニティに溶け込む
Step 2: Instagramで「見せる」発信
Xに慣れてきたら、Instagramで写真・映像を組み合わせた発信を始める。
- 猟具・ジビエ料理・山の写真など映える素材から始める
- 統一感のある投稿デザイン(フィルター・構図のルールを決める)
- プロフィールに「狩猟○年」「ジビエ愛好家」などを明記する
Step 3: YouTubeで「深める」発信
ある程度の発信に慣れてきたら、YouTubeに挑戦する。
- 最初は「ジビエ料理レシピ」や「狩猟免許取得体験記」など、規制リスクの低い動画から
- 10〜15分の構成動画が視聴完了率が高くなりやすい
- 概要欄・エンドカード・カードで関連動画・SNSへの誘導を設置する
- 動画の表紙(サムネイル)は文字を大きく、インパクトのある画像を使う
Step 4: noteで「稼ぐ」発信
技術・体験の蓄積が増えてきたら、noteで有料コンテンツを展開する。
- 無料記事で信頼を積み、有料マガジンで収益化
- 「猟師になりたい人向け完全ガイド」「自分の初猟体験記」などニーズが高いテーマが向いている
発信コンテンツのネタ一覧
「何を投稿すればいいかわからない」という初心者向けに、猟師が発信できるコンテンツのネタをまとめた。
| カテゴリ | 具体的なネタ例 | おすすめプラットフォーム |
|---|---|---|
| キャリア | 猟師になったきっかけ・取得した資格・免許費用 | note・YouTube |
| 日常 | 出猟の準備・罠の見回り・猟犬との1日 | Instagram・X |
| 技術 | くくり罠の設置方法・箱罠の選び方・忍び猟のコツ | YouTube・note |
| 食 | ジビエ料理レシピ・部位別の食べ方・臭み消しの方法 | Instagram・YouTube |
| 統計・情報 | 今年の猟期変更・獣害被害の最新データ | X・note |
| 体験記 | 今シーズンの捕獲数・失敗談・季節ごとの狩猟事情 | YouTube・note |
| 道具レビュー | 猟銃・罠・ナイフ・GPSの使用感 | YouTube・Instagram |
| 地域情報 | 自分が活動する県のジビエ情報・猟友会情報 | X・Instagram |
SNSと猟師の暮らし|収益化の現実
猟師のSNS発信は「趣味の記録」を超え、収入源の一つになりつつある。実際の収益化の手段を整理しておこう。
| 収益化手段 | プラットフォーム | 難易度 | 月収目安(参考) |
|---|---|---|---|
| YouTube広告収入 | YouTube | 高(1,000登録・4,000時間視聴要件) | 登録1万人規模で3〜15万円/月 |
| スーパーサンクス | YouTube | 中 | ライブ配信と組み合わせが効果的 |
| Amazonアソシエイト | YouTube・note | 低 | 猟具・書籍紹介で1〜5万円/月 |
| 有料マガジン | note | 低 | 月額500〜1,000円×購読者数 |
| ジビエ・加工品販売 | Instagram・note | 中(食品衛生法の許可要) | 個人差大 |
| メンバーシップ | YouTube | 高 | 登録者5,000人以上で現実的 |
重要なのは「最初から稼ごうとしない」ことだ。発信を続けて信頼を積み上げることが、長期的な収益化の土台になる。猟師の収入の実態でも解説しているが、SNS収入はメインではなくあくまで補助的な収入として位置づけるのが現実的だ。
SNSが狩猟文化の担い手不足を変える
農林水産省のデータによると、ジビエの食肉処理量はシカ5,605トン・イノシシ1,467トンで合計7,072トン(令和5年度)に達している。しかしその一方で、狩猟者の高齢化は深刻で、実質的な担い手は10万人以下とも言われる。
SNSが果たしている役割は単なる情報共有にとどまらない。
- 「YouTubeで猟師の日常を見て、移住を決めた」という若者が増えている
- Instagram経由でジビエ料理に興味を持ち、狩猟免許を取得する都市部の人も出てきた
- オンラインコミュニティから猟友会への入会・同行ハンティングにつながる流れが生まれている
猟師の高齢化問題と担い手不足の解消に、SNSは静かながら確実に貢献している。現役猟師が自分の活動を発信し続けることは、業界全体への投資でもあるのだ。
FAQ
Q1: 猟師のSNS発信に特別な資格や許可は必要ですか?
SNSアカウントの開設自体に特別な許可は不要だ。ただし、動画や写真が証拠として機能することも忘れてはいけない。違法な状況が映り込んでいないか(無許可の土地・非猟期・禁止種の捕獲)を必ず確認してから投稿しよう。
Q2: 狩猟の様子をリアルタイムでライブ配信してもいいですか?
技術的には可能だが、安全面から推奨しない。山中でのライブ配信は注意散漫になりやすく、猟銃の誤射・転倒などのリスクが高まる。録画後に編集して投稿する方が安全だし、コンテンツの質も高まる。
Q3: フォロワーが増えません。何か効果的な方法はありますか?
まずは「続けること」が最優先だ。月1〜2回の投稿では存在感が薄まる。少なくとも週1回以上の更新が理想的だ。また、他のアカウントへのリプライ・コメントで交流を増やすことがフォロワー獲得の近道だ。
Q4: 家族の顔・自宅の住所が映り込んでしまいました。どうすれば?
即座に投稿を削除する。一度ネットに上げた情報は完全に消えることはないが、早期削除が被害を最小化する。今後は撮影前に背景・人物の映り込みを確認するルーティンを作ろう。
Q5: 猟師仲間を探すにはどのSNSが一番効果的ですか?
Xが最も効果的だ。「#狩猟免許」「#わな猟」「#ジビエ」などのハッシュタグで同じ地域の猟師を探せる。[狩猟コミュニティの探し方](https://kariudo.jp/hunter-life/hunting-community-search-tips/)も合わせて参照してほしい。
Q6: 猟師のSNS投稿で炎上するリスクはありますか?
一定のリスクはある。特に「動物が苦しむ様子」「血が大量に映る解体動画」は動物愛護の観点から批判を受けやすい。文脈(食材として捕獲・害獣駆除など)を明示し、過度に刺激的な表現を避けることがリスク軽減につながる。
まとめ
猟師とSNSの関係は、今や無視できないほど大きくなっている。
本記事のポイントを整理すると:
- **X(Twitter)が最もハードルが低く、情報収集にも最適**。まずここから始めるのが得策
- **YouTubeは最もリーチが大きいが、2022年ガイドライン改定後は注意が必要**。食材・有害鳥獣駆除の文脈を明示する
- **TikTokは銃器映像への規制が最も厳しい**。料理・日常系にフォーカスするなら使える
- **noteは深いコンテンツ・収益化に向いている**
SNSを通じた情報発信は、単なる自己表現にとどまらない。若い世代が狩猟に興味を持つきっかけを作り、担い手不足の解消にも貢献する社会的な意義がある。
最初から完璧を目指す必要はない。まず一本目の投稿を世界に出すこと。それが猟師としてのSNS活用の第一歩だ。
関連記事:
- [猟師の1日スケジュール](https://kariudo.jp/hunter-life/hunter-daily-schedule/)
- [猟師の年収・収入のリアル](https://kariudo.jp/hunter-life/hunter-real-income/)
- [ガバメントハンターとは?新しい猟師の働き方](https://kariudo.jp/uncategorized/government-hunter-guide/)
参考情報
- 農林水産省「野生鳥獣資源利用実態調査(令和5年度)」ジビエ販売先別の販売数量・金額
- YouTube「暴力的で刺激の強いコンテンツに関するポリシー」(2022年改定版)
- note「有害鳥獣捕獲従事者よりより:狩猟をYouTubeで配信して収入を得る方法」
- JIMNY4LIFE「狩猟系YouTube・TikTokは終了のお知らせ」(2022年)
- 環境省「鳥獣保護管理法の概要」(2024年)

コメント